【完全版】はす芋(ハスイモ)徹底ガイド:特徴・旬・レシピ・アク抜き方法
はす芋は、独特の食感とあっさりとした風味が魅力のサトイモ科の野菜です。里芋の仲間ですが、食用とするのは根ではなく茎の部分。地域によっては「リュウキュウ」や「芋がら」などの名前で親しまれています。この記事では、これまでなじみの薄かった方にもわかりやすく、はす芋の基本情報から旬の時期、美味しい選び方、調理前の必須作業であるアク抜き方法、そして、日々の食卓を豊かにする簡単レシピまで、余すところなくご紹介します。はす芋の知識を深め、その美味しさを最大限に引き出して、食卓に新たな発見をもたらしましょう。

はす芋(ハスイモ)の基礎知識:特徴、種類、地方名

はす芋は、その独特な性質と食感で、他の野菜とは少し違った存在感を放っています。ここでは、はす芋とはどのような野菜なのか、地域による呼び名と合わせて解説します。

はす芋とは:サトイモ科の葉柄を食する野菜

はす芋は、サトイモ科サトイモ属に分類される多年草です。「ずいき」として知られる野菜の一種で、ハスイモの葉柄は「青ずいき」として流通することが多いですが、一般的な里芋の緑色の葉柄もそう呼ばれることがありますサトイモとは近縁種ですが、明確に区別される点が特徴です。サトイモが地中の芋を食べるのに対し、はす芋は芋があまり大きくならないため食用には適しません。代わりに、長く太い葉柄の部分を食用とします。

「芋茎(ずいき)」としての位置づけ

ハスイモは、食用部分が「芋茎(ずいき)」であることから、一般的にずいきの一種として認識されています。芋茎とは、サトイモ科植物の葉柄の総称であり、ハスイモもその茎を食用とするため、この名前で呼ばれます。特に、鮮やかな緑色から「青ずいき」と呼ばれることも多く、見た目にも爽やかな印象を与える野菜として親しまれています。

里芋との違い:食用部位の独自性

ハスイモと里芋は同じサトイモ科ですが、食用とする部位が異なります。里芋は主に地中の球根を食用とするのに対し、ハスイモは葉柄を食用とします。

驚異的な成長力:茎の長さ80cm、草丈3mにも

ハスイモの大きな特徴の一つは、その旺盛な成長力です。食用となる葉柄は80cmに達し、植物全体の高さは3mに達することもあります。見上げるほど高く伸びる姿は非常に印象的で、熱帯植物特有の生命力に満ち溢れています。この長く伸びた茎が、ハスイモ特有のシャキシャキとした食感を生み出し、食卓に新しい食感をもたらします。

主な原産地と栽培地域:東南アジアから広がる食文化

ハスイモは、主に東南アジアの熱帯地域が原産と考えられており、現在もこの地域を中心に広く栽培されています。タイやベトナムなどの国々では、昔から食文化に深く根付いており、様々な伝統料理に使われています。日本には沖縄県を通じて伝わったとされ、現在では高知県や徳島県などの温暖な地域で特産品として栽培されています。

切り口に現れる「蓮根のような穴」の秘密

はす芋を切ってみると、蓮根のように見える多数の空洞を見つけることができます。この独特な構造こそが、名前の由来であり、調理の際に重要な意味を持ちます。空洞のおかげで、煮物などを作る際、味がしみ込みやすくなり、素材本来の美味しさを存分に味わうことができるのです。さらに、この空洞が、はす芋特有のシャキシャキとした食感を生み出しています。

はす芋の別名:リュウキュウ、はすがら

はす芋は、地域や状況に応じて様々な名前で呼ばれています。これらの別名を知ることは、はす芋が持つ多様な文化的背景や利用方法を知る手がかりとなります。

沖縄由来の名称「リュウキュウ」

はす芋は沖縄から日本本土に伝わったという経緯から、沖縄では昔から「リュウキュウ」という名で親しまれています。この名称は、かつての琉球王国にちなんでおり、はす芋と沖縄の食文化の深い繋がりを物語っています。本土の一部の地域でも、この名前が使われることがあります。

乾燥させた状態を指す「はすがら」

はす芋の葉柄を乾燥させたものは「はすがら」と呼ばれます。「はすがら」という名前は、「ハスイモ」の「はす」と、葉柄の「ヘイ」が変化して「ガラ」になったと考えられています。乾燥させることで保存性が向上し、独特の風味と食感が楽しめる乾物として利用されます。乾物料理の専門家も注目する食材で、生のハす芋とは異なる美味しさがあります。

ずいきとの違いを深掘り

はすいもは、しばしば芋茎(ずいき)の一種として認識されますが、一般的なずいきとはいくつかの点で性質が異なります。これらの相違点を把握することで、はすいもと通常のずいき、それぞれの美味しさをより深く堪能できるでしょう。

一般的な「ずいき」の定義とバリエーション

通常「ずいき」と称されるのは、主に里芋の葉柄を食用とするもので、乾燥させたものは「芋がら」とも呼ばれます。ずいきには、茎の色合いによって、赤ずいき、緑ずいき、白ずいきの3つのタイプが存在します。赤ずいきは、主に八つ頭や赤芽大吉といった品種から、緑ずいきは唐芋や土垂などの品種から、白ずいきはセレベスや京芋などの品種から採取されることが多いです。これらのずいきは、里芋を収穫する際の副産物として得られるのが一般的です。

はすいもの「青ずいき」としての独自性

はすいもは、その鮮やかな緑色から「青ずいき」の一種として分類されることもありますが、植物学上は里芋とは異なる品種です。これは、里芋の品種改良によって茎を食用とするために栽培されるようになったずいきとは異なる点です。はすいもは、芋を食用とするために栽培された里芋の葉柄を流用するずいきとは異なり、最初から茎を食べることを目的として栽培されるため、茎がより太く、長く成長し、シャキシャキとした独特の食感が特徴です。

栽培目的の違いが生み出す特性の差

里芋のずいきは、里芋の収穫が主な目的であり、その副産物として葉柄が活用されます。そのため、葉柄の品質は品種や栽培方法に大きく左右されます。一方、はすいもは茎の品質を最重要視して栽培されるため、食用に適した品質の茎が安定的に生産されます。この栽培目的の差が、はすいも特有の食感や風味を際立たせる要因となっています。

ハスイモの旬・産地と選び方

ハスイモを堪能するには、旬の時期や主な産地を把握し、より新鮮なものを選ぶことが大切です。ここでは、ハスイモの旬、主要な産地、そして購入する際に役立つ選び方のコツをご紹介します。

旬の時期:夏から秋、高知では一年中収穫

ハスイモの旬は、栽培方法によって多少異なりますが、一般的には夏から秋にかけてが最盛期です。この時期に収穫されるハスイモは、風味と食感が際立っていると言われています。

露地栽培の旬:夏の終わりから秋口(7月~9月)

露地栽培のハスイモは、夏の強い日差しを浴びて成長し、7月から9月頃に収穫時期を迎えます。この時期のハスイモは、太陽の恵みをたっぷり受けて育つため、格別なシャキシャキ感があります。自然のサイクルに合わせた栽培のため、収穫量には限りがあります。

ハウス栽培による周年供給:高知県の取り組み

国内有数のハスイモ産地である高知県では、ハウス栽培が積極的に行われています。これにより、天候に左右されずに安定した生産が可能となり、一年を通してハスイモが市場に出回っています。特に高知県は、ハスイモが名産品として知られており、常に新鮮なハスイモを味わえるのは、このような栽培技術の発展のおかげです。

主な産地:高知県と徳島県が有名

はすいもの主な産地として知られているのは、温暖な気候が特徴的な高知県と徳島県です。特に高知県は、はすいもの特産地として広く知られており、栽培が盛んに行われています。

国内栽培の中心地:高知県

はすいもの国内有数の産地として知られる高知県。その温暖な気候と豊かな自然環境が、はすいも栽培に非常に適しています。県内では多くの農家がはすいもを栽培しており、地域に根ざした食材として、様々な郷土料理にも利用されています。地元のスーパーや道の駅では、新鮮なはすいもを気軽に購入することができます。

四国地方のもう一つの主要産地:徳島県

徳島県もまた、高知県と並び、はすいも栽培が盛んな地域です。温暖な気候と豊富な水資源に恵まれ、品質の良いはすいもが生産されています。徳島県産のはすいもは、地元の食文化に深く根付いています。高知県と徳島県は協力して、はすいもの魅力を全国に発信する取り組みも行っています。

新鮮なはすいもの選び方

美味しいはすいもを選ぶには、いくつかの重要な点があります。購入する際は、以下のポイントに注意して、新鮮で良質なはすいもを選びましょう。

鮮やかな緑色とハリのある表皮

良質なハスイモは、その外皮が鮮やかな緑色を帯びており、全体にピンとした張りがあります。もし色がくすんでいたり、しなびているようであれば、鮮度が低下していると考えられます。傷や色の変化がないかを確認することも重要です。みずみずしい見た目のものを選ぶことが、おいしさを引き出すためのポイントです。

断面の鮮度:白さが決め手

ハスイモは、茎の切り口から酸化が進みやすいという特性があります。そのため、購入する際には必ず切り口の色をチェックしましょう。新鮮なハスイモは、切り口が白く、濁りがありません。収穫から時間が経過したものは、切り口が茶色っぽく変色していることが多いので、避けるようにしましょう。切り口が乾いているものも鮮度が落ちているサインです。

保存方法と日持ち:購入後は速やかに使い切る

ハスイモは、切断面から酸化が進むため、保存があまりきかない野菜です。購入後は、できるだけ早く(目安として2~3日以内)調理して食べるようにしましょう。保存する際は、乾燥を防ぐために湿らせたキッチンペーパーなどで包み、冷蔵庫の野菜室で立てて保存するのがおすすめです。鮮度が低下すると、食感や風味が落ちてしまうため、できるだけ早く調理しましょう。

ハスイモの味と食感:あっさりとした味わいで様々な料理に

ハスイモの特筆すべき点は、そのさっぱりとしていてクセのない風味と、独特のシャキシャキ感です。これらの特性から、日本料理から西洋料理まで、多様な料理に活用できます。ここでは、ハスイモの風味と食感、そしておすすめの調理方法について詳しく解説します。

どんな味?:クセがなく、素材の旨味を活かす

はす芋の味はとてもあっさりとしており、際立った風味やえぐみはありません。このあっさりとした特徴が、他の食材や調味料の持ち味を損なわず、むしろ際立たせる効果があります。そのため、様々な味付けと相性が良く、色々な料理でその存在感を発揮します。

淡泊な風味が広げる料理の幅

はす芋の淡泊な風味は、素材本来の味を堪能できるシンプルな調理法から、しっかりとした味付けの料理まで、様々なジャンルに適用できる万能性を持っています。素材の風味を大切にしたい和え物や、出汁の旨味をじっくりと味わいたい煮物など、調理方法によって異なる魅力を発揮します。

優れた味の吸収力で、出汁や調味料が染み渡る

はす芋は、断面に見られる蓮根に似た空洞構造により、出汁や調味料を非常に良く吸い込みます。そのため、煮物や汁物では、はす芋の内側までしっかりと味が浸透し、奥深い味わいを堪能できます。この優れた味の吸収力は、料理の美味しさをより一層引き立てる重要なポイントとなります。

特徴的な食感:心地よいシャキシャキ感

はす芋のもう一つの大きな魅力は、あの独特のシャキシャキとした食感です。この食感は、生のままでも加熱しても味わうことができ、料理に楽しいアクセントを加えます。

生のまま味わう、清涼感あふれるシャキシャキ食感

丁寧に下処理されたハスイモは、生の状態で食すことで、そのみずみずしさと心地よい歯触りをダイレクトに堪能できます。サラダや和え物といった、加熱しない調理法においては、この小気味良い食感が風味のポイントとなり、献立全体のクオリティを向上させます。

熱を加えても損なわれないクリスピーな食感

ハスイモの特筆すべき点は、加熱調理を経ても、その特徴的なシャキシャキ感が失われにくいことです。炒め物や煮物、お味噌汁など、火を通す料理に使用した場合でも、固有の歯ごたえが維持され、食卓に奥行きをもたらします。煮崩れしにくく、程よい噛み応えがあるので、満足感も得られます。

おすすめの味わい方:和風から洋風までバリエーション豊かに

あっさりとした風味と軽快な食感を併せ持つハスイモは、実に様々な調理法で堪能できます。ここでは、特に推奨する味わい方を具体的なメニュー例と合わせてご紹介します。
シャキシャキ感がたまらない炒め物
ハスイモは、キンピラなどの炒め料理との相性が抜群です。ごま油で炒め、醤油やみりん、お砂糖などで甘辛く味を調えることで、ハスイモの持ち味である軽やかな食感と上品な風味が際立ちます。他のお野菜やお肉と一緒に炒めても美味しくお召し上がりいただけます。
煮物やお吸い物:味がしみ込んで美味
はす芋は、煮物やお味噌汁に入れると、独特の空洞に味がしっかり染み込み、とても美味しくなります。鶏肉や油揚げと一緒に煮込むと、それぞれの素材の旨味がはす芋に凝縮され、どこか懐かしい家庭的な味わいになります。時間をかけて煮込むことで、はす芋本来の自然な甘みが引き出されるのが特徴です。
酢の物や和え物:さっぱりといただける
さっぱりとした風味を味わいたい時は、酢の物や和え物がおすすめです。下処理として茹でて軽くアク抜きしたはす芋を、お酢や醤油、砂糖などでシンプルに和えるだけで、清涼感のある一品が完成します。辛子マヨネーズや酢味噌で和えても美味しく、はす芋の心地よい歯ごたりのアクセントが楽しめます。
サラダ:フレッシュな食感が魅力
生のまま食せるはす芋は、サラダの材料としても最適です。薄切りにして水にさらし、しっかりと水気を切ってから、他の野菜やドレッシングと混ぜ合わせます。シャキシャキとした食感がサラダ全体にみずみずしい風味と、心地よい食感の変化をもたらします。
天ぷら:風味と食感を閉じ込めて
はす芋は天ぷらにしても美味しくいただけます。薄く衣を付けて手早く揚げることで、はす芋のあっさりとした風味と軽快な食感が衣の中に閉じ込められ、アツアツで香ばしい一品となります。お塩や天つゆでシンプルに味わうのがおすすめです。
お肉と一緒に炒めたり、すき焼きの具材としても
ハスイモはお肉との相性も良い食材です。例えば、牛肉と一緒に炒め物にする際は、お酢、お醤油、みりんなどを使って味付けをすると、ハスイモのシャキシャキとした食感が、牛肉の美味しさをより一層引き立ててくれます。また、すき焼きの具材として加えても美味しくいただけます。ハスイモが煮汁を吸い込み、お肉や他の野菜と合わさって、豊かな味わいを楽しむことができます。

ハスイモの下処理とアク抜き方法を詳しく解説

ハスイモはアクが強い野菜なので、調理をする前にしっかりとアク抜きを行うことが、美味しくいただくための大切なポイントです。きちんと下ごしらえをすることで、ハスイモ本来の風味と食感を最大限に活かすことができます。ここでは、アク抜きをする前の準備から、具体的なアク抜きの手順までを詳しくご説明します。

下処理の準備:手袋を使って肌への刺激を抑える

ハスイモの皮をむく際、体質によっては手に痒みを感じることがあります。これは、サトイモ科の植物に含まれているシュウ酸カルシウムという成分が原因です。下処理を行う前に、手袋を着用するなど、あらかじめ対策をしておくことをおすすめします。

シュウ酸カルシウムによる刺激について

サトイモ科の植物には、ごく小さな針状のシュウ酸カルシウムの結晶が含まれており、この結晶が皮膚に触れると刺激となって、痒みを引き起こすことがあります。この刺激には個人差があり、特に肌がデリケートな方は注意が必要です。加熱により刺激は弱まる(食べやすくなる)が、シュウ酸カルシウムの針状結晶自体が完全に消失するわけではないため、十分な加熱と適切な下処理が必要。(出典: 山本三郎ほか「ヤマノイモのシュウ酸カルシウムの針状結晶について」家政学雑誌 25巻1号, 1974, URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1951/25/1/25_1_27/_pdf, 1974-01-01)

ビニール手袋の使用をおすすめ

はす芋の皮むき作業では、使い捨てのビニール手袋やゴム製の手袋の使用を推奨します。これは、シュウ酸カルシウムという成分が肌に触れることで起こる、かゆみの発生を抑えるための予防策です。もし手袋がない状況であれば、調理後速やかに石鹸を用いて丁寧に手を洗いましょう。

皮の剥き方:手軽に手で剥ける

はす芋の表面の皮は、見た目とは異なり、意外と簡単に手で剥くことが可能です。適切な手順で皮を剥くことで、下ごしらえの時間を短縮できます。

外側の硬い皮を手で剥がす方法

はす芋の皮を剥く際は、まず外側の硬い部分を少し指でめくり、そこから縦方向にゆっくりと引っ張るように剥いていくと、比較的スムーズに剥がれます。バナナの皮を剥くようなイメージで、手で丁寧に剥いていきましょう。包丁の使用も可能ですが、手で剥く方がより手早く、安全に進められる場合があります。

変色部の除去と太い部分のカット

皮を剥いた後に、切り口や表面に色の変わった部分があれば、包丁で丁寧に切り取ってください。変色している部分は、鮮度が低下していたり、風味が損なわれている可能性があるためです。また、葉柄が太すぎる場合は、調理しやすいように縦半分にカットしておくと良いでしょう。これにより、アク抜きや調理の際の作業性が向上します。

失敗しないあく抜き術3選

はす芋は特有のえぐみを持つため、美味しくいただくには、下ごしらえとして丁寧にあく抜きを行うことが欠かせません。あく抜きをせずに調理すると、独特の苦味が残ったり、食感が損なわれたりする可能性があります。ここでは、ご家庭で簡単にできる、はす芋のあく抜き方法を3つご紹介します。はす芋は、ものによってはあくが少ない場合もありますが、しっかりと処理することで、より美味しく食べられます。

①塩もみで生の食感を味わうあく抜き

この方法は、はす芋をフレッシュな状態で味わいたい時や、シャキシャキとした歯ごたえを活かしたい料理に最適です。塩もみをすることで、余分な水分が抜け、心地よい食感を引き出すことができます。
手順とポイント
まずは、皮をむき、薄くスライスしたはす芋に、少量の塩(小さじ1/2弱)をまんべんなくふりかけます。優しくもみ込むようにして塩をなじませ、そのまま5分ほど置いてください。その後、はす芋から出た水分をしっかりと絞ります。この工程により、はす芋に含まれる水分が程よく抜け、生の状態で食べた時のパリッとした食感が際立ちます。水分をあまり必要としない、サラダや和え物などの料理にぴったりです。

②水に浸すだけの簡単あく抜き

こちらは、数あるあく抜き方法の中でも、特にシンプルで手軽なやり方です。はす芋のあくは比較的弱めなので、この方法でも十分に効果を期待できます。
手順と目的
薄く切ったはす芋は、たっぷりの冷たい水に10分から30分ほど浸けておきましょう。特に塩水や酢水を使う必要はありません。水に浸けることで、アクの成分が水に溶け出し、はす芋独特のえぐみが軽減されます。生のままシャキシャキとした食感を活かしたい料理にもおすすめですが、時間がない時にも手軽にできる方法です。ただし、浸けすぎると風味や栄養が失われることがあるので注意が必要です。途中で何度か水を交換すると、より効果的にアクを抜くことができます。

③さっと茹でて煮物や保存に役立てるアク抜き

この方法は、はす芋を煮物に使いたい時や、まとめて下処理をして保存したい場合に最適です。茹でることでアクがしっかりと抜け、調理時間も短縮できます。
茹でる手順とポイント
まず、皮をむき、鍋に入る大きさに切ったはす芋を用意します。鍋にたっぷりの水を入れ、沸騰させたら、切ったはす芋を加えます。茹でる際は、はす芋が浮いてこないように箸で押さえるか、落とし蓋を使うのがコツです。沸騰したお湯で1分から2分程度、軽く茹でます。茹ですぎると食感が悪くなるので気をつけましょう。
冷水での処理と水切り
茹で終わったら、すぐにザルにあげて冷水にさらし、粗熱を取って色止めをします。冷水にさらすことで、はす芋の美しい緑色が保たれ、シャキシャキとした食感が保たれます。十分に冷えたら、軽く水気を絞り、キッチンペーパーなどで丁寧に水分を拭き取ります。この下処理をすることで、煮物にした際に味が染み込みやすくなり、調理が楽になります。また、アク抜きのために茹でたはす芋は、冷蔵庫や冷凍庫で保存することも可能です。
補足:下処理としての酢水漬け
はすいもの下ごしらえとして、皮を剥いて食べやすい大きさに切った後、酢を加えた水に約1時間浸す方法もあります。酢にはアクの成分を中和する働きがあり、より丁寧なアク抜きが可能です。アクの強さが気になる場合は、この方法を試してみることをおすすめします。

はすいもを堪能!おすすめ絶品レシピ

独特の風味とシャキシャキした食感が特徴のはすいもは、幅広い料理に活用できます。ここでは、はすいもの美味しさを最大限に引き出す、おすすめのレシピをご紹介します。

ほっこり優しい味わい:はすいもと油揚げの煮物

はすいもと油揚げの煮物は、シンプルながらも素材の味が楽しめる一品です。はすいものさっぱりとした風味と、油揚げの豊かなコクが絶妙に調和し、どこか懐かしい味わいです。出汁をたっぷり吸ったはすいもは、ご飯のお供にぴったりです。

材料(2人前)

  • はすいも:200g
  • 油揚げ:1枚
  • だし:200ml
  • 醤油:大さじ2
  • みりん:大さじ2
  • 砂糖:大さじ1
  • サラダ油:少量

作り方

  1. 前述の方法で下処理とアク抜きを行ったはすいもを、食べやすいサイズにカットしてください。
  2. 油揚げは、熱湯をかけて油分を取り除き、細切りにします。
  3. 鍋に少量油をひき、はすいもを軽く炒めます。
  4. だし、醤油、みりん、砂糖を加え、油揚げも投入します。
  5. 落とし蓋をし、弱火でじっくりと10~15分ほど煮込み、はすいもにしっかりと味を染み込ませます。
  6. 火を止め、しばらく置いて味をなじませれば完成です。
アク抜きを丁寧に行うことが重要です。時間をかけて煮込むことで、はすいもと油揚げに味が深く浸透し、やさしい風味が楽しめます。

ボリューム満点:肉との炒め物

はすいもは、お肉との組み合わせも最高です。独特の食感が、お肉の旨味を引き立て、満足感のある一品に仕上がります。ご飯のお供にも、晩酌のおつまみにもぴったりです。

材料(2人分)

  • はすいも:200g
  • 牛肉(薄切り、または切り落とし):150g
  • ごま油:大さじ1
  • にんにく(みじん切り):1かけ
  • ★醤油:大さじ2
  • ★みりん:大さじ2
  • ★酢:大さじ1
  • ★砂糖:小さじ1
  • 白いりごま:お好みで

作り方

  1. はすいもは下処理とアク抜きを行い(水に浸すか茹でる)、食べやすい大きさにカットします。
  2. 牛肉も食べやすい大きさに切りましょう。★の調味料は事前に混ぜておきます。
  3. フライパンにごま油をひき、にんにくを炒めて香りを引き出したら、牛肉を加えて炒めます。
  4. 牛肉の色が変わったら、はすいもを加え、さらに炒め合わせます。
  5. はすいもに火が通ったら、混ぜておいた★の調味料を加え、全体を絡めるように炒めます。
  6. 器に盛り付け、仕上げに白いりごまを散らせば完成です。
お酢を加えることで、後味がさっぱりとして、はすいもの食感がより一層際立ちます。すき焼きの具材としてもおすすめです。はすいもが煮汁を吸って、お肉や他の野菜と一体となり、奥深い味わいを生み出します。

素材本来の味を堪能:生のまま味わう酢の物、お浸し、和え物

はすいもは、生のままでも美味しくいただけます。生のまま調理することで、独特のシャキシャキとした食感と、かすかな甘みが際立ちます。加熱しない調理法は、はすいもが持つ水分と風味を損なわずに、その魅力を最大限に引き出します。

シンプルだからこそ美味しい:はすいもの酢の物

下ごしらえとして、塩もみをするか水にさらし、しっかりと水気を絞ったはすいもを、きゅうりやわかめなどの身近な食材と甘酢で和えるだけの簡単な一品です。はすいもの心地よい歯ごたえと、甘酢のさっぱりとした酸味が食欲をそそります。仕上げに、細かく刻んだ生姜を添えれば、より風味豊かに楽しめます。

出汁の風味が染み込む:はすいものお浸し

軽く茹でてアクを取り除いたはすいもを、冷水で冷やし、水気を切ったら、薄味の出汁醤油に浸します。はすいもがあっさりとした味わいのため、出汁の旨味がよく染み込み、上品な味わいのお浸しになります。仕上げに、かつお節を添えると、さらに美味しくなります。

無限の可能性:はすいもの和え物

茹でてアク抜きしたはすいもは、様々な調味料と組み合わせて和え物にすることができます。特におすすめなのは、「辛子マヨネーズ和え」や「酢味噌和え」です。辛子マヨネーズは、はすいもの食感とマヨネーズのまろやかさが絶妙にマッチし、酢味噌は、さっぱりとしながらも奥深い味わいが楽しめます。さらに、ツナやカニ風味かまぼこ、他の野菜などと一緒に和えることで、和え物のバリエーションはさらに広がります。

乾燥はすいも(はすがら)の活用術

フレッシュなはす芋だけでなく、乾燥させた「はすがら」も、独特の風味と食感が楽しめる優秀な食材です。乾物料理のエキスパートもおすすめする「はすがら」の魅力と、その活用方法をご紹介いたします。

はすがらとは:はす芋を乾燥させた保存食

はすがらとは、新鮮なはす芋の葉柄を丁寧に下処理し、天日で乾燥させたものです。里芋の葉柄を乾燥させた「芋茎(ずいき)」とは異なりますが、ずいきの一種として「緑ずいき」と呼ばれることもあります。乾燥させることで長期保存が可能になる上、生の時とは違った濃縮された旨味と、独特の食感が生まれます。

乾燥食品ならではの凝縮された旨味と食感

乾燥させる過程で、はすいもの旨味成分が凝縮され、他にはない奥深い味わいが生まれます。また、生の時のシャキシャキとした食感とは異なり、しなやかでいて、しっかりとした歯ごたえのある食感が特徴です。乾燥食品特有の香ばしい風味も加わり、料理の味わいを豊かにしてくれます。

はすがらの準備と調理方法

乾燥はすがらも、生のハスイモと同様に丁寧な準備が大切です。しかし、一般的なずいきと比較してアクが少ないため、比較的容易に調理に取り入れることができます。

下ごしらえ:水戻しと下茹で

乾燥状態のはす芋(はすがら)を調理する際は、最初にたっぷりの水で戻す作業が必須です。完全に柔らかくなるまで、数時間~一晩を目安に水に浸けてください。水で戻したはすがらは、通常のずいきに比べてアクは少ないとされていますが、より美味しくいただくために、下茹でを行うことをおすすめします。沸騰したお湯で2~3分程度さっと茹でた後、冷水にさらし、しっかりと水気を絞ってから調理に使用しましょう。生のハスイモの皮を剥く際に手袋を使用する方もいるほどですので、下茹でをすることで安心感が増します。
生のまま味わう:お浸しや和え物
水で戻し、軽く下茹でしたはす芋は、シャキシャキとした独特の食感が残り、かすかな甘みが感じられます。この食感を活かして、そのままお浸しとして、あるいは、辛子マヨネーズで和えたり、定番の酢の物や酢味噌和えにしても美味しくいただけます。乾燥させていたとは思えないほどの新鮮な味わいが楽しめるでしょう。
加熱調理で楽しむ:炒め物や鍋物に
はす芋は、生のハスイモと同様に加熱調理にも適しています。特におすすめなのは、お肉と一緒に炒め物にする調理法です。例えば、牛肉と一緒に炒め、お酢、醤油、みりんなどで味付けをすると、はす芋が調味料をしっかりと吸い込み、ご飯が進む一品になります。また、すき焼きの具材として加えるのもおすすめです。はす芋が肉や他の野菜の旨味を吸収し、より豊かな風味になります。乾物料理に精通している料理家も、その美味しさに「普段はあまり食に関心のない家族も、おかわりをするほどだった」と絶賛しています。

まとめ

はすいもは、サトイモ科に属するユニークな野菜で、通常の里芋とは異なり、根ではなく、長く伸びた葉柄(茎)を食用とするのが特徴です。「リュウキュウ」という別名や、乾燥させた「はすがら」という名前でも知られています。その断面に見られる蓮根のような空洞と、シャキシャキとした食感が魅力です。クセがなく淡白な味わいは、きんぴら、酢の物、煮物、サラダ、炒め物など、様々な料理に活用できます。主な産地は高知県と徳島県で、旬は夏から秋にかけてですが、高知県ではハウス栽培によって一年を通して楽しむことができます。新鮮なはすいもを選ぶ際は、鮮やかな緑色でハリがあり、切り口が白いものを選ぶと良いでしょう。調理する際には、手袋を着用して痒みを防ぎ、皮を剥いた後、塩揉み、水にさらす、茹でるなどの方法で丁寧にアク抜きをすることが、美味しく調理する秘訣です。この記事を通して、はすいもの魅力をより深く知っていただき、日々の食卓に新しい美味しさを加えていただけたら幸いです。

はすいもとずいき、里芋は同じもの?それぞれの違い

はすいも、ずいき、里芋はいずれもサトイモ科に属する植物ですが、明確な違いがあります。里芋は地中で育つ芋(塊茎)を食用とするのに対し、はすいもは長く伸びた葉柄(茎)部分を食用とします。ずいきは、一般的に里芋の葉柄を指す名称であり、はすいもも「青ずいき」の一種とされることもありますが、植物分類上は里芋とは異なる種類として扱われる場合があります。はすいもは、その茎を美味しく食べるために品種改良されているため、茎が太く、より良い食感が特徴です。

はすいもはどこで購入できる?

はすいもは、主に高知県や徳島県といった地域で盛んに栽培されており、これらの産地の直売所や地元のスーパーマーケットなどで新鮮なものが手に入りやすいでしょう。特に高知県では、ハウス栽培も積極的に行われているため、年間を通して市場に出回ることがあります。その他、一部の百貨店やオンラインショップでも購入が可能です。旬の時期(7月~9月頃)には、一般的なスーパーマーケットでも見かける機会が増えることが期待できます。

はすいものアク抜きは必須?その理由

はすいもには、サトイモ科植物に共通する成分であるシュウ酸カルシウムなどが含まれており、これがアクの主な原因となります。アク抜きをせずに調理した場合、独特のえぐみや苦味が残り、口に不快感が残ることがあります。また、食感も損なわれる可能性があります。適切なアク抜きを行うことで、はすいも本来のさっぱりとした風味と心地よい食感を最大限に引き出すことができます。

はすいもは生のまま食べられる?

はい、はすいもは生の状態で食べることが可能です。ただし、生で食す場合は、丁寧なアク抜きが不可欠です。薄くスライスした後、塩もみしたり、たっぷりの水に浸けたりといった方法でしっかりとアクを抜くことで、あの独特のシャキシャキとした食感を堪能できます。サラダや和え物など、加熱しない料理に最適です。

ハスイモの保管方法について

ハスイモは、切断面から変色しやすく、保存期間が短い野菜です。購入後はなるべく早く(2~3日を目安に)調理して食べるのがおすすめです。保存する際は、乾燥しないように新聞紙などで包んで、冷蔵庫の野菜室に立てて保存すると鮮度を維持できます。下処理としてアク抜きをしたものは、水気をしっかり切って密閉できる容器に入れ、冷蔵庫で数日保存できます。また、茹でたものを冷凍保存することも可能です。

乾燥ハスイモ(はすがら)の戻し方は?

乾燥ハスイモ(はすがら)を戻すには、たっぷりの水に浸けて数時間から一晩置いてください。完全に柔らかくなったら、軽く水洗いし、気になる場合は沸騰したお湯で2~3分茹でこぼすと、より美味しくなります。茹でこぼした後は冷水にさらして冷まし、水気をよく絞ってから調理に使用します。水で戻したハスイモは、生のハスイモと同様に、煮物や炒め物、和え物など、様々な料理に使えます。

ハスイモに触ると手が痒くなるのはなぜ?

ハスイモを生で触ると手が痒くなるのは、サトイモ科の植物に含まれるシュウ酸カルシウムという成分の小さな結晶が皮膚を刺激することが原因です。この刺激には個人差があり、特に敏感な方は痒みを感じやすいです。下処理をする際は、ビニール手袋やゴム手袋を着用して、直接肌に触れないようにすることで、痒みを防ぐことができます。万が一、痒みを感じた場合は、すぐに石鹸で丁寧に洗い、お酢を水で薄めたもので拭くと症状が和らぐことがあります。


はす芋 とは