
オレンジとは?分類と基本情報
オレンジは、ミカン科ミカン属に属する柑橘類の一種です。学術名はCitrus sinensis (L.) Osbeck。英語ではOrange、フランス語でもOrangeと呼ばれます。日本ではオレンジ、別名として甘橙(アマダイダイ)とも呼ばれています。通常「オレンジ」という場合は、「スイートオレンジ」を指し、「ベルガモットオレンジ」や「ビターオレンジ(ダイダイなど)」とは区別されます。
オレンジの起源と歴史
オレンジはインド北東部~東南アジア周辺を原産とし、現在では世界各地で栽培されています。ゲノム配列の解析により、少なくとも300年以上前にポメロ(ザボン)とマンダリンオレンジが交雑して生まれた種間雑種に、さらにマンダリンオレンジが交雑して誕生したと考えられています。スイートオレンジに関する最も古い記録は、紀元前314年の古代中国の文献に残されています。その後、自然発生的な突然変異や、人為的な交配・選抜を経て、現在では多様な品種が栽培され、市場に出回っています。
オレンジの3つのタイプ:普通オレンジ、ネーブルオレンジ、ブラッドオレンジ

スイートオレンジは、バレンシアオレンジが代表的な普通オレンジ、ネーブルオレンジ、そしてブラッドオレンジの3つの主要なタイプに分類できます。バレンシアオレンジの果汁は酸味が強く、絞ったジュースの品質劣化が遅く、加熱しても風味が安定しています。ネーブルオレンジの果汁は、甘味と酸味のバランスが良く、濃厚な味わいが特徴ですが、劣化が早く、加熱すると味が損なわれやすいです。ブラッドオレンジは、アントシアニン色素を含んでおり、果汁が赤い色をしているのが特徴です。
オレンジの旬:季節ごとの品種
バレンシアオレンジは夏の柑橘類、ネーブルオレンジは寒い季節の柑橘類です。外観での見分け方としては、バレンシアオレンジの果頂部は一般的なみかんのように茶色い点がありますが、ネーブルオレンジは丸く、へそのような形状をしています。ブラッドオレンジは、一般的なオレンジと同様にオレンジ色のものと、果皮も赤みが強く表れるものがあります。
オレンジの種類11選:特徴と選び方
オレンジは、多種多様な品種が存在し、それぞれの個性的な風味や旬の時期に応じて様々な楽しみ方ができます。ここでは、特に代表的な11種類のオレンジについて詳しくご紹介します。
バレンシアオレンジ
バレンシアオレンジは、アメリカのカリフォルニア州が発祥の地であり、その名前はスペインのバレンシア地方にちなんでいます。果実の重さは約200〜250gで、甘みと酸味が見事に調和しており、果汁がたっぷり含まれています。収穫には約400日もの時間を要し、同じ木に熟した黄色の果実と、翌年収穫を迎える緑色の果実が同時に実っている様子が見られます。旬は6月中旬~8月にかけてで、冷蔵庫で冷やして食べるのがおすすめです。輸入品が多く流通していますが、国産のバレンシアオレンジは非常に珍しく、市場に出回る量は限られています。
ハムリンオレンジ
ハムリンオレンジは、比較的小さめのサイズで、淡いオレンジ色が特徴です。表面はなめらかで、手触りが良いのも魅力の一つです。果肉も同様に薄いオレンジ色をしており、種が少なく、袋も薄いため、手軽に食べられます。バレンシアオレンジと似た風味を持ちますが、特に糖度が高い点が特徴です。冬から春にかけて市場に出回ります。
福原オレンジ
福原オレンジは、日本で生まれた品種で、さわやかな香りと、甘みと酸味の絶妙なバランスが特徴です。果汁が豊富で、みずみずしい食感を堪能できます。ただし、皮が厚く、手でむきにくいという特徴があるため、カットして食べるのがおすすめです。福原オレンジは、静岡県、長崎県、福岡県などで栽培されています。旬の時期は4月~6月です。
カラカラオレンジ
カラカラオレンジは、南米ベネズエラの地で、ワシントンネーブルオレンジの自然交配によって生まれた希少な品種です。その後、アメリカ・カリフォルニアでも栽培されるようになりました。その特徴は、ピンク色の果肉で、別名「ピンクネーブル」とも呼ばれています。また、皮が容易に剥ける点も魅力の一つです。酸味が穏やかで、高い糖度と豊富な果汁が特徴で、重さは約200g。主に1月~3月にかけて、カリフォルニアから輸入されます。
ワシントンネーブル
ワシントンネーブルは、一個あたり200〜250gほどの大きさです。日本へは明治時代に和歌山県に導入され、その後全国各地へと栽培が広がりました。果皮は鮮やかな濃い橙色で、表面の油胞は小さく、なめらかです。際立つ甘さと豊富な果汁、そして種がないため、非常に食べやすいオレンジとして親しまれています。特にジュースとして利用されることが多いです。主な産地はアメリカのカリフォルニア州ですが、日本国内でも和歌山県をはじめとする柑橘類の産地で広く栽培されています。旬は12月~2月頃です。
白柳ネーブル
白柳ネーブルは、静岡県で誕生した日本生まれのオレンジです。そのルーツはアメリカ産の「ワシントンネーブル」の枝変わりとして発見されたことにあります。昭和初期に加茂氏の農園で見出され、その後、白柳氏によって育成されました。白柳ネーブルの大きな特徴は、その豊かな果汁と、穏やかな酸味、そして際立つ甘みの絶妙なバランスにあります。最盛期は12月下旬~2月下旬にかけてです。
山見坂ネーブル
山見坂ネーブルは、芳醇な香りが特徴で、酸味と甘みが絶妙に調和した、濃厚な味わいが魅力のオレンジです。果肉の質も高く、たっぷりの果汁を含んでいます。一般的なネーブルオレンジと比較して色が濃く、12月初旬~中旬に収穫できる早生品種であるため、その年のうちに味わうことができます。
大三島ネーブル
愛媛県今治市大三島で育まれた大三島ネーブル。その果実は、ひとつ200〜250gと程よい大きさで、鮮やかな色の薄い果皮が印象的です。口に含むと、濃厚な甘みと爽やかな酸味が絶妙なバランスで広がり、奥深い味わいを堪能できます。最も美味しい旬の時期は、晩秋の11月下旬~冬の2月頃までです。
森田ネーブル
静岡県三ヶ日町で生まれた森田ネーブルは、森田要市氏が1976年に発見したワシントンネーブルの突然変異種です。250gほどの大玉で、実がたくさんなるのが特徴です。丸みを帯びた可愛らしい見た目と、薄めの果皮が特徴ですが、少し剥きにくいのでカットして食べるのがおすすめです。果肉はとろけるように柔らかく、酸味が少ないため、際立つ甘さを存分に楽しめます。旬は冬の始まり、12月~1月頃です。
タロッコ
ブラッドオレンジの中でも特に人気を集めるタロッコは、イタリアの地中海沿岸が原産です。比較的大きめの果実で、甘みと酸味のハーモニーが絶妙。特徴的なのは、その見た目。外皮の一部が赤黒く染まり、果肉にはオレンジ色と赤紫色のマーブル模様が現れます。この赤紫色を作り出すのは、ポリフェノールの一種であるアントシアニン。美味しさだけでなく、見た目も楽しめる柑橘です。日本では主に愛媛県で栽培されており、国産のタロッコは2月下旬に収穫され、3月中旬~4月にかけて市場に出回ります。
モロ
モロは、ブラッドオレンジの中でも小ぶりな品種です。その最大の特徴は、果肉の色の濃さ。紫がかった深紅色は、見る者を惹きつけます。果皮も赤く染まりやすく、オレンジと赤の美しいコントラストが見られます。味わいは、甘みと酸味が絶妙に調和し、奥深い風味を醸し出しています。アメリカ・カリフォルニア州産のモロは1月~4月にかけて輸入されますが、近年では愛媛県でも栽培されており、2月中旬~3月上旬頃に味わうことができます。
オレンジとみかんの違い:原産地、外観、風味、香り

温州みかんを代表とするみかんとオレンジは、そのルーツや特性に差異が見られます。みかんは日本が故郷であり、果皮が薄くて柔らかいので、手軽に皮をむくことができます。甘みが際立ち、親しみやすい味わいが魅力です。対照的に、オレンジはブラジルやインドなど海外をルーツとするものが多く、果皮は厚くて硬いため、ナイフなどを用いて皮をむくのが一般的です。オレンジは酸味が強く、爽やかな風味が持ち味です。みかんは比較的小ぶりで扁平な形状をしており、へたが小さく、果皮には光沢があります。果皮の表面の粒は小さく、全体的に滑らかな印象です。オレンジは大きめで丸みを帯びたフォルムで、手に取ると重みを感じられます。見た目の違いはわずかなため、サイズが近いと見間違えることもあるかもしれません。みかんは甘味と酸味のバランスが絶妙で、さっぱりとしたテイストが特徴です。一方、オレンジは甘味と酸味が濃密で、芳醇な香りを放ちます。ジャムやソースなど加工されることも多く、その奥深い風味を堪能できます。
オレンジの選び方:良質なオレンジを見極めるポイント
オレンジを選ぶ際には、果皮にハリがあり、表面がなめらかで油胞が小さいものを選びましょう。また、手に持った時にずっしりとした重みを感じられ、軽く押さえた時に果皮が薄く感じられるものがおすすめです。果皮が厚いものは果肉が小さく、果汁も少ない傾向があります。色の点では、輸入品であれば鮮やかなオレンジ色のものを選び、国産のバレンシアオレンジの場合は、緑色が残る「回青現象」が見られることもあるため、必ずしも完全にオレンジ色でなくても問題ありません。また、一般的に大きいものの方が果肉も大きい傾向にあり、小さいものは果皮が厚いことが多いです。そのため、できるだけ大きいものを選ぶようにしましょう。
オレンジの保存方法:美味しさをキープする秘訣
夏場は乾燥を防ぐために袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存し、冬場は風通しの良い冷暗所に置くだけで大丈夫です。なるべく一週間以内に食べるようにしましょう。
オレンジのカルチェ(房取り)
オレンジの皮をむき、果肉だけを取り出したものがカルチェです。フォークを使って手軽に食べられ、口いっぱいにオレンジの風味が広がり、至福のひとときを味わえます。ヨーグルトに添えたり、ベリー類と一緒にグラスに盛り付ければ、おしゃれなデザートとして楽しめます。また、ケーキのデコレーションにも最適です。
オレンジの房取り手順
4.果肉だけになったら、縦方向に薄皮(じょうのう)に沿ってナイフを入れ、房を取り出します。最初の2房ほどは、房の両側にあるじょうのうの内側に沿ってナイフを入れ、切り出します。3房目以降は、手前のじょうのうをナイフで剥がし、刃先を中心部分に当てて折り返すように差し込むと、果肉を傷つけずにじょうのうと果肉が綺麗に剥がれ、美しい房が取れます。
ネーブルオレンジの剥き方のポイント
バレンシアオレンジは、ジュースや加熱調理に適しており、加工用として重宝しますが、ネーブルオレンジはジュースの劣化が早く、長時間加熱すると苦味が出たり風味が損なわれるため、注意が必要です。そのため、ネーブルオレンジは生食がおすすめです。バレンシアオレンジやブラッドオレンジは、ナイフで皮を剥いた後、じょうのう膜と果肉の間にナイフを入れ、綺麗に房取りして料理のトッピングなどに活用できますが、ネーブルオレンジは丸い形状の中に小さな果房が密集していることが多く、綺麗に房取りするのが難しい場合があります。そのような場合は、スマイルカットにしてから皮と果肉の間にナイフを入れ、皮を剥くのがおすすめです。
オレンジの多様な食べ方:デザート、料理、お酒

オレンジは、ケーキやデザートの材料として広く利用されており、様々な料理に使われています。鶏肉料理をはじめ、肉料理や魚料理のソースとしてもよく用いられます。ミモザやオレンジブロッサムなど、カクテルにもオレンジジュースは欠かせない材料です。特に、搾りたての果汁で作るカクテルは、市販のジュースとは比べ物にならないほど香り高く、格別な味わいです。
オレンジピールの作り方:皮を有効活用
オレンジの皮も無駄にせず、手間をかけて美味しくおしゃれなスイーツに変身させましょう。オレンジピールは、数回茹でこぼして苦味を取り除き、シロップで煮詰めてグラニュー糖をまぶしたり、煮詰めた後に少し乾燥させてチョコレートでコーティングしたりするのが一般的です。国産のオレンジがおすすめですが、輸入オレンジの場合、収穫後の農薬(ポストハーベスト)が気になる場合は、よく洗い、ピーラーやグレーターで表面を薄く削ると軽減に繋がると考えられます。
オレンジの輸入事情:主な原産地
オレンジは輸入品が多いですが、国内でもネーブルオレンジを中心に、バレンシアオレンジやブラッドオレンジなども栽培されています。ただし、バレンシアオレンジは、日本の夏の高温多湿な気候では、一度オレンジ色になった果皮が再び緑色に戻る「回青現象」が起こりやすく、栽培はごくわずかです。輸入オレンジの主な原産地は、オーストラリアやアメリカで、その他、トルコや南アフリカなどからも輸入されています。アメリカ産のバレンシアオレンジは、カリフォルニア州では3月から収穫が始まり、日本へは4月頃~8月にかけて輸入されます。南アフリカ産は9月~10月にかけて、オーストラリア産は11月~2月にかけて多く輸入されます。一方、ネーブルオレンジはオーストラリア産が8月頃~12月頃にかけて、アメリカ産は2月頃~7月頃まで輸入されています。
国内のオレンジ生産量:都道府県別
2021年の特産果樹生産動態等調査によれば、国産オレンジの収穫量は品種によって大きく異なります。バレンシアオレンジは和歌山県での生産がわずか321トン、ネーブルオレンジは広島県、和歌山県、熊本県などで合計3315トン、ブラッドオレンジは愛媛県、香川県、和歌山県を中心に474トンが収穫されています。
回青現象とは?バレンシアオレンジに見られる特徴
バレンシアオレンジは、日本の気候で栽培すると、初夏の強い日差しによって「回青現象」と呼ばれる現象が起こりやすいことが知られています。これは、一度オレンジ色に熟した果実が、再び緑色に戻ってしまう現象です。
国産オレンジの旬な時期と美味しい食べ頃
国産ネーブルオレンジは、12月上旬~下旬にかけて収穫され、貯蔵期間を経て2月~4月にかけて市場に出回ります。タロッコオレンジは2月下旬に収穫され、同様に貯蔵後、3月中旬~下旬にかけて多く出荷されます。
まとめ
オレンジは、豊富な種類、優れた栄養価、多様な利用方法で、私たちの生活を彩る魅力的な果物です。この記事を通じて、オレンジの新たな魅力を発見し、ぜひ毎日の食卓に取り入れてみてください。オレンジを選ぶ際は、この記事でご紹介したポイントを参考に、お好みの品種を見つけて、その美味しさを心ゆくまでお楽しみください。
オレンジと温州みかん、どう違うの?
オレンジは主に海外生まれで、果皮が厚く、カットして食べるのが一般的です。風味は酸味が際立ち、濃厚なのが特徴です。対して、温州みかんは日本生まれ。皮が薄くて手で簡単にむけるのが魅力です。甘みが強く、さっぱりとした味わいが楽しめます。
おいしいオレンジを選ぶ秘訣は?
まず、皮にピンと張りがあり、表面がなめらかで、油胞が目立たないものを選びましょう。手に取ったときに、ずっしりとした重みがあり、軽く押さえたときに皮が薄く感じられるものがおすすめです。色味が濃く、比較的大きなものの方が、果肉がたっぷり詰まっていることが多いです。













