梅の香りに誘われる季節、梅酒や梅干しなど、様々な形で私たちの食卓を彩ります。でも、ふと疑問に思うことはありませんか? 一体、どの都道府県が一番たくさんの梅を育てているのだろうと。美しい梅の花は身近に見かけるものの、実際に梅の実がどのように生産されているのか、知る機会は少ないかもしれません。そこで今回は、都道府県別の梅の収穫量ランキングを徹底比較! 知られざる梅の産地を巡る旅に出かけましょう。
多岐にわたる梅の活用法と国内の生産状況
梅はそのままで食することは難しいものの、梅酒や梅ジュースとして、その芳醇な風味を楽しむことができます。また、梅干しは健康食品としても親しまれています。街中で美しい梅の花を目にすることは多いですが、実際にその梅がどこで栽培されているのか、詳しく知っている方は少ないかもしれません。この記事では、梅の生産量に関するランキングを詳しく解説していきます。
梅の都道府県別生産量ランキングの概要
まずは、日本における梅の都道府県別生産量ランキングをご紹介します。国内全体の梅の生産量は約51,600トンで、そのうち和歌山県が半分以上を占めています。生産量は少ないながらも、東北地方から九州地方まで、各地で栽培が行われているのが特徴です。
1位 和歌山県 生産量29700t
2位 群馬県 生産量4150t
3位 山梨県 生産量1210t
4位 宮城県 生産量1070t
4位 神奈川県 生産量1070t
5位 三重県 生産量966t
出典:作物統計調査 統計表(令和6年産)(2025年2月28日公表)
主要な産地の特徴と梅の品種について
次に、日本国内の梅の生産量上位3県と、それぞれの地域で特に盛んに栽培されている梅の品種について詳しく見ていきましょう。各産地を代表する品種の特性や用途を知ることで、梅の奥深い魅力をより深く理解できるはずです。
1位 和歌山県(生産量シェア57.6%)
和歌山県は、日本の梅生産において抜きん出たシェアを誇る、国内最大の産地です。特にみなべ町や田辺市などの地域には広大な梅畑が広がっており、「梅といえば和歌山県」というイメージが定着しています。和歌山県では、梅酒や梅ジュースに適した青梅と、梅干しに最適な完熟梅を、それぞれの時期に合わせて丁寧に収穫しています。収穫時期は主に5月下旬から7月上旬にかけてです。
和歌山県の主要品種であり、オリジナル品種としても有名なのが「南高(なんこう)」です。南高梅は、梅酒、梅ジュース、梅干しと、幅広い用途に対応できる万能品種として非常に人気があります。特に梅干しとして加工された際には、肉厚でふっくらとした果肉が特徴であり、「紀州南高梅」というブランド名で扱われる最高級品種として、全国的に知られています。その豊かな食感と上品な味わいは、多くの人々を魅了しています。
また、和歌山県では「古城(ごじろ)」という品種も栽培されています。古城は、主に梅酒や梅ジュースに適した品種として用いられ、南高梅よりもやや早い時期に青梅として収穫されます。そのさわやかな香りと酸味は、加工品に奥深さを与えます。
2位 群馬県(生産量シェア8.0%)
群馬県は、国内有数の梅の産地として知られています。梅の収穫は、例年5月下旬から6月下旬にかけて行われ、収穫された梅は主に青梅として市場に出回ります。これらの青梅は、梅干しをはじめ、ジャムやカリカリ梅といった様々な加工品に姿を変え、私たちの食卓を彩ります。 群馬県で特筆すべき梅の品種は「白加賀」です。大粒で果肉が厚く、見た目の美しさも兼ね備えていることから、梅酒や梅干し用の品種として非常に人気があります。白加賀梅は、加工後の食感が損なわれにくく、豊かな風味を引き出せるため、多くの加工業者に重宝されています。品質の高い梅酒や梅干しを製造する上で、白加賀は必要不可欠な存在と言えるでしょう。
3位 山梨県(生産量シェア2.3%)
山梨県は、「小梅」の産地としてその名を知られています。県内の中北地域、峡東地域、峡南地域を中心に小梅栽培が盛んであり、その栽培技術と品質の高さには定評があります。 山梨県で主に栽培されているのは「甲州小梅」という品種です。名前が示すように、小ぶりなサイズが特徴ですが、小さいながらも果肉がしっかりと詰まっており、特にカリカリ梅への加工に適しています。独特の歯ごたえと爽やかな酸味が特徴のカリカリ梅は、ご飯のお供や弁当のおかず、お茶請けとして広く愛されています。
その他の注目梅品種:露茜(つゆあかね)
ランキング上位の品種以外にも、個性的な品種が存在します。梅の収穫時期は一般的に6月頃が最盛期ですが、品種によってはそれよりも遅い時期に旬を迎えるものも存在します。その代表的な品種が「露茜」です。露茜は7月上旬から中旬にかけて収穫される晩生品種で、完熟すると果皮が鮮やかな赤色に染まるのが特徴です。この美しい色合いは、梅酒や梅ジュースにした際に見た目にも華やかさを添え、食欲をそそる加工品を生み出します。
青梅を生で食べられない理由:梅に含まれる成分と安全性について
多くの果物がそのまま食べられる一方で、梅、特に青梅は生食に適さないとされています。その理由は、青梅の果肉や種子に「青酸配糖体」という成分が含まれているためです。青酸配糖体は、体内で分解されると青酸を生成し、摂取すると呼吸困難やめまい、吐き気といった症状を引き起こす可能性があります。したがって、青梅を生で食べることは避けるべきです。
しかし、梅干しや梅酒、梅ジュースなどの加工品は安全に楽しむことができます。これは、加工の過程で青酸配糖体が分解されるためです。例えば、漬け込みや加熱といった処理によって、有害な成分が無毒化されます。また、梅が熟していく過程でも青酸配糖体は自然に分解されるため、完熟した梅は生で食べることも可能です。ただし、一般的には完熟梅も加工して食べることが多く、生食する機会は限られています。梅の加工品を安心して楽しむために、青梅の生食は避け、適切に加工されたものを選ぶようにしましょう。
まとめ:個性豊かな梅の産地と品種を堪能しよう
この記事では、日本国内の主要な梅の産地と生産量ランキング、そして各地域で栽培されている代表的な品種について詳しく解説しました。圧倒的な生産量を誇る和歌山県の南高梅はもちろんのこと、群馬県の白加賀や山梨県の甲州小梅など、地域ごとに独自の個性を持つ梅が育てられていることがご理解いただけたかと思います。また、青梅が生のままでは食べられない理由と、その安全性についても深く理解できたことでしょう。
梅は品種や産地によって、酸味の強さやフルーティーな香り、果肉の食感が大きく異なります。これらの違いを意識して、梅酒や梅ジュース、梅干し、カリカリ梅といった様々な加工品を試すことで、梅の奥深い魅力をさらに楽しめるはずです。この記事が、皆様の梅への知識を深め、新しい楽しみ方を見つけるきっかけとなれば幸いです。様々な産地・品種の梅で、その豊かな風味をぜひご堪能ください。
Q1: 日本で一番、梅がたくさん採れる場所はどこですか?
日本で最も梅の収穫量が多いのは和歌山県です。国内の梅の総収穫量の約57.6%を和歌山県が占めており、特にみなべ町や田辺市が梅の主要な産地として知られています。
Q2: なぜ生の梅はそのまま食べることができないのですか?
生の梅の果肉や種には、「アミグダリン」という成分が含まれており、体内で分解される際に有毒なシアン化水素を生成する可能性があります。そのため、生のままでは食べられません。しかし、梅干しや梅酒などの加工過程、あるいは梅が完熟する過程でアミグダリンは分解されるため、加工された梅や完熟した梅は安全に食べることができます。
Q3: 和歌山県を代表する梅の品種は何ですか?
和歌山県では、「南高(なんこう)」と「古城(ごじろ)」が主要な梅の品種として知られています。中でも南高梅は、果肉が厚く、その優れた品質から「紀州南高梅」というブランド名で広く親しまれており、梅干しはもちろんのこと、梅酒や梅ジュースの原料としても重宝されています。一方、古城梅は南高梅よりも収穫時期が早く、主に青梅として梅酒や梅ジュースなどに加工されることが多い品種です。
Q4: 群馬県で多く栽培されている梅の品種とその特徴について教えてください。
群馬県で主に栽培されているのは「白加賀(しらかが)」という品種です。白加賀梅は、実が大ぶりで果肉が厚く、美しい形状をしているのが特徴で、特に梅酒や梅干しといった加工品に適した高品質な品種として高く評価されています。
Q5: 山梨県の「甲州小梅」の特徴と、主な用途は何ですか?
山梨県を代表する品種である「甲州小梅」は、名前が示すように小ぶりな実が特徴です。しかし、小さいながらも果肉はしっかりとしており、主にカリカリ梅として加工され、独特の食感とさわやかな酸味が楽しまれています。