シュークリームの種類:世界と日本のシュークリーム徹底比較
ふわふわの生地に甘いクリームがたっぷり詰まったシュークリーム。日本で長年親しまれている定番スイーツですが、実は世界中で愛されているお菓子なんです。国や地域によって、形やクリームの種類、味わいも様々。シュー生地を使ったお菓子は、その土地の文化や歴史を反映し、独自の進化を遂げてきました。この記事では、世界と日本のシュークリームを徹底比較。それぞれの特徴や魅力を深く掘り下げ、シュークリームの世界をさらに広げていきます。

シュークリームとは?定義、名前の由来、日本への伝来と普及

私たちがよく知るシュークリームは、空洞に焼き上げたシュー生地にカスタードクリームなどを詰めた洋菓子です。フランスでは「chou à la crème(シュー・ア・ラ・クレーム)」と呼ばれ、「chou」はフランス語で「キャベツ」を意味します。丸く膨らんだシュー生地がキャベツに似ていることが名前の由来です。クリームの種類も豊富で、定番のカスタードクリームをはじめ、軽やかな生クリーム、濃厚なチョコレートクリームなど、様々なバリエーションがあり、地域や季節によって異なる味が楽しめます。

日本にシュークリームを伝えたのは、幕末から明治初期に横浜の外国人居留地で洋菓子店を経営していたフランス人のサミュエル・ピエールです。彼の元でフランス菓子の技術を習得し、独立して店を開く菓子職人も現れました。しかし、シュークリームのような繊細な生菓子が一般家庭で日常的に食べられるようになったのは、冷蔵庫が普及し始めた昭和時代からです。冷蔵技術の進歩がシュークリームをより身近な存在にし、現在では幅広い世代に愛される定番スイーツとして定着しています。

世界各国のバラエティ豊かなシュー菓子

シュー生地を使ったお菓子は、シュークリーム以外にも、世界中で独自の進化を遂げ、それぞれの土地で愛されています。各国の文化や歴史が反映された、多種多様なシュー菓子が存在するのです。例えば、アメリカではシュークリームは「クリームパフ」と呼ばれ、ドイツでは「ヴィントボイテル(風の袋)」と呼ばれています。名前だけでなく、形や製法も国によって様々です。

フランスの代表的なシュー菓子:エクレア

エクレアは、細長く焼き上げたシュー生地にクリームを絞り、上からフォンダンをかけたフランス生まれのお菓子です。19世紀に著名な菓子職人アントナン・カレームによって考案されたと考えられています。名前の由来は、フランス語で「稲妻」を意味する「エクレール」から来ており、あまりの美味しさに稲妻のようにあっという間に食べてしまうから、フォンダンの光沢が稲妻のように輝くから、クリームがはみ出さないように素早く食べる必要があるから、など諸説あります。シュークリームと同様に、日本でも非常に人気があり、洋菓子店では定番商品として親しまれています。フランスでは、バニラ、チョコレート、コーヒーのフレーバーが特に人気で、日本のエクレアに比べてシュー生地が硬めに焼かれることが多いのが特徴です。その洗練された見た目と繊細な味わいは、世界中の人々を魅了しています。

自転車レースが生んだ味:パリブレスト

パリブレストは、リング状のシュー生地にプラリネやモカ風味のクリームをサンドしたフランスの伝統的なスイーツです。1891年、パリとブレストを結ぶ自転車レースを記念し、コース近くの菓子店が考案したとされています。自転車の車輪、特にホイールをイメージしたリング状の形状が特徴で、その歴史は1世紀以上にも及びます。今ではフランス中で愛される定番のお菓子として、多くのパティスリーで見られます。プラリネの香ばしさとモカクリームの風味が、シュー生地と見事に調和し、奥深い味わいを実現しています。

二つの生地が奏でるハーモニー:サントノーレ

サントノーレは、パイ生地をベースに、プチシューをカラメルで固定し、王冠のように並べ、クリームを絞った、手の込んだフランス菓子です。異なる食感の2種類の生地(サクサクのパイ生地と、柔らかなプチシュー)をカラメルで接着し、「クレーム・シブースト」という独特の軽いクリームを絞り込んで作られます。クレーム・シブーストは、カスタードクリームにメレンゲを加えたもので、そのなめらかさが魅力です。名前の由来は諸説ありますが、お菓子の守護聖人「サントノーレ」にちなむ説や、パリのサントノーレ通りにあった菓子店で作られた説があります。その美しい見た目と繊細な味わいは、フランス菓子の粋を集めたもので、特別な日のデザートとして人気です。

修道女をかたどった優美な姿:ルリジューズ

「ルリジューズ」は、カスタードクリームを詰めた大小2つのシューを重ね、バタークリームで飾り付けたフランスの伝統菓子です。フランス語で「修道女」を意味するこのお菓子の名前は、大小のシューを重ねた形とバタークリームの装飾が、修道女の衣装や頭巾を連想させることに由来すると言われています。現在では二段重ねが一般的ですが、元々は大きなピエスモンテ(飾り菓子)だったとされています。特にパリでは親しみのあるお菓子として、多くの人に愛されており、その愛らしい見た目と、バタークリームのコク、カスタードクリームの優しい甘さが特徴です。パティスリーのショーケースを華やかに彩る、見た目も楽しい一品です。

結婚式を祝う円錐形の菓子:クロカンブッシュ

「クロカンブッシュ」は、フランスの結婚式に欠かせない伝統的なお祝い菓子です。小さなシュークリームをカラメルで接着し、円錐形に積み上げて作られます。その名前は、「カリカリした茂み」という意味のフランス語に由来し、食べた時のカラメルの音を表しているとされています。新郎新婦の幸福を願うシンボルとして、またゲストへの感謝の気持ちを伝えるお菓子として、結婚式で存在感を放ちます。カラメルの飴細工や花で美しく飾り付けられ、見た目にも豪華で、祝宴を盛り上げます。

修道院生まれのユニークスイーツ:ペ・ド・ノンヌ

「ペ・ド・ノンヌ」は、修道院で生まれたお菓子で、「尼さんのおなら」という少し変わった名前が印象的です。揚げたシュー生地に砂糖をまぶしただけのシンプルなお菓子ですが、その味わいは格別。口に入れると、その軽さとフワフワした食感に驚かされます。「尼さんのため息」という別名もあり、その軽やかさを表現しています。名前の由来は様々で、揚げた時の音や生地の膨らみ、修道女が思わず漏らす感動の声など、諸説あります。名前をためらう方のために、「スピール・ド・ノンヌ」という呼び名も用意されています。素朴ながらも奥深い味わいが魅力の伝統的なお菓子です。

シュー生地のルーツ?ドイツの揚げ菓子:クラプフェン

「クラプフェン」は、シュー生地の起源とも言われる、ドイツの伝統的な揚げ菓子です。中世ヨーロッパ発祥と言われ、ふわふわのイースト生地を揚げて作られる、ドーナツのようなお菓子です。中にはジャムやクリームが詰められていることが多いです。1581年の文献には、クラプフェンの製法が詳しく記されており、その歴史の深さが伺えます。ドイツでは特に、謝肉祭の時期に様々な種類のクラプフェンが登場し、お祭りを盛り上げます。イースターやクリスマスなどの祝いの席でも食べられる、ドイツで愛されるお菓子で、そのバリエーションの豊富さも魅力です。

雪片とクリームの絶妙な組み合わせ:フロッケンザーネトルテ

ドイツを代表するお菓子の一つ、「フロッケンザーネトルテ」は、薄く焼いたシュー生地と、軽やかな生クリーム、甘酸っぱいサワーチェリーを何層も重ねて作られます。「フロッケン」は「雪片」、「ザーネ」は「生クリーム」を意味し、その名前は見た目の美しさと、クリームの雪のような白さを表しています。シュー生地の優しい食感、生クリームのまろやかさ、サワーチェリーの爽やかな酸味が、絶妙なハーモニーを生み出し、ドイツのカフェで人気のデザートとなっています。見た目も華やかで、コーヒータイムにぴったりのケーキです。

父の日に味わうナポリの伝統菓子:ゼッポレ

イタリア、特にナポリで愛されている「ゼッポレ」は、伝統的なお菓子です。毎年3月19日の聖ヨセフの日に、イタリアの父の日にあたる祝日として、家族で食べる習慣があります。揚げたシュー生地をベースに、カスタードクリームやリコッタチーズクリーム、フルーツのゼリー、たっぷりの粉砂糖などで華やかに飾り付けられます。シュー生地は焼いたものもあり、地域や家庭によって様々なバリエーションがあります。一口食べると、揚げた生地の香ばしさと、クリームの濃厚さ、フルーツのフレッシュさが広がり、家族の絆を深めるお祝いの時間を彩ります。

アイスランドの伝統菓子:ボッルダグル

アイスランドには、「ボッルダグル」という特別なシュークリームがあります。これは、シュー生地にジャムとクリームをたっぷりと詰め、チョコレートでコーティングした甘美な一品です。特に「Bollidagur(ボッルダグル)」、別名「bun day」と呼ばれるイースター前の祝日には、独特な習慣が存在します。子供たちは装飾された棒を使って、家族や友人の背中を優しく叩き、そのお礼としてボッルダグルを要求するのです。お祭り気分と遊び心が融合した、美味しく楽しい伝統菓子と言えるでしょう。

スペインの伝統菓子:ティビア

スペインの伝統的なシュー菓子「ティビア」は、その名の通り「骨」を連想させるユニークな形状をしています。「ティビア」という名前は、ラテン語で「脛骨」を意味する「tibia」に由来すると言われており、細長い骨のような形が特徴的です。サクサクとした食感に焼き上げられたシュー生地の中には、なめらかな生クリームと濃厚な卵黄クリームが贅沢に詰められています。そのインパクトのある見た目と、クリームの芳醇な風味が絶妙に調和し、スペインの菓子店では定番のデザートとして広く愛されています。

まとめ:シュー菓子の豊かな世界を堪能しよう

日本で広く親しまれているシュークリームですが、世界各地で独自の進化を遂げ、多様な「シュー菓子」として親しまれています。この記事で紹介したように、それぞれのシュー菓子には、その土地の歴史や文化、人々の想いが込められており、その進化の過程は非常に興味深いものです。フランスのエレガントなエクレアから、ドイツのお祝いに欠かせないクラプフェン、イタリアの家族の集まりで楽しまれるゼッポレ、そしてアイスランドのボッルダグルやスペインのティビアまで、形も味わいも千差万別です。日本国内でも、これらの世界各地のシュー菓子を味わえる機会は増えてきています。ぜひ、見かけた際には、その奥深い世界を体験してみてはいかがでしょうか。シュー生地が持つ無限の可能性と、各国の文化が育んだユニークな魅力を、ぜひ味わってみてください。


シュークリームの「シュー」とは、何を意味するのでしょうか?

シュークリームの「シュー」は、フランス語で「chou」、つまり「キャベツ」を意味します。丸く膨らんだシュー生地の形状が、キャベツに似ていることに由来して名付けられました。

シュークリームを日本に紹介したのは?

シュークリームが日本に伝わったのは、フランス人のサミュエル・ピエールです。彼は幕末から明治時代初期にかけて、横浜で洋菓子店を経営していました。

エクレアの名前の由来や考案者は?

エクレアの語源は、フランス語の「エクレール(稲妻)」です。名前の由来には、すぐに食べ終わってしまう様子や、表面のフォンダンの輝きが稲妻に似ていること、また、クリームが飛び出さないように素早く食べる必要があることなど、いくつかの説があります。考案者は、19世紀の有名な菓子職人アントナン・カレームだとされています。

パリブレストがリング状である理由は何ですか?

パリブレストは、パリとブレストを結ぶ自転車競技を記念して作られたお菓子です。自転車の車輪、特にリムの形をかたどって、リング状に作られたと言われています。

クロカンブッシュはどのような機会に食べられるのですか?

クロカンブッシュは、フランスにおいて主に結婚式で供される伝統的なお祝いのお菓子です。小さなシュークリームを円錐形に積み重ねて作り、新郎新婦の幸福を祈る意味が込められています。

アイスランドの「ボッルダーグル」とは?どんなお菓子で、どのような習慣があるの?

アイスランドでは、「ボッルダーグル」という日に特別なシュークリームが食べられます。それは、シュー生地の中に甘酸っぱいジャムと濃厚なクリームをたっぷりと詰め込み、上からチョコレートをかけた贅沢な一品です。この「ボッルダーグル」は、イースターの少し前に祝われる日で、面白い習慣があります。人々は飾り付けられた棒を使って、冗談めかしてお互いのお尻を軽く叩き、そのお礼としてこの特別なシュークリームを要求するのです。

スペインの「ティビア」ってどんなシュークリーム?特徴は?

スペインには、「ティビア」という独特なシュークリームがあります。その名前が示すように、骨の形をしているのが特徴的な、伝統的なお菓子です。外側はサクサクとした食感のシュー生地で、中にはとろけるような口当たりの生クリームと、風味豊かな卵黄クリームがたっぷりと詰まっています。見た目のユニークさと、口の中に広がる奥深い味わいが魅力です。

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