渋柿を甘くする方法:渋抜きから干し柿まで、美味しく食べるための完全ガイド
秋の味覚、柿。その中でも渋柿は、独特の渋みが魅力でもあり、悩みの種でもありますよね。しかし、適切な方法で渋抜きをすれば、とろけるような甘さに変身させることができます。この記事では、渋柿を美味しく食べるための完全ガイドとして、渋抜きの基本から、とっておきの干し柿作りまで、プロのライターがわかりやすく解説します。渋柿のポテンシャルを最大限に引き出し、秋の味覚を心ゆくまで堪能しましょう!

甘柿と渋柿、何が違うの?

柿には、甘柿と渋柿という2つの主要な種類が存在します。元来、すべての柿にはタンニンという渋み成分が含まれています。このタンニンが果実に残ったままのものが渋柿と呼ばれ、成熟するにつれて渋みが自然と消えるものが甘柿です。渋柿は、完全に熟しても渋みが残るため、渋抜き処理や干し柿などの加工が不可欠です。対照的に、甘柿は熟すと自然に渋みが抜け、そのまま美味しく食べられます。

渋抜きで甘くなる秘密:タンニンを眠らせる?

渋抜きを行うと渋柿が甘くなるのは、渋みの元凶であるタンニンを不溶化させるためです。タンニンは水溶性で、唾液に溶け出すことであの独特の渋みを感じさせます。渋抜きというプロセスを経て、タンニンを水に溶けない形へと変化させることで、渋みを感じなくなるのです。このタンニンの不溶化には、アルコールやドライアイス、乾燥といった方法が用いられます。

お家で簡単!渋抜きにチャレンジ

渋柿の渋抜きは、ご家庭でも手軽に行うことができます。ここでは、手に入りやすいホワイトリカーを使った渋抜き方法をご紹介しましょう。アルコールがタンニンと結合することで不溶化を促進し、渋みを和らげます。アルコール度数が35度以上であれば、ブランデーや焼酎、ウイスキーなどで代用することも可能です。

ホワイトリカー渋抜き術

材料
  • 渋柿:お好きな数だけ
  • ホワイトリカー:適量(アルコール度数35度以上)
準備するもの
  • 密閉できるビニール袋
  • キッチンペーパー
  • 密閉容器
作り方
  1. 柿のヘタをホワイトリカーに2~3回、丁寧に浸します。
  2. 柿の実に付着したホワイトリカーを、キッチンペーパーで優しく拭き取ります。
  3. 柿を密閉できるビニール袋に入れ、しっかりと封をして密閉容器に入れます。
  4. 直射日光を避け、涼しい場所で1~2週間ほど寝かせます。
渋抜きに使うお酒の種類を変えることで、風味が変化するのも、自家製ならではの楽しみの一つです。

その他の渋抜き方法

アルコールだけでなく、炭酸ガスや乾燥させることでも渋抜きは可能です。ここでは、ドライアイスと干し柿を使った渋抜きについて解説します。

ドライアイスを使った渋抜き

柿を袋に入れ、そこにドライアイスを加えると、ドライアイスが気化して二酸化炭素が発生します。この二酸化炭素が袋内の酸素を追い出し、柿は呼吸困難な状態になります。その結果、柿内部でアセトアルデヒドが生成され、渋みの原因であるタンニンと結合し、渋みを感じなくなるのです。

干し柿による渋抜き

干し柿を作る過程で、柿の皮を剥く刺激や、乾燥させる時間経過によって、タンニン同士が結合し、水に溶け出しにくい状態になると考えられています。これが、干し柿が甘くなる理由の一つです。

柿の種類:甘柿と渋柿の品種

柿は多種多様な品種が存在し、大きく甘柿と渋柿に分けられます。さらに細かく分類すると、甘柿は完全甘柿と不完全甘柿、渋柿は完全渋柿と不完全渋柿に分類できます。完全甘柿は種子の有無に関わらず甘味が強く、不完全甘柿は種子が多いほど甘くなります。一方、完全渋柿は常に強い渋味を持ち、不完全渋柿は種子が多い場合に渋味が軽減される傾向があります。

甘柿の代表的な品種

甘柿として広く知られている品種としては、次郎柿や富有柿が挙げられます。次郎柿には以下の特徴がある。① 完全甘柿であること。大きさは250~300グラムで、平核無柿のように四角い形をしているが、起伏があって…形は平らで、横から見ると四角い形。(出典: 愛知県農業総合試験場『果樹の品種と特徴』, URL: https://www.okashin.co.jp/local/jiba/pdf/pdf_fruit_tree.pdf, 2019-03-01)一方、富有柿は比較的四角い形をしていることが多いです。太秋はそのシャキシャキとした食感が魅力です。また、代表的な品種である富有柿は、広い地域での栽培に適しており、多くの実をつけることで知られています。その他にも、大玉富有、すなみ、宗田早生、花御所など、様々な品種が存在します。

渋柿の代表的な品種

渋柿の代表的な品種としては、平核無柿や刀根早生柿がよく知られています。幸陽は、果肉が非常に緻密であることが特徴で、大西条は、脱渋処理が比較的容易であるという利点があります。愛宕は、渋柿の中でも特に優れた品種の一つと評価されています。干し柿専用の品種としては、市田柿や夢西条などがあります。

柿の栽培:自宅で柿を育てる

柿は日本の風土によく適応しており、比較的容易に栽培できる果樹です。ここでは、ご家庭で柿を栽培する方法について詳しく説明します。

柿栽培の魅力

柿は、手間をかけなくても実をつけやすいという特徴があり、栽培に多くの時間を費やす必要がありません。秋には収穫の喜びを味わうことができるため、家庭菜園での栽培に最適です。

柿の基礎知識

柿は、学名をDiospyros kakiと言い、カキノキ科の落葉樹です。東アジアが原産で、特に日本においては、非常に長い歴史を持つ果物として知られています。甘柿は比較的温暖な気候に適応しやすく、一方で渋柿は寒さに強い性質を持っています。そのため、栽培地域としては、一般的に関東地方より南では甘柿、関東地方より北では渋柿が栽培される傾向があります。

柿の生育過程

柿の木は、おおよそ3月中旬頃に新しい芽を出し始めます。そして、5月中旬から6月中旬にかけて、美しい花を咲かせます。受粉後、6月下旬頃から果実が徐々に大きくなり、9月下旬から12月にかけて収穫の時期を迎えます。晩秋の11月下旬頃になると葉が落ち、冬の間は休眠期間に入ります。

適した栽培環境

柿は、太陽の光が十分に当たり、風通しの良い場所で育てるのが理想的です。土壌に関しては、有機物を豊富に含み、適度な水はけと保水性を兼ね備えたものが適しています。また、柿は比較的寒さや暑さに対する耐性も持ち合わせています。

理想的な土壌づくり

庭などに直接植える場合は、植え付けを行う2〜3週間ほど前に準備を始めましょう。直径と深さがそれぞれ約50cm程度の穴を掘り、掘り出した土に腐葉土や堆肥、ゆっくりと効果が持続するタイプの肥料を混ぜ合わせて穴に戻します。鉢植えで育てる場合は、市販されている樹木用の培養土を使用すると、手軽に栽培を始めることができます。

植え付け

渋柿の植え付けに最適な時期は、おおよそ12月から3月にかけてです。庭に直接植える場合は、苗の根を包んでいる土の塊(根鉢)よりも少し大きめの穴を掘り、苗を植え付けた後、支柱を使ってしっかりと固定します。鉢植えにする場合は、苗よりも一回りか二回りほど大きな鉢を用意し、鉢底にネットと軽石を敷き、その上から培養土を入れて植え付けます。

水やり

庭植えの場合、基本的には水やりは必要ありません。ただし、真夏に雨が降らず乾燥が続く場合は、適度に水を与えてください。鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら、鉢の底から水が流れ出るくらいたっぷりと水を与えます。特に真夏は、朝と夕方の1日2回水やりを行うようにしましょう。

追肥

追肥は、2月、6月から7月、そして10月に行います。庭植えの場合は、有機質肥料または緩効性の化成肥料を木の周りにまき、土と混ぜ合わせるようにします。鉢植えの場合も、庭植えと同様に肥料を与えます。特に6月から7月にかけては、実を甘くするために、カリウムを多く含んだ肥料を与えると効果的です。

病害虫対策

柿は、炭疽病、うどんこ病、黒星病、灰色かび病といった病気にかかりやすく、カメムシ、カイガラムシ、ハマキムシ、アザミウマ、ヘタムシなどの害虫が発生しやすい植物です。休眠期(葉が落ちている時期)に、マシン油乳剤や石灰硫黄合剤を散布することで、これらの病害虫を効果的に防除することができます。

摘蕾・摘果

柿の花が咲く5月中旬から下旬にかけて、果実に養分を集中させるため、蕾の数を調整する摘蕾作業を行います。続く6月下旬から7月には摘果を行い、葉の数と果実のバランスを見て実を間引きます。枝の長さごとに着果させる果実数の目安が示されており、短果枝(5~15cm)では枝先端部に1~2個、3~4本に1果、中果枝(15~30cm)では枝中央部に3~4個、1~2果とされている。葉枚数に対する果実数の直接的な記載はないが、枝長や枝ごとの着果数で管理する方法が専門機関(福島県)から示されている。(出典: 福島県『モモジョイントV字樹形栽培管理マニュアル』, URL: https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/436990.pdf, 2019-03-01)

収穫

収穫時期は品種によって異なり、9月下旬から11月頃にかけて行われます。果皮全体が均一な色合いになったら収穫のサインです。ヘタの少し上の部分をハサミで丁寧に切り取りましょう。

剪定

剪定作業は、1~2月と7~8月の年2回行います。徒長枝(勢いよく伸びすぎた枝)、内向きに伸びている枝、絡み合っている枝などを剪定し、樹全体の風通しを良くすることが重要です。また、車枝(同じ場所から複数の枝が出ている状態)は、1本を残して他は切り落とします。

植え替え

庭植えの場合、基本的に植え替えは不要です。しかし、鉢植えで栽培している場合は、2~3年に一度、12~2月頃に植え替えを行いましょう。根詰まりを防ぐため、古い土を丁寧に落とし、新しい土を使って植え替えることが大切です。

柿の栄養と健康への貢献

柿は、その見た目からは想像できないほど栄養が豊富です。食物繊維の一種であるペクチン、体内でビタミンAに変わるβカロテン、抗酸化作用を持つリコピン、そしてビタミンCやタンニンなどがたっぷり含まれています。五訂日本食品標準成分表(文部科学省)では甘柿が70mg/100g、渋抜き柿が55mg/100gとなっている。(出典: 五訂日本食品標準成分表(文部科学省), URL: https://www.naro.affrc.go.jp/org/narc/seika/kanto22/04/22_04_21.html, 2005)また、ビタミンCとタンニンの組み合わせは、アルコール分解を助け、二日酔い対策にも役立つと言われています。さらに、柿はカロリーが低いので、ダイエット中でも罪悪感なく楽しめるデザートとしてもおすすめです。

渋柿を美味しく変身させる加工テクニック

渋柿は、そのままでは食べにくいですが、渋抜き処理をしたり、干し柿に加工したりすることで、美味しく食べることができます。特に干し柿は、長期保存にも適した方法です。干し柿を作る際は、吊るすための枝を残して収穫し、丁寧に皮をむきます。その後、風通しの良い場所に吊るして、約1週間から10日間ほど乾燥させます。乾燥具合を見ながら、揉んで好みの硬さに調整してください。

熟柿の魅力とは?

熟柿とは、木の上で自然に熟し、とろけるように甘くなった柿のことです。昔は、熟柿は鳥たちのために残されることが多かったのですが、近年では、その美味しさが見直され、積極的に収穫されるようになりました。自然の恵みをたっぷり受けた熟柿は、格別な味わいです。

最後に

渋柿の渋抜き方法から、柿の栽培、そして栄養価まで、柿に関する様々な情報をお届けしました。ご家庭で渋柿を甘くする方法を試したり、柿の木を育ててみたりして、秋の味覚である柿を心ゆくまで楽しんでいただければと思います。この記事が、あなたの柿ライフをより充実させるきっかけとなれば幸いです。

渋柿、その渋さの理由とは?

渋柿特有の渋みは、その中に含まれる水溶性タンニンという成分に起因します。このタンニンが唾液と混ざり合うことで、あの独特な渋さを感じるのです。

渋柿を甘く変身させるには?

渋柿の渋みを解消し、甘さを引き出すためには、「渋抜き」という工程が不可欠です。これは、水溶性タンニンを、水に溶けない不溶性の状態へと変化させ、渋みを感じさせなくするテクニックです。具体的には、アルコールを使用したり、ドライアイスを活用したり、あるいは干し柿にするなどの方法が知られています。

柿にはどんな栄養が詰まっているの?

柿は、ペクチン、β-カロテン、リコピン、ビタミンC、タンニン、食物繊維など、多種多様な栄養素を豊富に含んでいます。特に、ビタミンCは、たった1個で1日に必要な摂取量をほぼ満たせるほど豊富です。