【種類別】みかん図鑑:特徴、旬、地域ブランドまで徹底解説
冬の食卓を彩るみかん。ビタミンCが豊富で、風邪予防にも効果的な国民的フルーツです。しかし、私たちが普段口にしているみかんは、ほんの一握りの品種かもしれません。実は、みかんは一年を通して様々な種類が栽培されており、それぞれに個性的な特徴があります。この記事では、代表的な品種から珍しい品種まで、みかんの世界を深掘りします。特徴、旬、そして地域ブランドまで、みかんの魅力を余すことなくお届けします。

みかんの多様な品種の世界:100種類を超える柑橘が奏でる豊かな風味

私たちが普段「みかん」と呼んでいるのは、主に温州みかんのことです。しかし、みかんの世界は奥深く、甘さ、酸味、食感など、多種多様な個性を放つ品種が存在します。農林水産省の品種登録情報によると、2023年7月時点で登録されているみかんの品種は107種類以上。この数字からも、みかんの世界の広がりを感じ取れるでしょう。全てを紹介することは難しいですが、この多様性こそが、みかんが年間を通して多くの人々を魅了する理由の一つです。この記事では、特に人気の高い温州みかん、せとか、はるか、いよかん、清見、八朔、じゃばら、ゆら早生、日向夏、紅まどんな、三ヶ日みかんの11種類にスポットを当て、その特徴を詳しく解説していきます。

日本で愛される代表的なみかん品種とその特徴

ここでは、日本各地で広く愛されている、代表的なみかんの品種を厳選してご紹介します。それぞれの品種が持つ、独自の風味、食感、見た目、そして旬の時期を知ることで、みかん選びがさらに楽しくなるはずです。各品種の詳細な情報を通して、あなたにとって最高のみかんを見つけるお手伝いができれば幸いです。

温州みかん:日本の冬を彩る定番品種

温州みかんは、日本で最もポピュラーなみかんとして知られ、そのルーツは鹿児島県にあります。旬の時期が長く、9月上旬から3月下旬頃まで市場に出回ります。収穫時期によって、極早生、早生、中生、晩生の4種類に分けられ、それぞれ異なる旬を迎えます。

一番早く収穫される「極早生温州」は、9月から10月下旬が旬。まだ果皮に緑色が残るものも多いですが、果肉は鮮やかなオレンジ色をしており、酸味が強めですっきりとした味わいを好む方におすすめです。主な品種としては、宮川早生、日南1号、高林早生、上野早生などがあります。次に旬を迎える「早生温州」は、10月下旬から12月下旬にかけてがシーズンで、特に11月中旬から12月上旬が食べ頃です。この時期になるとコクが増し、甘みと酸味のバランスが絶妙になります。果皮もオレンジ色に色づき、極早生に比べて甘みが強く感じられます。

早生みかんは温州みかんの中でも特に人気が高く、甘みと酸味の調和に加え、内側の薄皮が薄くて食べやすいのが特徴です。宮川早生、興津早生、田口早生などが代表的な品種です。12月に入るとさらに甘みが増す「中生温州」は、11月下旬から3月にかけて旬を迎えますが、特に11月下旬から12月頃がおすすめです。酸味が少なく、濃厚な甘さが際立ちます。果皮は濃いオレンジ色で厚く、やや大きめの楕円形をしており、日持ちが良いのも特徴です。石地や南柑20号などが主な品種です。温州みかんの中で最後に収穫されるのが「晩生温州」で、12月中旬から3月頃までが旬です。代表的な品種は青島温州で、その他には十万温州や寿太郎温州などがあります。

晩生みかんは、収穫後1ヶ月程度貯蔵されることで、甘みが増し、酸味がまろやかになります。果皮が厚く、内側の薄皮も厚くなる傾向があります。温州みかんは、産地の名前がブランド名として広く知られているため、品種名を意識する機会は少ないかもしれません。和歌山県、静岡県、愛媛県は温州みかんの主要な産地として有名で、それぞれの地域で個性豊かな温州みかんが栽培されています。

せとか:とろけるような口当たりと奥深い味わいの高級柑橘

せとかは、「清見」と「アンコール」、そして「マーコット」を掛け合わせて誕生した、比較的新しい品種です。生まれたのは平成時代で、その育成地は長崎県口之津町。そこから見える早崎瀬戸の美しい景色と、主な栽培地である瀬戸内地方にちなみ、特徴的な芳香を持つことから「せとか」と名付けられました。せとかの特筆すべき点は、その豊かな香りと、果汁たっぷりで濃密な味わい、そしてとろけるようななめらかな食感です。口に入れるととろけるようで、濃厚かつジューシーな味わいが広がります。外皮が非常に薄く、手で簡単にむけるため、手軽に食べられるのも人気の理由の一つ。市場には主に2月から4月上旬に出回り、特に2月上旬から4月初旬が旬とされ、贈答品としても重宝される高級柑橘として知られています。生産量と流通量が限られている希少品種なので、店頭で見かけた際にはぜひ味わってみてください。

はるか:種から生まれた奇跡、甘さと酸味の絶妙な調和

はるかは、日向夏の種子から偶然生まれた、非常に珍しい品種です。通常、柑橘類は苗木や接ぎ木で栽培されますが、種から育てる実生の場合、親とは全く異なる性質を持つ個体が生まれることがあります。実生では親の特性を受け継がない、あるいは劣るケースが多い中、はるかは実生から生まれた数少ない成功例と言えるでしょう。はるかの見た目は個性的で、表面がごつごつとした厚い外皮を持ち、ヘタの部分には不知火(デコポン)のような突起が見られます。また、ヘタの反対側には丸いくぼみである凹環(おうかん)があるのも特徴です。果肉は酸味が穏やかで、さっぱりとした上品な甘さが際立ち、その絶妙なバランスが多くの人に愛されています。

いよかん:調和の取れた甘酸っぱさが織りなす絶妙なハーモニー

いよかんは、山口県阿武郡東分村(現在の萩市)で偶然発見された柑橘です。発見当初は「穴門(あなと)みかん」と呼ばれていましたが、その後愛媛県での栽培が飛躍的に拡大したため、愛媛県の旧国名である伊予にちなんで「伊予柑(いよかん)」という名前に変わりました。いよかんは、厚めの果皮と、果肉をしっかりと包む内皮が特徴です。そのため、内皮を剥いてから食べるのが一般的です。糖度と酸味が理想的なバランスで調和しており、そのジューシーな風味は幅広い年齢層に親しまれています。特有の香りと濃厚な甘みの中に、心地よい酸味が感じられるのがいよかんの魅力です。

清見:日本初のタンゴール、柑橘界の先駆者

清見(きよみ)は、「トロビタオレンジ」と「宮内早生温州」を交配して生まれた、日本で初めてのタンゴール品種です。「タンゴール」とは、タンジェリン(みかん類)とオレンジを交配した品種群のことで、清見はその先駆けとなりました。この品種は、愛媛県と和歌山県で国内生産量の約8割を占めており、日本の柑橘産業において非常に重要な役割を果たしています。清見の持ち味は、甘みと酸味がほどよく調和していることで、そのバランスの取れた味わいが多くの人々を虜にしています。また、豊富に含まれた果汁も清見の大きな魅力であり、ジューシーな食感を堪能できます。そのさわやかな風味は、そのまま食べるだけでなく、ジュースなどの加工品にも最適です。

八朔:ほろ苦さが魅力の伝統柑橘

八朔は、江戸時代に広島県因島田熊町の恵日山浄土寺で偶然生まれたとされる品種です。名前の由来は、かつて恵日山浄土寺の住職が「八朔には食べられる」と発言したことにあると伝えられています。「八朔」は旧暦8月1日を意味しますが、実際に美味しく食べられる時期は1月中旬から4月下旬。暦とはずれがあります。八朔の特徴は厚い外皮で、ナイフで丁寧にむき、内皮も取り除いて食べるのが一般的です。生産量日本一は和歌山県で、全国の約7割を占めます。果実の重さは300~400gと、柑橘類の中では大きめです。厚い外皮はむきにくく、薄皮も厚いため、袋ごと食べるのには向きません。甘酸っぱさに加え、独特のほろ苦さが感じられるのが八朔ならではの味わいです。そのまま食べるのはもちろん、シロップ漬けやマーマレードにすれば苦味が和らぎ、より美味しくいただけます。

じゃばら:和歌山県北山村原産の「邪払」柑橘

じゃばらは、日本で唯一の飛び地である和歌山県北山村に自生していた珍しい柑橘です。ダイダイ、柚子、カボスなどと同じ香酸柑橘の仲間で、名前の通り、独特の香りと強い酸味が特徴。「邪気を払う」ほどの酸っぱさと言われることもありますが、酸味の中にまろやかさがあり、果汁も豊富で糖度も高めです。種が少ないため、食べやすいのも嬉しいポイント。近年は、じゃばらに含まれる機能性成分に注目が集まっています。近年は、じゃばらに含まれる機能性成分に注目が集まっています。I型アレルギーに関する研究も行われています。健康意識の高い方々からの関心も高まっており、そのままジュースにしたり、料理の風味づけに使ったり、さまざまな加工品としても楽しまれています。

ゆら早生:甘さが際立つ、人気の早生みかん

ゆら早生は、和歌山県由良町で発見された宮川早生の枝変わりで生まれた、極早生みかんです。その特徴は、極早生みかんの中でも特に糖度が高く、品質が良いこと。市場でも人気の高い品種です。収穫時期は9月下旬から11月上旬で、秋の訪れを感じさせてくれます。糖度11度以上のゆら早生は、地元で「ゆらっ子」というブランド名で出荷されており、品質の高さが保証されています。早生みかんらしい爽やかな風味と、しっかりとした甘さのバランスが絶妙で、毎年楽しみにしているファンも多いみかんです。

日向夏:白皮も美味しい、爽やかな柑橘

日向夏は、江戸時代に宮崎市で発見された柚子の突然変異種とされています。宮崎県を代表する特産品で、温州みかんより少し大きい200~250g程度の大きさです。外皮は鮮やかな黄色で、旬は1月から5月頃と比較的長く楽しめます。日向夏の最大の特徴は、果肉の酸味と、果肉を包む白い部分、アルベド(中果皮)の甘さの組み合わせにあります。果肉は酸味が強いものの、アルベドはほんのり甘く、一緒に食べることでバランスの取れた味わいになります。日向夏は、収穫までに1年以上もの時間を要し、収穫時期には来年収穫する実の花が咲きます。黄色い皮を薄くむき、白い中皮を残して食べるのが一般的で、甘みのある白皮と、爽やかな酸味の果肉を同時に味わえます。独特の香りと食感で、生食はもちろん、サラダやデザートの材料としても活用され、柑橘ファンを魅了しています。

紅まどんな:まるでゼリーのような食感が魅力の愛媛県生まれの柑橘

紅まどんなは、愛媛県で生まれたオリジナルの高級柑橘で、南香と天草を交配して作られました。その名前は、夏目漱石の小説「坊っちゃん」に登場するマドンナに由来し、愛媛県を象徴する存在として名付けられました。「媛まどんな」や「瀬戸のまどんな」という名前でも流通しており、その品質の高さが伺えます。紅まどんなの最大の特徴は、ジューシーで濃厚な甘さと、他に類を見ないなめらかな食感です。まるでゼリーを口にしているかのようなとろけるような食感から、「ゼリーのようなみかん」と表現されることもあります。柔らかい果肉と甘さに加え、柑橘ならではの爽やかな香りが特徴です。外皮と内皮が薄くて柔らかいため、手で簡単にむいて食べられる手軽さも人気の理由の一つです。栽培には、外皮がデリケートなため、ビニールハウスなどの施設が用いられています。旬の時期が短く、12月頃にしか味わえない希少性と、愛媛県のみで栽培されているオリジナル品種という点も、その価値を高めています。贈答品としても重宝され、冬のギフトとして大変喜ばれています。

三ヶ日みかん:機能性表示食品として認められた健康を意識したみかん

三ヶ日みかんは、静岡県浜松市三ヶ日町で栽培されている、長い歴史と実績を持つブランドみかんです。日本を代表する三大みかんの一つとして知られ、温暖な気候と肥沃な土壌が育む三ヶ日みかんは、甘みと酸味のバランスが絶妙で、奥深い味わいが特徴です。その優れた品質は広く知られており、多くのファンに支持されています。三ヶ日みかんは、10月から翌年4月頃まで、様々な品種のみかんが生産され、時期によって異なる美味しさを堪能できるのが魅力です。「完熟早生 心」や「青島みかん」などが人気品種として挙げられます。特に注目すべき点は、三ヶ日みかん(JAみっかび)が、2015年8月3日にβ-クリプトキサンチンを機能性関与成分とする生鮮食品として初めて機能性表示食品の届出が受理されたことです。美味しさを楽しみながら健康維持にも貢献できる可能性を秘めていることから、ますます注目を集めています。β-クリプトキサンチンは、みかんの果肉や袋に多く含まれており、日々の食生活に取り入れることで、健康的な毎日を応援してくれるでしょう。

早香:色づきとともに甘さが増す、見た目も楽しい品種

早香(はやか)は、今村温州とポンカンを交配して生まれた品種です。特徴的なのは、橙色の薄い果皮に、油胞(ゆほう)と呼ばれる小さな粒が目立つこと。非常に甘みが強く、食感も良いため、そのまま食べるのがおすすめです。収穫初期はまだ緑がかった色をしていますが、収穫後に追熟させることで、果皮がより鮮やかな橙色に変化します。この色の変化とともに甘みも増し、早香ならではの濃厚な風味が完成します。見た目の変化も楽しめる、魅力的なみかんです。

ポンカン:甘い香りと手軽さが魅力

ポンカンは、インドを原産とする柑橘類で、日本には明治時代に鹿児島県へ伝来しました。外見の特徴は、表面に凹凸がある果皮で、手で簡単に皮がむける点が魅力です。何と言っても、ポンカンの特徴は、甘く豊かな香りです。一度体験すると忘れられないほどの、柑橘ならではの芳醇な香りが広がります。果肉は柔らかく、甘みが強いため、お子様から大人まで、幅広い世代に親しまれています。手軽に皮がむけ、良い香りで、濃厚な甘さを堪能できるポンカンは、冬のデザートやおやつとして楽しまれる品種です。

はるみ:希少な食感とジューシーさ

はるみは、清見オレンジとポンカンを掛け合わせて生まれた柑橘です。果肉は大粒で、口に含むと「ぷちぷち」とした食感が楽しめ、たっぷりの甘い果汁が溢れます。種が少なく、内側の薄皮が薄いため、皮をむいてそのまま食べられる手軽さも人気の理由です。通常は2月~3月頃に店頭で見られますが、はるみは栽培が難しく、生産量が少ないため、市場に出回る量は限られています。その希少さが、はるみの価値を高めており、店頭で見かけた際には味わってみる価値のある柑橘です。

不知火(デコポン):濃厚な甘みと品質の高さ

不知火(しらぬひ)は、ポンカンと清見オレンジを交配して生まれた人気の高い柑橘です。種が少なく食べやすいことに加え、高い糖度が特徴で、多くの人に愛されています。不知火の中でも、糖度や酸度などの厳しい基準を満たし、JAを通じて出荷されるものだけが、高品質なブランド「デコポン」として販売されます。デコポンはその品質の高さから、全国的に知られており、贈り物としても選ばれています。不知火は熊本県が発祥の地であり、生産量も日本一です。ハウス栽培のものは12月頃から、露地栽培のものは2月頃から出回り始め、4月上旬頃まで収穫されます。ある地域では、2月から4月にかけて不知火が収穫され、旬の時期には新鮮な不知火を味わえます。

三宝柑:歴史と上品な味わい

三宝柑(さんぽうかん)は、ダイダイと柚子が自然交配して生まれたとされる、由緒ある柑橘です。江戸時代に和歌山城内、あるいは和歌山藩士の屋敷にあった原木が起源と言われています。名前の由来は、三方という台に載せて殿様に献上されたことにあるとされています。見た目はデコポンのようにゴツゴツとしていますが、果皮は厚く、種が多いのが特徴です。しかし、厚い皮の中には、濃い黄色の果肉が詰まっており、苦味やえぐみが少なく、まろやかな甘さが広がります。その歴史的な背景と独特の風味により、近年再び注目を集めている柑橘です。

甘夏:さわやかな酸味と食感が人気の夏みかん

甘夏は、大分県で育っていた夏みかんの中から、酸味が早く抜ける性質を持つものが偶然見つかり、品種として確立されました。発見された場所であるみかん園の名前にちなんで、最初は「川野夏橙」と呼ばれていましたが、従来の夏みかんよりも甘みが強かったため、後に「甘夏」として広く知られるようになりました。甘夏は、甘酸っぱさとほろ苦さが特徴で、果肉のプチプチとした食感が魅力です。ほどよい酸味と甘さのバランスがとれており、300~500g程度の大きさが一般的です。御浜町では3月から6月にかけて収穫・出荷されますが、全体的な旬は2月~6月下旬と、比較的長い期間楽しむことができます。そのまま食べてもおいしいですが、甘酸っぱさを活かしてデザートに使ったり、サラダのアクセントにしたりと、さまざまな楽しみ方ができる柑橘です。春から初夏にかけて、さっぱりとした柑橘を求める方におすすめです。

セミノール:みずみずしい果汁が魅力のつややかな柑橘

セミノールは、ダンカングレープフルーツとダンシータンゼリンを掛け合わせた品種で、鮮やかなオレンジ色とつやのある表面が目を引きます。見た目の美しさもさることながら、果汁が豊富で、口いっぱいに広がるジューシーさを堪能できます。主な産地は和歌山県、大分県、三重県で、収穫時期は3月から4月です。収穫後、酸味を調整するために一定期間貯蔵され、4月から6月頃に市場に出回ります。貯蔵することで酸味が和らぎ、セミノール本来の甘みとジューシーさが際立ちます。つややかな見た目と濃厚な果汁は、デザートやジュースに最適です。

カラマンダリン:温州みかんのような濃厚な甘さ

カラマンダリンは、温州みかんとキングマンダリンを交配して生まれた品種です。サイズや見た目は温州みかんに似ていますが、最大の特徴は、温州みかんよりも濃厚な甘みと、深みのあるコクです。収穫は3月から4月に行われますが、セミノールと同様に、収穫後に貯蔵庫で寝かせ、酸味を抑えることで甘みがさらに引き出されます。貯蔵期間を経て、4月から5月頃に出荷されることが多く、春の終わりから初夏にかけて、濃厚な甘さを楽しめます。ジューシーさも兼ね備えており、そのおいしさから人気を集めています。

その他、注目の柑橘類:個性豊かな人気品種

温州みかんを筆頭とする代表的な品種以外にも、日本には独自の魅力を持つ多種多様な柑橘類が存在します。ここでは、調味料として利用されるものから、特定の地域で愛されるブランドまで、バラエティ豊かな柑橘類の品種とその特徴をご紹介します。

すだち:食酢の代用から生まれた香酸柑橘

すだちは、果汁が食酢として利用されていたことから名付けられたとされる香酸柑橘です。ハウス栽培されたものは3月~8月、露地栽培されたものは8月~10月に出回り、11月~翌3月までは冷蔵保存されたものが出回るため、年間を通して購入できます。1個あたり約25gの大きさで、ビタミンCやクエン酸などが豊富に含まれており、料理などに果汁を絞ってかけたり、香り付けとして利用されることが多いです。徳島県の特産品であり、ユズやカボスなどと同じ香酸柑橘の一種です。徳島県では「すだちくん」というキャラクターでも親しまれています。

カボス:大分県が誇る、食卓を彩る柑橘

カボスは大分県を代表する柑橘類であり、古くは大分県の竹田地域や臼杵地域において、家庭で薬用として栽培されてきた歴史があります。カボスには、クエン酸やカリウムといった栄養素、そして香りの成分であるピネンやリモネンなどが豊富に含まれています。果実の大きさは1個あたり100~150gと、スダチよりもやや大きめです。旬の時期は8月から10月にかけてですが、3月中旬から8月上旬にかけてはハウス栽培されたものが出回ります。カボスは焼き魚との相性が抜群なことはもちろん、デザートの風味付けに利用したり、カクテルにレモンやライムの代わりに加えても、その風味を存分に楽しむことができるでしょう。

シークワーサー:沖縄生まれの元気の源

シークワーサーは、沖縄県の北部、特に大宜味村で多く栽培されている柑橘類です。その大きさは直径3~4cmほどの小さな球形で、和名ではヒラミレモンと呼ばれています。まだ熟していない青い果実の状態で収穫し、その果汁をポン酢やジュース、様々な料理の調味料として利用することが一般的です。シークワーサーの特徴は、何と言ってもその爽やかな酸味と香りであり、沖縄料理にはなくてはならない存在となっています。近年では、ノビレチンをはじめとする機能性成分が注目を集めており、健康食品としての利用も広がっています。

タンカン:南国の太陽を浴びた、甘みと酸味の絶妙なバランス

タンカンは、鹿児島県や屋久島、奄美大島といった温暖な亜熱帯地域で栽培されています。旬の時期は2月中旬から3月中旬頃で、手で皮を剥いて食べることができますが、他の柑橘類と比べて果皮が少し硬めなのが特徴です。薄皮(ジョウノウ)は薄く、袋ごと食べられるため、手軽に楽しめるのも魅力の一つです。果肉は柔らかく、程よい酸味があり、さっぱりとした味わいが特徴の柑橘です。本土ではあまり流通していないため、希少な柑橘類として知られています。その独特の風味と、暖かい地域でしか育たないという特性から、柑橘通の間ではよく知られた存在として親しまれています。

みかんの主な産地と有名な品種

ここでは、日本における代表的なみかんの産地と、その地域で特に有名な品種について詳しくご紹介します。地域ごとの気候や土壌条件が、みかんの風味や特性に大きく影響を与え、バラエティ豊かなみかんが育まれています。

和歌山県

みかんの生産量が全国トップクラスの和歌山県は、「有田みかん」の名で知られる高品質なみかんの産地です。ここでは、田口早生やゆら早生といった多様な品種が栽培されています。田口早生は、興津早生の枝変わりとして生まれた早生温州みかんで、11月上旬に旬を迎えます。その特徴は、高い糖度と、酸味が比較的早く抜けることです。一方、ゆら早生は、宮川早生の枝変わりとして和歌山県日高郡由良町で発見された極早生品種で、糖度と酸味の絶妙なバランスが魅力です。温暖な気候と長年培われた栽培技術が、和歌山県における高品質なみかんの安定供給を支えています。

愛媛県

全国で2番目にみかんの生産量が多い愛媛県は、「愛媛みかん」として広く親しまれ、その優れた品質は全国的に高く評価されています。特に、宮川早生や南柑20号といった品種が有名です。宮川早生は、福岡県で発見された早生温州みかんで、早生品種の中でも特に多く栽培されています。一本の木からたくさんの実を収穫できる点が特徴です。南柑20号は、愛媛県で生まれた中生みかんです。愛媛県は、豊かな日照時間と温暖な瀬戸内海の気候に恵まれており、甘みと酸味のバランスがとれた、みずみずしいみかんが育ちます。

静岡県

みかん生産量で全国第3位の静岡県では、特に「三ヶ日みかん」が有名です。主な品種としては、青島、興津早生、寿太郎などが挙げられます。青島みかんは静岡県で生まれた晩生みかんで、貯蔵することで甘みが増し、酸味が穏やかになる特徴があります。興津早生は、宮川早生に比べて味が濃く、風味豊かな品種として知られています。静岡県は、温暖な気候と水はけの良い丘陵地が広がり、みかん栽培に最適な環境が整っています。

熊本県

みかんの生産量が全国で4番目に多い熊本県では、肥のあかりや豊福早生といった品種が知られています。肥のあかりは、熊本県が独自に選抜・育成した極早生温州みかんで、平均65gと小ぶりで、果皮が黄緑色の状態で出荷されることが多いです。豊福早生も、熊本県が交配・育成した極早生みかんです。また、熊本県は不知火(デコポン)の発祥の地であり、その生産量は日本一を誇ります。不知火は、高い糖度と豊富な果汁が特徴で、熊本の温暖な気候がその育成を支えています。

まとめ

「みかん」と一言で言っても、その品種は非常に多岐にわたり、それぞれが独自の魅力を持っています。一般的に「みかん」として広く知られている温州みかんをはじめ、本記事で取り上げた「せとか」や「デコポン(不知火)」、健康効果で注目されている「じゃばら」など、その種類は実に豊富です。さらに、すだち、カボス、シークワーサー、タンカンといった香酸柑橘類や、温州みかん以外の品種も、それぞれ異なる特徴と用途を持っています。一年を通して様々な品種を楽しむことができるみかんの世界は、深く知れば知るほどその魅力に引き込まれ、選ぶ楽しみも広がります。本記事でご紹介した各品種の特徴や産地の情報を参考に、ぜひあなたにとって最高の「お気に入りみかん」を見つけてみてください。旬の時期にそれぞれの個性を味わうことで、みかんの豊かな多様性をより深く感じることができるはずです。


みかんの品種はどれくらい存在しますか?

農林水産省に登録されている品種データによれば、2023年7月25日現在、日本国内で登録されているみかんの品種数はなんと107種類にも及びます。甘みが強いものから酸味が際立つものまで、実に多彩な品種があり、それぞれが独自の風味や個性を備えています。

温州みかんはどのような種類に分けられますか?

温州みかんは、収穫時期に応じて大きく「極早生(9月~10月下旬)」「早生(10月下旬~12月下旬)」「中生(11月下旬~3月)」「晩生(12月中旬~3月)」の4つに分類できます。それぞれの種類によって味わいや果皮の特徴、代表的な品種が異なり、長い期間にわたって色々な温州みかんの味を満喫できます。

デコポンと不知火の違いは何ですか?

「不知火(しらぬひ)」は、柑橘の品種名で、ポンカンと清見オレンジを交配させて誕生しました。この不知火の中でも、糖度が13度以上、酸度が1度以下という厳しい基準をクリアし、さらにJAを通じて出荷されるものだけが、「デコポン」という登録商標のブランド名で販売されます。つまり、デコポンは高品質な不知火を指し、不知火は熊本県が原産で、生産量も日本一を誇ります。

じゃばらにはどのような健康効果が期待できますか?

じゃばらは、その独特な香りと強烈な酸味が特徴的な柑橘ですが、近年、その機能性成分に大きな注目が集まっています。特に、花粉症やアトピー性皮膚炎といったI型アレルギーの症状を緩和する効果が期待できるとして研究が進められており、健康意識の高い人々から熱い視線が注がれています。

みかんの生産量が特に多い都道府県はどこですか?

様々な柑橘類の中で、特に生産量が多いのは「温州みかん」です。その主要な産地は、生産量が多い順に和歌山県、愛媛県、静岡県、熊本県となります。これらの地域では、それぞれ独自の品種が栽培されており、高品質なみかんが日本全国へと届けられています。

紅まどんなの希少性が高い理由

紅まどんなは、愛媛県が独自に開発した特別な柑橘です。その栽培の難しさに加え、収穫時期が12月という短い期間に限定されているため、市場に出回る量が限られ、希少価値が高まっています。また、非常にデリケートな果皮を持つため、主にビニールハウスでの丁寧な栽培が不可欠です。

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