鮮やかな赤橙色の果皮が目を引く「みはやみかん」。その美しい見た目と、とろけるような甘さは、一度食べたら忘れられないほどのインパクトを与えます。実はこの「みはや」、まだ市場に出回る量が少ない、知る人ぞ知る新品種なんです。この記事では、そんな「みはやみかん」の知られざる特徴や、誕生までの秘話を徹底解説。開発者の情熱と、美味しさへのこだわりが詰まった「みはやみかん」の世界へ、ご案内します。

みはやの概要、来歴、品種登録の背景
「みはや」は、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発した、独自の魅力を持つ柑橘です。目を引くのは、その果皮の鮮やかな赤橙色と美しい光沢。早生みかんとして、11月下旬頃に成熟期を迎えます。市場に出回る期間は比較的短く、栽培している生産者もまだ少ないため、広く知られているとは言えないかもしれません。しかし、その外観の美しさに加え、食味の良い早生柑橘を目指して育成された「みはや」には、開発に至るまでの興味深い背景があります。
1998年(平成10年)に、当時の果樹試験場カンキツ部(現在の農研機構果樹茶業研究部門カンキツ研究ユニット口之津研究拠点)において、「津之望」と、みかん型の育成系統である「No.1408」が交配されました。「津之望」は、「清見」と「アンコール」という食味に優れた品種を両親に持ち、また、「中間母本No.1408」も外観と味の良さで知られています。これらの優れた特性が、「みはや」の品質に大きく貢献していると言えるでしょう。
その後、2006年には「カンキツ口之津50号」という系統名が与えられ、カンキツ第10回系統適応性・特性検定試験に供試されました。この試験を経て、2011年には試験成績検討会で新品種候補として認められ、種苗法に基づく品種登録出願が行われました。2012年には「みはや」として品種登録出願が公開され、2014年(平成26年)には、農研機構によって正式に品種登録が完了。こうして、「みはや」は新たな柑橘品種として世に送り出されたのです。
品種名の由来は、その美しい外観から「美」の字、そして早生品種であることから「早」の字を組み合わせて名付けられました。
みはやの際立つ特徴と魅力:外観、食味、栽培特性
「みはや」の果実は、平均的な重さが190g程度の扁球形をしています。ただし、個体差があり、100gから190g程度のものまで見られます。何と言っても最大の特徴は、その果皮の鮮やかな赤橙色と、つややかな光沢です。この特徴的な色と艶によって、他の柑橘類とは一目で区別できるほどの存在感を放っています。果皮の厚さは、温州みかんに比べるとやや厚めですが、手で比較的簡単に剥くことができます。近年の情報では、果皮が薄く滑らかであるとも評価されており、この性質が手軽に剥ける理由の一つとなっています。また、果実の中にあるジョウノウ膜(薄皮)も柔らかいため、そのまま食べても口に残る感じが少なく、非常に食べやすい品種と言えるでしょう。果肉は濃い橙色をしており、果汁が豊富で食味が優れているのが特徴です。酸味が少ないため、甘さをしっかりと堪能でき、祖父母にあたるアンコールの血を引く、独特の芳醇な香りも持ち合わせています。種が少ない傾向にあり、種を気にせずに味わえる点も魅力です。さらに、温州みかんでよく見られる浮き皮が発生しにくいのも、「みはや」の大きな特徴であり、品質の安定性に貢献しています。
農林水産省の品種登録データベースには、「みはや」のさらに詳しい特徴が以下のように記載されています。『果実の形は扁球で、果頂部は平坦、放射条溝や凹環は見られません。果梗部は切平面で、放射条溝は中程度です。果心の充実度は粗く、大きさは小、果実の重さはやや重いとされています。果皮の色は橙赤色、油胞の大きさは大小混合で、密度は疎、凹凸は凸、果面はやや滑らかです。果皮の厚さは薄く、果皮歩合は中程度、剥皮の難易度はやや易しいと評価されています。じょうのう膜の硬さは軟らかく、さじょうの形は中、大きさは中で、さじょう(果肉)の色は濃橙色です。果汁は多く、甘味はやや高く、酸味は低く、香りも豊か、種子数は少ないです。発芽期、開花期はともに中程度、成熟期は極早生で、隔年結果性は中程度、浮皮果や裂果の発生は少なく、貯蔵性は中程度です。出願品種「みはや」は、対照品種である「べにばえ」と比較して種子数が少ない点、成熟期が極早生である点などで区別できます。また、「麗紅」と比較すると、花粉の多少が中程度であること、胚の数が単胚であること、成熟期が極早生であることなどが異なります。』これらの詳細な特徴からも、「みはや」が他の柑橘品種とは一線を画す、独自の優れた特性を持っていることが分かります。
みはやの主な産地、生産量、そして収穫時期と旬
「みはや」の主な産地と生産量に関して、農林水産省が発表している平成30年産特産果樹生産動態等調査によると、主な産地は熊本県と宮崎県です。熊本県では栽培面積が7.7ヘクタール、収穫量が14.5トン、宮崎県では栽培面積2.2ヘクタール、収穫量4.4トンと報告されています。この調査報告書では、この2県のみが「みはや」の産地として具体的に記載されています。しかし、ある年の収穫量データでは、宮崎県が約41トンと最も多く、次いで熊本県が約21トン、佐賀県が約19トンとなっており、地域ごとの生産状況には変動が見られます。農研機構の紹介では、愛知県、熊本県、鹿児島県、福岡県、大分県など、複数の試験地で「みはや」が有望な品種として評価されており、今後これらの地域からの普及と生産拡大が期待されています。実際に、この記事の試食に使用された「みはや」の中には、香川県産(2023年)や愛知県産(2020年)のものも含まれており、2014年に品種登録された比較的新しい品種であることから、今後さらに栽培地域が拡大し、全国各地で産地が増えていく可能性を秘めています。
「みはや」の収穫時期は、一般的に11月20日頃から下旬にかけて行われます。収穫されたばかりの新鮮な「みはや」が市場に出回るのは、およそ11月下旬から1月頃までの期間です。この短い期間が「みはや」の最も美味しい旬であり、消費者がその鮮やかな色と独特の風味を堪能できる貴重な機会となります。ただし、果物の出回り時期は、産地やその年の天候条件などによって変動するため、このデータはあくまで目安として参考にしてください。

みはやの美味しい選び方(見分け方)
「みはや」を選ぶ際には、その特徴的な外観に注目することが大切です。まず、赤みがかった濃いオレンジ色で、色づきが良く、果皮に張りがあるものを選びましょう。「みはや」は浮き皮が発生しにくい品種ですが、触ったときにゴワゴワとした感触のものよりも、滑らかで柔らかさを感じるものの方が、より美味しい状態である可能性が高いです。果皮の艶も鮮度の良い証拠となりますので、全体的に見て美しい外観の「みはや」を選ぶことが、美味しい果実を見つけるためのポイントとなります。
「みはや」の美味しい食べ方と味わいのポイント
「みはや」は、温州みかんに比べると少し皮がむきにくいと感じるかもしれませんが、薄い皮なので手でむくことが可能です。特筆すべきは、薄皮(じょうのう膜)が非常に薄く、柔らかいことです。そのため、薄皮ごと気軽に食べられ、口の中に残る不快感が少ないのが魅力です。果肉はたっぷりの果汁を含み、酸味が控えめで、濃厚な甘さが際立っています。種はほとんどありませんが、まれに入っている場合もあるので、注意してください。アンコールの香りを引き継いだ独特の風味と、甘みと酸味のバランスが、「みはや」の美味しさをさらに引き立てます。
みはやの適切な保存方法
「みはや」を美味しく味わうには、鮮度を保つ保存方法が大切です。基本的には、ポリ袋に入れて涼しい場所か、冷蔵庫の野菜室で保管するのがおすすめです。乾燥を防ぐために、一つひとつを新聞紙などで包んでからポリ袋に入れると、より鮮度を維持できます。乾燥した場所や温度の高い場所に長時間置いておくと、果実の鮮度が落ちやすいため注意が必要です。適切な環境で保存することで、「みはや」のみずみずしい果肉と豊かな香りを長く楽しめます。
まとめ
「みはや」は、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構によって育成され、「津之望」と「No.1408」を親に持つ、2014年に品種登録された新しい柑橘です。目を引くのは、鮮やかな赤みがかった橙色の美しい果皮と、その見た目からは想像できないほどの濃厚な甘さ、そして親品種であるアンコールから受け継いだ特有の香りです。手で簡単に皮がむけ、内側の薄皮も柔らかいため、手間なくそのまま食べられます。収穫時期は11月下旬から始まり、1月頃までの短い期間のみ市場に出回るため、旬の時期にその美味しさを堪能するのがおすすめです。主な産地としては熊本県や宮崎県が知られていますが、近年では栽培地域が広がりつつあります。購入する際には、色の濃さ、ハリ、そして表面の滑らかさを確認し、適切な方法(ポリ袋に入れて冷暗所または冷蔵庫で保存)で保存することで、より長く美味しさを保てます。個体差や産地によって異なる風味を味わうのも、「みはや」ならではの楽しみ方と言えるでしょう。
「みはや」の主な特徴は何ですか?
「みはや」は、鮮やかな赤橙色の果皮と、丸みを帯びた扁平な形が特徴的な柑橘です。酸味が穏やかで、際立つ甘さと、アンコールを彷彿とさせる芳醇な香りが魅力です。また、外皮がむきやすく、内側の薄皮も薄いため、袋のまま手軽に食べられる点も人気の理由の一つです。
「みはや」の旬はいつ頃ですか?
「みはや」の収穫は、一般的に11月20日頃から下旬にかけて最盛期を迎えます。市場に出回る期間は11月下旬から1月頃までと短く、この時期が最も美味しく味わえる旬とされています。
「みはや」の主な産地はどこですか?
農林水産省のデータ(平成30年産)によれば、熊本県と宮崎県が主要な産地として知られています。近年の収穫量を見ると、宮崎県が約41トンで最も多く、次いで熊本県が約21トン、佐賀県が約19トンと報告されています。その他、愛知県、鹿児島県、福岡県、大分県などでも栽培されており、今後さらなる生産量の増加が期待されています。
美味しい「みはや」を見分けるポイントは?
最高の「みはや」を選ぶには、鮮やかな深紅のオレンジ色に着目しましょう。均一に色づき、果皮にピンと張りがあるものがおすすめです。品種特性として浮き皮は少ないですが、果皮を触った際に、ざらつきがなく、滑らかでソフトな感触のものが高品質と判断できます。
「みはや」の最適な保存方法は?
「みはや」を長持ちさせるには、ポリ袋に入れて涼しい暗所、または冷蔵庫の野菜室で保管するのがベストです。乾燥を防ぐために、一つずつ新聞紙などで丁寧に包んでからポリ袋に入れると、より鮮度を維持できます。直射日光や高温多湿な場所での保管は避けましょう。
「みはや」は皮がむきやすい? 種の有無は?
「みはや」は、一般的な温州みかんに比べてやや皮が厚いものの、比較的薄いため手で簡単にむけます。また、薄皮(じょうのう)も柔らかく薄いため、袋ごと気軽に食べられます。種なしの割合が高い品種ですが、まれに種が入っている場合があります。