日本のぶどう品種図鑑:特徴、一覧、歴史を徹底解説
日本で栽培されているぶどうは、私たちが普段スーパーで見かけるものから、地域でひっそりと育てられている珍しい品種まで、多種多様です。この記事では、そんな日本のぶどうにスポットを当て、それぞれの品種の特徴、味わい、そして知られざる歴史を徹底解説します。代表的な品種はもちろん、知る人ぞ知る隠れた名品種まで、日本のぶどうの奥深い世界へとご案内します。さあ、日本のぶどうの魅力を再発見する旅に出かけましょう。

ぶどうの品種の多様性と歴史的背景

ぶどうは、その品種の多さで知られ、世界中で1万種以上が存在すると言われています。日本国内でも、流通量の少ない品種を含めると100種類を超え、市場に出回る主要な品種だけでも50~60種類ほどあります。この多様性は、ぶどうが人類の歴史と深く関わってきたことの表れです。古代エジプトのナクトの墓の壁画には、ぶどうの収穫や加工の様子が詳細に描かれており、人々が乾燥地帯でも育ち、ワインの原料となるぶどうを数千年前から大切に育ててきたことが分かります。
日本におけるぶどう栽培の起源には、いくつかの説があります。その一つは、奈良時代の僧侶、行基にまつわる話です。彼が甲斐の国(現在の山梨県)で修行中に、手にぶどうを持った薬師如来が夢に現れたとされています。この夢をきっかけに、行基が薬師如来像を刻んで安置したのが柏尾山大善寺であり、大陸から薬として伝わったぶどうを行基が勝沼に広め、栽培が始まったという説です。また、山梨県勝沼の雨宮勘解由が、自生していた山ぶどうとは異なるつる植物を発見し、それを自宅に持ち帰って植えたのが日本のぶどう栽培の始まりであるという説もあります。これらの伝承は、日本のぶどうが古くから人々の生活に深く根ざし、歴史を刻んできたことを示しています。

日本固有の歴史を持つ「甲州ぶどう」

ぶどうは、世界中に多様な品種が自生するぶどう科の果実です。日本にも古くから山ぶどうが自生していましたが、ヨーロッパやエジプトでは古代から栽培が盛んで、ワイン造りも行われていました。日本へは、奈良時代にシルクロードを経て中国からぶどうが伝わったとされています。この系統が山梨で自生し、鎌倉時代になって栽培されるようになり、現在の「甲州ぶどう」へと繋がっています。山梨県原産の甲州ぶどうは、鎌倉時代から栽培が始まったと言われ、2013年のDNA解析によって、ヨーロッパ系のぶどうと中国の野生種が交雑して生まれた品種であることが明らかになりました。この独特の起源を持つ甲州ぶどうは、粒はやや小さめですが、果肉は柔らかく、香りは控えめで、ほどよい甘酸っぱさが特徴です。日本の気候風土に適応し、長年にわたり愛されてきた独自の品種として、日本のぶどう文化の基礎を築いています。

ぶどうの分類方法:原産地と果皮の色

ぶどうは、その多様性から様々な方法で分類されます。主な分類方法の一つは「原産地」によるものです。ぶどうの原産地は、大きく西アジアと北アメリカの2ヶ所とされています。西アジア原産のぶどうからは多くの品種が生まれ、現在ではヨーロッパやアジアの各地で広く栽培されています。日本に古くから存在する「甲州」などの品種も、この西アジア原産の系統から生まれたと考えられています。一方、北アメリカ原産の品種としては「コンコード」などが有名ですが、日本ではあまり広く栽培されていません。このように、原産地の違いによって、その後の品種改良や栽培地域の広がりが異なってくることが分かります。
もう一つの主要な分類方法は「果皮の色」によるものです。ぶどうは果皮の色によって、「赤系」「黒系」「緑系」の3つに大きく分けられます。赤系のぶどうには「ゴルビー」「オリンピア」「甲斐路」「安芸クイーン」など、黒系のぶどうには「藤稔」「伊豆錦」「巨峰」「ピオーネ」などがあります。そして、緑系のぶどうには「シャインマスカット」「翠峰」「ロザリオ・ビアンコ」などがあります。興味深いことに、未熟なうちはどの品種のぶどうも果皮は緑色をしていますが、成長の過程でアントシアニンなどの色素が生成されることで赤や黒の色素が作られ、最終的な果皮の色が決まります。しかし、緑系のぶどうは色素が作られないため、熟しても美しい緑色を保ち続けるのです。この色の違いは、ぶどうの品種ごとの個性的な外見を作り出す重要な要素となっています。

栽培技術が問われる赤系ぶどうの特性

ぶどうの栽培において、特に高度な技術が求められるのが「赤系」の品種です。「安芸クイーン」や「ゴルビー」といった赤系のぶどうは、ムラなく鮮やかな赤色に着色させることが非常に難しく、生産者の腕の見せ所となります。近年の気候変動による温暖化は、この着色プロセスに大きな影響を与えています。日中の温度差が小さくなることで、ぶどうの色付きが悪くなったり、色ムラが生じやすくなったりする傾向があります。そのため、温暖化が進む中で、均一で美しい赤色を実現するには、これまで以上に熟練した栽培技術が欠かせません。
このような栽培の難しさから、多くのぶどう生産者の間で栽培する品種の傾向に変化が見られます。特に、着色不良のリスクが高い赤系の「安芸クイーン」「ゴルビー」や、黒系の「ピオーネ」「藤稔」などの栽培を避け、比較的着色が安定し栽培しやすい緑系の「シャインマスカット」のような品種に移行する生産者が増えています。これは、栽培上のリスクを軽減するだけでなく、消費者の嗜好の変化にも対応する動きです。現代の消費者は、種がなく、皮ごと食べられ、大粒で食味の良いぶどうを好む傾向が強く、シャインマスカットのような品種はこれらのニーズを高いレベルで満たしているため、その需要は増え続けています。日本のぶどう品種:主な種類と特徴 ここでは、日本で栽培されている様々なぶどうの品種、ブランド、種類を一覧でご紹介します。ここでは、日本で栽培されている様々なぶどうの品種、ブランド、種類を一覧でご紹介します。

安芸クイーン

「安芸クイーン」は、巨峰を親に持ち、その自家受粉によって生まれた品種です。鮮やかな赤色が特徴的なぶどうです。

あづましずく

「あづましずく」は、福島県で生まれた大粒の黒ぶどうで、福島県オリジナルの品種として広く知られています。濃厚な甘みが魅力です。

黄華

「黄華(おうか)」は、1994年に品種登録された、黄緑色の美しいぶどうです。高い糖度と、すっきりとした甘さが特徴となっています。

オーロラブラック

オーロラブラックは、巨峰やピオーネと同様に、紫黒色の果皮を持つ大粒のぶどうです。特筆すべきは、その際立つ甘さと芳醇な香りでしょう。

甲斐路

甲斐路は、山梨県の植原葡萄研究所で生まれた赤ぶどうです。その目を引く鮮やかな赤色と、洗練された甘さが広く支持されています。

キャンベル・アーリー

キャンベル・アーリーは、アメリカをルーツとする黒ぶどうで、日本でも長い間栽培されてきました。その特徴は、酸味と甘みの調和がとれている点にあります。

巨峰

巨峰は、「石原早生」と「センテニアル」を両親に持ち、1957年に品種登録された、日本を代表するぶどうです。その最大の魅力は大粒で、ずっしりとした濃厚な甘さを堪能できます。

クイーンニーナ

広島県で生まれた「クイーンニーナ」は、2011年3月18日に品種登録された赤色のぶどうです。その魅力は何と言っても、大粒の実と、それを裏切らない濃厚な甘さでしょう。

クリムゾン・シードレス

アメリカ生まれの「クリムゾン・シードレス」は、種がなく、皮ごと食べられる手軽さが人気の赤ぶどうです。海外からの輸入も盛んで、日本でも広く親しまれています。

グローコールマン

「グローコールマン」は、黒色の果皮と大粒の実が特徴的な晩生品種です。保存性に優れているため、比較的長い期間、その風味を堪能することができます。

甲州

1970年頃には、「デラウェア」が全体の栽培面積の約36%を占め、「キャンベルアーリー」が約26%、「甲州」が約10%と、これらの品種が中心でした。1960年に「デラウェア」の種なし技術が開発されたことで、栽培はさらに拡大しました。

悟紅玉(ごこうぎょく:旧ゴルビー)

山梨県の植原葡萄研究所で生まれた「悟紅玉」は、かつてゴルビーという名で広く知られていた赤色のぶどうです。目を引く鮮やかな色と、際立つ甘さがその魅力です。

サニードルチェ

「サニードルチェ」は、山梨県で開発された、皮ごと食べられるのが特徴の赤ぶどうです。その薄い皮は、食べた時にパリッとした心地よい食感をもたらします。

サニールージュ

広島県の果樹試験場で育成された「サニールージュ」は、味の良さが際立つ赤ぶどうです。強い甘みが特徴で、酸味は穏やかです。

紫苑(しえん)

「紫苑」は、「紅三尺」と「赤嶺」を交配して生まれた晩生のぶどうです。その深い紫色と、他にない独特の風味が特徴となっています。

シナノスマイル

長野県で生まれた「シナノスマイル」は、1995年に登録された赤色のぶどうです。その魅力は、口にした時の甘さと、鼻に抜ける香りの調和がとれている点にあります。

シャインマスカット

「安芸津21号」と「白南」を両親に持つ「シャインマスカット」は、2006年に品種登録されて以来、高い人気を誇る緑色のぶどうです。種がなく、皮ごと食べられる手軽さに加え、際立つ甘さとマスカット特有の芳醇な香りが特徴です。

翠峰

「翠峰(すいほう)」は、1996年に登録された緑色のぶどうです。大粒で果肉が厚く、すっきりとした上品な甘さが持ち味です。

スチューベン

アメリカ生まれの「スチューベン」は、「ウェイン」と「シェリダン」を掛け合わせて作られた黒ぶどうです。凝縮された甘さと、それを引き締める酸味が特徴で、ジュースやワインの原料としても利用されています。

赤嶺

鮮やかな紅色が目を引く赤ぶどう「赤嶺(せきれい)」は、「甲斐路」から生まれた品種です。その特徴は、見た目の美しさはもちろん、すっきりとした上品な甘さにあります。

瀬戸ジャイアンツ

黄緑色の果皮を持つ大粒ぶどう「瀬戸ジャイアンツ」は、1989年に品種登録されました。皮ごと食べられるのが魅力で、口に含むと独特の芳醇な香りが広がります。

高尾

東京都で生まれた「高尾」は、大粒の黒ぶどうとして知られています。開発当初からその優れた味わいが注目を集め、高い評価を得ています。

高妻

長野県の山越幸男氏によって育成された「高妻(たかつま)」は、「ピオーネ」と「巨峰」を交配して生まれた大粒の黒ぶどうです。濃厚な甘さと豊かな風味が特徴です。

多摩ゆたか

東京都で生まれた「多摩ゆたか」は、清涼感あふれる甘さが魅力の緑色のぶどうです。調布市で大切に育てられており、その上品な味わいが人気を集めています。

デラウェア

赤紫色の小さな粒が可愛らしい「デラウェア」は、アメリカで偶然生まれた品種です。日本での栽培の歴史も長く、種なし栽培の技術革新とともに、広く親しまれるようになりました。

トンプソン・シードレス

世界中で最も多く栽培されているぶどうの一つ、「トンプソン・シードレス」は、種なしで緑色のぶどうです。輸入ぶどうの主要品種として、私たちの食卓でもおなじみです。

ナイアガラ

1872年にアメリカで誕生した「ナイアガラ」は、その芳醇な香りと強い甘みが特徴的なぶどうです。果汁を活かしたジュースやゼリーなどの加工品にも適しています。

ナガノパープル

長野県で生まれた「ナガノパープル」は、「巨峰」と「リザマート」を交配して生まれた品種です。種がなく、皮ごと食べられる手軽さが魅力。口に広がるのは、凝縮された芳醇な甘さです。

ネオ・マスカット

「ネオ・マスカット」は、あの有名な「マスカット・オブ・アレキサンドリア」をルーツに持つ、美しい緑色のぶどうです。その特徴は、高貴なマスカットの香りと、洗練された上品な甘さでしょう。

ピオーネ

大粒で、深みのある紫黒色が目を引く「ピオーネ」。「巨峰」を母とし、「カノンホールマスカット」を父として誕生しました。その味わいは、コクのある甘さと、心を奪われる芳醇な香りが織りなすハーモニーです。

藤稔

紫黒色の果皮を持つ「藤稔(ふじみのり)」は、神奈川県のぶどう農家、青木逸雄氏が丹精込めて育成した大粒ぶどうです。その大きさは巨峰に匹敵し、口にした時のジューシーな果肉が魅力です。

ブラックオリンピア

東京都で生まれた「ブラックオリンピア」は、沢登春雄氏によって育成された黒色のぶどうです。その大きな粒と際立つ甘さ、そして優れた食味が魅力となっています。

ブラックビート

熊本県で河野隆夫氏が育成した「ブラックビート」は、大粒の黒ぶどうとして知られています。豊富な果汁に加え、力強い甘みとバランスの取れた酸味が特徴です。

紅伊豆

「紅伊豆(べにいず)」は、8月上旬から収穫が始まる、鮮やかな赤色の大きなぶどうです。早生品種でありながら、その美しい色合いと甘美な味わいは格別です。

マスカット・オブ・アレキサンドリア

エジプトを原産とする「マスカット・オブ・アレキサンドリア(Muscat of Alexandria)」は、「ぶどうの女王」とも呼ばれる緑色のぶどうです。特有のマスカットの香りと、洗練された甘さが特徴となっています。

マスカット・ベリーA

「マスカット・ベリーA」は、日本で生まれた赤ワイン用としても知られるぶどうです。程よい甘さと酸味が調和し、芳醇な香りが魅力となっています。

マニキュアフィンガー

山梨県の植原葡萄研究所で生まれた「マニキュアフィンガー」は、その名の通り、細長い形状が特徴的な赤ぶどうです。見た目のユニークさが際立っています。

ルビーオクヤマ

「ルビーオクヤマ」は、鮮やかな赤い果皮を持つぶどうで、白ぶどう「イタリア」から生まれた品種です。その名の通り、美しいルビー色をしており、上品な甘さと香りが楽しめます。

ルビーロマン

石川県生まれの「ルビーロマン」は、大粒で鮮紅色の果皮を持つ高級ぶどうとして知られています。非常に高い糖度を誇り、その一粒一粒が価値あるものとして扱われています。

レッドグローブ

「レッドグローブ」は、輸入ぶどうとして広く知られており、多くのスーパーマーケットで見かけることができます。その特徴は、厚めの皮と、噛んだ時のパリッとした食感です。

ロザリオ・ビアンコ

「ロザリオ・ビアンコ」は、山梨県の植原葡萄研究所で生まれた緑色のぶどうです。大粒で、上品な甘さとほどよい酸味が調和している点が魅力です。

日本のぶどう生産と品種の変遷

日本国内でぶどうが盛んに栽培されている地域としては、山梨県をはじめ、長野県、山形県、岡山県などが挙げられます。これらの地域では、それぞれの土地の気候や風土に適した様々な品種が栽培されています。その他、青森県から広島県・島根県にかけての広い地域や、北海道、福岡県などでもぶどうが生産されています。
農林水産省生産局園芸作物課「平成30年産 特産果樹生産動態等調査」によると、2018年時点での品種別栽培面積は、巨峰3,843.8ha(29.0%)、ピオーネ2,107.5ha(15.9%)、デラウエア2,014.8ha(15.2%)、シャインマスカット1,624.9ha(12.2%)である。さらに、「キャンベルアーリー」が655ヘクタール、「ナイアガラ」が513ヘクタール、「マスカットベリーA」が406ヘクタール、「スチューベン」が377ヘクタール、「甲州」が316ヘクタールと、多様な品種が栽培されていることが分かります。
日本のぶどう栽培は、明治時代以降に欧米の品種が導入されてから本格的に発展しました。特に、栽培品種の変遷は注目に値します。昭和45年頃には、「デラウェア」が全体の栽培面積の約36%を占め、「キャンベルアーリー」が約26%、「甲州」が約10%と、これらの品種が中心でした。昭和35年に「デラウェア」の種なし技術が開発されたことで、栽培はさらに拡大しました。その後、消費者の好みの変化や品種改良の進展により、1994年には「巨峰」が「デラウェア」の栽培面積を上回り、日本の代表的な品種としての地位を確立しました。この変化は、生食用ぶどうの需要の高まりと、大粒で美味しい品種への消費者の嗜好の変化を示しています。また、長野県産の「クイーンルージュ」という赤ぶどうが近年デビューし、交配親は「ユニコーン」×「シャインマスカット」であり、2019年4月に品種登録されました。

現代のぶどう品種トレンドと未来への課題

現代のぶどう品種のトレンドは、消費者の利便性と美味しさを重視する方向に大きく向かっています。特に人気があるのは、大粒で種がなく、皮ごと食べられる品種です。その代表例が「シャインマスカット」であり、開発の背景には、ヨーロッパぶどうの「噛み切りやすく硬い食感」や、多くの消費者が好む「マスカットの香り」へのニーズがありました。「シャインマスカット」は大粒でありながら種なし栽培が可能であり、裂果などの問題が少なく、耐病性があるという特徴も持っており、生産者と消費者の両方から高く評価されています。その結果、栽培面積は急速に拡大し、日本の主要なぶどう品種の一つとなりました。消費者が食べやすい種なしぶどうを好む傾向が強いため、このニーズに応える品種開発が重要視されています。
一方で、ぶどう栽培は新たな課題にも直面しています。地球温暖化の進行は、特に赤色や黒色のぶどうにおいて、着色不良という深刻な問題を引き起こしています。気温の上昇や昼夜の温度差の減少は、ぶどうが鮮やかな色に成熟するのを妨げ、生産者にとって大きな課題となっています。このような状況下で、既存の品種よりも着色しやすいぶどうの品種改良が急務となっています。山形県は、国内でも有数のぶどう生産地であり、特に「デラウェア」の生産量では日本一を誇ります。江戸時代初期に山梨の甲州から苗木が伝わったとされるこの地域は、置賜地方のような2000m級の山々に囲まれた盆地であり、昼夜の気温差が大きく、成熟期には晴天が多く、夏場の降水量が少ないという、ぶどう栽培に非常に適した地理的条件を備えています。このような恵まれた環境が、色付きが良く糖度の高い高品質なぶどうの生産を可能にし、温暖化が進む中でも、日本のぶどう栽培を支える重要な役割を担っています。

まとめ

ぶどうは、世界中で1万を超える品種が存在し、日本国内でも50~60種類の主要な品種が栽培されている、非常に多様な果物です。その歴史は古く、古代エジプト文明にまで遡ります。日本においては、甲州ぶどうのように独自の進化を遂げた品種も見られます。ぶどうは、原産地や果皮の色によって様々な分類が可能で、赤系、黒系、緑系といったそれぞれの品種が、独自の個性的な特徴を持っています。特に、赤系ぶどうの栽培は、近年の温暖化の影響による着色不良のリスクが高まるなど、生産者には高度な栽培技術が求められています。現代の消費者は、大粒で種がなく、皮ごと手軽に食べられる品種を好む傾向が強く、シャインマスカットはその代表的な例として広く普及しています。今後、気候変動に対応し、消費者の多様なニーズに応えるための品種改良と、先進的な栽培技術の進化が、日本のぶどう産業の持続的な発展には不可欠です。山形県のように、ぶどう栽培に適した豊かな自然環境を持つ地域は、高品質なぶどうの安定的な供給において、重要な役割を果たし続けるでしょう。

ぶどうの品種は世界に何種類くらいありますか?

ぶどうの品種は、世界全体で1万種類以上あると言われています。日本国内に限定しても、市場にあまり出回らない品種を含めれば100種類を超え、主に流通している品種だけでも50~60種類ほどが栽培されています。

日本で最も古くから栽培されているぶどうの品種は何ですか?

日本で最も古い歴史を持つぶどうの品種は、「甲州ぶどう」です。山梨県が原産地であり、鎌倉時代には既に栽培が始まっていたと伝えられています。2013年のDNA解析によって、ヨーロッパ系のぶどうと中国の野生種が自然交雑して誕生した品種であることが明らかになりました。

ぶどうの果皮の色はなぜ違うのですか?

ぶどうの果皮の色は、成熟の過程で生成される色素の種類によって変化します。成熟前の若い果実はいずれの品種も緑色をしていますが、成熟が進むにつれて、赤色や黒色の色素(アントシアニンなど)が生成されることで、赤系や黒系の色へと変化していきます。緑系のぶどうは、これらの色素が生成されないため、成熟しても緑色のままとなります。

近頃話題の「種なしぶどう」は、どのようにして生まれるのですか?

巷で人気の「種なしぶどう」ですが、その多くは植物ホルモンの一種であるジベレリンを使った技術によって生み出されています。具体的には、ぶどうの花が咲く時期と果実が大きくなる時期に、ジベレリン溶液を房にかけることで、種なしの状態にし、かつ果実を大きく育てるのです。この技術は、デラウェアなどの品種で早くから取り入れられ、消費者の皆様にとって、より手軽にぶどうを楽しめるようになる上で大きな役割を果たしています。

地球温暖化はぶどうの栽培に、どのような影響を及ぼしているのでしょうか?

地球温暖化は、特に赤色や黒色のぶどうの栽培に深刻な影響を与えています。気温の上昇や、日中と夜間の気温差が小さくなることで、ぶどうがムラなく鮮やかな色に染まりにくくなる「着色不良」という問題が深刻化しています。そのため、生産者の方々は、比較的栽培しやすい緑色のシャインマスカットなどに切り替える動きが見られるほか、着色しやすい新しい品種の開発が、喫緊の課題となっています。