ピーマンの意外な一面:辛さの原因、品種の見分け方、そして美味しく食べる秘訣
お店で買ったピーマンが予想外に辛かったり、家庭菜園で育てたピーマンがどうにもこうにも辛かったり…。そんな経験はありませんか?通常、ピーマンは甘みのある野菜として認識されていますが、時折その期待を裏切る辛さを持つことがあります。この記事では、ピーマンが辛くなる理由を科学的な視点から徹底的に解き明かします。この記事を読めば、もう辛いピーマンに困惑することなく、ピーマンの奥深い魅力を存分に味わえるようになるでしょう。

ピーマン、ししとう、唐辛子の基礎知識:辛さの遺伝子が語ること

日々の食卓でお馴染みのピーマン、ししとう、そして多種多様な唐辛子は、実はすべてナス科トウガラシ属に属する、いわば「親戚」のような関係にあります。この事実に触れると、「なぜピーマンは辛くないのか?」「ししとうの中に辛いものが混ざっているのはなぜ?」といった疑問が湧き上がってくるのではないでしょうか。ここでは、これらの野菜の基本的な分類を整理し、それぞれの辛さを決定づける遺伝子の働きについて詳しく解説していきます。

ピーマンは「甘味種唐辛子」。本来、辛味は存在しない

ピーマンという名前は、フランス語で唐辛子全般を指す「piment(ピマン)」に由来すると言われており、日本においては「甘唐辛子」という別名を持ちます。この名前が示すように、ピーマンは唐辛子の一種でありながら、辛味成分である「カプサイシン」を作り出すための遺伝子「Pun1」が機能しないため、本来は辛くありません。つまり、カプサイシンを生成する能力を持たない品種が、「ピーマン」として分類されるのです。一般的に、緑色のピーマンは未成熟な状態で収穫されますが、成熟が進むと赤、オレンジ、黄色へと色を変え、パプリカとして親しまれます。パプリカもまた、カプサイシンを持たない甘味種であり、豊富な栄養と甘さが特徴です。

ししとうは甘味種だが、カプサイシンを生成する可能性を秘めている

ピーマンとよく似た細長い形状の「ししとう」は、正式名称を「シシトウガラシ」といい、ピーマンと同様に甘味種に分類されます。しかし、ししとうはピーマンとは異なり、カプサイシンを生成するための遺伝子機能が潜在的に備わっています。通常は種を形成することが優先されるためカプサイシンの生成は抑制されていますが、特定の条件が重なるとカプサイシンが蓄積され、結果として辛いししとうが生まれることがあります。この「時々辛いししとうに遭遇する」という現象は、多くの方が経験しており、ある種のスリルとして楽しむ人もいるほどです。ししとうの辛さが生まれるメカニズムについては、後のセクションで詳しく解説します。

唐辛子は辛味の強い種類、カプサイシンが豊富

一般的に「唐辛子」として知られている品種の多くは、辛味種に分類され、カプサイシンをたくさん含んでいます。このカプサイシンが、舌にある痛みを感知する神経を刺激し、独特の辛さを生み出します。ハバネロや、タバスコでおなじみのタバスコペッパー、鷹の爪などが、代表的な辛味種です。唐辛子は、辛さのレベルによって多種多様な品種が存在し、世界中で料理の風味付けや調味料として広く使われています。

ピーマンが辛くなる3つの主な理由と実態

本来は辛くないはずのピーマンが辛く感じられる場合、いくつかの理由が考えられます。これらの理由は大きく分けて、そもそもピーマンではなかったという「品種の間違い」、ピーマンと唐辛子が交配して遺伝的に変化した「交雑」、そして特定の環境下でカプサイシンが増加する「外部からのストレス」の3つが考えられます。それぞれの理由について、具体的な例を挙げながら詳しく説明していきます。

1. ピーマンではない可能性:見た目が似ている辛い唐辛子の種類

ピーマンと思って食べたものが実は辛かったという場合、それはピーマンと見た目が非常によく似ているものの、辛み成分であるカプサイシンを含む別の唐辛子の種類だった可能性があります。特に、家庭菜園で育てられたものや、農産物直売所などで購入した野菜の場合、このような誤りが起こりやすいです。見た目だけではほとんど区別できないため、知らずに辛い唐辛子を食べてしまうこともあります。ここでは、ピーマンと間違えやすい代表的な辛い唐辛子の種類をいくつかご紹介します。

見た目がピーマンにそっくりで辛い地域の在来種

日本各地には、昔から栽培されてきた在来種の唐辛子が数多く存在し、その中にはピーマンと見分けがつかないほどよく似た外観を持つものがあります。これらの品種は、それぞれの地域の食文化に深く根付いており、独特の辛さと風味で親しまれています。

  • ぼたんこしょう(牡丹胡椒) 長野県中野市豊田地区の斑尾山麓で、昭和初期より前から栽培されてきた地域の在来種の唐辛子です。根、葉、茎、花、果実がピーマンと非常によく似ており、栽培している間もほとんど見分けがつきません。最大の特徴は、実の先端周辺にある深い溝で、この形が「牡丹」の花に似ていることから名付けられました。辛味は主に種が付いている胎座と呼ばれる部分に集中しており、その他の果肉部分は比較的甘いため、胎座を取り除いて調理すれば辛さを抑えることができます。しかし、丸ごと調理すると、そのピリッとした辛さがアクセントとなり、味噌漬けや炒め物、薬味として幅広く利用されています。
  • 富士ししとう 長野県小諸地方で栽培されている地域の在来種の唐辛子で、昭和初期に朝鮮半島から持ち込まれたものが起源とされています。小さな丸いピーマンのような形をしており、未熟なうちは辛味が少ないですが、熟すと辛くなる傾向があります。そのため、柔らかい若い実を収穫して食べることが多いです。炒め物や煮物など、さまざまな料理で利用され、その風味豊かな味わいが地域の人々に愛されています。
  • かぐらなんばん(神楽南蛮) 「ぼたんこしょう」と同様に、ピーマンによく似た唐辛子の一種で、新潟県中越地方で栽培されてきました。ぼたんこしょうの産地とは昔から交流があったことから、もともとは同じ品種だったと考えられています。特徴的な深い溝は、神楽の面に見立てて名付けられたと言われています。辛さにはばらつきがあるものの、ぼたんこしょうと同様に種の周辺が辛く、果肉は比較的甘いのが特徴です。特に山古志村で栽培されるものは「山古志かぐらなんばん」としてブランド化されており、その独特の風味と辛さが評価されています。

世界の激辛トウガラシ品種にも見た目が似たものが

日本固有の品種に限らず、世界にはピーマンと外見がよく似ていながら、非常に強い辛味を持つトウガラシが数多く存在します。これらのトウガラシを誤って口にすると、想像をはるかに超える辛さに襲われる危険性があるため、特に注意が必要です。

  • ロコトペッパー(Rocoto Pepper) 南米アンデス地域原産のトウガラシの一種で、外観は小型で丸いピーマンに似ていますが、非常に強い辛味を持っています。果肉そのものが辛く、特に種子やその周辺部分は激辛であるため、調理する際は手袋を着用するなど、取り扱いに細心の注意を払う必要があります。伝統的なアンデス料理には不可欠な食材であり、サルサソースや煮込み料理の風味付けとして利用されます。
  • スコッチボネット(Scotch Bonnet) ジャマイカ料理で頻繁に使用される激辛トウガラシで、世界的に知られる「ハバネロ」の仲間です。小型のピーマンやパプリカを押しつぶしたような独特の形状をしており、赤色や黄色の鮮やかな色合いが一般的です。フルーティーな香りと強烈な辛味が特徴で、カリブ海地域の料理や辛味ソースの材料として重宝されています。
  • ブートジョロキア(Bhut Jolokia) かつて「世界で最も辛いトウガラシ」としてギネス世界記録に認定された激辛トウガラシです。見た目は赤くて小さいピーマンによく似ているため、誤って触れたり口にしたりしないよう、格別に注意が必要です。極めて強い辛味を持つため、取り扱いには最大限の注意を払い、少量であっても料理に加える際は慎重に量を調整することが重要です。カレーやホットソースなど、究極の辛さを求める料理に使われています。

スペイン生まれの「パドロン」と日本のブランド「遠野パドロン」

厳密にはししとうの一種ですが、ピーマンとししとうの中間的な形状をしており、辛さにばらつきがあることで知られているのが「パドロン」です。正式名称は「ピメントス・デ・パドロン」といい、スペインのパドロン地方のトウガラシが名前の由来となっています。原産地のパドロン地方は比較的冷涼な気候のため、それほど辛くならないのが特徴ですが、日本では夏の暑さなどの栽培環境の影響で、辛いものが多くなる傾向があります。
近年、ビールのホップ栽培で名高い岩手県遠野市で生産されている、大ぶりで非常に辛い「遠野パドロン」というブランドが注目を集めています。遠野パドロンは、加熱すると辛味がやや和らぐ性質がありますが、生のものを最初に口にすると甘みを感じ、その後から強烈な辛味と刺激が押し寄せるという独特の体験ができます。特に完熟させた赤い「遠野赤パドロン」は生産量が少ないため、入手困難になるほどの人気を誇っています。パドロンは素揚げやフリットにして、塩とレモンでシンプルに味わうのが一般的な食べ方です。辛いものに当たるかもしれないというドキドキ感も含めて、そのユニークな食体験が魅力となっています。

2. ピーマンと唐辛子の「交雑」による辛み:世代を超えた遺伝的変化

本来カプサイシンを生成しないピーマンが辛くなる、もう一つの大きな要因は、ピーマンが辛いトウガラシの品種と「交雑」してしまうことです。これは、特に家庭菜園などでピーマンと唐辛子を近接して栽培している場合に発生しやすく、その影響はその年の果実だけでなく、次世代にも受け継がれる可能性があります。ここでは、この交雑のメカニズムと、それによって生じる辛いピーマンについて詳しく解説します。

「ピーマンルーレット」が示す交雑のメカニズム

ピーマンと唐辛子は同じナス科トウガラシ属に属しているため、互いの花粉が受粉し、交雑した種子が生成されることがあります。ただし、その年に受粉してできた果実自体は、まだ元の親の遺伝的特性を強く受け継いでいるため、ピーマンの株にできた果実は辛くなく、唐辛子の株にできた果実は辛いままです。問題となるのは、この交雑によってできた種子を採取し、翌年以降にその種子を播種して栽培した場合です。
この交雑種子から育った植物の果実には、ピーマンの性質を持つものと、唐辛子の辛味を持つものが混ざって現れることがあります。まるでロシアンルーレットのように、同じ株から収穫されたピーマンでも、辛いものと辛くないものが混在する現象を、一部では「ピーマンルーレット」と呼ぶ人もいます。これは、親から子へと受け継がれる遺伝子の組み合わせによって、辛味成分であるカプサイシンを生成する遺伝子が発現するかどうかが決定されるためです。
市販されているピーマンの種子は、花粉などが混入しないように厳重に管理されているため、この現象が起こる可能性は非常に低いと言えます。しかし、自家採種を行っている家庭菜園では、毎年ピーマンと唐辛子を一緒に植えていると、種子が徐々に辛いピーマンへと変化していく可能性が十分に考えられます。この交雑は、時には唐辛子のような形をしたピーマンができたりと、外見の変化を伴うこともあります。

交配が生み出す新しい味、「ピリ辛ピーマン」という選択肢

ピーマンと唐辛子の特徴を併せ持つ、新しい品種の開発も進んでいます。例えば、「ピリ辛ピーマン」といった名前で種子が販売されており、これらは見た目は普通のピーマンと変わりませんが、わずかに唐辛子の辛み成分を含んでいます。そのため、マイルドな辛さを楽しむことができます。これらの品種は、長野県の伝統野菜「ぼたんこしょう」をルーツに持つものが多く、ピーマンの一種として市場に出回っています。普通のピーマンでは物足りないけれど、激辛唐辛子はちょっと…という方におすすめです。

家庭菜園での注意点:交雑と種子の影響

もし家庭菜園でピーマンと唐辛子を一緒に育てているなら、昆虫や風によって花粉が運ばれ、交雑が起こりやすくなります。その年に収穫したピーマン自体は辛くないかもしれませんが、採取した種子には唐辛子の辛み成分を作り出す遺伝子が組み込まれている可能性があります。翌年以降、その種子をまくと、辛いピーマンが育つことがあるのです。家庭菜園で辛くないピーマンを確実に収穫したい場合は、ピーマンと唐辛子をできるだけ離して植えるか、自家採取せずに市販の種子を毎年購入するのがおすすめです。

外部環境がカプサイシンを増やす? ししとう・パドロンに見られる特徴

ピーマンが辛くなる原因の一つとして、「外部からの刺激」が挙げられることがあります。しかし、これは特にししとうやパドロンなど、カプサイシンを作り出す性質を持つ品種によく見られる現象です。本来辛くないピーマンの場合、このメカニズムはあまり関係ありません。ここでは、ししとうやパドロンが外部環境によって辛くなる理由と、通常のピーマンとの違いについて詳しく説明します。

カプサイシン増加のメカニズム:高温や乾燥などの影響

ししとうやパドロンといった甘味種の唐辛子は、栽培中に高温、乾燥、強い日差し、水不足、栄養不足といった様々なストレスを受けると、「単為結果」という現象が起こることがあります。単為結果とは、受粉しなくても実がなる現象で、この際に種子ができなかったり、非常に少なくなったりします。実は、種子の皮を作るための材料と、辛み成分であるカプサイシンを合成するための材料は同じなのです。
通常、植物は受粉が順調に行われれば、種子を作ることを最優先します。しかし、外部環境の影響で単為結果が起こり、種子ができない、または少なくなると、種子形成に使われなかった分の材料が、カプサイシンの合成に使われてしまいます。その結果、実の中のカプサイシン量が増えて、普段は辛くないししとうやパドロンが辛くなってしまうのです。これは、植物が厳しい環境の中で子孫を残そうとするための、一種の生存戦略だと考えられています。

完熟によって増す辛味成分

トウガラシ全般の特徴として、未成熟な状態では緑色の実が、熟すにつれて赤色、オレンジ色、黄色などへと変化します。これは、クロロフィルが分解され、カロテノイドといった色素が作られるためです。そして、辛味の元となるカプサイシンは、実が熟していく過程で生成・蓄積される性質を持っています。そのため、ししとうやパドロンなどの辛味種トウガラシは、十分に熟したものほど辛味が強くなる傾向があります。緑色のものよりも、赤や黄色の熟したものを食べた方が辛く感じるのは、このためです。完熟した実は、種子の成熟も進み、植物としての生育サイクルが終わりに近づいていることを意味します。

ピーマンとししとう:カプサイシン生成能力の違い

すでに述べたように、ピーマンにはカプサイシンを作るための遺伝子機能が備わっていません。そのため、ししとうやパドロンに見られるような、栽培環境によるストレスでカプサイシンが増加するという現象は、通常のピーマンでは起こりません。植物ホルモンを用いて人為的に単為結果(種なし)を起こさせたとしても、ピーマンはカプサイシンを生成しなかったという実験結果も存在します。この事実は、ピーマンとししとうが同じ甘味種に分類される一方で、カプサイシン生成能力の有無において明確な遺伝的な差があることを示しています。したがって、「ピーマンが辛くなった」と感じる場合は、実際にはししとうやパドロンであるか、あるいは交雑によって辛味成分を持つようになったピーマンである可能性が高いと考えられます。

ピーマンの辛味:遺伝的な誤解と科学的な事実

ピーマンの辛味に関しては、様々な憶測や噂話が広まっています。特に、「近くに唐辛子を植えるとピーマンが辛くなる」という話はよく知られています。しかし、これらの現象がピーマンの果実の辛味に直接的な影響を与えるかどうかは、科学的に検証されています。ここでは、遺伝の法則に触れながら、ピーマンの辛味に関する一般的な誤解と、科学的な真実について解説します。

メンデルの法則:遺伝子の優性と劣性

遺伝子の働きを理解する上で、中学校で学習する「メンデルの法則」は非常に重要です。親から子へと受け継がれる遺伝子は、両親それぞれの遺伝子の組み合わせによって決定されます。この時、形質として表れやすい遺伝子を「優性遺伝子」、表れにくい遺伝子を「劣性遺伝子」と呼びます。これは、遺伝子の性質が「優れているか劣っているか」という意味ではなく、両親から同じ遺伝子が二つ揃わないと形質として現れないものが「劣性」と呼ばれるのです。
例えば、血液型ではA型が優性、O型が劣性です。A型とO型の親から生まれた子供は必ずA型になり、O型同士の親から生まれた場合のみ子供がO型になります。トウガラシの辛味に関する遺伝子も同様で、辛味成分であるカプサイシンを生成する遺伝子は優性形質であり、ピーマンが持つ「辛くない」という性質は劣性形質として扱われます。

キセニア現象とピーマンの辛味の関係

「ピーマンの隣に唐辛子を植えると、キセニア現象によってピーマンが辛くなる」という話を耳にしたことがあるかもしれません。キセニア現象とは、受粉の際に、異なる品種の持つ優性遺伝子が種子に影響を与え、種子の形質が変化する現象です。ただし、重要な点は、この影響は**種子内部の胚乳組織に限定され、果実そのもの(私たちが食べるピーマンの部分)には及ばない**ということです。
よく知られた例として、種子を食べるお米があります。もち米の近くにうるち米を植えると、うるち米の花粉によってうるち米の性質が強く出てしまい、品質が低下することは農家の間では周知の事実です。しかし、唐辛子の辛味成分は、一部の非常に辛い品種を除き、主に果実の胎座や隔壁といった組織に蓄積されます。そのため、種子のみに影響するキセニア現象では、ピーマンの果実が辛くなるという現象を説明できません。したがって、唐辛子の近くで栽培されたピーマンが、キセニア現象によってその年に収穫された果実が辛くなるということは、科学的には考えにくいと言えます。

メタキセニア現象に関する研究結果

キセニア現象が種子にのみ影響を与えるのに対して、種子以外の果実組織にも他の品種の影響が現れる現象を「メタキセニア現象」と呼びます。リンゴやナツメヤシなどの果物ではこの現象が確認されており、果実の成熟速度、サイズ、糖度などに影響を与えることが知られています。しかし、唐辛子の研究においては、メタキセニア現象は確認されていません。
「トウガラシの辛味に関する生理学的ならびに遺伝学的研究 V : 辛味の遺伝 Physiological and Genetical Studies on the Pungency of Capsicum」といった研究論文において、辛味のない品種に辛い品種の花粉を人工的に受粉させても、その年にできた果実の辛味成分量に変化は見られなかったと結論付けられています。
これらの研究結果から、「ピーマンと唐辛子を隣接して栽培しても、その年に収穫されるピーマン自体が辛くなることはない」ということが科学的に立証されています。ただし、注意点として、収穫したピーマンの種子を翌年以降に蒔いて育てた場合、交雑によって辛いピーマンが育つ可能性はあります。このことから、ピーマンの辛さに関する誤解の多くは解消されると考えられます。

もし辛いピーマンに遭遇してしまった時の対処法とおすすめレシピ

もし予期せず辛いピーマンに当たってしまった場合、諦めてしまうのはもったいないことです。辛いピーマンは、辛さを抑えて食べやすくすることも、逆にその辛さを活かして新しい料理に挑戦することも可能です。ここでは、辛いピーマンの辛さを和らげる下処理の方法と、その辛味を美味しく楽しむためのレシピを紹介します。「ピーマンルーレット」で運悪く辛いピーマンに当たってしまっても、これらの方法を知っていれば、料理の幅が広がります。

辛味を軽減させる下処理のコツ

「辛いのは苦手だけど、せっかく手に入れたピーマンだから美味しく食べたい!」という方のために、辛味を和らげる効果的な方法をご紹介します。唐辛子の辛味成分であるカプサイシンは、ピーマン全体に均一に分布しているわけではありません。特に辛味が強く感じられるのは、次の2つの部分です。

  • 種が付着している部分(胎座): ピーマンの内側で種子がくっついている白い部分です。
  • 果肉を区切る部分(隔壁): ピーマンの内側で、果肉を仕切っている白い筋の部分です。

これらの白い部分(胎座と隔壁)に辛味成分が集中しているため、これらを丁寧に除去することで、辛さを大幅に軽減できます。具体的な手順としては、ピーマンを縦半分にカットし、スプーンなどを使用して種と一緒にこれらの白い部分をしっかりと取り除きます。この下処理を行うことで、辛いピーマンに当たる確率を大幅に減らし、安心して料理に使うことができます。非常に辛い唐辛子を調理する際にも同様の手法が用いられるため、辛いものが苦手な方はぜひお試しください。

刺激的な辛さが食欲をそそる!辛いピーマン活用レシピ

独特の辛味が魅力の辛いピーマンは、普段の料理に加えるだけで、食卓に新しい風を吹き込んでくれます。その刺激的な辛さは、食欲増進効果も期待でき、お酒との相性も抜群です。ここでは、辛いピーマンの個性を存分に味わえるレシピをご紹介します。

カリッとした食感と辛味が絶妙なピーマンのフリット

辛いピーマン、特にパドロンを使った料理として人気が高い素揚げを、さらにアレンジしたフリットはいかがでしょうか。フリットは、イタリア料理で「揚げ物」を意味する言葉で、ここではメレンゲを加えてふんわりと仕上げた衣でピーマンを包みます。一口食べれば、衣の軽快な食感と、ピーマンのピリッとした辛さ、そして溢れ出すジューシーな旨味が口の中に広がり、お酒が進むこと間違いなしです。

材料:
  • 辛いピーマン
  • 薄力粉 80g(200mlカップで約8割)
  • 片栗粉 大さじ1
  • 冷えたビール 100ml
  • レモン
  • 揚げ油

作り方:
  1. 薄力粉と片栗粉をボウルに入れ、冷えたビールを少しずつ加えながら、泡立て器で丁寧に混ぜて衣を作ります。ビールを使うことで、サクサクとした食感の衣に仕上がります。
  2. 辛いピーマンは、ヘタと種を取り除き、食べやすい大きさにカットします。
  3. カットしたピーマンに衣をしっかりとまとわせ、170℃に熱した油で、カラッと揚げます。
  4. 揚げたてに塩を軽く振り、レモンを絞って、熱々をお召し上がりください。

このフリットは、冷めても美味しくいただけるので、お弁当のおかずとしてもおすすめです。

アツアツご飯にぴったり!絶品ピーマン味噌

ご飯のお供に最適な万能調味料をご紹介します。通常、ピーマン味噌はピーマンと唐辛子を組み合わせて作られますが、辛いピーマンを使えば、唐辛子を加える必要はありません。ピーマンの風味と味噌のコクが、辛味によって引き立てられ、奥深い味わいを生み出します。

材料:
  • 醤油 800ml
  • 砂糖(できればザラメ) 300g
  • 米麹 300g
  • 辛いピーマン 400g

作り方:
  1. まず、醤油麹を作ります。醤油と砂糖(できればザラメ)を鍋に入れ、火にかけ、沸騰直前で火を止め、粗熱を取ります。
  2. 粗熱が取れたら、ほぐした米麹を加え、丁寧に混ぜ合わせます。その後、密封できる袋に入れ、70℃程度のお湯を入れた炊飯器で、蓋を開けたまま一晩保温します。こうすることで、麹がトロトロになり、旨味が凝縮された醤油麹になります。時間に余裕があれば、ぜひこの工程を加えてみてください。
  3. 鍋に醤油麹を入れ、沸騰したら、細かく刻んだ辛いピーマンを加えます。
  4. 中火から弱火で、じっくりと40分ほど煮込みます。
  5. 最後に強火にし、ヘラで混ぜながら水分を飛ばし、全体がもったりとしてきたら完成です。

出来立てでも美味しくいただけますが、3ヶ月ほど熟成させると、味がより一層まろやかになり、絶妙な美味しさになります。常温で1年ほど保存できるので、多めに作っておくことをおすすめします。辛いピーマンが手に入らない場合は、唐辛子を少量(1/8程度)加えて、辛さを調整してください。ご飯のお供だけでなく、おにぎりの具材や、野菜スティックのディップとしてもお楽しみいただけます。

まとめ

この記事では、本来甘いはずのピーマンがなぜ辛く感じられるのか、その多様な原因と科学的根拠を詳細に解説してきました。ピーマンが辛いと感じる主な原因は、「ピーマンによく似た辛味のあるトウガラシ品種との混同」、「ピーマンとトウガラシの交配による遺伝的な変化」、そして「ししとうやパドロンなどの品種が外的要因によってカプサイシンを増やす」という3点にまとめることができます。
ピーマンそのものはカプサイシンを合成する機能を持つ正常な遺伝子を持たない甘味種であり、キセニアやメタキセニアによって実が辛くなることは科学的に否定されています。しかし、家庭菜園での交雑によって生まれた次世代のピーマンが辛味を持つ可能性や、「ぼたんこしょう」や「パドロン」のような見た目が似た辛い品種が存在するという事実は、ピーマンに対する私たちの認識を大きく変えるかもしれません。
もし辛いピーマンに遭遇してしまっても、胎座や隔壁といった辛味成分が集中する箇所を取り除くことで、辛さをある程度抑えることができます。また、その特徴的な辛さを活かして、フリッターやピーマン味噌など、様々な料理に活用することで、新しい食の体験を楽しめます。ピーマンは独特の苦味や香りで苦手な人もいますが、豊富な栄養価と美しい見た目を持つ優れた野菜です。辛いピーマンも、その性質を理解し工夫することで、料理のバリエーションを広げ、さらにその魅力を引き出すことができるでしょう。もしかしたら、一度辛いピーマンの美味しさを知ってしまえば、普通のピーマンでは満足できなくなるかもしれません。

よくある質問

なぜピーマンは辛くなるのか?

ピーマンが辛く感じられる主な原因として、以下の3つが考えられます。1つ目は、外見がピーマンにそっくりな「ぼたんこしょう」や「パドロン」といった辛いトウガラシの仲間を、ピーマンと勘違いして口にした場合です。2つ目は、ピーマンと辛いトウガラシが自然交配し、その種から育った次の世代のピーマンが、遺伝的に辛味を受け継いだ「交雑」によるものです。3つ目は、ししとうやパドロンのように、カプサイシンを生成する能力を持つ品種が、高温や乾燥などの「環境ストレス」の影響でカプサイシンを大量に生成した場合です。ただし、本来のピーマンはカプサイシンを作る遺伝子を持っていないため、環境が変わっただけで辛くなることはありません。

その辛いピーマンは、本当にピーマン?

手元にある辛いピーマンには、大きく分けて2つのパターンが考えられます。1つは、見た目はピーマンに非常によく似ているものの、実際には別の種類の辛いトウガラシ(例:ぼたんこしょう、神楽南蛮、ロコトなど)であるケースです。もう1つは、もともとはピーマンの品種だったものが、近くに植えられた唐辛子と交配した結果、遺伝的に辛味成分を持つようになったケースです。この場合は、厳密に言うと「ピーマンと唐辛子の交雑種」であり、純粋なピーマンとは異なる性質を持っていると言えます。

家庭菜園でピーマンが刺激的な辛さになる理由とは?

自家栽培のピーマンが予想外に辛くなってしまう主な原因として、「交雑」が挙げられます。もし近くで辛い唐辛子を育てている場合、ミツバチや風が花粉を媒介し、ピーマンと唐辛子が自然に受粉してしまうことがあります。こうしてできた実の種には、唐辛子の辛味成分を作り出す遺伝子が組み込まれる可能性があり、翌年以降にその種をまいて育てると、辛いピーマンが収穫されることがあるのです。これは、しばしば「ピーマンルーレット」とも呼ばれ、同じ株から収穫したピーマンでも、辛いものとそうでないものが混ざり合うことがあります。

なぜ、ししとうが予想外に辛くなることがあるのでしょうか?

ししとうはピーマンと同じく甘味種に分類されますが、カプサイシンを生成する潜在的な遺伝子を持っています。通常はその辛味が出ないように抑制されていますが、栽培環境が厳しく、例えば極端な高温、乾燥、強い日差し、あるいは水や肥料の不足といった「ストレス」にさらされると、植物は種子を作るよりもカプサイシンを生成する方にエネルギーを費やすことがあります。その結果、ししとうが辛くなってしまうのです。さらに、ピーマンと同様に、唐辛子と交雑することで、辛味が増すことも考えられます。

辛くなってしまったピーマン、どうすれば辛さを和らげられる?

もし辛いピーマンの辛さを少しでも抑えたいのであれば、辛味成分であるカプサイシンが特に多く含まれている「胎座」と「隔壁」と呼ばれる白い部分を丁寧に取り除くのが効果的です。ピーマンを縦半分にカットし、スプーンなどを使って種と一緒に、これらの白い部分をしっかりとこそぎ落とすことで、辛さをかなり軽減させることができます。この方法は、非常に辛い唐辛子の辛さを調整する際にもよく用いられる一般的な下処理の方法です。

ピーマン辛いピーマン