トウモロコシに発生する黒穂病。黒い見た目から廃棄されることが多いですが、実はメキシコなど一部地域では貴重な食材として珍重されています。「ウイトラコチェ」と呼ばれるこの黒穂病トウモロコシは、独特の風味と食感を持つことから「メキシコのトリュフ」とも呼ばれ、近年では高級食材としての地位を確立。今回は、黒穂病トウモロコシが食べられるのか、その知られざる食文化と関連キーワードについてご紹介します。意外な栄養価や調理法、歴史的背景などを紐解き、黒穂病トウモロコシの魅力に迫ります。
ウイトラコチェとは?黒穂病に冒されたトウモロコシ

ウイトラコチェとは、トウモロコシが「黒穂病」と呼ばれる植物病害に感染した状態を指します。この病害では、トウモロコシの穂が黒く膨らみ、独特の外観となります。一般的に、黒穂病に感染したトウモロコシは廃棄されることが多いですが、メキシコでは古くからウイトラコチェを特別な食材として親しまれてきました。その独特な香りと食感から「メキシコのトリュフ」とも呼ばれ、現在では高級食材として注目されています。アメリカやヨーロッパでは農業被害の対象とされてきた一方、地域や文化によって食材としての価値が見直されています。
ウイトラコチェの歴史:忌避から珍重へ
かつて、黒穂病に感染したトウモロコシは、アメリカやヨーロッパでは単なる「植物の病気」として捉えられ、食用としての普及は見られませんでした。しかし、そのネガティブなイメージを払拭するため、「メキシコのトリュフ」という名称で提供されるようになり、徐々にその価値が再認識されるようになりました。1990年代中頃には、高級レストランからの需要が高まり、アメリカの一部の農場では、意図的にトウモロコシを感染させることさえ認められるようになりました。現在では、メキシコを中心に、様々な料理に使用されています。
ウイトラコチェの見た目と特徴:漆黒の腫瘍
ウイトラコチェは、トウモロコシの先端や粒が異常に肥大化し、外皮を突き破って内部が黒い胞子で満たされた独特な外観を呈します。黒穂病を引き起こす真菌は、トウモロコシのあらゆる箇所に感染し、実だけでなく葉や茎にも繁殖します。感染したトウモロコシの粒の大きさは不均一で、こぶ状の腫れを形成することが特徴です。この独特な見た目から、高級食材として認識される一方で、珍奇な食材として見なされることもあります。
ウイトラコチェの味わいと香り:トリュフを彷彿とさせる風味
ウイトラコチェは、トリュフや鶏レバーのような風味を持つ高級食材として表現されることが多く、通常のトウモロコシとは全く異なる食感です。生のトウモロコシのような甘味はなく、かすかに苦みがあります。この苦味を和らげるために、香味野菜やハーブなどと共に加熱調理されるのが一般的です。加熱すると、スモーキーな香りを放ち、口に含むと香ばしい香りが鼻を抜けます。含まれる芳香化合物には、フェヌグリークの香気成分であるソトロンや、バニラの香り成分であるバニリンなどが存在します。人によっては、土のような香りやわずかな粉っぽさを感じることもあるようですが、それこそがウイトラコチェの個性的な風味として愛されています。
ウイトラコチェの栄養価:必須アミノ酸とミネラルが満載
ウイトラコチェは、その栄養価の高さでも注目されています。特に、体内で生成できない必須アミノ酸を豊富に含んでいる点が特徴です。中でもリジンは特に多く、一般的な食用キノコ類と比較しても遜色ないレベルのタンパク質を含有しています。さらに、健康維持に欠かせないミネラルも豊富で、カリウムは体液のバランスを整えたり、エネルギー代謝をサポートしたりする役割を担い、さらに、抗酸化作用を持つことで知られるセレンなどのミネラルも含まれています。トウモロコシの種類によって異なりますが、ウイトラコチェのタンパク質含有量は、およそ10%から14.5%程度と言われています。
ウイトラコチェの食べ方:メキシコを代表する伝統食材

ウイトラコチェは、メキシコではポピュラーな食材として広く親しまれています。タコス、オムレツ、ケサディーヤ、煮込み料理の具材やソースとしてなど、様々な料理に利用されています。新鮮なものが市場に出回っており、メキシコ各地のレストランや市場で容易に入手可能です。生のまま食されることもあります。
ウイトラコチェを使った料理の例
ウイトラコチェは、その独特な風味を活かして、幅広い料理に活用できます。ケサディージャの具材として使用すれば、他にない風味と食感を楽しむことができます。その他、スープやシチュー、タマーレ、ブリトーなどにも適しています。メキシコ料理を提供するレストランなどで見かけることがあるかもしれませんので、ぜひ一度味わってみてください。
ウイトラコチェの購入方法:加工品を活用
日本では、生のウイトラコチェを入手するのは難しい状況ですが、缶詰などの加工品として販売されていることがあります。オンライン通販などを利用すれば、手軽にウイトラコチェを試すことができます。
ウイトラコチェ栽培の現状と展望
中国におけるウイトラコチェの栽培は、現在も細々と続けられていますが、近年は耐病性の向上により、以前に比べて収穫量は大幅に減少しています。そのため、市場に出回る量は限られており、価格も高めに設定されています。一方、アメリカ合衆国では、フロリダ州などを中心に、ウイトラコチェの商業的な栽培を推進するための試験的な取り組みが始まっており、将来的な普及に向けた動きが活発化しています。
まとめ
一見すると奇妙な外見を持つウイトラコチェですが、その外見からは想像もつかないほど豊かな風味と高い栄養価を秘めた食材です。かつては廃棄されていたものが、現代では高級食材として脚光を浴びるようになった背景には、人々の飽くなき食への探求心と、食材が持つ未知の可能性を追求する努力があります。メキシコの伝統的な食文化に深く根ざしたウイトラコチェを、この機会にぜひお試しください。
質問1:ウイトラコチェはどこで購入できますか?
回答:日本国内では、生のウイトラコチェを手に入れるのは難しいのが現状です。しかし、インターネット通販などを利用すれば、缶詰などの加工品を購入することができます。また、一部のメキシコ料理レストランでは、ウイトラコチェを使った料理を提供している場合があります。
質問2:ウイトラコチェを食べても安全ですか?
回答:はい、ウイトラコチェは安全に食べることができます。黒穂病に感染したトウモロコシではありますが、人体に有害な毒素は含まれていません。メキシコでは、古代から貴重な食材として食されてきました。
質問3:ウイトラコチェの風味はどのようなものですか?
回答:ウイトラコチェは、しばしばトリュフやフォアグラに似た独特な風味を持つと評されます。通常のトウモロコシのような強い甘さはなく、ほのかな苦みが感じられます。加熱調理することで、スモーキーな香りが引き立ちます。