ナッツアレルギーと大豆:知っておくべきこと、症状、対処法
食物アレルギーを持つ人が増える中、ナッツアレルギーと大豆アレルギーは、特に注意が必要なアレルギーとして知られています。これらのアレルギーは、重篤な症状を引き起こす可能性があり、日常生活に大きな影響を与えることがあります。この記事では、ナッツアレルギーと大豆アレルギーについて解説します。アレルギーを持つ方はもちろん、周囲の方もぜひ知識を深めてください。(この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスに代わるものではありません。アレルギーに関する診断、治療、具体的な対応については、必ず専門の医師にご相談ください。)

食物アレルギーとは?

食物アレルギーとは、ある特定の食品に対して体の免疫システムが過剰に反応し、様々な不快な症状を引き起こす現象です。食生活の多様化や健康への意識の高まりから、近年食物アレルギーを持つ人が増える傾向にあります。消費者庁の調査データによれば、アレルギーの原因となる食品としてナッツ類が上位に位置づけられており、子供だけでなく大人でも発症するケースが見受けられます。

食物アレルギーの症状

食物アレルギーによって引き起こされる症状は、軽微なものから深刻なものまで幅広く存在します。一般的な症状としては、口内の痒みや不快感、蕁麻疹、咳、喉の痛みなどが挙げられます。重篤な場合には、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、呼吸困難、そして生命を脅かすアナフィラキシーショックを引き起こす可能性もあるため、警戒が必要です。多くの場合、症状は食品摂取後15分以内に現れるとされています。

食物アレルギーの主な原因となる食品

食物アレルギーの原因となる食品は、年齢によって異なる傾向があります。幼少期には、鶏卵、牛乳、小麦が主な原因となりますが、成長するにつれて、魚卵、ナッツ類、果物、甲殻類、ピーナッツなどが原因となることが増えてきます。ここでは、特に注意すべき食品と、それらに対する対策について詳しく説明します。

ナッツアレルギー:症状、対策、注意すべき食べ物

ナッツアレルギーは、アーモンド、クルミ、カシューナッツ、マカダミアナッツといったナッツ類を摂取することによって引き起こされるアレルギー反応です。ナッツは、お菓子やドレッシングなど、多種多様な食品や料理に使用されているため、原材料表示をしっかりと確認し、意図しない混入(コンタミネーション)にも注意を払うことが重要です。

特に注意すべきナッツの種類

特にアレルギー反応が出やすいナッツとしては、クルミ、アーモンド、カシューナッツ、マカダミアナッツなどが挙げられます。食品表示法では、クルミはアレルギー表示が義務付けられた「特定原材料」であり、アーモンドとカシューナッツは表示が推奨される「特定原材料に準ずるもの」に指定されています。さらに、マカダミアナッツも2024年3月に「特定原材料に準ずるもの」に追加されました。

ナッツアレルギーと落花生(ピーナッツ)アレルギーの違い

落花生(ピーナッツ)は、実際にはマメ科の植物であり、ナッツとは分類が異なります。しかし、ナッツアレルギーを持つ人がピーナッツにもアレルギー反応を示すケースが見られます。また、大豆アレルギーやゴマアレルギーとナッツアレルギーを誤って認識している人もいるため、どの食材に反応しているのか正確に把握することが大切です。

ナッツアレルギーの検査と治療

ナッツを食べた後に何らかの症状が現れた場合は、医療機関で検査を受けることを推奨します。検査方法としては、血液検査や皮膚プリックテスト、食物経口負荷試験などが用いられます。治療法としては、原因となる食品の除去食が基本となりますが、経口免疫療法(減感作療法)も選択肢の一つです。緊急時に備えて、症状を緩和する薬やアドレナリン自己注射薬(例:エピペン®)が処方されることもあります。

ナッツアレルギーの人が気をつけるべき食べ物や料理

ナッツは、様々な加工食品や料理に利用されており、粉末やペースト状でソースやドレッシング、飲み物などに含まれていることがあります。食品の原材料表示を注意深く確認したり、飲食店で確認したりするなど、正確な情報を得るようにしましょう。また、調理器具を共有することによる混入(コンタミネーション)にも注意が必要です。
具体的な食品例としては、以下のようなものが挙げられます。
・パン類
・シリアル食品
・カレー
・カレー粉
・アーモンドパウダーを使用した製品
・味噌
・ドレッシング類
・バジルソース
・クッキー
・フィナンシェ
・チョコレート菓子
・マカロン
・モンブラン
・羊羹
・饅頭
・どら焼き
・ゆべし
・栗きんとん
・せんべい
・ココナッツミルク
・アーモンドミルク
・カフェで提供されるドリンク類(トッピングを含む)

大豆アレルギー:離乳食での注意点と花粉症との関係

大豆は、特に乳幼児期にアレルギー反応を示すことの多い食品の一つです。離乳食で豆腐を試す際は、ごく少量から始め、様子を見ながら徐々に量を増やしていくことをお勧めします。醤油や味噌などの発酵食品は、製造過程でアレルギーを引き起こしにくい状態に変化するため、重度の大豆アレルギーでない限り、過度に除去する必要はありません。豆腐を問題なく食べられるようであれば、納豆や豆乳なども基本的に摂取できると考えられます。
しかし、これまで豆腐などの大豆製品を問題なく摂取できていたにも関わらず、成長と共に豆乳を飲むとのどに痒みを感じるなどの症状が現れることがあります。これは、花粉症と関連する花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)の可能性が考えられます。重篤な場合にはアナフィラキシーを引き起こすこともあるため、摂取後に違和感を覚える場合は、直ちに摂取を中止し、アレルギー専門医に相談してください。

食品表示における注意点(見分けにくい表示)

大豆はアレルギー表示が推奨されていますが、必ずしも義務ではありません。そのため、商品によっては表示がない場合もあることを理解しておきましょう。
醤油、味噌、大豆油などは、大豆由来のタンパク質含有量がごく微量であるため、多くの大豆アレルギーを持つ人でも摂取できる場合があります。
レシチンは乳化剤として使用されますが、大豆由来であるにも関わらず、その旨が明記されていないことがあります。卵黄由来のレシチンは「レシチン(卵由来)」と表示されるため、区別することが可能です。

そばアレルギー:重症化のリスクに注意

そばアレルギーの発症頻度は高くありませんが、症状が重篤化しやすい傾向にあります。そばアレルギーを持つ場合、同じ調理器具を使用したうどんなどでもアレルギー症状が現れる可能性があるため、特に外食時には注意が必要です。

ごまアレルギー:形状によって症状が異なるケースも

ごまは、料理、薬味、ドレッシングなど、様々な形態で口にする機会があります。粒ごまやごま油は問題なく摂取できても、すりごまや練りごまでアレルギー症状が出てしまうことがあります。

魚卵アレルギー:イクラとタラコ、注意すべき点

魚卵アレルギーは、特にイクラが原因となることが多いです。しかし、イクラにアレルギー反応を示す場合、タンパク質の構造が類似しているタラコなどの他の魚卵でもアレルギー症状が現れる可能性があるため、注意が必要です。

果物・野菜アレルギー:類似症状との見分け方

野菜や果物に含まれる成分によって、アレルギーに似た症状が出ることがありますが、通常の食物アレルギーとは区別が必要です。例えば、山芋の皮付近にあるシュウ酸カルシウムの結晶が皮膚を刺激し、かゆみを引き起こすことがあります。これは山芋アレルギーとは異なる反応です。

食物アレルギーと診断された後の対策

食物アレルギーと診断された場合は、原因となる食物を特定し、食事から除去することが基本です。ただし、自己判断で除去するのではなく、必ず医師の指導のもとで行ってください。栄養バランスが偏らないように、代替となる食品を選ぶことも大切です。また、万が一症状が現れた場合に備えて、エピペンなどの緊急時対応について医師と相談しておくことが重要です。

初めての食品、少量から試すのが安全

アレルギーを起こしやすい食品を初めて口にする際は、もしもの時にすぐに医療機関を受診できるよう、病院が開いている時間帯を選びましょう。最初はごく少量から試し、数日後に同じ量を試して症状が出なければ、少しずつ量を増やしていくのが安全です。
アレルギー疾患(食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎など)を持っている場合、食物アレルギーの症状が出やすい傾向があります。不安な場合は、アレルギー専門医に相談し、検査の必要性を含めて、食品の摂取方法についてアドバイスを受けましょう。

アレルギーの疑いがある場合

原因不明のアレルギー症状が出た際は、摂取した食品とその成分表示を詳細に記録し、アレルギー専門医にご相談ください。疑わしい食品が含まれていないか確認することも重要です。日本アレルギー学会の公式ウェブサイトでは、全国のアレルギー疾患拠点病院や専門医を検索できます。

まとめ

食物アレルギーは、原因となる食品や症状の現れ方が人によって大きく異なります。正確な知識を身につけ、適切な対応をすることで、食事を安全に楽しむことが可能です。この記事が、食物アレルギーへの理解を深め、より豊かな食生活を送るための一助となれば幸いです。

食物アレルギーの検査方法について

食物アレルギーの検査には、血液検査、皮膚テスト(プリックテスト)、食物経口負荷試験などがあります。血液検査では、特定の食品に対するIgE抗体の量を調べます。皮膚プリックテストでは、皮膚にアレルゲンとなるエキスを少量落とし、その反応を見ることでアレルギー反応の有無を判断します。食物経口負荷試験は、実際に食物を摂取し、症状が現れるかどうかを確認する検査です。

食物アレルギーと診断されたら、原因となる食品を完全に除去しなければなりませんか?

食物アレルギーと診断された場合、原因食品の除去が基本的な対策となりますが、自己判断での除去は避け、必ず医師の指導のもとで行ってください。医師の指示に従い、必要に応じて、経口免疫療法(減感作療法)などの治療法を検討する場合もあります。

食物アレルギーを持つお子様と外食する時の注意点

外食をする前に、お店にアレルギーの原因となる食べ物を伝え、使われている材料や料理の作り方を詳しく聞いてみましょう。食品表示をしっかりと見て、調理で使う器具が共通かどうかなど、微量の混入(コンタミネーション)がないか確認することも大切です。そして、もし症状が出てしまった時のために、アドレナリン自己注射薬といった緊急時に使う薬の準備と、対応方法を事前に確認しておきましょう。