カロテノイドと は

野菜や果物の鮮やかな赤、黄、オレンジ色は、カロテノイドという天然色素によるものです。カロテノイドは、β-カロテンやリコピンなど、様々な種類が存在し、私たちの健康維持に欠かせない役割を果たしています。抗酸化作用を持つことで知られ、老化防止や生活習慣病予防への効果が期待されています。この記事では、カロテノイドの種類や特徴、健康への影響について詳しく解説します。日々の食生活に取り入れて、より健康的な毎日を送りましょう。

1.カロテノイドとは?基本情報とその分類

自然界には約750種類ものカロテノイドと呼ばれる色素が存在し、これらはイソプレン単位を基本構造とする、黄色、橙色、赤色の化合物群です。カロテノイドは植物、藻類、微生物によって作られますが、動物は自ら合成することはできません。しかし、摂取したカロテノイドを体内に蓄積したり、代謝したりすることが可能です。植物が持つ色素には、カロテノイドの他に、ポリフェノールの一種であるアントシアニンやフラボノイド、赤ビートに含まれるベタレイン、そして葉緑素として知られるクロロフィルなど、主に4種類があります。これらの色素のうち、フラボノイドとベタレインは水溶性であり、カロテノイドとクロロフィルは脂溶性であるという性質の違いがあります。カロテノイドは大きく、炭素と水素のみで構成されるカロテン類と、酸素原子を含むキサントフィル類に分類できます。カロテン類には、緑黄色野菜に豊富なβ-カロテンや、トマトに多く含まれるリコピンなどがあります。一方、キサントフィル類には、みかんに含まれるβ-クリプトキサンチンや、とうがらしに含まれるカプサンチンなどがあります。ヒトの体内で重要な働きをするカロテノイドは、リコピン、α-カロテン、β-カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、β-クリプトキサンチンの6種類です。このうち、α-カロテン、β-カロテン、β-クリプトキサンチンは、体内でビタミンAに変換されるプロビタミンAとして知られています。プロビタミンAは主に小腸で分解され、ビタミンAへと変換されます。主要なカロテノイドについては、次章で詳しく解説します。

2.主なカロテノイド6種類を解説

β-カロテンやリコピンといった名前は、カロテノイドの中でも特に有名ですが、これらの成分が具体的にどのような性質を持っているのか、詳しく知っている方は意外と少ないかもしれません。ここでは、代表的な6種類のカロテノイドを取り上げ、それぞれの特徴を解説します。

2-1.カロテン(ビタミンAへの変換効率が高い)

カロテンは、α、β、γなど複数の種類が存在しますが、特にα-カロテンとβ-カロテンは、多くの野菜や果物に含まれており、その鮮やかな黄色や橙色の源となっています。例えば、α-カロテンはニンジンやカボチャに豊富で、β-カロテンはトウガラシ、シソ、ニンジン、モロヘイヤ、ホウレンソウなどに多く含まれています。α-カロテンとβ-カロテンは、体内でビタミンAに変換されるプロビタミンAの一種ですが、中でもβ-カロテンは、他のプロビタミンAと比較してビタミンAへの変換効率が高いことが知られています。近年、研究によってニンジンジュースにアレルギーを抑制する効果があることが確認されました。これは、ニンジンに含まれるα-カロテンとβ-カロテンが免疫細胞に働きかけた結果であると考えられています。

2-2.リコピン(強力な抗酸化作用)

トマト、スイカ、あんずなどに豊富なリコピンは、鮮やかな赤色が特徴的なカロテノイドの一種です。カロテン類に属するものの、プロビタミンAとしての機能は持ちませんが、優れた抗酸化作用で知られています。この強力な抗酸化力により、がんや血管に関連する疾患といった生活習慣病の予防効果が期待されています。疫学研究では、トマトの摂取量が多いほど、消化器系のがんや前立腺がんのリスクが低下するという報告もあります。

2-3. β-クリプトキサンチン(骨の健康維持をサポート)

β-クリプトキサンチンは、α-カロテンやβ-カロテンと同様に、体内でビタミンAに変換されるプロビタミンAの一種です。キサントフィルという色素グループに属し、温州みかんをはじめとする柑橘類や柿、パパイヤなどに豊富に含まれており、その純粋な結晶は鮮やかな赤色をしています。β-クリプトキサンチンには、強力な抗酸化作用に加え、骨の代謝を促進することで骨の健康を維持する効果があるという研究報告も存在します。

2-4. ルテイン(ブルーライトから目を保護する)

ルテインは、マリーゴールドの花びらをはじめ、ほうれん草、トウモロコシ、ブロッコリーといった⻩⾊の野菜に豊富に含まれる色素成分です。カロテノイドの一種であり、キサントフィル類に分類されますが、体内でビタミンAに変化することはありません。特に目の網膜、中でも黄斑部に多く存在し、PCやスマホから発せられるブルーライトなどの光刺激から網膜を保護する機能を持つとされています。

2-5. ゼアキサンチン(ルテインとともに目を保護)

ゼアキサンチンは、ルテインと分子構造が似ているキサントフィルの一種で、体内でビタミンAに変わることはありません。パプリカ、トウモロコシ、柑橘類などに含まれており、その鮮やかな黄色や橙色はゼアキサンチンによるものです。体内に取り込まれたゼアキサンチンは、ルテインとともに目の黄斑に蓄積し、ブルーライトなどの有害な光から網膜を保護する役割を果たすと考えられています。

2-6. アスタキサンチン(目の健康と肌の健康を助ける)

アスタキサンチンは、キサントフィルというカロテノイドの一種であり、体内でビタミンAに変化することはありません。主にエビやカニといった甲殻類、サケやマスなどの魚介類に存在し、その鮮やかな赤色が特徴です。近年、研究によってアスタキサンチンが目のピント調節機能を助け、目の疲れを和らげる効果や、紫外線から肌を守り、潤いを保つ効果があることが示唆されています。このように、カロテノイドはその種類ごとに様々な特性を持っていることが分かります。

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