特別な甘さが恋しくなったら、フランスのプロフィットロールはいかがでしょう。愛らしいシュー生地の中にバニラアイスクリームがたっぷり詰まっていて、温かいチョコレートソースがふんだんにかけられた、まさに「とろけるような美味しさ」が自慢のデザートです。フランス語で「ささやかな報酬」を意味する"profit"から生まれたこのシュークリームは、その名前の通り、シンプルながらも様々な魅力を秘めています。この記事では、プロフィットロールがどんなお菓子なのか、その材料、歴史、語源、そしてご自宅で本格的なプロフィットロールを堪能するための詳細なレシピもご紹介します。レストランやカフェで人気のこのデザートの奥深い世界を探求することで、あなたの知識と教養を深める絶好の機会となるでしょう。

プロフィットロールとは?その定義
プロフィットロール(Profiterole)とは、フランス語で「小さな利点」を意味する"profit"に由来する言葉で、その名の通り小さなシュー(choux)生地のお菓子を指します。シュー生地で作られたこの小さな球体の中には、カスタードクリームやシャンティ(泡立てクリーム)、またはアイスクリームなどが詰められるのが一般的です。フランス語での正式名称はProfiteroleまたはune profiteroleと表記されます。その愛らしい見た目と、中に詰めるフィリングのバリエーションの豊かさから、フランス菓子の中でも特に愛されている存在です。語源が示すように、この小さなシューは、そのシンプルさの中に多くの可能性を秘めており、様々なデザートに「ささやかな利点」として加えられます。冷たいシューアイスと温かいチョコレートソースの組み合わせを楽しむデザートとして、フランスの食文化に深く根ざしています。
プロフィットロールの活用法と関連菓子
プロフィットロールは単独で楽しまれるだけでなく、様々なフランス菓子にも応用されています。例えば、結婚式で見かけることの多いクロカンブッシュは、プロフィットロールにクリームを詰め、飴で固定して円錐状に積み上げた華麗なウェディングケーキです。一つ一つのシューが幸福を積み重ねるという意味を持つとされています。また、伝統的なフランス菓子であるサントノーレは、パイ生地やシュー生地をベースに、キャラメリゼされたプロフィットロールが飾り付けられた、見た目にも華やかなケーキです。さらに、エクレアやパリブレストといったシュー生地を使った菓子も、プロフィットロールと共通のルーツを持ちます。エクレアは細長いシュー生地にクリームを詰め、表面にフォンダンやチョコレートをかけたもの、パリブレストはリング状のシュー生地にプラリネ風味のクリームを挟んだものです。これらの菓子は、シュー生地の汎用性とフィリングやデコレーションの工夫によって、独自の個性を放っています。
語源:16世紀の「ちょっとしたお駄賃」
プロフィットロールという言葉の語源は、フランス語で「小さな利点」を意味する"profit"に由来するとされていますが、その歴史を調べてみると、現代のシュークリームとは異なる興味深い変遷をたどってきたことがわかります。16世紀の作家ラブレーの作品『ガルガンチュワとパンタグリュエル』の中にも「プロフィトロール」という言葉が登場しており、当時でいう「プロフィ」とは、使用人へのちょっとした「お駄賃」としての食べ物のことで、熱い灰の中で焼かれた、小さい団子状の焼き菓子を指していました。この時代のプロフィットロールは、まだ現代の甘いシュークリームとはかけ離れた存在であり、その意味合いは時代とともに大きく変化していきました。
プロフィットロールの歴史:17世紀の風味豊かな料理
時代を遡り17世紀、プロフィットロールは私たちが現在イメージする甘いデザートとは異なり、鶏の鶏冠など、普段は食されない部位をパンの小片に詰めてスープで煮込んだ料理を指していました。これは、今日私たちがスイーツとして認識するプロフィットロールとは全く異なるもので、むしろ塩味を活かした料理の一種だったのです。この事実は、プロフィットロールという言葉が、時代や文化によってその意味合いを大きく変えてきたことを示しており、食文化の多様性と変化を物語る興味深い例と言えるでしょう。言葉の意味が時を経て変化していく様は、料理が歴史の中でどのように進化してきたかを示す好例です。
シュー生地の進化と現代プロフィットロールの誕生
現代のプロフィットロールに欠かせないシュー生地の原型が開発されたのは、16世紀のこと。カトリーヌ・ド・メディチの料理人、ポペリーニによって「パット・ア・ショー(pâte à chaud)」と呼ばれる生地が考案されました。その後、18世紀には菓子職人のアヴィスがこのレシピを改良し、さらに著名な料理人アントナン・カレームがシュー生地を完成させ、シュークリームやエクレアなど、現代にも受け継がれる多くのシュー菓子を生み出すことになります。そして、シュークリームにチョコレートソースをかけた、現代私たちが知る「プロフィットロール」のレシピが登場したのは1875年頃ですが、驚くべきことに、その考案者は未だに謎に包まれています。このような歴史的背景を経て、プロフィットロールは、冷たいシューアイスと温かいチョコレートソースのコンビネーションを楽しむデザートとして確立され、フランスの食文化に深く根付いていきました。この変遷を知ることで、一見シンプルなシュー菓子が、いかに豊かな物語を秘めているかが感じられます。
プロフィットロールの材料:シュー生地、フィリング、ソースのハーモニー
プロフィットロールの主役であるシュー生地は、水、バター、塩、小麦粉、卵というシンプルな材料から作られます。これらの材料を正確な割合と手順で混ぜ合わせ、加熱することで、内部に空洞ができる独特な生地が完成します。生地の膨らみや食感は、水分の量と卵の加え方によって大きく左右されるため、繊細な技術が求められます。特に、バターの風味と卵のコクが、生地の美味しさを決定づける重要な要素となります。中に詰めるフィリングとしては、濃厚なバニラの香りが特徴のカスタードクリーム、ふんわりと軽い口当たりのシャンティイ(泡立てた生クリーム)、そして冷たいバニラアイスクリームが一般的です。これらのフィリングは、それぞれ異なる食感と風味を提供し、シュー生地との組み合わせで無限のバリエーションを生み出します。さらに、温かいチョコレートソースは、カカオの苦味と甘みが絶妙なバランスで、冷たいフィリングとのコントラストを生み出し、プロフィットロール全体の風味をより一層引き立てます。仕上げには、粉砂糖を軽く振ったり、アーモンドスライスやミントの葉を添えたりすることも。このように、シンプルな材料ながらも、それぞれがプロフィットロールの美味しさを構成する上で重要な役割を担っています。

主な材料【6人分】
-
アイスクリーム(バニラ):800g
-
いちご:5個
-
ブルーベリー:50g
-
粉砂糖:適量
-
ミント:適量
<シュー生地>
-
牛乳:60cc
-
水:60cc
-
無塩バター:50g
-
塩:ひとつまみ
-
薄力粉:60g
-
卵:2個
<チョコレートソース>
-
ブラックチョコレート:100g
-
牛乳:60cc
シュー生地の下準備と練り込み
まずは、プロフィットロールの命とも言えるシュー生地を作るための準備に取り掛かりましょう。オーブンを200℃に予熱し、卵は冷蔵庫から出して室温に戻しておきます。シュー生地に使う薄力粉は、ダマにならないようふるっておきましょう。天板にはクッキングシートを敷いて準備完了です。いちごはヘタを取り、縦に四等分にカット、溶き卵はボウルに入れ、泡立て器でよく混ぜておきます。次に、小鍋に牛乳(60cc)、水、バター、塩を入れ、中火で加熱し、しっかりと沸騰させます。沸騰したら火を止め、ふるっておいた薄力粉を一気に加え、ゴムベラで素早く混ぜ合わせます。この工程で生地をまとめ、1~2分程度練り続け、鍋底に薄い膜ができるまで水分を飛ばします。こうすることで、生地が膨らみやすくなります。生地を耐熱ボウルに移し、溶き卵を少しずつ加えながら混ぜていきます。溶き卵の1/5量を加え、ゴムベラで切るように混ぜ、全体がなじむまで繰り返します。生地が冷えると膨らみにくくなるため、手際よく進めましょう。残りの溶き卵は、生地の状態を確認しながら少しずつ加え、混ぜていきます。生地をゴムベラですくい上げた際に、3~4秒かけてゆっくりと落ちる程度の固さが目安です。この丁寧な練り込み作業が、軽くてふわふわのシュー生地を生み出します。
シューの成形と焼き上げ
シュー生地が適切な固さになったら、丸口金をセットした絞り袋に生地を入れ、クッキングシートを敷いた天板に、直径3cm程度の大きさに間隔を空けて絞り出していきます。シューの大きさを均一にすることで、焼き上がりの見た目が美しく仕上がります。絞り終わった生地の先端が尖ってしまった場合は、水で軽く湿らせた指で優しく押さえ、平らに整えましょう。このちょっとした工夫で、焼き上がりの形が美しく保たれ、焦げ付きも防ぐことができます。さらに、生地の表面全体に霧吹きでたっぷりと水を吹きかけることも重要です。オーブンに入れる前に十分な湿度を与えることで、生地の乾燥を防ぎ、均一に大きく膨らむのを助けます。準備が完了したら、200℃に予熱しておいたオーブンで、まず13分間しっかりと焼き上げます。その後、オーブンの温度を150℃に下げて、さらに10~15分間焼き続けます。この段階的な温度調節によって、シュー生地の中まで火が通り、外側はサクサク、中は空洞という理想的な状態に仕上がります。焼き上げの途中でオーブンの扉を開けてしまうと、庫内の温度が急激に下がり、シューがしぼんでしまう原因になるため、焼き上がりまで扉は開けないようにしましょう。焼き上がったシューは、オーブンから取り出して完全に冷ましてから次の工程に進みます。冷ますことで生地が安定し、アイスクリームなどを詰める際に型崩れしにくくなります。
仕上げ:アイスクリームとチョコレートソース
焼き上げて冷ましたシューは、いよいよプロフィットロールの仕上げに入ります。まず、シューを丁寧に横半分にカットします。カットしたシューの下半分に、バニラアイスクリームをたっぷり詰めて、上半分を蓋のように重ねます。レシピの分量通り、全部で24個のシューに同様の作業を行います。アイスクリームを詰めたシューは、すぐに盛り付け、冷凍庫でしっかりと冷やし固めます。こうすることで、アイスクリームが溶け出すのを防ぎ、美味しくいただけます。次に、プロフィットロールに欠かせない温かいチョコレートソースを作ります。チョコレートを細かく刻み、耐熱ボウルに入れます。牛乳を加えて、ラップをせずに電子レンジ(600W)で1分加熱します。一度取り出して混ぜ合わせ、再度ラップなしで30秒加熱します。チョコレートソースをなめらかになるまで混ぜ合わせ、艶やかな状態に仕上げます。盛り付けでは、冷凍庫で冷やし固めたシューを皿に並べ、いちごやブルーベリーなどのフルーツを添えます。温かいチョコレートソースをかけ、粉砂糖をふりかけ、ミントの葉を飾れば、見た目も食欲をそそるプロフィットロールの完成です。冷たいアイスと温かいチョコレートソース、シュー生地の組み合わせをお楽しみください。
まとめ
プロフィットロールは、フランス語で「小さな報酬」を意味し、シンプルながらも奥深い歴史と様々な楽しみ方があるフランスの伝統的なシュー菓子です。16世紀には「褒美」としての焼き菓子、17世紀にはスープの具材として用いられるなど、時代とともに変化し、現在では冷たいアイスクリームを詰めたシューに温かいチョコレートソースをかけた「プロフィットロール・グラセ」として、フランスのレストランやカフェで親しまれています。アントナン・カレームによるシュー生地の改良が、その後の発展に貢献しました。
この記事では、プロフィットロールの定義、歴史、語源、材料、家庭で作るためのレシピを詳しく解説しました。クロカンブッシュやサントノーレなど、他のフランス菓子にも使用されるなど汎用性が高く、フランスのデザート文化に深く根ざしています。このお菓子を通して、フランスの食文化や言語、歴史への理解を深めることができれば幸いです。フランスを訪れる際には、本場のプロフィットロールを味わい、ご自宅でも手作りを体験し、その魅力を感じてみてください。
プロフィットロールはどんなお菓子ですか?
プロフィットロールは、小さなシュー生地の中にカスタードクリーム、ホイップクリーム、またはアイスクリームなどを詰めたフランスのお菓子です。「小さな利点」を意味するフランス語の"profit"が語源で、様々なデザートに活用できる点が特徴です。
プロフィットロール・グラセとは?
プロフィットロール・グラセ(Profiterole glacé)またはプロフィットロール・オ・ショコラ(Profiterole au chocolat)は、バニラアイスクリームを詰めたシュー生地を皿に盛り付け、温かいチョコレートソースをかけたデザートです。冷たいアイスと温かいソースのコントラストが魅力で、フランスのレストランやカフェで人気があります。
プロフィットロールのルーツを探る:その歴史的背景
「プロフィットロール」という名前は、元々16世紀には「小さな報酬」として供された焼き菓子を指していました。その後、17世紀にはパンの切れ端に肉などを詰めて煮込んだ料理を意味する言葉として用いられました。現在私たちが知るシュー生地を使ったデザートとしてのプロフィットロールは、16世紀に生まれたパット・ア・シュー(シュー生地の原型)から発展し、1875年頃にチョコレートソースをかけたレシピが登場したことで確立されたと考えられています。しかし、その正確な考案者は残念ながら分かっていません。
プロフィットロールの多様な展開:他のお菓子との融合
はい、プロフィットロールはそのまま食べるだけでなく、様々なお菓子に姿を変えて楽しむことができます。たとえば、結婚式で見かけることの多いクロカンブッシュ(飴でコーティングされたシューを円錐状に積み重ねたウェディングケーキ)や、フランスの伝統的なケーキであるサントノーレの飾りとしても使用されます。また、アイスクリームを使ったデザートに添えられることも頻繁にあります。













