晩秋の味覚として知られる「王秋梨(おうしゅうなし)」は、その希少性から多くの人々を魅了しています。2000年に品種登録されたこの赤梨は、慈梨と二十世紀梨の血を引く「C2」と、大玉の赤梨「新雪」との交配によって誕生しました。晩生種であるため収穫時期が限られ、栽培の手間もかかることから生産量はごくわずか。今回は、そんな王秋梨の魅力と、贈答用としても人気を集める理由を紐解きます。
王秋梨とは?品種と特徴
王秋梨は、2000年に登録された晩生の赤梨です。「おうしゅうなし」と呼ばれ、中国梨の一種である「慈梨」と、鳥取県を代表する「二十世紀梨」を交配した「C2」に、大玉の赤梨「新雪」を掛け合わせて生まれました。晩秋に収穫される希少な品種であり、栽培には、大玉であるが故に台風の影響を受けやすい、受粉作業に手間がかかるなどの理由から、生産量はごくわずかです。外観、味ともに優れており、保存性も高いため、贈答品としても喜ばれています。
青梨と赤梨の違い
梨は大きく「青梨」と「赤梨」の2つのタイプに分けられます。青梨は緑色の皮を持ち、爽やかな甘さが特徴です。対照的に、赤梨は茶色の皮を持ち、豊富な果汁と濃厚な甘さが特徴です。王秋梨は赤梨に分類されます。
見た目の特徴:楕円形と大きなサイズ
王秋梨は、ラグビーボールのような楕円形をしており、一般的な梨(約300g)よりも大きい500g以上の重さになることがあります。これは親品種である「新雪」から受け継いだ特徴です。皮は黄褐色で少しざらつきがあり、「幸水」や「新甘泉」といった他の赤梨と同様です。果肉は白く、柔らかいのが特徴です。手に取った際にずっしりとした重みを感じるものを選ぶと、より多くの果汁を堪能できます。
味の特徴:甘みと酸味の優れた調和
王秋梨は、糖度が14%程度と高く、一般的な梨(12%程度)よりも強い甘味が特徴です。しかし、適度な酸味も含まれているため、甘さが際立ちすぎず、すっきりとした上品な味わいが楽しめます。食感は、赤梨ならではの柔らかい果肉でありながら、「二十世紀梨」から受け継いだシャリシャリとした食感と、たっぷりの果汁も魅力です。「甘さ」「酸味」「食感」「果汁」が見事に調和した、満足感のある品種です。
王秋梨の旬と産地
王秋梨が最も美味しくなる時期は、11月中旬から12月中旬にかけて。中でも、11月下旬頃が出荷の最盛期を迎えます。晩生品種であるため、梨シーズンの締めくくりとして親しまれています。主な産地としては鳥取県が知られ、国内生産量の約4割を占めています。その他、千葉県、大分県、佐賀県など、比較的温暖な地域でも栽培されています。ただし、王秋梨の栽培面積は和梨全体のわずか0.6%とごく僅か。これは、果実が大玉であるため台風の影響を受けやすく、栽培に手間がかかるためです。
王秋梨の保存方法と食べ頃
王秋梨の長持ちする性質も人気の理由の一つです。常温であれば約1ヶ月、冷蔵保存なら約3ヶ月程度の保存が可能です。常温で保存する場合は、暖房の効いていない、直射日光の当たらない涼しい場所(25℃以下)を選びましょう。冷蔵庫に入れる際は、乾燥を防ぐためにポリ袋に入れ、野菜室での保存がおすすめです。収穫直後の王秋梨は酸味がやや強めですが、時間経過とともに酸味が和らぎ、甘みが増してきます。また、果皮の色も青みがかった色から、次第に黄褐色へと変化していきます。食べ頃は、この黄褐色になった頃。味の変化を楽しみながら、ご自身にとって最高のタイミングで味わってみてください。
まとめ
王秋梨は、晩秋に旬を迎える希少な梨であり、その大きさと見た目のインパクト、そして甘みと酸味の絶妙なバランスが特徴です。保存性にも優れているため、贈り物としても喜ばれます。実店舗ではなかなか見かけないかもしれませんが、産地の直売所や一部の百貨店のほか、オンラインの産直サイトなどを利用して手に入れることができます。今年の秋は、ぜひ王秋梨の豊かな味わいを堪能してみてください。
王秋梨はなぜ「美味しくない」と言われることがあるのですか?
一部で「美味しくない」という意見があるのは、個体差や保存状態、そして個人の味覚の違いなどが考えられます。適切に管理された新鮮な王秋梨は、豊かな甘さとシャリシャリとした食感が際立つ、非常に美味しい梨です。
王秋梨の栽培地について
王秋梨は、鳥取県が有名な産地として知られていますが、千葉県、大分県、佐賀県といった地域でも栽培されています。温暖な気候が、その生育に適していると言えるでしょう。
王秋梨の際立った特徴
王秋梨は、晩秋に収穫時期を迎える晩生品種である点が特徴です。また、楕円形で大きなサイズであること、甘さと酸味の絶妙なハーモニー、そして保存性の高さも、他の梨にはない魅力と言えるでしょう。