クリームティーとは

クリームティーとは

イギリスと言えば紅茶が有名です。イギリス人は、一日に少なくとも5杯の紅茶を飲むという習慣があり、その紅茶とともに楽しむ食習慣が「クリームティー(Cream Tea)」です。今回はこのクリームティーについて詳しく解説します。

イギリスのクリームティーとは何なのか

イギリスの文化と深く関わる"クリームティー"は、紅茶に濃厚なクロテッドクリームとスコーンを添えて楽しむ伝統の軽食です。この風習は17世紀頃から貴族の間で始まり、19世紀には一般市民にも広がりました。夕食前に空腹を紛らわす習慣から生まれたクリームティーは、ホテルやカフェはもちろん、家庭でも人気の日常的なおやつとなっています。

ティーポットやカップ&ソーサーなどの雰囲気たっぷりの食器に盛られた本格的なクリームティーは、優雅でゆったりとした至福のひとときを届けてくれます。イギリス文化を体験できる観光メニューとしても人気が高く、クリームティー体験を通して、イギリスの伝統を味わうことができるのです。

イギリスのスコーンに欠かせないクロテッドクリーム

スコーンは、薄力粉、バター、牛乳で作られるイギリスを代表する焼き菓子です。外はカリッとしながらも中はフカフカのパンタイプから、全体が固めのビスケットタイプまで、さまざまな食感のスコーンが楽しめます。


アメリカなどイギリス以外の地域では、スコーンに味が付いているものが一般的ですが、イギリスではスコーン自体には味をつけず、ジャムとクリームを添えて食べます。ジャムにはストロベリーが定番ですが、ブルーベリーやラズベリーなどのベリー系や、少し苦味のあるマーマレードも人気です。


スコーンに欠かせないのが「クロテッドクリーム」で、これは2000年以上の歴史を持つイギリス特有の乳製品です。乳脂肪分の高い牛乳を遠心分離し、クリームだけを煮詰めた後、一晩かけてゆっくり冷ますことで作られます。クロテッドクリームは乳脂肪分が55%以上と規定されており、バターの80%よりは低いものの、生クリームの40%よりは高いです。この高い乳脂肪分が、バターと生クリームの中間のようなリッチな味わいと食感を生み出しています。


クロテッドクリームは、バターのしょっぱさや生クリームの甘さがなく、牛乳そのものの風味が感じられる濃厚なクリームです。その滑らかさと濃厚さがスコーンとの相性を抜群にし、他の食品との組み合わせにはあまり合わないことが多いです。スコーンの素朴な味わいと完璧に調和し、他の食材と合わせると「これじゃない」と感じることが多いのです。


とはいえ、クロテッドクリームの産地では、さまざまな使い方がされており、クラッカーにのせてナッツと一緒に食べたり、パウンドケーキの生地に加えたり、オムレツやシチュー、スープに入れてコクを出すこともあります。

クリームティーとは

ジャムが先か、クリームが先か

イギリスに昔からある永遠のスコーン論争。形式好きのイギリス人は、スコーンにジャムが先かクロテッドクリームが先か結構もめます。

デボン州とコーンウォール州の人々は、この問題に格別のこだわりを持っています。温暖な気候に恵まれたこの地域は、乳製品の産地として知られ、クロテッドクリームの生産が盛んです。互いに自分たちの地名を冠した呼び名を使い分けるほどで、デボン州民はデボンシャークリーム、コーンウォール州民はコーニッシュクリームと呼びます。

デボン流は、スコーンにクロテッドクリームを先に塗り、その上にジャムを乗せる作法です。一方コーンウォール式は、ジャムを一面に塗った後、クロテッドクリームをスプーンで落とす食べ方となっています。

頑固なイギリス人らしく、双方とも自分たちの作法こそが正しいと主張し譲らない様子。この議論は、デボン州とコーンウォール州に限らず、時にイギリス全土に飛び火することもあります。ある首相はある時「クリームが先かジャムが先か、味は変わらない」と発言し、両州民から非難の声が上がったほどです。一方でエリザベス女王はコーンウォール式を好むと言われています。

ダブルクリームとは

スコーンを味わう上で欠かせないのがクロテッドクリームとダブルクリームです。イギリス本国ではクロテッドクリームが最も一般的ですが、一部のイギリス人がダブルクリームを好んでいます。

クロテッドクリームは乳脂肪分55%の贅沢なクリームですが、ダブルクリームはそれに次ぐ48%の濃厚さを誇ります。どちらも甘みはなく、ジャムと合わせて楽しむのが一般的です。

イギリス国外では入手が難しいため、代用品のレシピが存在します。冷やした生クリームを振り続けることでホイップクリーム、ダブルクリーム、そしてクロテッドクリームに近い状態を作り出せるのです。ただし振りすぎるとバターになってしまうので、適度な調整が肝心です。

クロテッドクリームの黄金比率は1対1とされていますが、イギリス人はクリームをジャムの2〜3倍の量をたっぷりとかけて楽しみます。そのような豪快なクリーム文化が根付いているのです。

スコーンにはクロテッドクリームやダブルクリームがたっぷり塗られた状態で販売されており、イギリス人のクリーム愛が窺えます。濃厚なクリームを堪能した後は、ミルクを加えずにストレートで紅茶を味わうのがお勧めです。

イギリスを訪れた際は、イギリス人に愛されるクリームティーを是非ご賞味ください。

まとめ

イギリスのクリームティーは、紅茶とスコーン、そして濃厚なクロテッドクリームを組み合わせたシンプルながらも贅沢な食習慣です。アフタヌーン・ティーのような豪華な食事とは異なり、日常的に楽しむ軽食として、イギリス全土で親しまれています。クリームティーの由来は、デボンの歴史に根ざしており、地域の人々の協力と感謝の心が形となっているのです。