甘く香ばしいパイの魅力に、心惹かれる方は多いのではないでしょうか。サクサクの生地に包まれた、とろけるフィリングのハーモニーは、まさに至福のひととき。世界には、おなじみのアップルパイから、地域ごとの個性豊かなパイまで、実に様々な種類が存在します。今回は、そんな魅惑的なパイの世界を徹底解剖!定番のパイから、ちょっと変わった変わり種パイまで、その歴史や特徴、美味しさの秘密を詳しく解説します。さあ、パイの奥深い世界へ、一緒に旅立ちましょう。
パイ
パイとは、小麦粉と油脂をベースにした生地で、果物やナッツ、肉などの具材を包んで焼き上げた料理、または菓子のことです。生地にはバターの他、ショートニングやラードが使われることもあり、卵や砂糖を加えることもあります。ただし、「パイ」という名前が付いていても、必ずしもパイ生地を使った食品とは限らないものや、食品以外の用途で作られるものも存在します。
パイの由来
パイの起源は古く、古代エジプトの「ウテン・ト」や中東の「バクラバ」がその原型とされることがあります。現代のパイの直接的な発案者については、クロード・ロランとコンデ侯爵家の料理人フィユ(Feuillet)の二人が有力候補として挙げられています。オックスフォード英語辞典によると、パイに関する最古の記録は1303年のヨークシャーにあるボルトン修道院の会計記録に見られます。初期のイギリスにおけるパイは、焼いた肉を包み込んだ、いわゆるミートパイが主流でした。当時のパイ皮は、原始的な竈での長時間焼成に耐えるため非常に厚く硬く作られており、食用には適していませんでした。16世紀に入り、オーブンの改良やペストリー技術の進歩に伴い、食べられるパイ皮のレシピが登場し始めます。また、アラブ世界から伝来した菓子パンの影響を受け、イタリアではルネサンス期に小さく甘いパイが発達し、それがヨーロッパ全域へと広まっていったとされています。
「パイ」と名称に付く、パイではない食品
ケーキとして知られるものでも、ボストンクリームパイ、ムーンパイ、日本のチョコパイのように「パイ」と呼ばれることがあります。ロッテによると、チョコパイがアメリカでパイと呼ばれるのは、丸いケーキをパイと呼ぶ習慣があるためだそうです。しかし、これはアメリカの植民地時代に、パイ皿でケーキを焼くのが一般的だった頃の話です。ボストンクリームパイもその時代に作られたため、明らかにケーキでありながら「パイ」という名前が定着したのです。
魅惑的な甘いパイ
様々なパイの世界へようこそ。リンゴを使ったアップルパイ、イチゴが主役のストロベリーパイ、モモの甘みが詰まったピーチパイ、そしてバナナの風味が香るバナナパイ。秋には、カボチャの甘さを堪能できるパンプキンパイがハロウィンの食卓を彩ります。サクランボのチェリーパイは、ドラマの影響で日本でも人気に。ペカンナッツの香ばしいペカンパイ、ドライフルーツをブランデーに漬け込んだミンスパイ(見た目とは異なり肉は不使用)も魅力的。パイ生地とクリームを重ねたミルフィーユは、ナポレオンパイとも呼ばれます。さらに、オーブンで焼かないタイプのパイも。レモンパイは、メレンゲを乗せて焼き色をつけたり、カスタードパイは粉砂糖で飾ったり。キーライムパイは、ライムの爽やかさが特徴。バナナクリームパイ、チョコレートとアイスクリームのミシシッピーマッドパイも。日本では、餡を詰めた和風パイや、パイ皿を土台にしたレアチーズケーキも親しまれています。
甘くないパイ
イギリスでは、牛肉と牛の腎臓を使ったステーキ・アンド・キドニー・パイが人気です。豚肉を詰めたポークパイは冷製でいただきます。ハンバーグをパイ生地で包んだものや、ロトルアのハンギパイのように、蒸し焼きにした牛肉入りのパイもあります。ミートパイは、様々な味付けの肉が使われ、ミートソースが用いられることも。フランスのキッシュは、練りパイ生地に肉や野菜を入れ、チーズをかけて焼き上げます。シェパーズパイは、子羊の挽肉と野菜を炒め、マッシュポテトを乗せてオーブンで焼き、パイ生地は使いません。コテージパイとも呼ばれます。スターゲイジーパイは、漁師を讃えるため12月23日に食べられる、コーンウォールの伝統的なパイです。アメリカでは、昔からセイボリーパイという食事パイが作られ、ザリガニパイなどもあります。ラビットパイは、うさぎ肉を使ったパイで、ピーターラビットのお父さんがパイにされたことで有名です。ピザパイは、ピザの別名で、平たく伸ばした生地に具材を乗せて焼きます。「ピース・オブ・パイ」からピザパイと呼ばれるようになったという説もあります。
その他のパイ
カレリア地方の伝統的なお菓子、カレリアンピーラッカは、ライスプディングやオーラリィニプーロ(大麦のプディング)、マッシュポテトなど、素朴な素材が使われています。一方、ピロークは、甘いフィリングが一般的ですが、肉や野菜を使った惣菜パイとしても親しまれています。ピロークは、ロシアやウクライナの食文化にも深く根付いた料理です。