知っておきたいぶどうの特徴:美味しさ、栄養、健康効果の秘密
甘くてジューシーなぶどうは、秋の味覚として多くの人に親しまれています。手軽に食べられる美味しさはもちろん、実は栄養もたっぷり。疲労回復を助けるブドウ糖や、若々しさを保つポリフェノールなど、健康と美容に嬉しい成分が豊富に含まれています。この記事では、ぶどうの知られざる魅力を徹底解説。美味しさの秘密から、栄養、期待できる健康効果まで、ぶどうの全てを紐解きます。さあ、ぶどうの奥深い世界へ飛び込んでみましょう。

ぶどうとは?その魅力と秘められた栄養パワー

ぶどうは、その手軽さと栄養バランスの良さから、昔から世界中で愛されてきたフルーツです。ぶどうの人気の秘密は、薄い皮を手でむける手軽さと、一粒ずつ口に運べるサイズ感にあります。これらの点が、ぶどうが多くの人に親しまれる理由の一つです。しかし、ぶどうの価値は、単なる手軽さだけではありません。ぶどうは優れた栄養価を持ち、日々の健康をサポートする役割も担っています。特に注目すべき栄養素は、ブドウ糖とポリフェノールです。ブドウ糖は、素早くエネルギーに変換されるため、疲労回復に効果的です。運動後や集中したい時など、エネルギーが欲しい時に適しています。さらに、ぶどうの皮や種には、ポリフェノールが豊富に含まれています。ポリフェノールには抗酸化作用があることで知られ、生活習慣病予防への貢献が研究されています。アントシアニンには、目の健康をサポートする働きがあると言われています。特に、黒や赤色のぶどうには、アントシアニンというポリフェノールが多く、目の疲れを和らげ、視力改善に役立つと言われています。このように、ぶどうは美味しく手軽に食べられるだけでなく、健康維持にも役立つ、まさに「優秀なフルーツ」と言えるでしょう。

ぶどう栽培の歴史と日本を代表する産地

ぶどうの栽培は、紀元前にまで遡る長い歴史を持っています。世界中で栽培されてきたぶどうは、大きく「ヨーロッパ系」と「アメリカ系」の2つのルーツに分類されます。日本の気候では、アメリカ系のぶどうが適しており、現在日本で栽培されている主要品種は、アメリカ系、またはアメリカ系とヨーロッパ系を掛け合わせた品種が中心です。日本におけるぶどう栽培の始まりには諸説あります。奈良時代の717年に僧侶の行基が中国から持ち込んだという説や、鎌倉時代の1186年に山梨県で固有品種「甲州」が発見されたという説が有力です。しかし、ぶどう栽培が本格的に広がり、産業として確立したのは明治時代以降です。近代的な栽培技術の導入と品種改良によって、現在の多様なぶどう品種が生まれ、全国各地で栽培されるようになりました。日本で最もぶどうの生産量が多いのは山梨県で、全国トップの生産量を誇ります。山梨県がぶどう栽培に適している理由は、日照時間が長いことが挙げられます。太陽の光をたっぷり浴びることで、ぶどうは甘く美味しく育ちます。また、昼夜の寒暖差が大きいことも、ぶどうの糖度を高める重要な要素です。夜間の冷え込みが糖分の消費を抑え、実に甘みが凝縮されます。さらに、ぶどうは雨に弱いですが、山梨県は降水量が比較的少ないため、病気になりにくく、健康に育つ条件が揃っています。このように、山梨県をはじめとする日本の主要なぶどう産地は、ぶどう栽培に最適な環境に恵まれています。

ぶどうの生態と栽培の特徴

ぶどうの樹は、一般的な果物とは異なる生育特性を持っています。例えば、みかん、柿、りんごなどの果物は、木が自立して上に伸びる「喬木性」ですが、ぶどうは「つる性」植物です。ぶどうのつるは、何かに巻き付いて成長し、最初は上へ伸びますが、途中から垂れ下がってきます。キウイフルーツも同様につる性です。そのため、支えとなる棚がないと、つるが地面を這ってしまい、湿度の高い日本では病気になるリスクが高まります。つる性の植物は成長が早く、ぶどうも例外ではありません。環境が良ければ、1年で10m以上伸びることもあります。また、枝が柔軟で曲げやすいため、栽培者は棚に合わせて自由に形を整えることができ、効率的な栽培が可能です。
ぶどうは、他の果樹に比べて比較的早く実がなるのも特徴です。「桃栗三年柿八年」という言葉があるように、実をつけるまでに長い年月がかかる果樹が多い中、ぶどうは植え付けから2〜3年で収穫できます。これは、梨やいちじくなど、比較的早く実をつける果樹と同じくらいの早さです。また、ぶどうの樹は、実りのピークが樹齢8年程度と比較的早く訪れます。一方で、柑橘類、りんご、柿などは10年以上ピークを維持するのに比べると、ぶどうの樹の寿命はやや短い傾向にあります。
さらに、ぶどうは土壌への適応範囲が広いことも特徴です。Aerenchyma formation in the root cortex can decrease root tissue density, increasing specific root length and surface area. Induction of root aerenchyma has been proposed to increase plant performance and improve carbon economy under drought in maize (Zhu et al., 2010). However, the direct transport of oxygen produced by photosynthesis from leaves to roots is not described as a primary mechanism for drought or waterlogging tolerance in grapevine or other fruit trees. (出典: Root traits contributing to plant productivity under drought, URL: https://www.frontiersin.org/journals/plant-science/articles/10.3389/fpls.2013.00442/full, 2013-11-05)実際に、大雨で畑が冠水しても収穫できた事例もあります。しかし、これはあくまで「生き延びる」ことができるというだけで、良質なぶどうを安定して生産するためには、適切な排水性を持つ土壌が不可欠です。ぶどう栽培では、これらの特性を理解し、適切な管理を行うことが、高品質なぶどうを育てる上で重要となります。

ぶどうの種類:生食用とワイン用は何が違う?

世界には1万種類以上ものぶどう品種があると言われていますが、大きく「そのまま食べる生食用」と「ワインなどの加工用」に分けられ、それぞれに異なる特徴があります。甘さという共通点を除けば、両者は正反対の性質を持っていると言えるかもしれません。生食用ぶどうは、生のまま食べるため、甘みが強く、渋みが少なく、皮や種も食べやすいように品種改良されています。皮が薄く、種なしの品種も多く、手軽に美味しく食べられることが重視されます。一方、美味しいワインを造るためには、甘みだけでなく、酸味と渋みが重要です。そのため、ワイン用ぶどうは、巨峰のような大粒のぶどうではなく、凝縮された小粒のぶどうが使われます。皮が厚く、種が大きい方が、醸造過程でタンニンなどの成分が抽出されやすく、複雑で豊かな味わいのワインになると考えられています。また、香りもワインの品質を左右する要素であり、品種によって独特の香りを持つものも多くあります。ただし、ワイン用にも生食用にも使われる品種もあり、明確に区別できないものもあります。現在、世界で栽培されているぶどうの約8割がワイン用ぶどうと言われています。

ワインの個性を決める葡萄:スティルワインの多彩なバリエーション

ワインの風味を左右する最も重要な要素の一つが葡萄の品種です。使用する葡萄によって、最終的なワインの種類は大きく異なります。炭酸を含まないスティルワインは、一般的に赤ワイン、白ワイン、ロゼワイン、そして甘口のデザートワインの4つに分類されます。多くの国では、通常、赤ワインと白ワインをブレンドしてロゼワインを製造することは認められていませんが、発泡性のロゼワインに関しては例外とされています。これらのワインは、葡萄の種類と製造工程の違いによって、独自の個性的な風味を持っています。

赤ワイン

赤ワインは、色の濃い黒葡萄を原料として作られます。葡萄の果実を皮ごと発酵させることで、皮に含まれる色素が抽出され、深みのある赤色のワインが生まれます。この製造方法によって、ワインに渋みや深み、複雑な香りが加わります。

白ワイン

白ワインは、緑がかった黄色の果皮を持つ白葡萄を使用して醸造されます。赤ワインとは異なり、葡萄を圧搾した後の果汁のみを発酵させるため、透明感のある色合いのワインが出来上がります。その結果、爽やかな酸味と繊細なアロマが際立つワインとなります。

ロゼワイン

ロゼワインは、赤ワインと同様に黒葡萄を使用しますが、製造方法は異なります。主な製法として、「セニエ法」と「直接圧搾法」があります。「セニエ法」では、赤ワインの発酵過程で一部の果汁を取り出し、その果汁を発酵させることで、淡い色合いのロゼワインを作り出します。「直接圧搾法」では、黒葡萄を収穫後すぐに軽く圧搾し、果皮からの色素抽出を最小限に抑えながら果汁を発酵させます。これらの方法により、ロゼワインは、みずみずしい果実味と、美しいバラ色の外観を持つワインとなります。

デザートワイン

デザートワインは、食後のひとときを彩る、甘美な味わいが特徴のワインです。その名の通り、デザートと共に、またはデザートの代わりとして楽しまれます。甘さを出すために砂糖を加えるのではなく、ブドウ本来の甘さを最大限に引き出す製法が用いられています。ブドウの糖度を限界まで高めたり、発酵を意図的に止めることで、自然な甘さを実現します。貴腐ブドウを使用したり、ブドウを凍らせて水分を取り除くなど、特殊な技術が用いられることもあります。

フルーツ用ぶどうの分類:果皮の色で楽しむ3系統

生で食べるぶどうは、果皮の色によって大きく3つのグループに分けられます。それは、黒系、赤系、黄緑系です。この色の違いは、アントシアニンという色素の量によって決まります。アントシアニンが多いほど、果皮は濃い色になり、黒っぽく見えます。色だけでなく、系統ごとに味や香りに特徴があるため、それぞれの違いを知ることで、より深くぶどうを楽しむことができます。

生食用ぶどうの代表品種とその特徴・旬

日本にはたくさんの種類のぶどうがあり、それぞれ個性的な美味しさを持っています。ここでは、特に人気のある品種を、果皮の色ごとに分けて、特徴や旬の時期を詳しく解説します。これらの情報を参考に、お好みのぶどうを見つけて、旬の時期に味わってみてください。

黒色系のぶどう:深い味わいと豊かな香り

黒色系のぶどうは、濃厚な味わいと芳醇な香りが魅力です。ぶどうと言えば、濃い紫色のイメージを持つ人も多いでしょう。ここでは、特に人気の高い黒色系ぶどうの品種を5つご紹介します。

巨峰

「ぶどうの王様」とも呼ばれる巨峰は、1955年に商標登録された日本を代表するぶどうです。その名前は、誕生した場所から望める雄大な富士山に由来すると言われています。巨峰が登場するまでは、小粒のぶどうが一般的でしたが、大粒で存在感のある巨峰は、当時の人々に驚きと喜びをもたらしました。この革新的な品種は、静岡県伊豆の国市で生まれ、その後福岡県での栽培成功を経て、全国へと広がりました。現在、長野県は巨峰の生産量で日本一を誇っています。巨峰の魅力は、芳醇な香りと、強い甘みの中に感じられる爽やかな酸味の絶妙なハーモニーです。かつては種ありでしたが、近年では食べやすい種なし巨峰も多くなっています。この独特な風味が、多くの人々に愛されています。また、巨峰は優れた親品種としても知られ、近年人気の「ナガノパープル」や「ピオーネ」などの品種も、巨峰を親として開発されたものです。巨峰の旬は通常8月から10月頃ですが、ハウス栽培されたものは5月下旬から7月頃に市場に出回ります。

ピオーネ

ピオーネは、日本のぶどう品種の中でも特に人気が高く、巨峰とマスカットの優れた特性を受け継いでいます。その名前はイタリア語で「開拓者」を意味し、ぶどうの新しい時代を築く品種として期待されました。粒は大きく、果肉がしっかりとしていて食べ応えがあり、豊かな香りと濃厚な甘み、そしてバランスの取れた酸味が特徴です。元々は種あり品種でしたが、栽培過程でジベレリン処理を行うことで種なしぶどうとして流通することが一般的です。特に種なしに改良されたものは「ニューピオーネ」として販売され、手軽に楽しめるため、子供から年配の方まで幅広い世代に親しまれています。旬の時期には、ピオーネを使った様々なスイーツが登場し、その人気の高さがうかがえます。主な産地は岡山県、山梨県、長野県などで、夏の終わりから秋にかけて多く市場に出回ります。

藤稔

藤稔(ふじみのり)は、ぶどうの中でも際立って粒が大きい品種として知られています。その一粒は、大きいものだと500円玉ほどの大きさになり、その存在感に驚かされます。口に入れると、濃厚な甘みと、たっぷりの果汁があふれ出し、最高の満足感を与えてくれます。果皮は黒に近い濃い紫色をしており、果肉は柔らかく、皮が剥きやすいのも特徴です。主な産地は山梨県、神奈川県、長野県などで、8月から9月頃が旬です。特に山梨県のJAふえふき御坂支所から出荷される藤稔のうち、房の形や果皮の色、粒の大きさなどの厳しい基準を満たしたものは、「大峰(たいほう)」という特別なブランド名で販売され、その品質の高さが保証されています。その見た目のインパクトと、濃厚な味わいから、贈答品としても大変人気のある品種です。

ウインク

ウインクは、特徴的な外観を持つぶどうです。一般的な丸いぶどうとは異なり、房も粒も美しい楕円形をしており、その独特な形が目を引きます。品種登録の際、当初は「モナリザ」という名前で申請されたというエピソードがあります。これは、果皮を軽く磨くと美しいツヤが出て、まるで芸術品のような輝きを放つことに由来するのかもしれません。果皮の色は濃い黒紫色で、光沢があります。果肉はしっかりとしており、パリッとした食感を楽しめます。甘みが強く、酸味は控えめなので、濃厚な甘さを楽しみたい方におすすめです。独特の芳香も持ち合わせており、視覚、味覚、嗅覚のすべてで楽しめるぶどうと言えるでしょう。主な産地は山梨県などで、旬は9月頃です。

ナガノパープル

「ナガノパープル」は、その名が示すように、長野県で生まれたオリジナルのぶどうです。巨峰とリザマートという品種を掛け合わせて開発され、2004年に品種登録されました。このぶどうの最大の特長は、種がなく、皮ごと食べられる手軽さにあります。果皮は深みのある濃い紫色(黒色に近い)をしており、果粒は大粒で、ぷりっとした食感が楽しめます。糖度が非常に高く、酸味は穏やかなため、口の中に芳醇な甘みが広がり、ぶどう本来の豊かな香りを堪能できます。品種登録されると、育成者の権利が保護され、一定期間(通常25年間)は独占的に栽培や加工ができます。「ナガノパープル」は長野県果樹試験場で育成され、平成16年(2004年)6月4日付けで品種登録された(登録番号第12074号)。 (出典: 長野県『ナガノパープル』品種紹介資料, URL: https://www.pref.nagano.lg.jp/enchiku/sangyo/nogyo/engei-suisan/documents/naganopurple.pdf, 2022-03-01)そのため、今後は様々な地域で生産量が増えることが期待されます。長野県を代表するぶどうとして、お土産や贈り物としても大変喜ばれる品種です。

赤色系のぶどう:芳醇な甘さと爽やかな酸味

赤色系のぶどうは、ほどよい酸味と、気品のある甘さが持ち味です。その美しい色合いは、食卓を鮮やかに彩ります。ここでは、人気の赤色系ぶどう品種をご紹介します。

甲州ぶどう

甲州ぶどうは、日本で古くから栽培されている由緒あるぶどう品種の一つです。主な産地はその名の通り山梨県で、国内の甲州ぶどう生産量の約96%を占めています。赤色系の品種に分類されますが、粒はやや小ぶりで、一粒あたり約4~5gです。果汁が豊富で果肉は柔らかく、口に含むと甘みとほどよい酸味が調和した、さっぱりとした味わいが広がります。この品種ならではの特徴として、後味にわずかな苦みや渋みが感じられることがありますが、それが独特の風味として好まれています。甲州ぶどうは、生食だけでなくワインの原料としても広く利用されています。特に、2010年には日本のぶどうとして初めて、国際ぶどう・ぶどう酒機構(OIV)に醸造用白ぶどうとして登録され、その品質と価値が国際的に認められました。甲州ぶどうの旬は、一般的に9月中旬から10月中旬頃です。

クイーンニーナ

クイーンニーナは、鮮やかな赤色の果皮が目を引く赤系品種です。比較的生まれたばかりの新しい品種であり、生産量がまだ多くないため、他のぶどうに比べて価格が高めに設定される傾向があります。この品種の特筆すべき点は、酸味が少なく、非常に強い甘みがあることです。粒は巨峰やピオーネよりも大きく、果肉は硬めで、「パリッ」とした心地よい食感が特徴で、一粒一粒に食べごたえがあります。この食感と強い甘さが、お子様からご年配の方まで幅広い世代に支持されています。渋みがなく、際立つ甘さが特徴のため、今後ますます人気が高まることが期待されます。主な産地は長野県で、国内生産量の約半分を占めています。収穫時期は9月から10月末まで続き、冷蔵保存されたものは11月上旬頃まで市場に出回るため、比較的長い期間、旬の味を楽しむことができます。

デラウェア

デラウェアは、日本で栽培されるぶどうの中でも、特に早い時期に収穫される品種として知られています。おおよそ7月から8月にかけてが旬となり、お盆の供え物としてぶどうが用いられる風習には、早くから市場に出回るデラウェアが関係していると考える人もいるでしょう。ハウス栽培されたデラウェアはさらに早く、6月頃から店頭に並び始めます。デラウェアの大きな特徴は、種なしぶどうとして広く親しまれている点です。これは、栽培の過程で「ジベレリン」という植物ホルモンを、一房ずつ丁寧に処理することによって実現されています。もしジベレリン処理を行わなければ、通常通り種が入ったぶどうとして実ります。デラウェアは、人の手による品種改良ではなく、自然交配によって生まれた品種であるとされています。日本には明治時代の1872年頃に導入されました。巨峰などのぶどうが高価だった時代、デラウェアはその手頃な価格と食べやすさから、一般の人々に広く受け入れられ、現在でも小粒ぶどうの代表として、スーパーマーケットなどでよく見かけることができます。生産量は巨峰に次いで多く、価格も手頃であるため、昔から多くの家庭で身近な果物として愛されてきました。デラウェアの生産量日本一は山形県で、全国の約半分近くを占めています。その味は、甘みと酸味のバランスが絶妙で、口の中に広がる独特の芳香が魅力です。

ルビーロマン

ルビーロマンは、石川県でのみ栽培されている希少なぶどう品種であり、「日本で最も高級なぶどう」として知られています。その希少性と卓越した品質から、近年では初競りで一房あたり100万円を超える高値がつくこともあり、話題を集めています。ルビーロマンの最大の魅力は、その圧倒的な粒の大きさにあります。大粒で知られる巨峰の約2倍もの大きさがあり、まるでピンポン玉のような存在感を放ちます。その一粒を口に含むと、大人でも口の中がいっぱいになるほどのボリュームがあり、同時に、非常に強い甘みが口全体に広がります。酸味は穏やかで、果汁も豊富です。透明感のある美しいルビー色は、その名の通り、まるで宝石のような輝きを放ちます。厳しい品質基準が設けられており、糖度18度以上、一粒の重さが20g以上、一房の重さが350g以上といった基準をクリアしたもののみが、ルビーロマンとして出荷されます。まさに「ぶどうの宝石」と呼ぶにふさわしい逸品であり、機会があれば、ぜひ一度その贅沢な味わいを堪能してみてください。旬の時期は、8月下旬から9月中旬頃です。

黄緑色系のぶどう:さわやかな香りとすっきりとした甘さ

渋みが少なく、爽やかな香りが特徴的な黄緑色のぶどうは、その明るい色合いから「青色系」や「白色系」と表現されることもあります。ここでは、特に人気を集めている代表的な3品種をご紹介します。

シャインマスカット

「シャインマスカット」は、近年その人気を確立した黄緑色系のぶどう品種です。果物としてそのまま食べるのはもちろんのこと、ケーキやパフェなどのデザート、お菓子、さらには加工品など、幅広い用途で利用されており、その名を知らない人は少ないのではないでしょうか。この品種は、かつて高価で栽培が難しかった「マスカット・オブ・アレキサンドリア」の優れた特性(マスカットの香り、皮ごと食べられる点)を受け継ぎながら、日本国内でも栽培しやすく、病害に強い品種として改良された点が画期的でした。そのため、マスカット・オブ・アレキサンドリアと比較して価格も手頃になり、一般家庭にも広く普及しました。シャインマスカットは、種がなく、皮ごとパリッとした食感で手軽に食べられること、そして、非常に高い糖度と上品なマスカット香が特徴です。完熟すると果皮がやや黄色みを帯びてきますが、その状態になってから出荷する生産者もおり、これは甘味がさらに増しているサインとされています。主な産地は山梨県、長野県、岡山県などで、旬は8月上旬から10月上旬頃です。

ナイアガラ

ナイアガラ種は、特徴的な「フォクシーフレーバー」を持つ黄緑色のブドウです。この独特の香りは、好き嫌いが分かれるものの、一度慣れると忘れられない魅力があります。果肉は柔らかく、際立つ甘さを持つ一方で、酸味は穏やかです。しかし、ナイアガラは輸送に弱く、保存期間も短いため、生食用としての流通量は限られています。そのため、新鮮なナイアガラを生で味わえるのは、主に産地周辺に限られるでしょう。その多くは、ワインやジュース、ジャムといった加工品に利用されています。日本国内では、北海道と長野県が主要な産地であり、この2つの地域で国内生産量の約7割を占めています。これらの地域を訪れる機会があれば、ぜひ地元の市場や農園で、生食用のナイアガラを探してみてはいかがでしょうか。収穫時期は9月頃です。

瀬戸ジャイアンツ(桃太郎ぶどう)

瀬戸ジャイアンツは、その印象的な外観から「桃太郎ぶどう」という愛称で広く知られている、黄緑色のブドウです。果粒がまるで3つのお団子が連なったような独特の形をしており、この形状と、岡山県で生まれたことにちなみ、桃太郎伝説から「桃太郎ぶどう」と名付けられました。「桃太郎ぶどう」は商標登録名であり、品種名は「瀬戸ジャイアンツ」ですが、両者は同じブドウを指します。種がなく、皮ごと食べられる手軽さが人気の理由の一つです。果肉は弾力があり、しっかりとした食感で、強い甘みと控えめな酸味が特徴です。マスカットのような爽やかな香りを持ちながらも、くどさのない上品な甘さが楽しめます。一粒が大きく、食べごたえも十分です。主な産地は岡山県で、7月下旬から10月中旬頃まで市場に出回ります。そのユニークな見た目と上質な味わいから、贈答品としても重宝されています。

ワイン用ぶどうの品種と特徴:香り高いワインを生み出す多様なブドウの世界

黒系ワイン用ぶどう

ここでは、ワイン造りに用いられるブドウの種類について詳しく解説します。ワイン用ブドウは世界中に数百種類、あるいは千種類以上存在すると言われていますが、商業的に広く栽培されているのは約50種類程度です。ワイン用ブドウは、果皮の色によって大きく黒ブドウと白ブドウに分けられ、黒ブドウからは主に赤ワインが、白ブドウからは主に白ワインが造られます。生食用ブドウでは渋みが少ない方が好まれますが、ワイン用ブドウにおいては、渋みも重要な要素となります。ブドウの果皮にはタンニンという渋み成分が豊富に含まれており、このタンニンの量が多いほど、ワインは複雑で深みのある渋みを持ち、豊かな味わいとなります。また、香りはワインの品質を左右する重要な要素であり、品種ごとに特有の芳香があります。ワインの香りには、ブドウそのものが持つ香り(品種由来の香り)に加え、発酵の過程で生まれる香り(発酵由来の香り)、そして熟成によって生まれる香り(熟成由来の香り)などがあります。ブドウ由来の香りだけでも、ベリー系、スパイス系、花系など、品種によって様々なニュアンスがあり、これもワインの魅力の一つです。さらに、ワイン用ブドウは、その土地特有の気候、地質、地形といった「テロワール」の影響を強く受け、同じ品種でも栽培される地域によって異なる風味を持つことが多く、これがワインの奥深さを生み出しています。

カベルネ・ソーヴィニヨン

カベルネ・ソーヴィニヨンは、「赤ワインの王様」とも呼ばれる、世界で最も広く栽培されている黒ブドウ品種です。原産地はフランスのボルドー地方ですが、その優れた品質と適応力の高さから、現在ではアメリカ、チリ、オーストラリア、イタリアなど、世界の主要なワイン生産国で栽培されています。チリ産のカベルネ・ソーヴィニヨンは、豊かな果実味と手頃な価格帯で人気があります。この品種から造られるワインは、タンニンが豊富でしっかりとした骨格を持ち、力強い味わいが特徴です。若いワインは、カシスやブラックベリーなどの黒系果実のアロマに、ピーマン、杉、鉛筆の芯のような独特の香りが加わります。熟成が進むにつれて、トリュフ、タバコ、革製品のようなニュアンスが現れ、より複雑な香りが生まれます。長期熟成に向くワインが多く、ワイン愛好家から非常に人気があります。メルローメルローは、カベルネ・ソーヴィニヨンと肩を並べ、世界中で広く栽培されている主要な赤ワイン用ブドウ品種の一つです。そのルーツはフランスのボルドー地方にあり、特にサン・テミリオンやポムロールといった右岸地区で多く見られます。近年では、アメリカのカリフォルニア州、イタリアのトスカーナ、オーストラリアなど、様々な地域で栽培が拡大しています。カベルネ・ソーヴィニヨンと比較すると、メルローから生まれるワインは、渋みが穏やかで、口当たりの良い、なめらかなタンニンが特徴です。果皮が薄く、種も少ないため、若いうちからフルーティーな風味を楽しむことができます。ダークチェリーやプラムのような赤系果実の香りに加え、コーヒーやチョコレート、スミレのようなニュアンスが感じられることもあります。単独でワインが造られることも多いですが、ボルドーワインにおいてはカベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドされることで、ワインにまろやかさや奥行き、ふくよかさを加える役割も果たします。様々な料理との相性が良く、ハンバーグやミートボール、和風の煮物など、幅広い料理との組み合わせを楽しむことができます。ただし、世界各地で栽培されているため、気候や土壌条件によって風味や香りが微妙に異なります。例えば、フランス産であればまろやかさが際立ち、チリ産であればより濃厚な風味とミントのような爽やかな香りが加わります。ボルドーの代表的な品種であるため、まずはボルドー産から試してみるのがおすすめです。具体的なワインとしては、アメリカ産の「ダックホーン ヴィンヤーズ デコイ メルロ 2019」(フルボディ)、フランス産の「ヴィニウス メルロー ジャン クロード マス」(フルボディ)、同じくフランス産の「シュヴァリエ・ド・ボーセジュール シャトー・ボーセジュール 2020」(フルボディ)などが挙げられます。
メルローは、カベルネ・ソーヴィニヨンと肩を並べ、世界中で広く栽培されている主要な赤ワイン用ブドウ品種の一つです。そのルーツはフランスのボルドー地方にあり、特にサン・テミリオンやポムロールといった右岸地区で多く見られます。近年では、アメリカのカリフォルニア州、イタリアのトスカーナ、オーストラリアなど、様々な地域で栽培が拡大しています。カベルネ・ソーヴィニヨンと比較すると、メルローから生まれるワインは、渋みが穏やかで、口当たりの良い、なめらかなタンニンが特徴です。果皮が薄く、種も少ないため、若いうちからフルーティーな風味を楽しむことができます。ダークチェリーやプラムのような赤系果実の香りに加え、コーヒーやチョコレート、スミレのようなニュアンスが感じられることもあります。単独でワインが造られることも多いですが、ボルドーワインにおいてはカベルネ・ソーヴィニヨンとブレンドされることで、ワインにまろやかさや奥行き、ふくよかさを加える役割も果たします。」

ピノ・ノワール

ピノ・ノワールは、フランスのブルゴーニュ地方を代表する赤ワイン用ブドウ品種であり、世界で最も高貴なブドウ品種の一つとして知られています。特に、その名を冠する「ロマネ・コンティ」に使用されていることで広く知られています。栽培が非常にデリケートなため「気難しいブドウ」とも呼ばれ、かつてはブルゴーニュ以外での栽培は難しいとされていました。しかし、テロワール(ワインにおける、産地の土壌、気候、地形などの特徴)を色濃く反映する特性を持つため、現在ではアメリカのカリフォルニア州(ソノマ・コーストなど)やオレゴン州、ニュージーランドなど、ブルゴーニュ以外の温暖な地域でも高品質なピノ・ノワールが栽培され、世界的な人気を集めています。イタリアでは「ピノ・ネロ」、ドイツでは「シュペートブルグンダー」という名前で知られています。この品種から造られるワインは、比較的淡い色合いで、タンニンは控えめながら、非常に繊細で複雑な香りと味わいが特徴です。ラズベリーやチェリーといった赤系果実の純粋な香りに、土やキノコ、森林を思わせるニュアンス、熟成が進むにつれてトリュフや獣肉のような香りが現れることもあります。若い段階ではフレッシュな果実味と優しい酸味を、熟成後にはスパイスやキノコのような複雑な風味を楽しむことができます。力強いワインというよりも、穏やかでエレガントなワインを好む方に特におすすめの品種です。甘酸っぱい料理や甘さ控えめのデザートとの相性が抜群です。具体的なワインとしては、フランス産の「ブルゴーニュ ルージュ 2020 ダヴィド デュバン」(ミディアムボディ)、アメリカ産の「シャーウッド・エステート ストラタム ピノノワール ワイパラ」(ミディアムボディ)、イタリア産の「チェスコン・アルエディレ・ピノネーロ 2018 ナチュール」(ミディアムボディ)などが挙げられます。

シラー

シラーは、濃い色合いと、力強いコクと風味を堪能できる赤ワイン用ブドウ品種です。香りとしては、ブラックベリー、黒コショウ、ビターチョコレートなどが際立って感じられます。タンニンが豊富で、長期熟成によって風味が変化し、革製品やトリュフのような独特のニュアンスが加わることもあります。力強い酸味やタンニン、コクが特徴であり、スパイシーな味付けの肉料理との組み合わせがおすすめです。フランスのローヌ地方とオーストラリアが主要な産地であり、フランス産のシラーは「スパイシー」と表現される味わい・香りであるのに対し、オーストラリア産はより果実味が強く表現された味わい・香りとなっています。また、オーストラリア産は「シラーズ」と呼ばれることもあります。具体的なワインとしては、オーストラリア産の「トルブレック ウッドカッターズ シラーズ 2020」(フルボディ)、フランス産の「コート・デュ・ローヌ ヴィラージュ シニャルグ 2019 ドメーヌ・ダンデゾン」(フルボディ)、同じくフランス産の「サンコムコート・デュ・ローヌ レ・ドゥー・アルビオン シラー」(フルボディ)などが挙げられます。

テンプラリーニョ

テンプラリーニョは、スペインを代表する赤ワイン用ブドウ品種であり、近年ではポルトガル、フランス、南アメリカ、オーストラリアなどでも栽培が広がり、国際的な評価が高まっています。他の品種よりも成熟が早く、生育期間が比較的短いのが特徴です。突出した個性を持つ品種ではありませんが、その歴史は古く、紀元前1100年頃から紀元前500年頃にはイベリア半島に存在していたと考えられています。栽培される地域によって様々な風味や香りを持つワインを生み出し、控えめで繊細な味わいが特徴で、派手さはないものの、心地よく飲み続けられるワインに仕上がります。一方で、低温での熟成にも適しており、その場合にはフルーティーなスタイルのワインを造ることも可能です。香りとしては、イチジク、プラム、プルーンなどを感じることができ、味わいは程よい酸味があり、エレガントです。生ハムやチーズといったおつまみ、醤油を使った和食との相性が良いです。具体的なワインとしては、スペイン産の「サングレ・デ・トロ・テンプラニーリョ」(フルボディ)、「クネ リオハ クリアンサ 2016 リオハ・アルタ」(フルボディ)、「マルケス デ カセレス クリアンサ ヴァンディミア セレクシオナーダ 2018」(フルボディ)などが挙げられます。

カルメネール

カルメネールは、チリを代表する赤ワイン用のブドウ品種として知られています。その香りは、ブラックベリーやプラムといった果実の香りに加え、コーヒーや黒コショウ、ビターチョコレートのようなニュアンスも持ち合わせています。口に含むと、柔らかく、まろやかなタンニンが特徴的で、酸味は穏やかです。ローストビーフやステーキといった赤身肉料理との相性が抜群です。この品種は、完熟に時間がかかるという特徴がありますが、十分に熟したブドウから造られるワインは、色合いが濃く仕上がります。かつてはフランスのボルドー地方でも栽培されていましたが、成熟の遅さがネックとなり、現在ではチリが主な産地となっています。タンニンが穏やかで、酸味が控えめなため、渋みが強い赤ワインが苦手な方にもおすすめです。一方で、長期熟成によって、深みのある味わいも楽しめます。また、カルメネールを使用したワインは、比較的リーズナブルな価格で手に入るものが多く、日常的に楽しむワインとしても最適です。例えば、チリ産の「テラノブレ カルメネール グラン・レゼルバ 2019」(フルボディ)や「ビーニャ ファレルニア カルメネール グラン・レゼルバ 2019」(フルボディ)などがおすすめです。

ガメイ

ガメイは、フランスのブルゴーニュ地方が原産の黒ブドウ品種で、赤ワインの醸造に用いられます。チェリーやラズベリー、イチゴといった赤い果実の香りに、スミレやバラのようなフローラルな香りが加わるのが特徴です。味わいは、フレッシュでフルーティー。近年では、ニュージーランドやオレゴン州など、世界各地で栽培されており、その人気は高まりつつあります。日本では、ボジョレー・ヌーヴォーに使われる品種として広く知られています。ボジョレー地区で造られる赤ワインのほとんどが、ガメイ種であると言われています。比較的アルコール度数が低いワインに仕上がることが多く、その軽やかな味わいから、ワイン初心者にも親しみやすい品種です。また、他の品種とブレンドしたり、スパークリングワインの原料としても用いられます。ハムやソーセージといった軽めのおつまみとの相性が良いでしょう。具体的には、フランス・ブルゴーニュ産の「アンリ・ド・ブルソー コトー・ブルギニョン 2020」(ミディアムボディ)、「ルイ ラトゥール ムーラン ナ ヴァン 2020」(ミディアムボディ)、「クロ・ロッシュ ブランジュ トゥーレーヌ ガメイ (レア!)」 (ミディアムボディ)などがあります。

ネッビオーロ

ネッビオーロは、主にイタリアで栽培されているブドウ品種で、「イタリアで最も高貴なブドウ」と称されることがあります。その香りは、プラムやダークチェリーのような果実の香りに、バラや甘いスパイスのニュアンスが重なります。味わいは、力強いタンニンと豊かな酸味が特徴で、しっかりとした骨格を持っています。特にピエモンテ州を中心に栽培されていますが、栽培が難しく、熟成にも時間がかかるため、生産量は限られています。そのため、高級ワインの原料として知られており、中でも「バローロ」は「王のワイン」と呼ばれ、世界最高峰のワインとして評価されています。ネッビオーロは、産地のテロワールの影響を強く受けるため、「バローロ」と一口に言っても、様々な味わいのものが存在します。ステーキやすき焼きなどの高級料理との組み合わせがおすすめです。具体例としては、イタリア・ピエモンテ産の「ロベルト サロット ランゲ ネッビオーロ ナティーヴォ 2020」(フルボディ)、イタリア産の「カッシーナ キッコ ランゲ ネッビオーロ 2020」(フルボディ)、同じくイタリア産の「ネッビオーロ ダルバ 2018年 テッレ デル バローロ」(フルボディ)などが挙げられます。

グルナッシュ(ガルナッチャ)

グルナッシュ(ガルナッチャ)は、スペイン北東部を原産とする赤ワイン用ブドウ品種で、世界中で広く栽培されています。ドライフルーツやカカオ、シナモンといった香りが特徴的で、若い内はフルーティーな味わいを楽しめ、長期熟成させると、まろやかで複雑な味わいに変化します。糖度が高いため、南フランスでは甘口ワインの原料としても重宝されています。また、醸造方法によっては、アルコール度数が15%前後と高いワインに仕上がることもあります。チーズやハムといったおつまみや、ラタトゥイユなどのフランスの家庭料理との相性が良いでしょう。グルナッシュは、他の赤ワイン品種とブレンドされることも多いブドウですが、グルナッシュ単一で造られたワインも数多く存在します。特にワイン初心者の方には、適度な酸味とまろやかな口当たりのグルナッシュ単体のワインを、若いうちに楽しむのがおすすめです。具体的には、フランス産の「サンコム リトルジェームス バスケットプレス」(フルボディ)、「ドメーヌ サンタ デュック ヴァン ド ペイ ド ヴォークリューズ レ プラン 2020」(ミディアムボディ)などがあります。

マスカットベーリーA

マスカットベーリーAは、日本の赤ワイン用ぶどうとして、その生産量が最も多い品種であり、日本国内においては白ワイン用の甲州に次いで2番目に多く栽培されています。その香りは、いちごやラズベリーのような赤い果実、あるいはキャンディーを連想させる甘い香りが特徴的で、口に含むとフレッシュな果実味が広がり、タンニン(渋み)は穏やかです。このぶどうは、新潟県の岩の原葡萄園創設者である川上善兵衛氏によって1927年に生み出されました。現在では、山梨県、山形県、島根県、岡山県など、日本各地で栽培されており、生食用としても楽しまれています。マスカットベーリーAから造られる赤ワインは、その独特な甘い香りと軽やかな味わいから、気軽に楽しめるのが魅力です。みりん、だし、醤油といった日本の調味料を使った和食や、甘辛いソースをかけた料理との相性が抜群です。おすすめのワインとしては、山梨県産の「シャトー メルシャン 山梨マスカットベリーA」(ミディアムボディ)、山梨県シャトー酒折ワイナリーの「マスカットベリーA アンウッデッド」(ミディアムボディ)や「エステート マスカットベリーA」(ミディアムボディ)などが挙げられます。

白系ワイン用ぶどう

ここでは、白ワインによく使用される代表的なぶどう品種を6種類ご紹介します。

シャルドネ

シャルドネは、白ワインの品種として非常に人気が高く、「白ワインの女王」とも呼ばれています。その香りは、冷涼な地域ではレモンやライムのような柑橘系の香り、温暖な地域ではトロピカルフルーツやナッツのような香りが感じられます。味わいは、シャープな酸味と豊かなコクが特徴です。シャルドネは、魚介類や鶏肉料理との相性が良いとされています。原産地はフランスのブルゴーニュ地方ですが、現在では世界中のワイン産地で栽培されており、その適応力の高さから「どこでも育つぶどう」とも称されます。シャルドネの大きな特徴は、ぶどう自体の個性が比較的穏やかなため、栽培される土地の気候や土壌(テロワール)、さらには醸造方法(樽熟成の有無や酵母の種類など)によって、その香りと味わいが大きく変化する点にあります。冷涼な地域で造られるシャルドネは、リンゴや柑橘類のような爽やかな酸味とミネラル感が際立ち、フランスのシャブリなどがその代表例です。一方、温暖な地域で造られるシャルドネは、パイナップルやマンゴーのようなトロピカルフルーツの香りに、ナッツやバター、バニラのような複雑な風味が加わり、カリフォルニア産のシャルドネなどがその典型です。同じシャルドネでも、テロワールや生産者によって全く異なる味わいになることが、ワインの奥深さであり、飲み比べの楽しみでもあります。シャルドネの果実は中くらいの大きさで、皮が薄く果汁が豊富で、糖度も高いため、白ワインの醸造に非常に適しています。フルーティーな味わいが特徴ですが、樽熟成を行うことで、バターのような風味やトーストのような香ばしさが加わることもあります。シャルドネは、その豊かな香りとコクのある味わいから、シャンパンのブレンド用ぶどう品種としても広く用いられています。特に、世界的にも有名なブルゴーニュ地方での栽培が盛んであり、品質の高いシャルドネは高価格で取引されることもあります。具体的なワインとしては、イタリア産の「ボルトルッツィ シャルドネ 2021」(辛口)、アメリカ産の「ブレッド&バター シャルドネ カリフォルニア」(辛口)、スペイン産の「ジャン・レオン 3055 シャルドネ」(辛口)、フランス産の「ブルゴーニュ ブラン レ ヴォー 2020 デビット・バターフィールド」(辛口)などが挙げられます。

ソーヴィニヨン・ブラン

ソーヴィニヨン・ブランは、その爽やかな酸味と独特なハーブの香りが特徴的な白ワイン用ぶどう品種です。香りは、グレープフルーツ、レモン、青りんごのような柑橘系の香りに、ハーブのニュアンスが加わります。味わいは、酸味が強く、爽やかで繊細な印象です。ソーヴィニヨン・ブランは、さっぱりとした魚介料理との相性が抜群です。古くからフランスのロワール地方(サンセールやプイィ・フュメなど)やボルドー地方で白ワイン用として栽培されてきましたが、近年ではニュージーランド、チリ、南アフリカなど、ニューワールドと呼ばれるワイン生産国でも特に人気を集めています。ソーヴィニヨン・ブランから造られるワインは、青リンゴ、グレープフルーツ、パッションフルーツといった柑橘系やトロピカルフルーツの香りに加え、ソーヴィニヨン・ブラン特有のハーブ(青草、アスパラガスなど)や、猫のおしっこと表現されることもある独特の香りが特徴です。フランスなど冷涼な地域で栽培されたソーヴィニヨン・ブランは、キリッとした酸味と鉱物的なミネラル感が際立ちますが、ニュージーランドなど温暖な地域で栽培されたものは、より豊かな果実味とまろやかな口当たりを持つワインになるなど、栽培地のテロワールによって風味の変化を楽しむことができます。食前酒やシーフードとの相性が非常に良いことでも知られています。果実は比較的小さく、皮が厚めで酸味が強く、独特の香りがあります。冷涼な地域ではグレープフルーツや青リンゴのような爽やかな味わいが、温暖な地域ではより柔らかな口当たりが楽しめます。シャルドネと同様に、樽熟成させることで、バニラやスパイスの風味が加わることもあります。単一品種で使用されることもあれば、ブレンドの一部として使用されることもあります。具体的なワインとしては、ニュージーランド産の「インヴィーヴォ X SJP ソーヴィニヨンブラン 2021」(辛口)、「ドッグ ポイント ソーヴィニヨン ブラン 2019」(辛口)、アメリカ産の「ホーニッグヴィンヤード&ワイナリー ソーヴィニヨン ブラン ナパ レイク」(辛口)などが挙げられます。

リースリング

リースリングは、主にドイツで栽培されている白ワイン用のブドウ品種です。 香り:洋梨、蜂蜜、桃、リンゴ、ライムなど、地域によって変化があります。 味わい:しっかりとした酸味と、ほのかに甘みが感じられます。 おすすめのペアリング:豚肉料理、白身魚、甘酸っぱいスイーツなど。 小ぶりの果実は非常に酸味が強く、果実味は控えめですが、独特の芳香があります。そのため、樽で香りをつけることはせず、このブドウそのものが持つ香りのみでワインに仕上げられます。栽培は冷涼な地域を中心に行われています。白ワインの中でも特に幅広いスタイルに適応できるワインで、極甘口から辛口、スパークリングワインなどに加工されます。特に甘口の場合は、強い酸のおかげで繊細でバランスの取れたワインになります。具体的なワインとしては、ドイツ産の「ピースポーター ミヒェルスベルク リースリング シュペートレーゼ」(甘口)、「ドクター エル リースリング ドライ ローゼン・ブラザーズ」(辛口)、フランス・アルザス産の「リースリング・レゼルヴ トリンバック 2020」(辛口)などがあります。

甲州

甲州は、日本原産の白ワイン用ブドウ品種で、主に山梨県や長野県など日本国内の産地で栽培されています。 香り:みかん、梨、みりんなど。 味わい:フレッシュで上品な酸味があり、すっきりとした飲み口です。 おすすめのペアリング:和食、和風の調味料を使った料理。 その起源には複数の説がありますが、数百年以上の歴史を持つブドウで、明治時代には甲州を使ったワインが造られ始めていました。アルザス地方のリースリング種に似た特徴を持ち、芳醇な香りやミネラル感があることでも知られています。生食用としても利用されますが、多くはワイン醸造用に使われています。酸味が豊かでありながら、穏やかな果実味も感じられ、和食によく合います。「シュール・リー」と呼ばれる製法で作られる、香り高く飲み口がすっきりとした辛口のワインが主流です。ただ、幅広いワインに対応できるため、しっかりと熟成させたコクのあるワインや、甘口のワインなどに仕上げられることもあります。具体的なワインとしては、日本産の「マンズワイン 山梨 甲州」(辛口)、「シャトー・メルシャン 山梨甲州」(辛口)、「サントリー ジャパンプレミアム 甲州」(辛口)などがあります。

ゲヴュルツトラミネール

ゲヴュルツトラミネールは、主な生産地がフランス・アルザス地方、ドイツ、オーストリアなどで、冷涼で乾燥した地域で育ちやすい品種です。 香り:ライチ、トロピカルフルーツ。 味わい:適度な酸味と渋みがあり、甘口だとメロンやハチミツのような甘みがあります。 おすすめのペアリング:海鮮、エスニック料理。 春先に芽を出すため、霜の被害にあいやすく、栽培は難しいとされています。特徴的なのはその香りで、ライチのような独特な香りが強く、個性的なワインに挑戦したいときには最適です。また、ドイツ語で「ゲヴュルツ」はスパイスを意味しており、スパイシーなニュアンスも楽しめます。ワインは辛口・甘口の両方が造られています。もともと酸味は少なめですが、熟成によってさらに酸味が抑えられ、まろやかに仕上がります。具体的なワインとしては、フランス・アルザス産の「ゲヴュルツトラミネール オルシデ・ソヴァージュ ミューレ 2020」(甘口)、「ガウメンシュピール ゲヴュルツトラミネール 2021 ペーター メルテス」(甘口)、同じくフランス・アルザス産の「ゲヴュルツトラミネール トリンバック 2019」(辛口)などがあります。

ピノ・グリ

ピノ・グリは、フランス、イタリア、アメリカ、オーストラリアなどで栽培されているブドウ品種です。 香り:あんず、トロピカルフルーツなど。 味わい:豊かな果実味とまろやかなコクがあり、酸味は控えめです。 おすすめのペアリング:ベーコン、ソーセージ、鶏肉料理など軽めの肉料理。 果皮は青みがかっており、ワインの色調も通常の白ワインよりも濃くなります。フランス・アルザスのピノ・グリは特に落ち着いた酸味で、ハチミツのようなまろやかなコクも感じさせ、飲みごたえのあるワインに仕上がります。若いうちに収穫された場合はフレッシュで軽やか、柑橘類のようなキレのあるワインになります。具体的なワインとしては、ニュージーランド産の「ボートシェッド ベイ マールボロ ピノ グリ」(辛口)、イスラエル産の「ヤルデン ピノ グリ ゴラン ハイツ ワイナリ 2018」(辛口)、フランス・アルザス産の「ピノ グリ レゼルヴ トリンバック 2018」(辛口)などがあります。

新鮮で美味しいぶどうの見分け方・選び方のコツ

店頭に並んだ様々な種類のぶどうから、最高の一房を選ぶのは意外と難しいものです。しかし、いくつかのポイントを把握していれば、より新鮮で美味しいぶどうを見つけることができます。ここでは、ぶどう選びで役立つ見分け方と選び方のコツをご紹介します。

実がふっくらとしていて、皮にハリがあるものを選ぶ

ぶどうの鮮度を判断する上で重要なのは、実の状態です。収穫したばかりのぶどうは、果肉と果皮に水分がたっぷり含まれているため、一粒一粒がピンと張り、ふっくらとしています。手に取って、実がふっくらとしていて、皮にハリを感じられるものを選びましょう。逆に、実がしぼんでいたり、皮にしわが目立つものは、鮮度が落ちている可能性があります。また、軸から実が取れてしまっているものも、収穫から時間が経過しているサインかもしれません。房全体を観察し、先端から根元まで均等に実が付いているものが、熟していて美味しいぶどうである可能性が高いです。

表面の白い粉「ブルーム」の有無を確認する

ぶどうの表面に白い粉が付いているのを見たことがあるかもしれません。これは「ブルーム」と呼ばれ、決してカビではありません。ブルームはぶどうが自ら生成する天然の物質で、果実の水分蒸発を防ぎ、乾燥から守る役割を果たします。さらに、病原菌からぶどうを保護する働きも持っています。つまり、ブルームが多く付着しているぶどうは、収穫からの時間が短く、新鮮である証拠と言えます。購入する際は、全体的に白っぽく見えるほどブルームが豊富に付いているものを選ぶことをおすすめします。ブルームは摩擦や水に弱く落ちやすいため、見た目が綺麗でツルツルしているぶどうは、収穫後に時間が経っているか、輸送中に触られすぎている可能性があります。ただし、マスカットなどブルームがつきにくい品種もあるため、品種によって基準を調整することも大切です。

軸の色が緑色のものを選ぶ

ぶどうの鮮度を見極める上で、軸の色も重要なポイントです。新鮮で美味しいぶどうの軸は、太くて鮮やかな緑色をしており、まるで摘みたてのような状態を保っています。これは、ぶどうがまだ生きている証拠であり、水分と栄養が十分に供給されている状態を示しています。一方、収穫から時間が経つと、軸は徐々に茶色く変色していきます。軸が茶色くなっているからといって、すぐに食べられないわけではありませんが、鮮度が落ち始めているサインです。できるだけ早く食べるようにしましょう。購入する際は、房全体をよく観察し、軸が緑色で元気なものを選ぶように心がけましょう。

まとめ

ぶどうは、ハウス栽培のものがいち早く6月頃から店頭に並び始め、露地栽培のものと合わせて10月末まで、長い期間旬を楽しむことができる果物です。輸入物も合わせれば一年中味わえますが、みずみずしさや風味の点では、国産のぶどうが格別です。旬の時期は約4ヶ月と短いものの、その間に様々な品種が出回ります。それぞれの品種が持つ、甘み、酸味、香り、食感の違いを堪能し、あなたにとって最高の「推しぶどう」を見つけて、旬の味覚を思う存分味わってください。ぶどうは、そのまま食べるのはもちろん、デザートや料理にも使える万能な果物です。栄養も豊富なので、積極的に食生活に取り入れて、健康的な毎日を送りましょう。
また、世界には、この記事で紹介しきれないほど多種多様なワイン用ぶどうが存在します。ワインの世界は常に進化しており、新しい品種が次々と生まれています。例えば、日本では2022年に「銀河」や「未来」を含む10種類のぶどうが新たに品種登録されました(※農林水産省「品種登録出願システム 品種登録データ検索」参照)。中でも「銀河」と「未来」は、DREAMS COME TRUEの吉田美和さんが命名したぶどうとして話題になりました。このように、世界中で毎年新しいぶどうが誕生しています。しかし、多くの人が美味しいと感じるような、代表的なワインぶどうはまだ限られています。まずは、定番のぶどう品種を使ったワインから試してみてはいかがでしょうか。

ぶどうの表面の白い粉の正体は?食べても大丈夫?

ぶどうの表面についている白い粉は、「ブルーム」と呼ばれる自然の物質です。ぶどう自身が作り出すもので、果実の水分を保ち、乾燥から守る役割があります。カビではないので、安心して食べられます。むしろ、ブルームがたくさんついているぶどうは、新鮮であることの証と言えるでしょう。

ぶどうの軸が茶色くなっているけど、食べても平気?

ぶどうの軸が茶色くなっている場合は、収穫からの時間が経過していることを示しています。新鮮なぶどうの軸は緑色をしていますが、時間が経つにつれて水分が失われ、茶色く変色していきます。軸が茶色くてもすぐに食べられなくなるわけではありませんが、鮮度が落ちて風味が損なわれている可能性があるので、できるだけ早く食べることをおすすめします。

ぶどうは疲労回復を助ける?

はい、ぶどうは疲労回復に役立つと考えられています。その理由は、ぶどうに多く含まれるブドウ糖が、体内で速やかに吸収される単糖類であるためです。これにより、エネルギー不足になりがちな疲れた体を、スムーズに回復させるサポートをすると言われています。

種なしぶどうはどうやって作るの?

種なしぶどうの多くは、植物ホルモンの一種である「ジベレリン」による処理で作られています。ぶどうの花が咲く時期と、実が大きくなる時期に、ジベレリン溶液に浸すことで、種が作られずに果実が肥大化します。この処理を行わないぶどうには、通常、種が含まれます。

ぶどうが最も美味しい時期は?

ぶどうの旬は品種によって異なりますが、一般的には、ハウス栽培のぶどうが5月下旬頃から市場に出回り始め、露地栽培のぶどうが本格的に旬を迎えるのは8月から10月にかけてです。特に9月は、さまざまな人気品種が旬を迎え、ぶどう狩りも盛んに行われる、最も美味しい時期と言えるでしょう。

ルビーロマンが高価な理由は?

ルビーロマンは、石川県でのみ栽培されている希少なぶどうです。加えて、糖度、粒の重さ、房の重さなど、非常に厳しい品質基準を満たしたものだけが出荷されるため、高価になっています。その大粒で美しい見た目、そして豊かな甘みは、まさに高級ぶどうの名にふさわしい品質です。

ぶどう