春の訪れを告げる柑橘、清見オレンジ。その果汁たっぷりの甘酸っぱい味わいは、一度食べたら忘れられない魅力を持っています。甘みと酸味のバランスが良く、種が少ないため、子どもから大人まで幅広い世代に人気があります。この記事では、清見オレンジのルーツや、とろけるような食感を味わえる食べ方をご紹介します。清見オレンジを余すことなく堪能できる情報が満載です。さあ、清見オレンジの世界へ飛び込みましょう!

清見オレンジとは?日本生まれのタンゴールのルーツと物語
2月中旬頃からお店で見かける清見(きよみ)。「清見オレンジ」または「清見タンゴール」という名前で親しまれ、果肉のジューシーさが魅力的な柑橘です。そのルーツは、温州みかんの代表的な品種「宮川早生」と、アメリカ生まれのオレンジ「トロビタオレンジ」を掛け合わせたことにあります。1979年に品種登録された清見は、日本で初めて誕生したタンゴールとして知られています。タンゴールとは、みかん類(タンジェリン)とオレンジ類を交配させた品種のことで、「tangerine」と「orange」を組み合わせた「tangor」という言葉が語源です。清見は、みかんの甘さと食べやすさに加え、オレンジの豊かな香りと上質な果肉を兼ね備えた品種を目指して開発されました。
清見の開発は、昭和12年(1937年)に、当時の園芸試験場(現在の国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 カンキツ研究興津拠点)で始まりました。栽培のしやすさと品質の良さを両立した新品種を作ることを目標とした研究の一環です。清見は、農林水産省の研究所である園芸試験場東海支場(現在の静岡県静岡市清水区興津中町)で誕生し、近くの景勝地である「清見潟」にちなんで「清見」と名付けられました。その優れた特性と幅広い活用性から、清見タンゴールは、デコポン(不知火)やせとか、甘平、はるみといった人気の品種を生み出す親となり、日本の柑橘栽培に大きな影響を与えました。※「デコポン」は熊本県果実農業協同組合連合会の登録商標です。
清見を親とする主な品種として、以下のようなものが挙げられます。
・ せとみ
・ 陽香
・ はるき
・ 津之輝
・ たまみ
・ 津之望
・ あまか
・ 南風
・ 春峰
・ 果のしずく
これらの品種以外にも、清見の血を受け継ぐ品種は多数存在します。
清見オレンジの魅力:特徴、旬、糖度、そして手軽な食べやすさ
清見の皮は3~4mmほどの厚さで、爽やかなオレンジの香りが特徴です。温州みかんに比べると少し皮が剥きにくいので、ナイフでカットするのがおすすめです。果肉は鮮やかな濃いオレンジ色をしており、一口食べると果汁が口いっぱいに広がるジューシーさを楽しめます。清見は、みかんの優しい甘さと、オレンジの爽やかな香りととろけるような果肉を受け継いでおり、風味豊かでとても食べやすい品種です。プルプルとした柔らかな果肉は、ナイフを入れると果汁があふれ出すほどジューシーで、酸味が少ないため、まろやかな甘みが際立ちます。糖度は11~12%程度と高く、ほどよい酸味とのバランスが絶妙で、濃厚ながらも後味の良い味わいが特徴です。さらに、種がほとんどないため、お子様からご年配の方まで安心して食べられるのも人気の理由です。清見の旬は産地によって多少異なりますが、一般的には2月~4月頃に多く出回り、特に3月から4月頃が最も美味しい時期と言われ、春の訪れを感じさせる柑橘として親しまれています。
清見オレンジの主な産地と栽培に適した場所:品質を支える条件
清見の主な産地は、温暖な気候に恵まれた愛媛県と和歌山県です。この2県で、全国の清見生産量の8割以上を占めており、まさに日本の清見栽培の中心地と言えます。清見は通常2月以降に収穫されますが、成熟期が遅いため、冬の寒さに弱く、寒害のリスクがあります。そのため、栽培には冬でも比較的温暖な気候が保たれる地域が適しており、愛媛県や和歌山県のような地域がその条件を満たしているため、安定して高品質な清見を生産できるのです。これらの地域では、生産者の方々が長年の経験と知識を活かし、愛情を込めて清見を育てています。具体的には、品質を保つために一つ一つ袋掛けをして大切に育て、3月まで樹上で越冬させてから収穫することが多いです。このように丁寧に栽培し、樹上で完熟させることで、より濃厚な甘みと深い香りを引き出すことができます。また、収穫後も適切な方法で貯蔵することで、6月頃まで長く楽しむことができるのです。
清見タンゴールと清見オレンジ:名前の違いを詳しく解説
清見という名前が、育成地の近くにある清見潟に由来することはすでに述べましたが、なぜ「清見タンゴール」や「清見オレンジ」といった異なる呼び方が存在するのでしょうか。それにはいくつかの理由があります。
「清見タンゴール」と称される所以
「タンゴール(tangor)」という名称は、柑橘を指す英語の「tangerine(タンジェリン)」と、オレンジを意味する「orange(オレンジ)」を組み合わせた言葉で、これらはミカンとオレンジの交配種に与えられる総称です。清見は温州ミカンとトロビタオレンジの交配によって生まれたため、この定義に当てはまり、「タンゴール類」の一種として「清見タンゴール」と呼ばれることがあります。この名称は、清見が持つハイブリッド品種としての性質を明確に示しています。
「清見オレンジ」と表現される背景
他方、「清見オレンジ」という呼び名は、清見が持つ外観上の特徴に由来します。清見はその見た目、爽やかな香り、そして3~4mm程度の厚さを持つ果皮などが、一般的なオレンジによく似ているため、消費者に分かりやすく「清見オレンジ」と呼ばれるようになりました。また、単に「清見」とだけ表現した場合、柑橘類であることが伝わりにくいため、より直接的に果物の種類を認識してもらうために「オレンジ」という言葉が添えられることも、この呼び名が普及した理由の一つと考えられます。どちらの呼び方も清見を指しますが、その背景にある意味合いは異なります。
清見オレンジの美味しい食べ方:手軽なスマイルカット
清見は果皮が比較的厚くしっかりしているため、温州みかんのように手で容易に剥くことは難しいかもしれません。そこで、ナイフを用いた「スマイルカット」がおすすめです。この方法であれば、手を汚すことなく、果汁たっぷりの清見を美味しく、見た目も美しく楽しむことができます。外皮が硬めなので、オレンジのように櫛形にカットするのが基本です。また、内皮は非常に薄いため、そのまま食べても全く気になりません。ここでは、そのスマイルカットの手順をご紹介します。

1.清見を赤道に沿って二等分
まず、清見を横向きに置き、真ん中あたり、つまり赤道面(おへそと軸を結ぶ線に対して直角になる面)をナイフで半分にカットします。こうすることで、安定した状態で次のステップに進むことができます。
2.放射状にカットする
半分にカットした清見を、切り口を下にしてまな板に置きます。中心から外側に向かって、まるで太陽の光のように放射状に切り込みを入れていきましょう。オレンジをカットする時と同じように、一口サイズで均等になるように意識します。ポイントは、皮はつけたまま、果肉だけを丁寧にカットすること。こうすることで、食べる際に皮が剥きやすくなります。横方向にカットするよりも、縦方向にカットした方が、清見特有のプリプリとした食感をより一層楽しめます。
3.盛り付けの工夫
カットした清見を、皮を下にしてお皿に並べれば、食卓が華やぐスマイルカットの完成です。フォークなどを使って、皮から果肉を優しく剥がしながらいただきましょう。清見は果汁が非常に豊富な品種なので、半分にカットしたものをスプーンで食べるのもおすすめです。口いっぱいに広がるジューシーな果汁と、爽やかな香りを心ゆくまで堪能してください。
まとめ
清見オレンジは、日本の柑橘界に貢献した品種と言えるでしょう。温州みかんの代表格「宮川早生」と、アメリカ生まれの「トロビタオレンジ」という、東西の個性を融合させて誕生しました。昭和12年(1937年)から始まった研究は、長い歳月を経て1979年に結実し、品種登録されました。その名前は、育成地の静岡県興津にある美しい「清見潟」に由来します。日本の気候風土に適応し、デコポンやせとかといった人気品種の親となり、その発展に大きく貢献しました。果皮はやや厚めで3~4mmほどですが、ナイフでスマイルカットすれば、鮮やかなオレンジ色の果肉から、糖度11~12%の濃厚な果汁があふれ出します。主な産地は愛媛県と和歌山県で、この2県で全国の生産量の84%を占めています。旬は2月~4月ですが、袋掛け栽培や樹上越冬、適切な貯蔵技術によって、6月頃まで市場に出回ります。「清見オレンジ」または「清見タンゴール」という2つの名前で親しまれていますが、どちらも同じ品種を指します。春から初夏にかけて、その豊かな風味と手軽な食べ方で、旬の味覚をお楽しみください。
清見オレンジと清見タンゴールの違いについて
清見は、正式には「清見」という品種名で登録されていますが、その特徴や生まれた背景から、異なる呼び名で親しまれています。「清見タンゴール」の「タンゴール」とは、みかんの仲間(タンジェリン)とオレンジを掛け合わせた品種の総称です。清見は、温州みかんとトロビタオレンジの交配によって生まれたため、タンゴールに分類されます。「清見オレンジ」という呼び名は、清見の外観、香り、そして皮の厚さなどがオレンジに似ていること、また「清見」だけでは柑橘類だと分かりにくいことから、より分かりやすく、親しみやすい表現として用いられています。つまり、「清見オレンジ」と「清見タンゴール」は、どちらも同じ「清見」という品種を指しているのです。
清見オレンジ、一番美味しい時期はいつ?
清見オレンジが旬を迎える時期は、栽培地やその年の気候によって多少異なりますが、一般的には2月から4月頃に出回ります。特に、味がピークを迎えるのは3月から4月にかけてと言われています。また、適切な方法で保存することで、6月頃までその美味しさを楽しむことができます。
清見オレンジは、主にどこで作られているの?
清見オレンジの主な産地は、愛媛県と和歌山県です。この2つの県で、国内の清見オレンジ生産量の大部分を占めており、清見オレンジ栽培の中心地となっています。清見オレンジは、成熟する時期が遅く、寒さに弱いという特徴があるため、冬でも比較的温暖な地域での栽培に適しています。そのため、これらの地域で盛んに栽培されています。より高品質な清見オレンジを育てるために、一つ一つ丁寧に袋掛けを行い、樹上で冬を越させるなどの工夫も凝らされています。
清見オレンジの皮は手で剥ける?おすすめの食べ方は?
清見オレンジは、一般的な温州みかんに比べると皮が少し厚めなので、手だけで綺麗に剥くのは少し難しいかもしれません。そこで、ナイフを使った「スマイルカット」がおすすめです。まず、清見オレンジを真ん中で半分にカットし、さらにそれを放射状に、くし形にカットすると、手軽に美味しく果肉を味わうことができます。横方向にカットするよりも縦方向にカットする方が、果肉のジューシーさをより一層感じられ、内側の薄皮も気にならないのでそのまま食べられます。果汁がたっぷりなので、横半分にカットしてスプーンでいただくのも良いでしょう。
清見オレンジに種はある?甘さはどれくらい?
清見オレンジは、基本的に種がほとんど入っていないため、とても食べやすいのが特徴です。お子様からご年配の方まで、安心して美味しく召し上がれます。気になる甘さですが、糖度は11~12%程度と高く、ほどよい酸味とのバランスが絶妙で、濃厚ながらもさっぱりとした味わいが楽しめます。温州みかんの優しい甘さと、オレンジの爽やかな香りが組み合わさった、上品な味わいが魅力です。
清見オレンジは、他にどのような柑橘のルーツとなっているのでしょうか?
清見オレンジは、日本の柑橘品種改良において非常に重要な役割を果たしており、数多くの人気品種の親として知られています。例えば、第一世代の子供にあたる品種としては、「デコポン(不知火)」、「せとか」、「甘平」、「はるみ」、「津之輝」、「たまみ」、「せとみ」、「陽香」などが挙げられます。さらに、これらの品種から生まれた孫世代、あるいは曾孫世代の品種も存在しており、日本の食卓を豊かにする様々な柑橘のルーツを辿っていくと、清見オレンジにたどり着くことが少なくありません。