清見みかんとは?甘さと香りの特徴・旬・人気の理由を徹底解説|日本初のタンゴール品種
清見みかん(清見タンゴール)は、温州みかんとオレンジの交配によって誕生した、日本で初めてのタンゴール品種です。とろけるような果肉と濃厚な甘さ、そしてオレンジ特有の華やかな香りが絶妙に調和し、ひと口食べると記憶に残る味わいが広がります。実はこの清見みかん、ただの美味しい柑橘にとどまらず、「せとか」や「不知火(デコポン)」など、多くの人気品種の親としても知られています。この記事では、清見みかんの誕生の歴史、味や香りの特徴、さらには日本の柑橘界に与えた影響まで、詳しくご紹介します。

清見とは?日本初のタンゴールとして誕生

清見は、日本初のタンゴール品種として誕生した、歴史的にも価値の高い柑橘です。温州みかん「宮川早生」を母、アメリカのスイートオレンジ「トロビタ」を父として、1949年に交配されました。
その後の歩みは以下のとおりです:
  • 1974年:全国12都道府県の試験機関で栽培テストを開始
  • 1979年:「清見」と命名され、『タンゴール農林1号』として品種登録
  • 品種名の由来:「清見潟」「清見寺」など育成地周辺の地名から
登録までに31年を要したのは、各地の環境での適応性・耐病性を慎重に確認したためです。
清見は、「中晩柑」と呼ばれる柑橘の一種であり、以下のような魅力を兼ね備えています:
  • みかんの甘さ+オレンジの爽やかな香り
  • 果汁たっぷりでジューシー
  • 後継品種として「不知火(デコポン)」や「せとか」などの親にも
味わいだけでなく、日本の柑橘改良における“基礎となった品種”としても大きな功績を残しています。

果実の形状と食味|甘くジューシーで爽やかな香り

清見の果実は、温州みかんとオレンジの中間的な形状で、以下の特徴があります:
  • やや平たい丸型、200g前後の大きめサイズ
  • 果皮は濃いオレンジ色でやや厚め
  • 果肉は柔らかく果汁たっぷり
  • 皮はむきにくいが、その分果汁が豊富
糖度はおおよそ11〜12度と高すぎず、**酸味は約1%**と控えめ。バランスの取れた甘みと、スイートオレンジのような爽やかな香りが特徴です。
特に主産地である愛媛県・西宇和地域では、木の上でじっくり熟成させる「樹上完熟栽培」により、
  • みずみずしさを保ちつつ甘みが凝縮
  • まろやかで深みのある味わいに仕上がる
この丁寧な栽培方法が、清見のみかん×オレンジらしさを最大限に引き出しています。

栄養価と機能性成分|ビタミンCや食物繊維を含むバランスの良い果実

清見は、風味だけでなく、日々の食生活にうれしい栄養素を含む果物としても親しまれています。以下は、100gあたりに含まれる主な成分の一例です。

主な栄養成分(100gあたりの目安)

  • ビタミンC:果物の中でも比較的豊富に含まれ、体調管理をサポートする成分として知られています。
  • カロテノイド類(例:β-クリプトキサンチン):色素成分の一種で、柑橘類特有の鮮やかな色を生み出します。
  • 食物繊維:現代の食生活で不足しがちな成分であり、すっきりとした生活を心がけたい方におすすめです。

含有が知られている機能性成分

  • リモノイド:柑橘特有の成分で、爽やかな風味のもとになるほか、研究が進められている成分の一つです。
  • フラボノイド:柑橘の皮や果肉に含まれ、多くの植物に見られるポリフェノール類です。
清見はこのような栄養成分を含んでいることから、日々の食卓で季節の果物として取り入れたい存在です。美味しさを楽しみながら、栄養バランスにも気を配ることができます。

樹体の耐寒性と耐病性|全国で栽培しやすい理由

清見は、比較的寒さに強く、病気にも強いことから、さまざまな地域で栽培しやすい柑橘品種として知られています。

清見が持つ栽培上の特性

  • 耐寒性が高い:寒冷地でも管理次第で栽培可能
  • かいよう病に強い:柑橘に多い代表的な病害への耐性
  • そうか病にも抵抗性あり:葉や果実に斑点を生じさせる病気に対しても強い
これらの特性により、清見は管理の手間が少なく、安定した品質と収穫が期待できる品種として多くの生産者に支持されています。

日本の柑橘育種の課題と育種技術の進展

本格的な柑橘の品種改良は、1937年(昭和12年)に静岡・興津で開始されました。その後の品種育成の過程では、いくつもの難題が立ちはだかりました。

主な育種上の課題

  1. 交配から収穫までが長い  …新品種の確認には8~12年かかり、育種のスピードが遅くなる。
  2. 多胚性による選抜の難しさ  …1つの種から複数の芽が出るため、交配目的の遺伝子を持つ個体の選抜が困難。
  3. 形質の遺伝が複雑  …味や香り、見た目など多くの要素が絡み合うため、狙いどおりの性質を引き出しにくい。
このような課題を乗り越えるために、交配だけでなく、珠心胚実生からの選抜という方法も併用されました。

「清見」誕生の背景|交配と育成のねらい

清見は、以下の2つの品種の交配によって生まれました:
  • 母:宮川早生(温州みかん)  → 食べやすさ、育てやすさ、病気への強さを兼ね備えた品種
  • 父:トロビタオレンジ(スイートオレンジ)  → 豊かな香りとジューシーさをもつ、海外品種の代表格
交配のねらいは、以下のような特性を備えた中晩柑タイプの新品種を作ることでした。
  • 温州みかんの扱いやすさ(種なし、手でむける、甘さ)
  • スイートオレンジの香り、果汁の多さ、果肉の柔らかさ
  • 新しいタンゴールの可能性を探る
清見やナツカなどがこの初期の交配育種から生まれ、「興津早生」「三保早生」などは実生からの選抜によって開発されました。

品種登録までの31年|普及性を重視した慎重な評価

清見は交配後すぐには登録されず、全国での適応性を確認するための調査期間が設けられました。

登録までの流れ

  • 1974年(昭和49年)〜:全国12県で試験栽培スタート
  • 1979年(昭和54年):「清見」と命名、タンゴール農林1号として正式に登録
ここまでの道のりは、交配から実に31年。この長い時間は、全国規模での栽培が可能か、病害への強さはあるかなど、農業現場での実用性をじっくり見極めた結果です。
品種名「清見」は、育成地・静岡市清水区の名所である「清見潟」や「清見寺」にちなんで名付けられました。

主な産地と収穫量|愛媛県・和歌山県が二大産地

清見(きよみ)の主な産地は、愛媛県と和歌山県が中心で、この2県で全国の約85%を占めています。そのほか、広島県や佐賀県などでも生産されており、西日本を中心に幅広い地域で栽培されています。
清見の収穫は3月頃に本格化し、各地で確立された栽培技術により、香りや甘みがしっかりと引き出された高品質な果実が市場に届けられています。

清見を親とする人気品種|多様な柑橘を生み出す存在

清見は、育種親としても非常に価値が高く、多くの人気柑橘品種の誕生に貢献しています。代表的な品種には以下のようなものがあります:
  • デコポン(不知火):高糖度と特徴的な外見で人気。清見のジューシーさと香りを受け継ぐ。
  • せとか:とろける食感と濃厚な甘さで“柑橘の女王”とも呼ばれる。
  • はるみ・天草:甘さと香りのバランスに優れた中晩柑。
これらの品種に共通しているのは、清見由来の豊かな香りとジューシーな果肉であり、日本の柑橘育種における清見の存在価値を物語っています。

清見の美味しい食べ方|ナイフでカットして手軽に楽しむ


清見は、果皮がやや厚めで果肉がとても柔らかいため、手でむくよりもナイフでのカットがおすすめです。
おすすめのカット方法:
  • ヘタとお尻を切り落とし、縦方向に切れ目を入れて房に沿って分ける
  • 果肉を潰さずきれいに取り出せ、見た目も美しく仕上がります
そのまま食べるのはもちろん、以下のような使い方もおすすめです:
  • ヨーグルトのトッピング
  • サラダやゼリーへの加え物
  • 焼き菓子の具材として
清見特有の爽やかな香りと上品な甘さを、様々な料理やデザートでお楽しみください。

まとめ|清見みかんの魅力と価値を再発見

清見みかん(清見タンゴール)は、日本初のタンゴールとして誕生し、温州みかんの甘さとオレンジの香りを兼ね備えた中晩柑の傑作です。全国の主要産地である愛媛県や和歌山県では高品質な栽培が行われ、旬の時期にはジューシーで香り高い果実が市場に並びます。また、デコポンやせとかなど、清見を親とする優良品種も多数誕生し、日本の柑橘育種に大きく貢献してきました。美味しさだけでなく栄養価も高く、日常の果物としても優秀です。 今が旬の清見みかんを、ぜひ一度そのままの味で楽しんでみてはいかがでしょうか?

清見みかんと清見オレンジは同じものですか?

はい、基本的には同じ品種を指しており、「清見タンゴール」とも呼ばれます。

清見はいつが旬ですか?

3月頃が収穫期で、春先から初夏にかけて美味しく楽しめます。

皮が厚いと聞きましたが、どうやって食べるのがおすすめですか?

ナイフでスマイルカットすると、果汁を逃さずきれいに食べられます。

清見はどこで作られていますか?

主に愛媛県と和歌山県で栽培され、全国の収穫量の約85%を占めています。

デコポンやせとかも清見が親なのですか?

はい、清見を親に持つ品種で、香りやジューシーさを受け継いでいます。



清見みかん