ミモレットは、フランス北部で伝統的な製法によって作られている半硬質の白カビチーズです。丸い小さな円盤状をした形が特徴的で、ブリーやカマンベールと同様の外観をしています。名前の由来は、ノルマンディー地方の植物学者ミョレーにちなんでいると言われています。

製造工程は熟練の技術を要する手間暇のかかる作業です。まず新鮮な牛乳を穏やかに加熱し、レンネットを加えて固める作業から始まります。固めた生地を粗く切り刻み、数日間発酵と脱水の過程を経ます。この間にカビが芽生え始めます。完全に発酵するまでに1〜3カ月を要し、職人が味と香りを見極めて出荷されます。

ミモレットの味わいは柔らかくなめらかで、クリーミーな舌触りが特徴的です。青カビによる優雅で爽やかな香りが楽しめ、チーズ本来の風味を堪能できます。日本でも一部のチーズ専門店で入手できますが、本場フランスの朝市で新鮮な状態を味わうのが最高の賞味方法です。

ミモレットチーズの独特の風味と香りは、チーズ熟成中に生息する特殊な種類の「シロ」と呼ばれるダニによってもたらされます。シロはヒトを刺すダニとは異なり、チーズの表面に生えるカビを餌にしています。シロがチーズの脂肪分を分解するカビを食べ除去することで、ミモレットチーズの脂肪分を守り、美味しさを引き立てる役割を果たしています。

ミモレットチーズの表面には、シロの繁殖によってできたゴツゴツとした外皮が特徴的ですが、市販されているミモレットの外皮はほとんど取り除かれています。外皮がついた状態で販売されている場合は、食べる際に外皮を取り除く必要がありますが、万が一外皮を残して食べてしまっても問題はありません。このように、ミモレットチーズの風味と品質を守る上で、シロの存在は欠かせない存在なのです。

ミモレットは、熟成期間によって風味や食感が大きく変化する伝統的なフランス北部の半硬質チーズです。新鮮なミモレットは2週間程度の短期熟成で、優しくミルキーな風味が広がります。熟成が進むにつれ、味は徐々に濃厚になり、ナッツを思わせるロースト香が加わってきます。

4ヶ月を超える熟成期間のミモレットは、かすかな酵母の香りと共に、しっかりとした塩味と複雑な旨味を帯び始めます。この時期は熟成臭やカビ臭のニュアンスもあり、大人の味わいが堪能できます。8ヶ月以上の熟成チーズは、本格的にパンチのある強い風味へと進化します。チーズ本来のミルク風味は控えめとなり、カビ由来の複雑な香り高さと濃厚な味わいがメインとなるのです。このように、ミモレットは熟成月数によって全く異なった表情と味わいを楽しめる逸品なのです。

ミモレットは、さまざまなシーンで愉しめるチーズです。料理に使ったり、おつまみとしてワインなどと合わせたりと、幅広い活用が可能です。好みの熟成度合いを選べば、様々な楽しみ方ができます。熟成が進んだミモレットは外皮が硬くなり、包丁で切るのが難しくなります。そういった場合は、あらかじめ外皮を取り除いたものを選ぶと、調理がスムーズにできるでしょう。状況に合わせて上手に活用し、このチーズの魅力を存分に味わってみてはいかがでしょうか。

フランス北西部の伝統チーズ、ミモレットの風味を長く楽しむためには、適切な保存方法が欠かせません。購入時にはまず賞味期限を確認し、ラップやチーズケースに入れて冷蔵庫の低温部(5℃前後)に保管しましょう。一度カットした場合は、切り口を下に向けて密閉保存することで、風味の変化を抑えられます。長期保存が必要な際は、ワックスペーパーやチーズラップに包んで冷凍するのがおすすめです。使いきれなかったミモレットは、購入時のチーズセロファンか、アルミホイル、ラップに密封し、冷蔵庫で保管すると風味が損なわれずに楽しめます。

ミモレットは、プチプチした独特の食感と豊かな香りが魅力的な濃厚フレンチチーズです。そのままナイフでスライスして食べれば、芳香を存分に楽しめ、ゴツゴツとした外皮の下に隠された繊細な味わいを堪能できます。

軽食としてパンに乗せて楽しむのも良いでしょう。バゲットやクラッカーに合わせると、さらにミモレットの風味が引き立ちます。また、すりおろしてパラパラの粉状にすれば、野菜や肉料理にトッピングしたり、パスタに混ぜ込んで濃厚な味わいを楽しむことができます。

リッチな味わいを生かしたホワイトソースや卵料理にも最適です。キッシュなどのパイの具やスープ、グラタンにも風味が増し、素材との相性が良いでしょう。さらに、シンプルな野菜サラダにくし形に切ったミモレットをトッピングするのもおすすめです。

このようにミモレットは、そのままおつまみとして、あるいは加熱料理に使うなど、様々な食べ方を楽しめます。ぜひ気軽にアレンジを加え、ミモレットの魅力を存分に味わってみてはいかがでしょうか。

ミモレットは、フランス南部の農村から生まれた愛らしいチーズですが、その味わいの深さと香りの豊かさは、長い歳月を経て磨き上げられた、職人の技と情熱の賜物なのです。小さな村で生み出されたこのチーズには、フランスの土地と人々の誇りが詰まっており、一口食べれば、そこに凝縮された歴史と文化に思いを馳せずにはいられません。