安芸クイーン:巨峰が生んだ鮮烈な赤色、その誕生秘話と味わいの魅力
鮮やかな紅色が目を引く「安芸クイーン」。巨峰をルーツに持つこのぶどうは、その美しい見た目からは想像もつかない、20年にも及ぶ歳月をかけて誕生しました。農業・食品産業技術総合研究機構において、巨峰の自家受粉から偶然生まれた実生から選抜・育成された安芸クイーン。開発者たちの情熱と、巨峰の血を受け継ぐ独特の味わいが、多くの人々を魅了し続けています。今回は、安芸クイーン誕生の背景と、その味わいの魅力に迫ります。

安芸クイーンの品種特性と歴史

「安芸クイーン」は、人気のぶどう品種である巨峰を親に持ち、その自家受粉によって生まれた種子から育成された、美しい赤色のぶどうです。この品種は、農業・食品産業総合研究機構の果樹試験場安芸津支場(現在の農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所)で、1973年(昭和48年)に巨峰を自家受粉させた種子から選抜・育成が始まりました。1991年(平成3年)に品種登録が出願され、1993年(平成5年)に正式に登録されるまで、20年もの長い年月がかけられています。巨峰同士の交配から生まれたこの赤色のぶどうは、その鮮やかな色合いと優れた味わいで、市場で高い評価を得ています。

安芸クイーンの学術的特徴

安芸クイーンは巨峰の自家受粉で生まれた早生品種で、広島県安芸津町で8月下旬に成熟します。果房は中程度で、果粒は赤色の倒卵形で非常に大きく、甘味が強く酸味が少ないのが特徴です。樹勢が強く、葉は五角形で葉柄が濃い赤色をしています。紅伊豆と比較して粒の付き方が粗く、果皮と果肉が分離しにくい点で異なり、オリンピアやレッドクイーンとは葉柄の色や果粒の形で区別でき、竜宝とは果房の大きさや果皮の色で区別できます。

安芸クイーンの味の特徴

実際に広島県産の安芸クイーンを味わってみると、その魅力がよくわかりました。巨峰ほどの大きな粒で、鮮やかな赤色と緑色が混ざった果皮が特徴的です。果肉は巨峰に似た食感で、皮が薄いためか渋みが少なく、皮ごと食べても気になりません。特筆すべきはその甘さで、ほどよい酸味とのバランスが絶妙です。種がほとんどなく食べやすいのも嬉しい点です。一粒13~15g、一房250~400gとボリュームがあり、見た目も楽しめます。一般的に日持ちが良いとされる点も魅力で、贈答用にも普段の食卓を彩るフルーツとしても最適な、人気の高い品種だと感じました。

安芸クイーンの選び方と鮮度の見分け方

美味しい安芸クイーンを選ぶためには、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。まず、最も重要なのは果皮の色です。安芸クイーンは鮮やかな赤色が特徴なので、房全体が均一に濃い赤色に着色しているものを選びましょう。色が薄かったり、緑色が残っていたりするものは、まだ十分に熟していない可能性があります。
次に、粒の状態をチェックします。粒が大きく、果皮にハリがあり、みずみずしさを感じさせるものが新鮮で美味しい証拠です。また、ぶどうの鮮度を示す重要な指標として「ブルーム」の有無があります。ブルームとは、果皮に付着している白い粉のことで、ぶどうが自ら作り出す天然成分であり、鮮度を保つ役割を果たしています。軸が青々としていて、果皮にこのブルームがしっかりと付いているものは、収穫されてからの時間が短く、非常に新鮮であると言えます。

安芸クイーンの適切な保存方法

安芸クイーンの美味しさを長持ちさせるには、保存方法が重要です。ぶどうは乾燥に弱いので、ラップや新聞紙で包むか、ポリ袋に入れて乾燥を防ぎましょう。理想的な保存場所は、直射日光を避けられる涼しい場所です。もしそのような場所がない場合は、冷蔵庫の野菜室を利用するのも良いでしょう。
ただし、どの方法でも鮮度が大切なので、購入後はなるべく早く食べることをおすすめします。すぐに食べられない場合や、もっと長く保存したい場合は、冷凍保存も可能です。冷凍する際は、一粒ずつ丁寧に軸から外し(ハサミで軸の付け根を少し残してカットすると、果肉を傷つけずに美味しさを保てます)、保存袋や密閉容器に入れて冷凍庫へ。冷凍した安芸クイーンは、半解凍でシャーベットのように楽しめます。

安芸クイーンの美味しい食べ方


安芸クイーンは、その甘さと香りを最大限に味わうために、皮をむいて食べるのがおすすめです。皮が比較的厚いので、むいた方が口当たりが良くなります。皮をむく際は、軸側からではなく、反対側の果実の下部にナイフで軽く十字に切り込みを入れると、比較的きれいにむきやすくなります。
皮をむくのが面倒な場合は、果肉を押し出して食べることもできますが、品種によっては皮離れが悪い場合もあります。しかし、個体差や熟し具合によっては、巨峰よりも皮が薄く、渋みが少ないため、皮ごと食べても気にならないこともありますので、試してみるのも良いでしょう。そのまま食べるのが一般的ですが、その甘さとジューシーさは、タルトやゼリー、コンポートなどのデザートにも最適で、食卓を華やかに彩ります。

安芸クイーンの旬と主な産地情報

安芸クイーンが出回る時期、つまり旬は、一般的に8月下旬頃から本格化します。育成地の広島県では8月下旬頃から収穫が始まるようですが、産地や気候によって時期は多少前後し、おおむね8月中旬から10月頃まで市場に出回ります。比較的長い期間楽しめるのが魅力の一つです。主な産地については、農林水産省の統計データが参考になります。
例えば、平成23年産のデータを見ると、全国で最も栽培面積が多いのは岡山県で、約6.5ヘクタールに及び、全国の作付面積の約22%を占めています。次いで、三重県、山形県が上位に位置し、広島県も約4.3ヘクタールで作付面積が多いです。ただし、この統計データは、全ての都道府県が栽培面積を公表しているわけではないため、データに含まれていない地域でも栽培されている可能性があります。

まとめ

安芸クイーンは、巨峰を親に持つ赤色のぶどうで、約20年の歳月をかけて開発された品種です。その魅力は、鮮やかな紅色、糖度20度にもなる強い甘み、そして芳醇な香りです。果肉は適度に引き締まっていて果汁も豊富で、粒の大きさは巨峰と同程度と食べ応えがあります。選ぶ際は、房全体が均一に濃い紅色で、粒にハリがあり、果皮にブルーム(白い粉)がしっかり付いているものを選びましょう。保存は乾燥を防ぎ、涼しい場所か冷蔵庫の野菜室で、早めに食べるのが基本です。長期保存には冷凍が適しており、半解凍でシャーベットとして楽しむのもおすすめです。
食べ方は、皮が厚めなのでむいて食べるのが一般的ですが、個体によっては皮ごとでも美味しくいただけます。旬は8月下旬頃から10月頃までと比較的長く、岡山県を中心に、三重県、山形県、広島県などで栽培されています。安芸クイーンは、見た目の美しさと美味しさから、贈答用としても、日々の食卓を彩るフルーツとしても人気があります。旬の時期に美味しい安芸クイーンを見つけて、その魅力を味わってみてください。

安芸クイーンは皮ごと食べられますか?

安芸クイーンは、どちらかと言えば皮は厚めなので、通常は皮を剥いて中の果肉を味わうのがおすすめです。皮を取り除くことで、口当たりが滑らかになり、果肉本来の甘さと豊かな果汁をより一層堪能できます。もし皮を剥くのが面倒であれば、果肉を押し出して食べることもできますが、皮が剥がれにくい場合もあります。しかし、品種や個体によっては、巨峰よりも少し皮が薄く、渋みが少ないと感じる人もいるため、一度皮ごと味わってみるのも良いかもしれません。

安芸クイーンの「ブルーム」とは何ですか?

「ブルーム」とは、ぶどうの表面に見られる白い粉状のものです。これはぶどう自身が作り出す自然な成分で、果実が乾燥するのを防ぎ、病気から保護する役割を果たします。ブルームがたくさん付いているぶどうは、新鮮である証拠とされているため、洗い落とさずにそのまま安心して食べられます。

安芸クイーンを冷凍保存するメリットは何ですか?

安芸クイーンを冷凍保存する利点は、鮮度を長く保てることと、新しい食感を楽しめることです。冷凍することで、すぐに食べきれない場合でも、無駄にすることなく保存できます。また、少し溶けた状態で食べると、シャーベットのような冷たい食感と甘さが楽しめ、暑い時期にぴったりのデザートとして楽しめます。

安芸クイーンの旬はいつですか?

安芸クイーンの旬は、通常8月下旬頃から店頭に並び始め、おおよそ10月頃まで楽しむことができます。この時期が最も美味しく、新鮮な安芸クイーンを入手しやすい時期ですが、産地や天候によって時期が多少ずれることがあります。

安芸クイーンは主にどこで作られているの?

安芸クイーンの栽培が盛んな地域として、まず挙げられるのが岡山県です。農林水産省のデータでも、作付面積が最も広いことが示されています。その他には、三重県や山形県、そして名前の由来となった広島県などでも、比較的多く栽培されています。これらの地域は、安芸クイーンの生育に適した気候や土壌といった条件が整っているため、品質の良いぶどうが収穫できるのです。
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