「マクロビ」という言葉が、健康や美容に関心のある人々の間で広く耳にされるようになりました。正式には「マクロビオティック」と呼ばれ、身体と環境に優しい持続可能な生き方を提案する食事法として認識されています。この言葉自体は知っていても、「一体どんなものなの?」「厳しすぎる食事ルールがあるの?」といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、マクロビオティックの由来や歴史、その中心にある哲学、日々の食卓に取り入れる実践的な方法、おすすめの献立、そしてこの食生活がもたらすポジティブな変化まで、包括的にご紹介します。マクロビオティックを通じて、心身のバランスを整え、より健やかで豊かな暮らしを実現するための一助となれば幸いです。
マクロビってどんな意味?
「マクロビ」とは、穀物(特に玄米や雑穀)、季節ごとの野菜、海藻類といった自然の恵みを積極的に食生活に取り入れることで、心と体の健やかさを育む食事法を指します。その正式名称は「マクロビオティック(Macrobiotique)」であり、この呼称自体が、その根底にある思想を深く示唆しています。多くの海外セレブやモデルが取り入れていることから、西洋由来の健康法と誤解されがちですが、実は日本人が提唱し、世界中にその思想が広まった食の哲学なのです。
マクロビオティックの語源を深く探る
「マクロビオティック」という名称は、古代ギリシャ語の三つの要素を組み合わせた複合語です。「macro(マクロ)」は「広大な」あるいは「長い、偉大な」を、「bio(ビオ)」は「生命、生き物」を、「tique(ティック)」は「技術、学問」を意味します。これらの語が一体となることで、「偉大な生命の術」や「生涯にわたる健康の学」といった深い意義が生まれます。
この言葉の源流はさらに古く、西洋医学の礎を築いたとされる古代ギリシャの医師、ヒポクラテスが「長命」や「偉大な生命」を指す「マクロビオス(makrobios)」という語を用いたのが始まりとされています。彼もまた、人間の健康が自然との調和や日々の食事が深く関係していることを認識しており、その思想は現代のマクロビオティックに通じる普遍的な智慧です。
マクロビオティックは、単なる食べ物の制約にとどまらず、心身ともに満たされた人生を送るための包括的な生き方を提唱する哲学であり、その語源には「永く、健康的に生きる」という普遍的な願いが凝縮されています。
日本発祥のマクロビオティック
マクロビオティックは、意外にも日本人がその概念を提唱した食養生です。その創始者として知られるのは、思想家であり教育者でもあった桜沢如一(さくらざわゆきかず)氏です。彼は、日本の古来からの食文化と、東洋の奥深い哲学である「易」の思想を融合させ、独自の健康維持法としてマクロビオティックを確立しました。
桜沢如一氏が考案したこの食事法は、当初日本国内では「正食」という呼び名で広められていました。しかし、その思想を国境を越えてより多くの人々に伝えるため、「マクロビオティック」という国際的な呼称へと改められました。その後、彼の教えは特にヨーロッパを中心に世界中へと伝播し、多くの賛同者を得るに至ります。
そして現代においては、欧米で独自の進化を遂げ、洗練されたマクロビオティックが、まるで再び故郷へ戻るかのように日本国内へと再浸透している状況です。これは、日本の伝統的な智慧が国際的に評価され、新たな形で私たちの日常に還ってきたことを示す、非常に興味深い文化の循環と言えるでしょう。マクロビオティックは、私たちの祖先が育んできた知恵と、現代社会の多様なライフスタイルを繋ぐ、架け橋のような存在となっています。
マクロビオティックの深遠なる軌跡
マクロビオティックは、現代社会に突然登場した斬新な食事法ではありません。その起源は、遠く江戸時代の日本にまで遡り、多くの先人たちの思想と実践によってその姿を形作ってきました。健康と長寿を希求する日本人の古くからの知恵が、いかに時代を超えて継承され、発展してきたのか、その歩みを紐解いていきましょう。
江戸時代の長寿の教え『養生訓』
平均寿命が50歳に満たないのが一般的であった江戸時代において、84歳という当時としては異例の長寿を全うした儒学者であり医者でもあった貝原益軒(かいばらえきけん)先生は、ご自身の生涯の健康長寿の秘訣をまとめた一冊の書物『養生訓』を、亡くなる前年の1712年に出版しました。この書は当時のベストセラーとなり、多くの人々に読み継がれることになります。
『養生訓』は、単なる健康法や具体的な食事のノウハウをまとめたものではありませんでした。そこには、「人間としてどう生きるべきか」「心身ともにどのようにあるべきか」という、現代でいう「ライフスタイル」や「メンタルヘルス」にも通じる、深い哲学が込められていました。食事の摂り方、身体活動、心の持ち方といった多岐にわたる教えは、江戸の一般庶民の心にも深く響き、後世に名を残す古典として高く評価されています。
貝原益軒先生は、食事の質や量、適切な運動習慣、そして心の平穏がいかに人間の健康に不可欠であるかを説き、その思想は日本の健康観に計り知れない影響を与えました。『養生訓』は、マクロビオティックの思想の原点ともいえる、日本の食と健康に関する古からの知恵の集大成なのです。
明治時代における「食養会」と石塚左玄の提唱
『養生訓』に記された貝原益軒先生の教えは、明治時代に入ると、新たな形での継承と普及が図られました。その活動の中心を担ったのが、医師であり薬剤師、さらに陸軍で薬剤監や軍医を務めた石塚左玄(いしづか・さげん)先生です。
石塚左玄先生は、『養生訓』の理念を基盤とし、穀物、野菜、海藻といった日本の伝統的な食材を中心とした食生活を通じて、自然との調和を保ちながら健康な暮らしを実現しようとする「食養会」を設立しました。彼は、食物が人間の健康に与える影響を科学的に分析し、特にナトリウムとカリウムのバランスが極めて重要であるとする「食養の原理」を提唱しました。これは、後にマクロビオティックで提唱される「陰陽調和」の思想の基盤を形成するものでした。
石塚先生は、西洋医学が急速に普及しつつあった時代において、日本の伝統的な食生活の価値を再認識させ、食と健康に関する啓蒙活動に尽力しました。彼が提唱した「食育」という言葉は、現代にも通じる普遍的な概念として、日本の食文化に深く根付いています。石塚左玄先生の活動は、マクロビオティックが日本人の間で広く認知されるための重要な土台を築き上げました。
桜沢如一による「マクロビオティック」の確立と世界への展開
石塚左玄先生の食養生の教えは、その後、桜沢如一(さくらざわ・ゆきかず 1893~1966)先生によってさらに受け継がれ、新たな境地へと発展しました。桜沢先生は、石塚先生の教えをさらに深く掘り下げ、そこに東洋哲学の根幹である「易」の原理を融合させ、「無双原理」と呼ばれる独自の哲学体系を完成させました。この無双原理は、宇宙のあらゆる事象を陰と陽という二つの対立するエネルギーの調和として捉えるもので、マクロビオティックの食事法やライフスタイル全般における根本思想となっています。
桜沢先生は、この無双原理と食養生の思想を基にした「正食」という概念を確立しました。そして、この素晴らしい健康法を日本国内に留まらず、世界中の人々に広めることを決意し、そのために「マクロビオティック」という国際的な名称を与えたのです。彼は単なる食事法の提唱者にとどまらず、平和運動家としても積極的に活動し、ヨーロッパを中心に世界各国を巡り、マクロビオティックを通じた健康法と平和思想の普及に努めました。
桜沢如一先生の献身的な努力により、マクロビオティックは単なる健康食の枠を超え、哲学や生き方としての側面を強く持つようになりました。彼の活動は、日本の伝統的な知恵が国境を越え、世界の食文化や人々のライフスタイルに大きな影響を与えるきっかけを作ったのです。
マクロビオティックの世界展開と久司道夫氏の貢献
桜沢如一氏が蒔いた理念の種は、その弟子である久司道夫氏(1926-2014年)の尽力により、特にアメリカ大陸で大きく花開きました。久司氏は第二次世界大戦後、渡米してボストンに活動の拠点を定め、マクロビオティックの研究、深化、そして普及にその情熱を注ぎ込みました。
「世界の平和は健康から始まる」という強い信念のもと、久司氏はマクロビオティックを単なる食のメソッドとしてではなく、より良い社会を築き上げるための根本的な手段と捉えていました。彼の思想は、アメリカの思想家や芸術家、さらにはハリウッドの著名人たちの間で共感を呼び、マクロビオティックは地球規模の潮流へと成長しました。彼の偉大な功績はアメリカで高く評価されており、首都ワシントンD.C.に位置するスミソニアン国立歴史博物館には、久司道夫氏に関連する主要な著作物や資料がクシファミリーコレクションとして永久保存されています。
さらに、久司道夫氏の指導は、日本の企業にも影響を及ぼしました。大手コンビニエンスストアであるローソンの幹部が、店舗改革の方向性を模索する中で久司氏の健康指導を受けたことが、後に「働く女性を中心に、美と健康、快適なライフスタイルを身近でサポートする」というコンセプトを掲げた「ナチュラルローソン」の展開へと繋がったとされています。このように、久司道夫氏はマクロビオティックを世界規模で広め、食と健康に対する意識向上に計り知れない貢献を果たしました。筆者自身も、2005年には久司道夫氏が設立したアメリカのクシ・インスティチュート・インターナショナルにて学び、国際的なマクロビオティック・インストラクターの資格を取得しています。
日本における再認識:かつての「正食」から現代の「マクロビ」へ
日本国内では「正食」という呼び名で継承されてきたマクロビオティックですが、一般の人々にその名が広く知られるようになったのは、比較的近年のことです。決定的な転機となったのは、2006年1月に世界の歌姫マドンナがテレビ番組に出演し、自身の健康維持法としてマクロビオティックを実践していると明かした瞬間でした。
このマドンナの発言を境に、アメリカで定着していたマクロビオティックが「逆輸入」という形で日本に再び上陸し、その知名度は飛躍的に向上しました。多くのメディアがマクロビオティックを取り上げ、「マクロ」あるいは「マクロビ」といった略称で親しまれるようになりました。
かつては一部の専門家や健康志向の高い層に限られていたマクロビオティックが、著名人の情報発信をきっかけに一般の人々の間にも浸透し、健康的な食生活への関心を高める重要な要因となりました。これは、日本の伝統的な知恵が一度世界を経て、再び日本の食卓へと戻ってきたという、実に興味深い現象であると言えるでしょう。
マクロビの根幹をなす思想
マクロビオティックは、単に体に良いとされる食品を摂取するという表面的な行為にとどまりません。その基盤には、心身ともに豊かで幸福な生活を実現するための、より深遠な哲学が存在します。ここでは、マクロビオティックを理解し、日々の生活に取り入れる上で不可欠な三つの基本原則について見ていきましょう。
身土不二(しんどふじ):地域性と身体の融和
「身土不二」とは、「人間の身体(身)と、その人が暮らす環境(土)は一体であり、切り離せない(不二)」という意味合いを持つ、マクロビオティックの極めて重要な原則です。この思想は、私たちの身体が、居住する土地の風土や気候、そしてそこで育まれる食物と深く結びついていることを教えてくれます。
具体的には、日本で暮らす人々は日本で採れるものを、欧米で暮らす人々は欧米で採れるものを、というように、自身の生活圏で自然に育ち、旬を迎える食材を摂るべきだという考え方です。地元で育った旬の食べ物は、その土地の気候条件に最も適応しており、私たちの身体がその時期に必要とする最適な栄養素や活力を効率良く供給してくれます。旬の恵みをいただくことで、心身が自然と調和し、健やかな状態が維持されやすくなります。
身土不二:食材選びにおける実践的優先順位
マクロビオティックの重要な原則である身土不二は、私たちの健康増進に留まらず、地球環境への配慮とも深く結びついています。住む土地で育った旬の食材を選ぶことは、輸送に伴うエネルギー消費やコスト、過剰な包装を削減し、持続可能な社会に貢献する「地産地消」の精神を体現します。これは、環境に優しい生活を送る上での基盤となります。
食材を選ぶ際は、以下の順序を意識することで、より身土不二の思想に沿った選択が可能になります。
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自家栽培:最も理想的なのは、自分自身の手で育てた食べ物をいただくことです。家庭菜園などを通じて土との触れ合いを感じ、食物本来の生命力を直接享受できます。
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地場産:自分が暮らす地域で収穫された季節の食材を選ぶことです。地元の生産者を支援し、最も新鮮な状態で自然の恵みを取り入れられます。
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国産:日本国内で生産された食材に目を向けることです。比較的短い距離での輸送が可能であり、日本の風土に適応した食べ物であることが特徴です。
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北半球の温帯産:自身が住むのと同じ北半球の温帯地域で育った食材です。気候帯が似ているため、身体へのなじみが良いと考えられます。
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南半球の温帯産:南半球の温帯で育った食材も、栄養バランスが良い場合があります。ただし、輸送距離が長くなるため、その点も考慮した上で選択しましょう。
このように、自身の身体が存在する場所になるべく近い環境で育ったものを選ぶことが、心身の調和と健康を育むことに繋がります。
地域ごとの気候と食べ物のエネルギー:陰陽のバランス
地球上のあらゆる地域の食べ物は、その土地の気候や風土に適応し、そこに暮らす人々のために自然が育んだものです。マクロビオティックでは、食べ物が持つ「陰」と「陽」のエネルギー特性によって、それが私たちの身体にどのような影響を与えるかを深く探求します。例えば、赤道に近い熱帯地方で栽培される食材には、体を冷やし、緩める作用が強い「極陰性」の性質を持つものが多く見られます。
具体的な例としては、熱帯原産の野菜や果物、コーヒー、精製された砂糖、多種多様なスパイスなどが挙げられます。これらの食物の力は、まるで「内なる冷却装置」のように働き、摂取することで身体が穏やかに冷やされ、暑い環境下での快適な生活を助けます。対照的に、北極や南極に近い寒冷地で多く消費される肉や魚といった動物性食品は、体を温め、引き締める作用が強い「極陽性」の食べ物とされます。
これらの食物が持つ力は「体内ヒーター」とも表現でき、摂取することで身体が内側から温まり、厳しい寒さの中で体温を維持するのに役立ちます。このように、身土不二の概念は、単に地理的な距離だけでなく、食べ物自体が宿すエネルギーの質と、それが私たちの心身にどう作用するかという、マクロビオティックの深い洞察を含んでいます。
一物全体(いちぶつぜんたい):生命の恵みを余すところなくいただく哲学
「一物全体」とは、マクロビオティックにおいて極めて重視される原則の一つで、「一つの生命体を丸ごと食べる」という哲学を指します。この考え方の根底には、すべての生命はそれ自体で完全な調和を保っており、食材を皮、アク、根、葉、さらには骨や内臓といったあらゆる部分を含めて丸ごといただくことで、心身のバランスが自然に整うという深い理解があります。
例えば、野菜であれば根から葉、皮までを無駄なく利用し、魚であれば頭から骨、尾まで全てを調理して食すことが奨励されます。穀物の代表であるお米においても、精製された白米よりも、栄養豊富な糠(ぬか)が残された玄米が最良とされています。これは、普段捨てられがちな野菜の皮や穀物の糠、魚の骨などに、他の部分には見られないビタミン、ミネラル、食物繊維といった貴重な栄養素が豊富に含まれているためです。
これらの部分を丸ごと食べることで、特定の栄養素に偏ることなく、自然が意図した最も包括的でバランスの取れた形で栄養を摂取できると考えられています。生命の全体性を尊重し、その恵みを余すところなくいただくことで、食べ物の持つ生命エネルギーを最大限に吸収し、私たちの身体もまた全体として健全な調和を保つことができるのです。
「You are what you eat.」:マクロビオティックの根本思想
この世界において最も完璧なバランスを保っているのは、紛れもなく自然そのものです。マクロビオティックでは、「You are what you eat.(あなたは食べたものでできている)」という言葉を非常に大切にしています。この教えは、私たちが日々の食卓で口にするものが、単に肉体を作るだけでなく、精神状態、感情、そして私たちの人生そのものにまで計り知れない影響を与えるという真理を示唆しています。
バランスの取れた自然の食物を摂取すれば、自ずと調和の取れた心と身体が育まれます。そのため、自然が創造したものを、できる限りそのままの形でいただくことが、真の健康への最短経路であるとマクロビオティックは説きます。例えば、主食となるお米は、籾殻(もみがら)だけを取り除いた「玄米」として食すことが基本とされ、野菜も栄養豊かな皮ごと調理することが推奨されます。
「一物全体」という原則は、食材一つ一つの命を尊重し、その命が持つすべてのエネルギーを余すことなくいただくことで、私たち自身の生命力を高め、大いなる自然との一体感を深めるための、マクロビオティックに根差した実践的な知恵なのです。
陰陽調和(いんようちょうわ):食材のエネルギーバランス

マクロビオティックの根幹をなす思想が「陰陽調和」です。これは、食材を「陰」と「陽」という相対するエネルギーに分類し、その均衡を図ることで心身の健全さを保とうとするものです。この考え方は、宇宙の森羅万象が陰と陽という相反する二つの力によって構成されているとする東洋の哲理「易」を基盤としています。
人間の身体もまた自然の一部であり、陰陽のバランスが乱れると、心身の不調につながると考えられています。したがって、食事においては、ナトリウムが多く含まれる陽性食品と、カリウムを多く含む陰性食品を意識的に組み合わせ、調和の取れた摂取を重んじます。陰陽のバランスという概念を理解し、日々の食生活に取り入れることで、身体の内側からの健やかな調和を追求するのが目的です。
現代栄養学との視点の違い
現代の栄養科学では、食品が持つ具体的な栄養素の含有量やカロリー値といった定量的なデータをもとに、その食品の持つ価値を評価します。対してマクロビオティックでは、数値情報に加え、その食材がどれほどの「生命エネルギー」を宿しているかという、より本質的な視点から食品の価値を見極めます。
この「生命エネルギー」の評価基準こそが、「陰」と「陽」の概念に他なりません。マクロビオティックは、単なる成分分析に終始するのではなく、食べ物が持つ生きたエネルギーが私たちの身体にどう影響するかという、より包括的(ホリスティック)な見方を示してくれるのです。
陰性の食べ物の特徴と例
食品の中には、身体を冷やす、あるいは緩める作用を持つ「陰性」に分類されるものがあります。陰性の食べ物が持つ一般的な特性は以下の通りです。
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成長方向:上方へ向かい、太陽を目指して広がるように育つ傾向があります。葉物野菜や、木の上で実る果物などが典型です。
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身体への作用:体を冷やし、緩やかにする働きがあります。体内の水分量を増やし、組織を柔軟にする効果が期待されます。
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精神への作用:心を落ち着かせ、リラックスを促す効果があります。しかし、摂りすぎると倦怠感や集中力散漫の原因となる可能性もあります。
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具体的な例: 野菜:なす、トマト、きゅうり、レタス、ほうれん草など、水分が多くて柔らかいもの。 果物:バナナ、みかん、パイナップル、メロンなど、熱帯・亜熱帯原産の甘い果物。 飲み物:コーヒー、緑茶、清涼飲料水、アルコールなど。 その他:白砂糖、精製された小麦粉、化学調味料、添加物。
陰性の食品は、夏の暑い日や、心身がこわばっている状況下では有効に作用しますが、過剰な摂取は体を冷やし過ぎたり、エネルギーが拡散しやすくなったりするリスクがあります。
陽性の食べ物の特徴と例
その一方で、身体を温め、引き締める作用を持つ「陽性」の食品も存在します。陽性の食べ物が持つ一般的な特性は以下の通りです。
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成長方向:下方へ向かい、地球の中心へ凝縮するように育つ傾向があります。根菜類や、地中で成熟するものが代表的です。
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身体への作用:体を温め、引き締める働きがあります。新陳代謝を活発にし、組織を強化する効果が期待されます。
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精神への作用:意欲を高める食材とされ、精神的な集中力や活力を向上させる効果があります。
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具体的な例: 野菜:ごぼう、にんじん、れんこん、大根などの根菜類。 穀物:玄米、そば、もち米など。 調味料:味噌、醤油、塩(自然塩)など、発酵・熟成されたもの。 その他:梅干し、漬物、魚介類(少量)、赤身肉(少量)。
陽性の食品は、寒い季節や、身体にエネルギーを補給したい場合に適していますが、過剰に摂取すると、体が引き締まりすぎたり、精神的に興奮しやすくなったりする場合があります。
「中庸(ちゅうよう)」の概念と重要性
マクロビオティックにおいて、「中庸(ちゅうよう)」とは、陰と陽のいずれにも偏らず、調和のとれた食品を指します。この中庸な食品は、私たちの身体へかかる負担を最小限に抑え、本来持っている生命力を無理なく育むと考えられています。健全な陰陽バランスを築く食生活の根幹は、極端な陰性食品や陽性食品を控えめにし、中庸に近い食材を積極的に取り入れることにあります。
マクロビオティックの陰陽調和の原則は、食材の特性を深く洞察し、それを個人の体質、さらには季節や環境の変化に合わせて柔軟に調整することで、常に最適な均衡状態を保つことを目指します。これは、単なる栄養成分の分析を超え、生命全体の繋がりを尊重し、健やかな状態を追求する奥深い哲学と言えるでしょう。
マクロビの基本の食べ方
「マクロビオティック」という言葉から、健康志向でヘルシーな食事が連想されがちですが、具体的にはどのような食生活が推奨されているのでしょうか。ここでは、マクロビオティックにおける主食と副菜の基本的な捉え方、そして「避けるべき」とされがちな食材に対する、その柔軟なアプローチについて掘り下げていきます。
主食・副菜の黄金比
マクロビオティックの食事における基本的な構成は、主食としての玄米ご飯、それに加えてきんぴらごぼうやひじき煮といった野菜中心のおかず、そして味噌汁が核となります。この献立は、日本人が長年培ってきた伝統的な食卓を思い起こさせ、私たちの身体に深く根付いた食習慣と調和するものです。
食事の重要な点は、副菜を過剰に摂取せず、全体の食事量の約半分から三分の二を穀物、特に米類に充てることです。中でも、豊富なビタミンやミネラルを含む玄米が強く推奨されています。玄米は白米と比較して、ぬか層や胚芽がそのまま残っているため、食物繊維、ビタミンB群、鉄やマグネシウムといったミネラルが豊富で、便秘の解消や新陳代謝の促進に役立つとされています。
もしパンを食卓に取り入れるのであれば、精製された小麦粉で作られたものよりも、全粒粉パンを選ぶのが賢明です。全粒粉は小麦を丸ごと挽いたものであり、白小麦粉よりも食物繊維や様々な栄養素が豊富に含まれています。そして、何よりも忘れてはならないのが、「ゆっくりと、よく噛んで食べる」という習慣です。これにより、消化吸収が促され、過食を防ぎ、胃腸への負担を軽減することができます。一口につき30回以上噛むことを意識することで、素材本来の風味を深く味わい、食事の満足感を一層高めることができるでしょう。
食べてはいけない食材はある?:マクロビにおける柔軟な考え方
マクロビオティックに対しては、とかく厳格でストイックな食事制限があるという先入観を持たれがちです。しかし実際のところ、「いかなる場合でも完全に排除すべき」と断定的に禁止されている食品は存在しません。
この点は、他の多くの厳格な食事療法とは一線を画す、マクロビオティックの大きな特色であり、その柔軟性を示しています。マクロビオティックの考え方では、陰陽の調和が保たれている限り、特定の食材を食卓から完全に排除する必要はないとされています。ただし、体への負荷が大きいとされたり、生命エネルギーが低いと見なされる特定の食材に関しては、可能な限り使用を控えたり、摂取量を加減したりすることが推奨される傾向にあります。
避けるべき食品とその理由
マクロビオティックにおいて、摂取をなるべく控えるべきだとされる主要な食品群とその理由は以下の通りです。
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肉、卵、乳製品などの動物性タンパク質: これらの動物性食品は、消化に多くのエネルギーを要し、内臓に過度な負荷を与えがちであると考えられています。特に、今日の商業的な畜産物には、抗生物質やホルモン剤などが用いられていることもあり、その影響も懸念されます。マクロビオティックでは、動物性タンパク質の代わりに、大豆、ひよこ豆、レンズ豆などの豆類や、お麩、テンペなどが調理によく使われます。これらの植物性食材は、良質なタンパク源でありながら、体への負担が少なく消化しやすい特徴があります。
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精製された白砂糖: 白砂糖は体内に急速に吸収され、血糖値の急上昇を招きます。これに対し、体は大量のインスリンを分泌して血糖値を下げようとしますが、このような急激な血糖値の乱高下は、身体システムに過度なストレスを与えます。また、白砂糖は体を冷やす「陰性」の性質が強く、本来摂取すべきミネラル分もほとんど失われています。マクロビオティックでは、メイプルシロップ、米飴、甘酒、玄米水飴、てんさい糖などの、血糖値の穏やかな上昇を促す多糖類や、自然由来の甘味料を用いて味付けをします。
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化学調味料、加工食品: 人工的に作られた化学調味料や、高度に加工された食品は、本来の生命力が欠如していると見なされます。これらは不必要な化学添加物を多く含んでおり、継続的な摂取は、体の自然なバランスを損なう要因となり得るとされています。
生命エネルギーが低い、質の悪いと避けられる食品
上記の品目に加えて、マクロビオティックでは「生命力が低い」あるいは「質が悪い」とされる以下の食品も避けるよう助言しています。これらは、マクロビオティックの核となる「陰陽調和」や「一物全体」といった原則に沿わないものとされています。
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精白した穀物:白米や精白小麦粉など、本来の栄養豊富な部分(ぬかや胚芽)が除去された穀物。
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慣行農法(化学農法)でつくられた野菜:農薬や化学肥料を使って育てられた野菜は、本来の生命力が損なわれていると考えられています。
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精製塩:ミネラル分が精製により失われ、ナトリウム以外の要素が乏しい塩。天然の海塩や岩塩が望ましいとされます。
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高度に加工された加工食品:冷凍食品、レトルト食品、インスタント食品など、製造工程で食材本来の姿や栄養価が著しく変化・損失したもの。
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添加物でつくられた調味料:人工的な保存料、着色料、香料などの化学添加物が使われた調味料。
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加工肉:発色剤や保存料などの添加物が使われたハムやソーセージ類。
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加工海産物:保存料や着色料などが加えられたかまぼこやさつま揚げ。
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養殖魚とその卵:天然の魚介類と比べ、飼育環境や与えられる飼料に問題がある可能性が指摘されます。
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無精卵:生命を宿す可能性を持たない卵と捉えられます。
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スナック菓子、清涼飲料水:過剰な砂糖や添加物が用いられ、栄養価が極めて低く、身体に負担を及ぼすとされます。
マクロビオティックでは、これらの食品を厳格に摂取を禁止するのではなく、「可能な限り控える」という柔軟な姿勢を提唱しています。個々の体調や生活様式に合わせた実践を許容しており、焦らず、段階的に食生活を改善していくことが、マクロビオティックを継続的に実践する上での重要な秘訣と言えるでしょう。
マクロビ食材の選び方とおすすめ
マクロビオティックを実践するにあたり、どのような食品を選び、日々の食事にどのように組み込むかは、その成否を左右する重要な要素です。本章では、マクロビオティックが重視する「中庸」な食材に焦点を当て、その具体的な内容と、質の良い食品を選ぶことの大切さについて深掘りします。
中庸な食べ物こそが基本
マクロビオティックでは、陰陽のいずれにも過度に偏らない、調和の取れた「中庸」な食べ物を、日々の食生活の基盤とすることを強く推奨しています。これらの「中庸」な食品は、古くから日本人が自然と食してきた伝統的な食材が多く、その地域の気候や季節に適応して摂取されてきたものと言えます。
具体的には、以下のような食材が中庸の代表とされています。
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穀物:主食の代表格である玄米をはじめ、そば、ひえ、あわ、きびといった多様な雑穀類が推奨されます。これらは体内で穏やかにエネルギーに変わり、血糖値の急激な変動を防ぎ、安定を保つ助けとなります。
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豆類:小豆、大豆、ひよこ豆、レンズ豆など。タンパク質や食物繊維を豊富に含み、動物性タンパク質の優れた代替品となります。また、味噌や醤油といった発酵調味料の重要な原料でもあります。
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野菜:ごぼう、にんじん、大根、かぼちゃ、キャベツなど、旬を迎える根菜や葉物野菜が主要な位置を占めます。特に土中で育つ根菜類は「陽性」の性質が強いとされ、体を内側から温める効果が期待できます。
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海藻:わかめ、昆布、ひじき、のりなど。ミネラルと食物繊維を豊富に含み、日本の伝統的な食文化には欠かせない存在です。
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きのこ類:しいたけ、まいたけ、えのきなど。カロリーが低く食物繊維が豊富で、免疫力のサポートにも良いとされます。
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漬物:たくあんや梅干し、ぬか漬けなど、伝統的な手法で製造された漬物。これらは発酵食品であり、腸内環境の改善に貢献します。
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ごま・ナッツ類:ごま、くるみ、アーモンドなど。良質な脂質や多様なミネラルを含みますが、高カロリーであるため適量摂取が肝心です。
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植物油:ごま油、菜種油、オリーブオイルなど、低温圧搾(コールドプレス)製法で、精製度が低いものが望ましいとされます。
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甘味料:米飴、甘酒、メイプルシロップ、てんさい糖など、自然由来で、加工の少ないものが選択されます。
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伝統的調味料:味噌、醤油、みりん、酢(すべて伝統的な製法で作られ、無添加のものが条件です。)など。これらは料理に深みと風味を加えるだけでなく、私たちの健康にも良い効果をもたらします。
これらの食品を日常の食事に積極的に取り入れることは、身体の陰陽バランスを整え、健やかな生活を維持するための強力な支えとなります。中庸な食材を主軸とすることが、マクロビオティックを無理なく、そして長く続けていくための要となるでしょう。
質の高い食材を選ぶ重要性
マクロビオティックの教えでは、何を食べるかだけでなく、その「食材が持つ本来の質」も非常に重要な要素とされています。生命の活力を最大限に受け取るためには、可能な限りオーガニック(有機栽培)で育ったもの、不要な添加物を含まない食品、そして昔ながらの伝統的な方法で製造された食材を選ぶことが基本原則です。
具体的には、以下の点に留意して食材を選定することが勧められています。
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オーガニック(有機栽培):化学農薬や合成肥料を使用せずに栽培された野菜や穀物を選ぶことで、食材本来の生命力や栄養素を損なうことなく摂取できます。これにより、土壌の健全性が維持され、地球環境への負担も軽減されます。
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無添加食品:食品添加物は、自然界には存在しない化学物質であり、私たちの体に余分な負荷をかける可能性があります。保存料、着色料、香料、人工甘味料などが加えられていない、原材料がシンプルな食品を選ぶようにしましょう。
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伝統的な製法:味噌や醤油といった発酵調味料は、時間をかけた自然な発酵・熟成の過程を経て作られたものを選ぶのが理想です。市場に出回る安価な大量生産品の中には、発酵を促進する添加物や味を調整する化学調味料が含まれていることが少なくありません。伝統的な製法で作られたものは、手間ひまをかけているからこそ、豊かな風味と高い生命エネルギーを宿しています。
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旬の食材:自然のサイクルの中でその季節に最も生育が盛んになり、収穫される旬の食材は、生命力が最も充実しており、栄養価も豊富です。旬のものを食べることは、体がその季節の気候に適応しやすくなるとも考えられています。
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地元の食材:マクロビオティックの「身土不二」という考え方に基づき、できるだけ自分の居住地域で採れた新鮮な食材を選ぶのが望ましいです。これにより、食材の輸送にかかるエネルギーを削減し、最も鮮度の高い状態で栄養を摂取することができます。
食べ物の質にこだわる選択は、私たち自身の健康を守るだけでなく、地球環境、そして食材を育む生産者への敬意にも繋がります。質の良い食材を選ぶことは、自身の健康に対する大切な投資であると同時に、持続可能な社会を構築するための一歩となるのです。
日々の食事に取り入れるマクロビ実践ガイド
マクロビオティックを「始める」と聞くと、特別な準備や、現在の食生活を大きく変える必要があると感じ、ハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。しかし、マクロビオティックは、日々の生活の中で少しずつ、無理なく取り入れることが可能です。このセクションでは、食事の頻度や、すぐにでも始められる具体的なステップについてご紹介します。
食事の回数と時間帯の工夫
マクロビオティックでは、食事を規則正しく、一日二食または三食とすることが推奨されています。一般的な食習慣では朝・昼・晩の一日三食が主流ですが、個人のライフスタイルや体調に応じて一日二食でも問題ありません。ただし、その場合は、朝食を抜いて昼・晩の二食にするか、朝と昼を兼ねたブランチと夕食の二食とするのが一般的です。特に健康を意識する方々には、朝ご飯をきちんと摂ることが強く推奨されています。
朝食のすすめとポイント
朝は、一日の活動が始まり、身体のエネルギーが高まっていく時間帯です。この上昇するエネルギーの流れに寄り添うためには、薄味で水分をやや多めに含んだ、軽めの食事を摂ることが理想的です。例えば、温かいお味噌汁、少量のもちもちとした玄米、季節の野菜を使ったおひたしなどが良いでしょう。
朝食を摂ることで、体の代謝機能が活性化し、体温が上昇し、一日を意欲的に過ごすためのエネルギーが補給されます。さらに、腸の動きが活発になり、規則正しい便通を促す効果も期待できます。忙しい朝であっても、シンプルな汁物や玄米のおにぎりなど、消化の良いものを意識して食事に取り入れることから始めてみましょう。
昼食の工夫とポイント
昼食は、一日のうちで最も活発に活動する時間帯であり、身体の消化機能も最大限に働く時とされます。このため、昼食は一日の中で最も充実した、しっかりと栄養を摂るマクロビオティックな食事を心がけるのが理想的です。未精製の玄米を主食とし、旬の野菜、海藻、豆類をバランス良く組み合わせた一汁三菜を基本とすると良いでしょう。
ただし、食べすぎは午後のパフォーマンスに支障をきたしかねません。腹八分目を意識することで、消化器官に過度な負担をかけずに済みます。昼食で適切な量の栄養を摂取することで、午後の仕事や活動に必要な集中力と活力を維持することができます。職場でのランチの場合でも、可能な限り手作りのお弁当を持参したり、玄米や野菜が豊富な定食を選ぶよう意識してみてください。
夕食の注意点と対策
夕食は、一日の終わりに向けて心身を落ち着かせ、休息へと誘うための大切な食事です。そのため、気持ちが満たされ、リラックスできるような温かい料理をゆっくりと味わうことが推奨されます。しかし、マクロビオティックの観点からもとりわけ大切なのは、就寝の3時間前までには食事を終えることです。これは、消化活動に十分な時間を確保し、胃腸が休息に入る準備を整えるためです。
就寝直前の満腹な食事は、身体へ多大な負担をかける食習慣と言えます。消化のために内臓が働き続けることで、睡眠の質が低下し、疲労回復が妨げられるだけでなく、糖尿病などの生活習慣病のリスクが高まることにも警鐘が鳴らされています。もし夜遅くなってしまい、食事が寝る間際になってしまう場合は、消化器に優しい味噌汁や野菜スープ、お粥など、負担の少ない温かい食べ物で空腹を満たすことをお勧めします。
アルコールやカフェインの摂取も控えめにし、身体が自然な休息状態へ移行できるよう、食事と周囲の環境を整えることが、質の高い睡眠と健やかな毎日を維持する鍵となります。
マクロビ生活を始める3つのステップ
マクロビオティックを日々の生活に取り入れることは、決して難しいことではありません。次に示す3つのステップで、食卓の選び方や調理法を少しずつ見直すことで、誰でも驚くほど手軽にマクロビ生活を始めることができます。ご自身の体調やライフスタイルに合わせて、無理なく一つずつ取り組むことが成功の秘訣です。
ステップ1:主食をオーガニック玄米に変える
まずは、毎日の食事の基本であるお米を、オーガニックの玄米に切り替えることから始めてみませんか?玄米は、精製された白米と比較して食物繊維やビタミン、ミネラルが格段に豊富に含まれており、マクロビオティックにおける生命力の源、基本中の基本となる食材です。オーガニックの玄米を選ぶことで、農薬や化学肥料の懸念がなく、大地からの恵みを安心して全身で感じることができます。
もし、いきなり食卓すべてを玄米に切り替えることに抵抗があるなら、白米に少しずつ玄米を混ぜることから始めてみましょう。圧力鍋を使えばふっくらと美味しく炊き上がりますし、現代の炊飯器には玄米モードが搭載されたものが多く、手軽に美味しく炊き上げる工夫がされています。玄米をよく噛んで食べることで、豊かな満腹感が得られ、消化器官への優しさにもつながります。
ステップ2:味噌汁の味噌と出汁を天然醸造・昆布と乾物に変える
毎日の食卓に欠かせない味噌汁は、マクロビオティックの視点からも非常に重要です。この一杯の質を高めることで、普段の食生活全体の質を格段に向上させることが可能です。まず、味噌選びでは天然醸造品に注目しましょう。天然醸造の味噌は、時間をかけてじっくりと発酵・熟成されるため、生きた酵素や有益な乳酸菌が豊富に含まれており、消化を助け、良好な腸内環境の維持に貢献します。
次に、出汁の取り方を見直すことも大切です。市販の顆粒だしには、往々にして化学的な添加物が含まれています。そこで、昆布、干ししいたけ、切り干し大根といった乾物を活用し、手間をかけてとった出汁を取り入れましょう。これらの自然素材から引き出される深い旨味は、料理の味わいを豊かにするだけでなく、身体に染み渡るような優しい風味をもたらします。乾物自体も、ミネラルや食物繊維といった栄養素を豊富に含み、滋養あふれる出汁となるでしょう。
ステップ3:質の良い調味料を選ぶ
マクロビオティックでは、料理の風味を決定づける調味料にもこだわりを持ちます。市場に出回る安価な調味料の中には、化学調味料、保存料、人工着色料などが含まれていることが多く、これらは長期的に見ると身体に不要な負担をかける可能性があります。そのため、伝統的な製法で丁寧に作られた醤油、本みりん、純粋な米酢、そして精製されていない自然塩などを選ぶように心がけましょう。
これらの良質な調味料は、厳選された原材料を用い、長い時間をかけて職人の手によって作られています。少量加えるだけでも料理の奥行きが増し、素材本来の味わいを最大限に引き出す力があります。また、余計な添加物の心配なく、安心して日々の食事を楽しむことができます。初期費用は少し高めに感じるかもしれませんが、質の良い調味料は少量で満足感が得られ、結果として身体への大きな投資となり、健康的な食生活を支える基盤となります。
これら3つのステップで食材や調味料の質を改善するだけでも、身体の調子はかなり良い方向へ向かうはずです。さらに、心身の健康を深めたい、マクロビオティックの奥深い哲学や理論を体系的に学びたいとお考えの方は、専門の料理教室で本格的に学ぶことを強くおすすめします。そこでは、安心安全な旬のオーガニック食材を最大限に活かし、食を通じて心身ともに内側から美しくなるための、日本の伝統的な「マクロビオティック」に基づいた季節ごとの調理法、味付けの工夫、そして陰陽のバランスを考慮した食べ方や暮らしの知恵を学ぶことができるでしょう。
おすすめマクロビレシピ
マクロビオティックの基本的な考え方を理解したら、早速日々の食卓にマクロビごはんを取り入れてみませんか。マクロビオティックのレシピを作成する際には、以下の点を意識することが重要です。
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野菜選びでは、陰性と陽性のバランスを考慮する:身体を温めたい時には陽性の根菜類を、体をクールダウンさせたい時には陰性の葉物野菜を積極的に取り入れます。
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可能な限り無農薬で旬の野菜を選ぶ:生命力に満ちた旬のオーガニック食材は、栄養価が高く、身体に優しい恵みをもたらします。
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砂糖や化学調味料は使わず、質の良い調味料で味付けをする:天然醸造された良質な調味料を使い、食材そのものの風味を大切に引き出すことを心がけます。
ここでは、マクロビオティックの思想を取り入れた、家庭でも簡単に作れるおすすめレシピをいくつかご紹介します。
◆1:デリ風カボチャサラダ
マクロビオティックでは、素材が持つ自然な甘みを重視し、積極的に活用します。かぼちゃの優しい甘さを活かした、見た目にも彩り豊かなデリ風サラダは、日々の食卓に華やかさを添えてくれる一品です。
【材料(4人分)】
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かぼちゃ:1/4個
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アーモンド:30g(塩分・油分不使用が理想的)
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新玉ねぎ:100g
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豆乳マヨネーズ:大さじ2
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黒胡椒:少々
【作り方】
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かぼちゃは種を取り除き、およそ2cm角にカットします。新玉ねぎは薄切りにしておきます。
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かぼちゃが竹串でスッと通るくらいまで蒸し上げます。新玉ねぎは水に約5分浸し、ざるに上げて余分な水気をしっかりと切ります。
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アーモンドは細かく砕いておきます。
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蒸し上がったかぼちゃに、刻んだアーモンド、玉ねぎ、豆乳マヨネーズ、黒胡椒を加え、よく混ぜ合わせます。味見をして物足りない場合は、少量の自然塩で味を調えたら完成です。
[マクロビ]オティックでは、和え物などの副菜にアーモンドやくるみといったナッツ類を用いることがあります。ナッツ類は、不溶性の食物繊維やビタミンB群を豊富に含み、腸内環境の改善や健康的な代謝のサポートに良いとされています。ただし、カロリーは決して低くないため、摂取量には注意が必要です。また、一般的なマヨネーズの代わりに、卵や精製糖を含まない豆乳マヨネーズを選ぶことで、より体に優しい一品になります。かぼちゃは身体を温める陽性の性質を持つとされ、[マクロビ]の献立にもよく登場します。
◆2:豆乳クリームシチュー
肌寒い季節に心身を温める、[マクロビ]流豆乳クリームシチューのレシピです。乳製品は一切使わず、里芋が持つ自然なとろみとコクを活かして、濃厚な口当たりに仕上げます。
【材料(2人分)】
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里芋:90g
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無調整豆乳:200ml
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塩:小さじ1/4(自然塩のご使用をおすすめします)
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黒胡椒:少々
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コンソメ顆粒:小さじ1.5(無添加タイプを選びましょう)
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蒸し野菜:かぶ、人参、しめじ、ブロッコリーなど、お好みに合わせて陽性または中庸の野菜
【調理ステップ】
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皮をむいた蒸し里芋と無調整豆乳をブレンダーに入れ、クリーミーになるまで混ぜ合わせます。
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お好みの野菜(例:カブ、ニンジン、しめじ、ブロッコリーなど)を食べやすい大きさに切り分け、柔らかくなるまで蒸し上げます。
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手順[1]で準備した里芋と豆乳のペーストを鍋に移し、塩、粗挽き黒胡椒、そしてコンソメで味を調えながら加熱します。焦げ付きを防ぐため、常にヘラで混ぜながら温めてください。
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温かいクリームシチューを器に注ぎ、蒸したての野菜を彩りよく添えれば、召し上がっていただけます。
里芋は、じゃがいもと比較してカロリーが控えめでありながら、カリウムや食物繊維が豊富に含まれる優れた食材です。体内の過剰なナトリウムを排出するカリウムの作用により、むくみの軽減や血圧の安定に寄与すると言われています。また、里芋は身体を芯から温める陽性の性質を持つため、寒い季節には特に食卓に取り入れたい一品です。人参やごぼうといった他の陽性食材である根菜類をふんだんに加えることで、一層の温活効果が期待できます。
マクロビがもたらす心身への恩恵
マクロビオティックの考え方を日々の生活に取り入れることは、単なる食習慣の改善に留まらず、私たちの心と体に多様なポジティブな変化をもたらす可能性を秘めています。自然界との調和を重視するこのライフスタイルは、私たちに計り知れない豊かさをもたらしてくれるでしょう。
マクロビオティックがもたらす具体的な変化7選
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スムーズな排便とクリアな美肌へ: 玄米、豊富な野菜、海藻といった食物繊維を多く含む食材を積極的に摂ることで、腸内環境が健全に保たれ、お通じが良好になります。健やかな腸は直接的に肌の健康にも影響し、透明感あふれる美しい素肌へと導きます。
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持続する活力と疲れ知らずの体へ: 消化に負担をかけにくい食生活は、消化器官のエネルギー消費を抑え、体全体の活力を高めます。良質な穀物から得られる安定したエネルギー供給は、一日を通して疲れを感じにくくさせ、活動的な日々をサポートします。
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集中力向上で仕事や学業が効率的に: 血糖値の急激な変動を抑える食事は、思考力をクリアにし、集中力や記憶力の向上に貢献します。体が軽やかに感じられ、頭がすっきりすることで、仕事や学習の生産性が向上し、新しいアイデアも生まれやすくなるでしょう。
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質の高い睡眠で爽やかな目覚め: 消化器系に過度な負担をかけない食事が、質の良い睡眠へとつながります。体が深いリラックス状態に入ることで、より深く眠りにつくことができ、翌朝は心身ともにリフレッシュした状態で目覚めることが可能になります。
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無理なく自然に理想の体型へ: 玄米や雑穀は腹持ちが良く、よく噛んで食べることで満腹感を得やすくなり、過食を防ぎます。また、体に本当に必要な栄養素がバランス良く供給されるため、不必要な食欲が自然と抑えられ、健康的な体重管理を無理なくサポートします。
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心の平穏と笑顔あふれる日常: 体の内側からバランスが整うことで、精神的な安定感も得られます。食事と心の状態は密接に結びついているため、心身の調和が取れることでストレスを感じにくくなり、より前向きな気持ちで毎日を過ごせるようになります。
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自然体で自分らしい生き方を見つける: マクロビオティックは、旬の食材や地元で育ったものを大切にし、自然のリズムに寄り添った生活を提案します。この自然との一体感を感じることで、私たちは自分自身の内なる声に耳を傾け、無理なく、より本来の自分らしい生き方を発見できるようになります。
マクロビオティックは、単なる食事の枠を超え、自然界との共生を重視する、私たち日本人にとって理想的な食文化であり、生き方そのものと言えるでしょう。これらの効果は、単に体の不調を改善するだけでなく、私たちの人生全体の充実度を高め、より豊かで幸福な毎日へと導くための大きな力となるはずです。真に望む自分へと近づくために、マクロビオティックのある暮らしを始めてみませんか?
まとめ:マクロビオティックが拓く豊かな食と人生
マクロビオティックは、玄米や雑穀を主軸に、旬の野菜や海藻を積極的に取り入れる、日本発祥の奥深い食養生です。その名は「大きな生命の術」を意味し、江戸時代の『養生訓』から思想の源流を辿り、石塚左玄氏、桜沢如一氏によって体系化され、久司道夫氏の手によって世界へと広められました。
この[マクロビ]の根幹をなすのは、「身土不二(居住地の旬のものを食べる)」「一物全体(食材を丸ごと活かす)」「陰陽調和(食材のエネルギーバランスを整える)」という三原則です。これらは、私たちが暮らす環境と調和し、自然の恵みを最大限に享受することの重要性を教えてくれます。動物性食品、精製された砂糖、化学調味料の使用は控えることが推奨されますが、特定の食材を厳しく制限するものではありません。個々の体質やライフスタイルに応じて柔軟に取り入れられる点が、[マクロビ]の大きな魅力と言えるでしょう。
日々の食卓に[マクロビ]の考え方を導入する道のりは、決して難しいものではありません。例えば、主食をオーガニック玄米に切り替えたり、味噌汁の素材を見直したり、より質の良い調味料を選んだりするだけでも、大きな一歩となります。このような食生活の改善は、腸の健康促進、疲労回復、精神的な集中力の向上、質の良い睡眠、無理のない体重管理、ストレスの緩和、そして自然との一体感など、多岐にわたる恩恵を私たちの心身にもたらします。
マクロビオティックは、単なる食事法に留まらず、私たちの心と体、さらには地球環境との調和を目指す、包括的な生き方そのものです。もしあなたが食生活を見直したい、あるいは心身の健やかさを追求したいと考えているなら、ぜひ[マクロビ]の智慧に触れてみてください。きっと、あなたの人生に、より健康的で心満たされる変化をもたらしてくれることでしょう。
マクロビオティックとは具体的にどのような食事法ですか?
マクロビオティックは、玄米や雑穀を食事の中心に据え、季節ごとの新鮮な野菜、海藻、豆類といった植物性食品を積極的に取り入れる食のあり方です。動物性の食材(肉、卵、乳製品)や、精製された砂糖、化学調味料などの摂取はできる限り避け、自然との調和を何よりも大切にします。これは単なる食事制限にとどまらず、心身の健康と、より豊かな生き方を追求する総合的なライフスタイルを指します。
マクロビオティックの3つの基本原則について教えてください。
マクロビオティックには、「身土不二(しんどふじ)」「一物全体(いちぶつぜんたい)」「陰陽調和(いんようちょうわ)」という核となる3つの原則が存在します。身土不二:私たちが住む土地で、その季節に自然に育った旬の食材を食べるという考え方です。自身の身体と周囲の自然環境は切り離せないという思想に基づきます。一物全体:食材を丸ごと、皮や根、葉といった部分も余すことなく摂取すること。これにより、その食材が持つ生命エネルギーを最大限に享受することを目指します。陰陽調和:あらゆる食材に存在する「陰」と「陽」のエネルギーバランスを考慮し、中庸な状態を保つ食事を心がけること。心身の調和を促し、健康的な状態を維持するための重要な指針です。
マクロビオティックでは、食べられない食材はありますか?
マクロビオティックにおいて、「絶対に摂取してはならない」とされる明確な禁止食材は存在しません。しかし、身体に過度な負担をかける可能性のある動物性の食品(肉、卵、乳製品)、精製度の高い白砂糖、化学調味料、さらに加工食品などは、できる限り控えることが強く推奨されています。これは、これらの食材が陰陽のバランスを乱しやすいと考えられ、また自然な生命エネルギーが低いと見なされるためです。

