近年、高級フルーツとして人気のシャインマスカット。その名前に「マスカット」とつくように、従来の緑色のマスカットとの違いが気になる方も多いのではないでしょうか。どちらも爽やかな甘さが魅力ですが、実は品種も味わいも大きく異なります。この記事では、シャインマスカットとマスカットの違いを徹底比較し、それぞれの特徴を詳しく解説します。見た目、味、香り、食感、価格など、様々な角度から比較することで、あなたにぴったりのマスカット選びをサポートします。
はじめに
近年、スーパーや果物店でよく見かけるようになったシャインマスカットは、従来の緑色のマスカットに比べて高価であるにもかかわらず、多くの消費者に選ばれています。見た目は似ていますが、シャインマスカットとマスカットは風味、香り、食感において違いがあります。これらのぶどうは、それぞれ異なる背景と特徴を持っています。この記事では、二つの品種の歴史を紐解き、特性と違いを詳しく解説します。この記事が、あなたにぴったりのぶどうを見つけるための一助となれば幸いです。

ぶどうとマスカットの違いは?
まず、ぶどうとマスカットの関係を理解することが大切です。世界には約10,000種のブドウ品種が存在すると言われています。 (出典: OIV Focus 2017: Distribution of the world’s grapevine varieties, URL: https://www.oiv.int/public/medias/5479/oiv-focus-2017-distribution-of-the-world-s-grapevine-varieties.pdf, 2017-11-27)が存在し、「マスカット」はその中の特定の品種群を指します。ぶどうは、ブドウ科のつる性落葉樹の果実の総称であり、生で食べられるものから、ワインやレーズンなどの加工品に使われるものまで様々です。一方、マスカットは地中海地方原産のぶどうの一種で、特徴的なのは麝香(ムスク)のような香りです。日本では、一般的に黄緑色の皮を持つ「マスカット・オブ・アレキサンドリア」がマスカットとして認識されています。しかし、黄緑色のぶどうを全てマスカットと呼ぶのは正しくありません。マスカットは特定の香りのある品種群であり、紫色の皮を持つものも存在します。見た目だけでなく香りで判断することが重要です。
マスカットとは
マスカットは古い歴史を持ち、地中海地方で誕生したヨーロッパ系のぶどう品種で、ヨーロッパや中東で古くから親しまれてきました。「ムスク(香り)」が名前の由来であり、芳醇で華やかな香りが特徴です。中でも「マスカット・オブ・アレキサンドリア」は、特に高品質とされ、その香りと甘い果汁から「果物の女王」とも呼ばれています。クレオパトラが愛したという逸話も残っています。 (出典: 岡山観光WEB『マスカット・オブ・アレキサンドリア』, URL: https://www.okayama-kanko.jp/gourmet/11975, 不明(サイト最終更新日不明))マスカットと聞くと白ぶどうを想像する人が多いかもしれませんが、紫色の皮を持つ品種も存在します。マスカットを分類する際は、見た目ではなく、独特の芳醇な香りで判断することが適切です。ただし、在来のマスカットは日本の湿気の多い気候での栽培が難しいという問題点がありました。
シャインマスカットとは
シャインマスカットは、日本で開発された新しい品種のぶどうで、2006年に品種登録されました。日本の農業技術を結集した成果であり、「安芸津21号」と「白南」を交配して生まれました。「安芸津21号」は、アメリカ系の「スチューベン」とヨーロッパ系の「マスカット・オブ・アレキサンドリア」を交配して生まれた品種です。そのため、シャインマスカットはヨーロッパぶどうとアメリカぶどうの特性を併せ持つ、日本生まれのハイブリッド品種です。大粒で美しい黄緑色の果実は、見た目の美しさに加え、高い糖度とさっぱりとした後味が特徴で、多くの人に愛されています。シャインマスカットはマスカット・オブ・アレキサンドリアの血を引いているため、マスカット特有の香りを受け継いでいますが、一般的にマスカットはヨーロッパ原産の品種群を指すことが多いため、日本で開発されたシャインマスカットは、その香りがマスカットに似ていても、厳密にはマスカットとは区別されることがあります。日本の気候でも栽培しやすいように品種改良された点が、従来のマスカットとの大きな違いです。
マスカットとシャインマスカット、どこが違う?
見た目も香りも似ているシャインマスカットとマスカットですが、実はいくつかの重要な違いがあります。これらの違いを知ることで、自分の好みや用途に合ったぶどうを選ぶことができ、より一層楽しめるでしょう。品種としての根本的な違いに着目し、それぞれの特徴を比較してみましょう。

品種のルーツに見る違い
シャインマスカットとマスカットの最も大きな違いは、品種の起源と開発の歴史にあります。マスカットは、地中海地域を原産とする「ヨーロッパブドウ」の一種です。一方、シャインマスカットは、「マスカット・オブ・アレキサンドリア」と「スチューベン」を交配させた「安芸津21号」と「白南」をさらに掛け合わせることで、2006年に日本で生まれた新しい品種です。つまり、シャインマスカットはヨーロッパ系とアメリカ系の血を引くハイブリッド品種であり、マスカット特有の芳醇な香りを持ちながらも、日本の気候、特に高い湿度に適応できるように改良されています。従来のマスカットは日本の高温多湿な環境下では栽培が難しいとされていましたが、シャインマスカットは日本の環境でも比較的育てやすいというメリットがあります。ただし、マスカットの定義が「ヨーロッパ生まれ」であるため、日本で誕生したシャインマスカットは、その香りがマスカットに似ていても、厳密にはマスカットとは区別されます。
種あり?種なし?
ぶどうを食べる際に気になる点の一つが、種があるかどうかです。従来のマスカット、特にマスカット・オブ・アレキサンドリアなどの品種は種を含んでいることが多く、食べる際に種を取り除く手間がかかります。しかし、シャインマスカットは種なし品種として開発されているため、種を気にせずに手軽に食べられるのが大きな魅力です。種がないため、小さなお子様やご年配の方でも安心して食べることができ、幅広い世代に人気があります。
皮ごと?剥く?食べやすさの違い
シャインマスカットは皮が薄く、水洗いするだけで皮ごと食べられる手軽さが魅力です。皮と果肉の間に旨味が凝縮されているため、皮ごと食べることでぶどう本来の風味をより一層楽しむことができます。一方、従来のマスカットは皮が厚く、口に残ることが多いため、皮を剥いて食べるのが一般的です。この食べやすさの違いは、両者を区別する大きなポイントと言えるでしょう。シャインマスカットは皮ごと食べられるため、様々な食べ方ができます。例えば、冷凍してシャーベットのようにしたり、スムージーの材料にしたり、丸ごと大福に包んだりすることも可能です。この手軽さと汎用性の高さが、シャインマスカットが広く支持される理由の一つとなっています。
香りの特徴
マスカットという名前は、その際立った香りに由来しています。伝統的なマスカットは、芳醇で際立つ香りが特徴で、特に「マスカット・オブ・アレキサンドリア」の濃厚な香りは、多くのぶどう愛好家を魅了してきました。一方、シャインマスカットは、マスカット・オブ・アレキサンドリアをルーツに持ちながらも、香りの質が異なります。甘さが際立つ芳醇な香りは、軽やかさも持ち合わせており、口にした際に爽快感が広がります。その豊かな香りと高い糖度から、シャインマスカットは「まるでフルーツの宝石」と称されることもあり、その上品な味わいはまさにぶどうの女王にふさわしいと言えるでしょう。
出荷時期
従来のマスカットは、主に夏の終わりから秋にかけて収穫されることが一般的で、旬の時期を過ぎると市場に出回る量が減少し、入手が難しくなります。しかし、シャインマスカットは、近年の栽培技術の進歩により、比較的長い期間にわたって収穫・出荷が可能です。早いものでは5月頃から市場に登場し、遅いものでは12月頃まで店頭で見かけることができます。東京都中央卸売市場の市場統計情報によると,2019 年産‘シャインマスカット’の出荷は,4 月の超早期作型ハウス栽培から少量ながら始まり,2 月の貯蔵果実まで続く。出荷量のピークは9 月です。(出典: ブドウ'シャインマスカット'の収穫期延長技術の開発(山梨県果樹試験場・研究報告), URL: https://www.pref.yamanashi.jp/documents/98810/r03houkoku03.pdf, 2022-03-31)この出荷期間の長さは、贈答品としての需要を高める要因の一つであり、消費者がより長い期間、その美味しさを堪能できるというメリットをもたらしています。

保存性
シャインマスカットは、従来のマスカットに比べて保存性に優れており、比較的日持ちが良いという特徴があります。これは、シャインマスカットの果肉が引き締まっており、外部環境の変化に対する耐性が高いことに起因します。この高い保存性のおかげで、シャインマスカットは長期間にわたって品質を維持することができ、その美味しさを長く楽しむことができます。母の日や父の日の贈り物、お中元、お歳暮など、年間を通して様々なギフトシーンで選ばれる理由の一つとなっており、その使い勝手の良さが人気の秘密です。
シャインマスカットが高価な理由
シャインマスカットが他のぶどう品種よりも高価である背景には、いくつかの要因が存在します。まず、栽培にかかる手間とコストが非常に大きい点が挙げられます。シャインマスカットを種なしで栽培するには、「ジベレリン処理」という特殊な技術が不可欠です。この作業は、ぶどう一房ずつ丁寧に行う必要があり、他のぶどう栽培と比較して非常に手間がかかります。また、シャインマスカットは雨に弱いため、高品質なぶどうを安定的に生産するためには、ハウス栽培が必須であり、徹底した温度管理や湿度管理が求められます。これらの栽培環境を維持するための設備投資や運営費用が高額になるため、必然的に販売価格に反映されることになります。
さらに、シャインマスカットは2006年に品種登録された比較的新しい品種であるため、生産量がまだ限られており、希少価値が高いという側面も持ち合わせています。栽培面積は徐々に拡大していますが、その優れた美味しさと食べやすさから、瞬く間に人気が爆発しました。この急激な需要の増加に対して、供給が追いつかないという需給バランスの歪みが、市場での価格高騰を招いています。しかし、高価であるにもかかわらず、多くの消費者に支持され、贈答品としても高い人気を維持しているのは、紛れもなくその卓越した美味しさと品質、つまり「味に対する高い評価」があるからでしょう。
それぞれの特徴を把握して、好みの味を見つけよう
この記事では、幅広い種類があるぶどうの中から、特に人気の高いマスカットとシャインマスカットについて、それぞれの個性と、両者の違いを詳しく説明しました。どちらのぶどうも素晴らしい特徴を持っていますが、特に芳醇な香りと強い甘み、そして皮ごと手軽に食べられる点を重視するなら、シャインマスカットがおすすめです。一方で、伝統的なマスカットならではの上品な香りと甘さを味わいたい場合は、マスカット・オブ・アレキサンドリアなどの品種を選ぶのが良いでしょう。品種によって風味や特徴が大きく異なるため、この記事でご紹介した情報を参考に、ぜひ色々なぶどうを試してみてください。そうすることで、あなたにとって最高のぶどうを見つけ、より一層ぶどうを美味しく楽しめるはずです。ぶどうを味わう際には、この記事の内容を思い出していただけると嬉しいです。
Hoshina Farm(ホシナファーム)について
Hoshina Farmでは、夏本番を迎え、シャインマスカットが収穫間近となっています。東京を中心とした首都圏の皆様、そして昨年Hoshina Farmのぶどうをご購入いただいた全国の皆様に、今年もご期待以上の品質のぶどうをお届けできるよう、スタッフ一同丹精込めて栽培に励んでいます。
まとめ
この記事では、マスカットとシャインマスカットという人気のぶどう品種について、そのルーツ、特徴、違いを解説しました。それぞれの品種の特性を理解することで、より自分好みのぶどうを選べるようになるでしょう。
シャインマスカットとマスカットは同じ種類のブドウ?
シャインマスカットとマスカットは、どちらもブドウという大きな括りでは共通していますが、厳密には品種が異なります。マスカットは地中海沿岸が発祥の地とされる伝統的なヨーロッパブドウで、独特の気品ある香りが特徴です。一方、シャインマスカットは、日本の育種技術によって「マスカット・オブ・アレキサンドリア」などを交配し、2006年に生まれた比較的新しい日本生まれのブドウです。つまり、起源と育ってきた背景が異なります。
シャインマスカットは皮ごと食べられるのはどうして?
シャインマスカットは、皮が薄くて渋みが少ないように品種改良されているため、皮ごと美味しく味わえます。このため、ブドウ本来の芳醇な風味を果肉と皮の両方から堪能でき、手軽に食べられる点が支持されています。
マスカットには種があるのでしょうか?
多くのマスカット、特に「マスカット・オブ・アレキサンドリア」といった品種には種が含まれています。そのため、食べる際には種を取り除く必要があります。対照的に、シャインマスカットは種なし品種として開発されたため、種を気にせずに食べられるのが大きな魅力です。
シャインマスカットが他のブドウに比べて値段が高いのはなぜ?
シャインマスカットの価格が高いのにはいくつかの理由があります。まず、種なしにするためのジベレリン処理をはじめ、栽培に高度な技術と手間がかかる点が挙げられます。さらに、雨に弱いためハウス栽培が不可欠であること、新品種であることから生産量が限られており希少価値が高いこと、そして、贈答品としての需要が高く、国内での人気が非常に高いことも価格を押し上げる要因となっています。
シャインマスカットとマスカット、甘さの違いは?
どちらも糖度が高く、甘みが際立つぶどうとして知られていますが、シャインマスカットはマスカットが持つ独特の豊かな香りをしっかりと受け継ぎながら、さらに凝縮された甘さと、すっきりとした後味が魅力です。マスカット・オブ・アレキサンドリアも、その上品な香りと甘さで人々を魅了しますが、シャインマスカットはそれを上回るほどの強い芳香と高い糖度を誇り、「まるでフルーツの奇跡」と表現されることもあります。
シャインマスカットとマスカット、旬の時期の違いは?
従来のマスカットは、主に夏の終わりから秋にかけての限られた時期に市場に出回る傾向があります。しかし、シャインマスカットは、栽培技術の向上によって、比較的長い期間、私たちの食卓に届けられます。早いものでは5月頃から、遅いものでは12月頃まで収穫・出荷されるため、より長い期間、その美味しさを堪能することができます。