梨の病害対策:黒斑病(黒星病)の原因、症状、対策、品種改良の最前線
日本梨(和梨)には皮の色が黄褐色の「赤梨」と、皮の色が淡黄緑色である「青梨」の2種類があります。代表的な赤梨は『幸水』『豊水』などで、青梨は『二十世紀』などが該当します。『黒い梨』という品種や通称は主要な品種一覧や新品種紹介、農林水産省や主要自治体の品種リスト、学術的な分類において確認できません。(出典: 【2021最新】梨の新品種を一覧紹介! 食味や収量に優れ栽培...(minorasu by BASF), URL: https://minorasu.basf.co.jp/80282, 2021-09-28)。この記事では、梨栽培における重要な病害である黒斑病(黒星病)に焦点を当て、その原因、症状、対策、そして品種改良の最新動向について解説します。梨農家が抱える課題解決の一助となる情報を提供するとともに、安定的な梨の生産に貢献することを目指します。

梨の品種改良における目標

日本梨の品種改良は、国の研究機関や各地の試験場が中心となって行われています。育種で特に重視されるのは、黒星病への抵抗力です。その他、生理障害の発生が少ないこと、収穫量が多いこと、早く収穫できること、糖度が高いこと、自家受粉できることも重要な目標とされています。近年、温暖な地域で梨の発芽不良が問題となっているため、温暖な気候でも安定して栽培できる品種の開発が求められています。全国の梨産地では、梨作りに情熱を注ぐ農家が、丹精込めて美味しい梨を消費者に届けています。

梨の育て方:栽培管理のポイント

梨の栽培では、きめ細やかな管理が欠かせません。特に二十世紀梨は、袋掛け栽培が一般的です。袋をかける前に胞子が多く形成されると、病気が発生しやすく、果実が落下する原因となります。袋をかけないで栽培する新水では、6月上旬から中旬にかけて、雨が多い年に幼果に病気が多発することがあります。真夏は降雨が少ないため感染は落ち着きますが、8月下旬頃から成熟した果実や、秋に伸びた若葉などで再び病気が見られることがあります。

梨の黒斑病:症状、原因、対策

黒斑病は、梨栽培において最も警戒すべき病害の一つです。葉、果実、新梢などあらゆる部分に発生します。若葉では、最初に黒色の小さな斑点が現れ、次第に拡大して周囲がやや橙黄色になり、同心円状の模様が現れます。発病した葉は、表面が歪んで波打った状態になることが多いです。二十世紀梨の果実では、幼果、成熟果に関わらず発病します。幼果では、丸くて小さな黒い点ができ、しばらくするとくぼみ、果実が大きくなるにつれて病斑が急速に拡大し、亀裂が入り、最終的には落果してしまいます。成熟果では、同心円状の軟腐病斑ができます。新梢では、円形または楕円形の小さな黒褐色の斑点ができ、後にくぼんで亀裂が生じ、かさぶた状になります。徒長枝の先端にある芽などが発病すると枯死し、いわゆる「ぼけ芽」となります。黒斑病菌は、枝や芽の中で越冬し、3月下旬頃から胞子を作り始め、梨の生育期間を通じて感染源となります。風雨によって飛散した胞子が葉、果実、枝に付着して感染し、発病すると、病斑の上に新たな胞子を作り、次々と二次感染を引き起こします。黒斑病対策としては、薬剤散布や袋掛けなどの予防策が非常に重要です。具体的な対策については、地域の農業指導機関や専門家にご相談ください。

DNAマーカーによる品種改良

黒星病抵抗性、自家和合性、黒斑病抵抗性、早生性、果皮の色などについては、DNAマーカーが開発され、実際の育種現場で活用されています。これらの性質は、遺伝の優性と劣性、質的形質と量的形質、対立遺伝子に異なる複数の効果があるなどの特徴を持つため、効率的な選抜を行うためには、それぞれの性質の遺伝様式を十分に理解した上でDNAマーカーを用いる必要があります。

主要品種別の黒斑病への耐性と対策

二十世紀梨は、特に黒斑病に対する抵抗力が低いため、果実を保護する目的で、小袋や大袋を用いた袋掛け栽培が広く採用されています。近年では、これまで発症が見られなかった成熟した葉に黒斑病が発生したり、雌しべから病原菌が侵入し、幼い果実の落下を引き起こす事例が増加傾向にあります。対照的に、幸水、豊水、長十郎といった品種では、黒斑病の発生はほとんど見られません。

まとめ

梨の栽培においては、品種の選択から病害虫への対策まで、きめ細やかな管理が不可欠です。特に黒斑病は、梨栽培において重要な病害であり、適切な知識と対策が求められます。最新の育種技術も視野に入れながら、安定的に高品質な梨を生産するために、常に情報収集と技術の向上に努めることが大切です。

梨の黒斑病は、どのようなメカニズムで発生するのでしょうか?

黒斑病は、枝や芽の中で冬を越した病原菌が胞子を放出し、その胞子が風や雨によって運ばれ、葉、果実、枝に感染することで発症します。一度感染が成立すると、病変部分で新たな胞子が形成され、さらなる二次感染を引き起こします。

二十世紀梨の栽培で特に注意すべきポイントは何ですか?

二十世紀梨は黒斑病に弱いため、袋掛け栽培が不可欠です。加えて、早期発見と適切な薬剤の散布によって、感染の拡大を食い止めることが非常に重要となります。

温暖な地域で梨を育てる際に気をつけることは?

比較的暖かい地域では、梨の花芽がうまく開かないという問題が起こりがちです。そのため、温暖な気候でも安定して育てやすい品種を選ぶことが大切です。