日本の日常に深く根差したお茶である番茶とほうじ茶。どちらも親しみ深い存在ですが、「番茶とは何か?」、そして「ほうじ茶とはどう違うのか?」と問われると、即座に答えられる方は案外少ないのではないでしょうか。実はこれらのお茶は、共に「緑茶」をベースとしながらも、製造過程における「焙煎」という工程の有無が、その香り、味わい、色合い、さらには含有成分に決定的な違いをもたらしています。本稿では、今一度知っておきたい番茶とほうじ茶の根本的な相違点を、日本茶の基礎知識から製法、原料、風味、香気、外観、そして特有の成分に至るまで、様々な角度から深く掘り下げて解説します。加えて、京都ならではの「京番茶」との関連性や、日々の暮らしに合わせた最適な選び方についてもご紹介し、皆様の日本茶体験をより一層豊かなものにするための情報をお届けします。
どこまでが日本茶?
番茶やほうじ茶といった具体的な種類に入る前に、まずは「日本茶とはどのようなお茶を指すのか?」という広範な定義について確認しておきましょう。現代ではペットボトル入り日本茶が手軽に手に入るようになり、お茶の種類が多様化したことで、その定義がやや曖昧になっている側面もあります。
世界中で愛飲されているお茶ですが、その分類は主に製造方法、特に茶葉の発酵度合いによって大きく分けられます。具体的には、発酵させない「不発酵茶」、一部を発酵させる「半発酵茶」、完全に発酵させる「発酵茶」の三つに大別されます。日本の伝統的なお茶の多くは、このうち「不発酵茶」に属する「緑茶」を指します。茶葉を摘採後、速やかに蒸気で加熱処理(蒸し)を行い、発酵を抑制することで、茶葉本来の鮮やかな緑色と清々しい風味を維持するのが特徴です。
緑茶(広義)に含まれるもの
広い意味での日本茶というカテゴリーでは、ほうじ茶、玄米茶、抹茶なども一般的に含まれると認識されています。これらのお茶は、基本となる緑茶を加工したり、特定の製法を用いたりして作られるため、広義の日本茶として位置づけられています。
例えば、抹茶は、特別な栽培方法で作られた碾茶(てんちゃ)という緑茶を細かく石臼で挽いて粉末にしたものです。また、玄米茶は、煎茶や番茶に香ばしく炒った玄米をブレンドしたものです。そしてほうじ茶も、後述するように、緑茶の一種である番茶や煎茶などを高温で焙煎して作られるため、加工工程は異なるものの、その起源は日本の緑茶にあります。
番茶とほうじ茶の最大の違いは「焙煎」しているかどうか
それでは、いよいよ本題へと移りましょう。番茶とほうじ茶を明確に区別する最大の要素は、茶葉に「焙煎」という加熱処理が施されているかどうか、という点に集約されます。この焙煎工程の有無こそが、両者のお茶の香ばしさ、風味、水色(淹れたお茶の色)、そして含有成分に決定的な差異をもたらします。
ここで「番茶とは何か?」に焦点を当てると、番茶は、収穫後の茶葉を蒸して揉み、乾燥させることで作られる「緑茶」の一種です。主な加熱処理は、茶葉の発酵を止めるための「蒸し」であり、これにより緑茶本来の特性が保たれます。この工程によって、緑茶特有の清々しい風味と美しい緑色が維持されます。
対してほうじ茶は、番茶や煎茶といった緑茶を、さらに専用の焙煎機を用いて高温で炒る「焙煎」という独自の工程を経て製造されます。この焙煎により、茶葉は特徴的な褐色へと変化し、同時に他のお茶にはない、芳ばしい香りが生まれるのです。要するに、ほうじ茶は緑茶を二次加工して作られるお茶であり、焙煎工程の有無こそが、番茶とほうじ茶の香り、味、水色、成分を決定づける根源的な違いであると言えます。
「番茶」とは収穫時期の遅い茶葉を使った緑茶のこと
番茶は、一般的に「新茶の収穫時期から外れた時期に摘まれた、成熟した茶葉から作られる緑茶」を指します。具体的には、新芽を摘んで作られる一番茶や二番茶の収穫後に、大きく育ち硬くなった茶葉や茎を用いて作られます。「番外の茶」といった意味合いを持つことから、日常的に楽しまれる身近なお茶として、長らく親しまれてきました。
煎茶との大きな違いは、その原料にあります。煎茶が若くやわらかな新芽を用いるのに対し、番茶は成熟した茶葉を主体とします。主に夏以降に摘まれる三番茶、四番茶、さらには秋から冬にかけて収穫される秋冬番茶などが原料となることが多く、これらの茶葉は新芽に比べて葉が大きく、茎も混じっているのが特徴です。
成熟した茶葉は、新芽に比べてカテキンやカフェインの含有量が比較的少ないため、苦味や渋みが抑えられ、すっきりとして飲みやすい風味が魅力です。この穏やかな味わいから、食事中のお茶としてだけでなく、日常の水分補給として、たっぷりと気軽に味わうのに非常に適しています。
番茶の地域による多様性と定義
しかしながら、番茶の定義は地域によって異なる側面も持ちます。北海道、石川、京都といった一部の地域では、「ほうじ茶」全般を指して番茶と呼ぶことがあります。これは、その土地で長年培われてきたお茶の製法や呼称が、独自に発展した結果と言えるでしょう。このように、地域ごとの伝統が息づく番茶には、それぞれ個性豊かな味わいや文化が存在します。
特に京都で親しまれている「京番茶」は、一般的な番茶とは一線を画す独特の味わいが特徴で、その燻製を思わせる香ばしさは全国的にも有名です。これは後述するほうじ茶の仲間として分類されるお茶であり、その特別な製法が、通常の番茶とは大きく異なる点として認識しておく必要があります。
有名な番茶の例
日本各地には、その地域の風土や食文化に深く根ざした多様な番茶が見られます。例えば、京都の「京番茶(いり番茶)」、岡山県の「美作番茶」、石川県の「加賀棒茶」(これは厳密には茎茶を焙じたほうじ茶の一種ですが、地域によっては広い意味で番茶として愛飲されています)などが挙げられます。これらはそれぞれ独自の製法と風味を持ち、単に日常のお茶としてだけでなく、地域の特産品としても広く認知され、親しまれています。
「ほうじ茶」とは番茶などを焙煎して作られるお茶
ほうじ茶という名称は、「焙煎したお茶」を意味する「焙(ほう)じた茶」に由来するとされています。この名前が示す通り、茶葉を焙煎する工程が、その特徴的な風味を生み出す鍵となっています。一般的には番茶を焙煎したものがイメージされがちですが、正確には「煎茶、あるいは番茶を焙煎したお茶」と定義されます。緑茶を基盤とし、そこに焙煎という加工を加えることで、全く新しい香りと味わいを持つお茶へと生まれ変わるのです。
もちろん、高級な煎茶を原料とするほうじ茶も存在しますが、日常的に飲まれるほうじ茶の多くは、主に番茶を焙煎したものが主流です。また、お茶の茎の部分だけを集めた「茎茶(棒茶)」を焙煎して作られることも多く、これらは特に芳醇な香ばしさが際立つことで知られています。
焙煎による風味と成分の変化
焙煎という加熱処理を経ることで、茶葉は特徴的な茶褐色となり、抽出されたお茶の色(水色)は、透明感のある赤みがかった茶色となります。高温での焙煎工程は、緑茶に特有の苦味成分であるカフェインや、渋み成分であるカテキンの一部を気化させ減少させます。この変化により、煎茶や通常の番茶といった他のお茶と比較して、苦味や渋みが抑えられ、口当たりが非常にまろやかで、飲みやすい味わいが生まれるのです。
さらに、焙煎の過程で「ピラジン」という特有の香気成分が生成されることにより、ほうじ茶ならではの深く、甘みを感じさせる香ばしさが生まれます。この独特の香りは、心地よいリラックス効果をもたらすとも言われています。カフェイン含有量が少ないため、胃への刺激が少なく、お子様からご高齢の方、妊婦さんまで、時間帯を気にすることなく、多くの方に安心して愛飲されています。
有名なほうじ茶の例
ほうじ茶は、その独特の香ばしい風味から非常に高い人気を博しており、多岐にわたる製品が市場に出回っています。一般的な番茶を原料として焙煎した「普通ほうじ茶」が広く知られる一方で、より質の高い煎茶を丁寧に焙煎した「高級ほうじ茶」、そして茶の茎の部分だけを用いて作られる「茎ほうじ茶」、別名「棒ほうじ茶」なども存在します。特に、石川県発祥の「加賀棒茶」は、茎ほうじ茶の代名詞とも言える存在で、その格別な甘みと香ばしさで全国的な評価を得ています。近年では、ほうじ茶を取り入れたスイーツや各種ドリンクも数多く開発され、その魅力は広がり続けています。
これまでの説明でお分かりいただけたと思いますが、番茶とほうじ茶の決定的な違いは、「焙煎工程を経ているかどうか」という点に集約されます。両者がしばしば混同される背景には、地域によっては番茶のことを慣習的に「ほうじ茶」と呼ぶ習慣があることも影響しているのかもしれません。
番茶とほうじ茶の5つの違いを徹底比較

番茶とほうじ茶の最も基本的な相違点は「焙煎の有無」にありますが、この違いは具体的にどのような特徴となって現れるのでしょうか。このセクションでは、「製造プロセス」「使用される原料」「風味と香り」「外観」「含有成分」という五つの側面から、両者の差異を詳細に比較し、それぞれの持つ独自の個性を浮き彫りにします。この綿密な比較によって、両者間の味わいや香りの違いがなぜ生じるのか、そしてそれぞれがどのような状況や好みに最適なのかを、より深く理解していただけるはずです。
製造工程の違い:高温で焙煎する工程の有無
番茶とほうじ茶の製造プロセスにおける最も決定的な差異は、その最終工程で高温による焙煎が行われるか否かという点にあります。
番茶の製造工程
番茶は、摘み取った茶葉の酸化酵素の働きを止めるための「蒸熱」処理を施し、その後、茶葉を揉みながら形を整え、乾燥させるという、一般的な緑茶の製造工程を経て作られます。この「蒸熱」の工程によって、茶葉本来の鮮やかな緑色と清々しい香りが保たれます。発酵をさせないことで、茶葉が持つ成分を活かした、雑味のないすっきりとした風味が生まれます。
ほうじ茶の製造工程
一方、ほうじ茶は、こうしてできあがった番茶や煎茶といった緑茶を、さらに専用の焙煎機で高温に煎り上げて作られます。この「焙煎」という追加の過程によって、茶葉の成分が化学変化を起こし、独特の香ばしい芳香を放ち、その色合いも特徴的な茶褐色へと変化します。焙煎は200℃前後の非常に高い温度で行われ、短時間で一気に加熱することで、豊かな香りを引き出し、苦味成分を和らげる効果があります。つまり、ほうじ茶は、緑茶に「焙煎」という独自の加工を施したお茶なのです。
原料となる茶葉の違い:ほうじ茶には番茶以外の茶葉も使われる
番茶とほうじ茶では、一般的に用いられる原料の茶葉にも明確な違いが見られます。
番茶の原料茶葉
番茶の原料は、その名称が示す通り、新芽の摘採を終えた夏以降に収穫される三番茶や四番茶、または晩秋から冬にかけて摘まれる秋冬番茶といった、成長が進みやや硬化した茶葉や茎の部分が主に使用されます。これらの茶葉は、新芽と比較して葉が大きく肉厚で、比較的リーズナブルに入手できる点が特徴です。この成熟した茶葉を用いることで、すっきりとして飽きのこない、日常的に親しまれる風味が生まれます。
ほうじ茶の原料茶葉
ほうじ茶の製造において、原料となる茶葉は多岐にわたります。一般的には番茶が用いられますが、その選択肢はそれだけに留まりません。例えば、新芽を用いた上質な煎茶を丁寧に焙煎することで、より深みのある甘みと豊かな旨味を持つ、洗練された風味のほうじ茶が生まれることがあります。また、茶の茎部分だけを選別した「茎茶(棒茶)」を焙煎したものは、「ほうじ茎茶」や石川県の「加賀棒茶」として親しまれており、その独特な香ばしさと後味のすっきりとした甘さが特徴です。このように、ほうじ茶はそのベースとなる茶葉の選び方一つで、驚くほど多様な味わいと香りを表現できる点が魅力と言えるでしょう。
味と香りの違い:さっぱりした番茶と香ばしいほうじ茶
この二つのお茶は、口にしたときの風味や鼻腔をくすぐる香りにおいて、それぞれ異なる個性を持っています。まさにこの味と香りの違いこそが、多くのお茶愛好家が番茶とほうじ茶を気分や食事に合わせて選び分ける決め手となるのです。
番茶の味と香り
番茶は、緑茶のカテゴリに属するお茶であり、その風味は煎茶の新芽のような華やかさとは一線を画します。特徴として挙げられるのは、清々しい香りと口当たりがさっぱりとした味わいです。成熟した茶葉を使用しているため、上級煎茶に比べて苦みや渋みがやわらかく、非常に飲みやすい軽やかさを持っています。そのため、日常的に気軽に楽しめる、ゴクゴクと喉を潤せるお茶として親しまれています。若葉のような鮮烈な香りは控えめながらも、どこか懐かしさを覚えるような、素朴で落ち着いた風味が魅力です。
ほうじ茶の味と香り
対照的に、ほうじ茶が持つ最大の魅力は、焙煎工程を経て引き出される、深く豊かな香ばしさです。この独特の香りは「ピラジン」という成分に由来し、心身を穏やかに落ち着かせる効果も期待できると言われています。味わいの点では、焙煎によって苦み成分のカフェインや渋み成分のカテキンが適度に分解されるため、刺激が少なく、非常にまろやかな口当たりが特徴です。口に含むと、甘みとすっきりとしたキレのある後味が広がり、その香ばしい余韻は長く鼻腔に残ります。焦げ付くような香ばしさの中にも、ほのかな甘みが感じられる複雑な風味が、多くの人々を魅了しています。
見た目の違い:茶葉やお茶の色(水色)を比較
番茶とほうじ茶は、乾燥した茶葉の外観から、実際に淹れた際のお茶の色(水色)に至るまで、それぞれが持つ独特な視覚的特徴を備えています。
番茶の見た目
番茶の茶葉は、緑茶の範疇に入るため、乾燥状態では鮮やかな緑色や、やや黄みがかった緑色を呈します。成熟した大きな茶葉を使用することが多いため、一枚ごとの形は比較的大きく、均一ではないのが特徴です。茎や葉脈がはっきりと見えることも珍しくありません。お湯を注ぐと、澄んだ明るい黄緑色の水色となり、まさに緑茶らしい爽やかな印象を与えます。
ほうじ茶の見た目
一方、ほうじ茶の茶葉は、焙煎工程を経ることで、濃い茶色や赤褐色へと変化します。焙煎の度合いによっては、より深い、ほとんど黒に近い色合いになることもあります。茶葉自体は硬質で、触れるとカサカサとした手触りが特徴です。淹れると、その水色は透き通った美しい赤みがかった茶色や、深みのある琥珀色となります。この独特な色合いは、加熱によるメイラード反応などの化学変化によって生じるもので、その香ばしい風味を視覚的に表現しています。この落ち着いた色合いも、ほうじ茶の持つ魅力の一つと言えるでしょう。
含まれる成分の違い:カフェインやカテキンの含有量
お茶の主要な構成要素であるカフェインやカテキンといった成分についても、番茶とほうじ茶ではその含有量に顕著な差が見受けられます。
番茶の成分とその特徴
番茶は、成熟した茶葉から作られるため、まだ若い芽から製茶される上級な煎茶や玉露とは異なり、カフェインやカテキンの含有量がもともと控えめです。茶葉が十分に成長する過程で、これらの刺激性成分の生成が穏やかになるため、口当たりが優しく、心地よい味わいが生まれます。特にカフェインの少なさは、日常的に気兼ねなく、たっぷりと楽しめる大きな理由の一つです。
ほうじ茶の成分とその魅力
一方、ほうじ茶は、番茶などを原料とし、これをさらに高温で焙煎する工程を経ることで、カフェインやカテキンの一部が熱によって減少し、昇華します。このため、数ある緑茶の中でもほうじ茶はカフェイン含有量が特に少なく、一般的な煎茶の約半分程度と言われるほどです。カフェインが少ないという特性は、小さなお子様から妊娠中・授乳中の方、胃腸が敏感な方、あるいは就寝前のリラックスタイムまで、カフェイン摂取を控えたいあらゆるシーンで安心して選ばれる理由となっています。また、カテキンが減少することで渋みが和らぎ、まろやかで飲みやすい風味に仕上がります。さらに、焙煎過程で生み出される「ピラジン」という成分には、血行促進や体を温める効果が期待されており、健康面でも注目されています。
「京番茶」は番茶の名を冠するが、その製法はほうじ茶の系譜
「京番茶」という名称を聞くと、多くの方が番茶の一種だと想像しがちですが、実際にはその独特の製法から、ほうじ茶の仲間として位置づけられるお茶です。古くから京都の日常に溶け込んできたこのお茶は、一般的なほうじ茶や番茶とは一線を画す製法で生み出されます。
京番茶の独自製法と個性豊かな風味
京番茶の原料は、春に収穫される一番茶の中でも特に硬く育った葉や茎です。これらを蒸したあと、通常のお茶のように揉まずにそのまま乾燥させます。その後、大きな鉄釜に移し、強火で丹念に炒り上げられます。この「揉まずに炒る」という極めて珍しい製法こそが、まるで焚き火で燻した落ち葉のような、スモーキーで他に類を見ない香りを生み出すのです。その香りは非常に個性的で、初めて口にする人は驚くかもしれませんが、その独特の風味に一度慣れると、やみつきになるほどの魅力があります。
見た目も、大きく黒っぽい茶葉が特徴的で、一般的なほうじ茶とは明らかに異なります。「いり番茶」とも称されるのは、この「炒る」という工程に由来しています。このように、京番茶は「番茶」という名を持ちながらも、香ばしさを生み出す焙煎工程がその根幹にあるため、広義のほうじ茶の一種として分類されます。京都の伝統的な食文化に深く根ざし、その唯一無二の個性で愛され続けるお茶です。
生活シーンに合わせた番茶とほうじ茶の賢い選び方
番茶が持つあっさりとした口当たりと、ほうじ茶が醸し出す豊かな焙煎香。これら二つのお茶が持つ個性を知ることで、その日の気分や場面に最適な一杯を選ぶ喜びが広がります。例えば、食事の風味を邪魔せずに楽しみたい時や、普段の水分補給には番茶がうってつけです。対照的に、一日の疲れを癒したい時や、体を内側から温めたい時には、ほうじ茶が心強い味方となるでしょう。このセクションでは、具体的な日常の場面を想定し、それぞれのお茶がどのようにあなたの時間をより豊かにしてくれるか、その選び方のヒントをご紹介します。
食卓には、すっきりとした風味の番茶が最適
番茶の持つクリアで雑味の少ない風味は、お料理の持ち味を損なうことなく引き立てるため、日々の食事に寄り添うお茶として理想的です。一般的な緑茶が持つ爽やかさを保ちつつ、苦みや渋みが控えめであることから、繊細な和食はもちろん、こってりとした洋食や中華料理にも見事に調和します。
食事中に楽しむ番茶の多様な魅力
特に、濃厚な料理をいただいた後に番茶を口にすると、口内を心地よくリフレッシュしてくれる効果が期待できます。そのやわらかな口当たりは、食材本来の味を尊重する日本料理との相性が特に優れています。さらに、カフェイン含有量が少ないため、時間帯を気にすることなく、ご家族全員で食卓を囲む際に安心して召し上がれます。日々の食事と共に、あるいは気軽に水分補給として、たっぷりと楽しめるのが番茶の大きな利点です。その飽きのこない味わいは、ご家庭に常備するお茶として、非常に優れた選択肢となるでしょう。
安らぎのひとときや眠りにつく前には、心温まるほうじ茶を
ほうじ茶が放つ香ばしい香りには、心を落ち着かせるとされる「ピラジン」という香気成分が含まれています。この特性から、仕事や家事の合間に小休止を取りたい時や、日中の喧騒から離れて心身を鎮めたい夜の時間帯に特におすすめです。温かいほうじ茶の湯気を深く吸い込むことで、日頃のストレスや身体の強張りがゆっくりと和らぐのを感じられるでしょう。
ほうじ茶のカフェイン含有量と体に優しい特性
一般的に、ほうじ茶は煎茶、ウーロン茶、紅茶、そしてコーヒーと比較してカフェイン量が非常に少ないことで知られています。そのため、一日の終わりに心身を落ち着かせたい時や、夜間の水分補給としても適しています。ただし、完全にカフェインを含まない麦茶などとは異なり、ごく微量のカフェインは含まれている点にご留意ください。カフェインに敏感な方や摂取を厳格に制限したい場合は、カフェイン除去処理を施したほうじ茶を選ぶか、飲用する時間帯や量を調整することが賢明です。また、ほうじ茶には体をじんわりと温める効果も期待できるため、冷えを感じる時や肌寒い季節に味わう一杯として最適です。その香ばしい香りは、心を落ち着かせ、穏やかなひとときを演出してくれるでしょう。
有機栽培 三年番茶(リーフ)
当園の有機栽培三年番茶は、その名の通り、約三年もの間、豊かな自然環境のもとで育まれた茶葉と茎を丹念に選別し、じっくりと熟成させた後、丁寧に焙煎して仕上げられます。農薬や化学肥料を一切使用せず、大地の恵みを存分に受けて育った茶葉は、口当たりがまろやかで、奥深い旨味が特徴です。カフェイン含有量も極めて少なく抑えられているため、小さなお子様からご高齢の方まで、安心して日々の健康茶としてお楽しみいただけます。リーフタイプならではの利点として、お好みに合わせて濃さを調整し、心ゆくまで番茶本来の風味を堪能するゆったりとした時間をお過ごしいただけます。
阿波番茶
徳島県に古くから伝わる伝統的な製法で生み出される阿波番茶は、他にはない独特の乳酸菌発酵工程を経る点が最大の特徴です。夏の盛りに摘み取られた茶葉を釜で丁寧に茹で上げた後、樽に漬け込み、時間をかけて乳酸発酵させることで、元来の酸味や渋みが驚くほどまろやかに変化します。これにより、さっぱりとしながらも奥深い独特の風味と、心地よい後味が生まれます。発酵食品としての側面から、その健康への寄与も注目されており、日常のお茶としてだけでなく、健康維持を意識する方々にも強くおすすめできます。じっくりと煮出すことで、阿波番茶ならではの複雑で深い味わいをより一層引き出すことができます。
まとめ
「番茶とは何か」という疑問にお答えするために、番茶とほうじ茶はどちらも「緑茶」を原料としながらも、製造工程における「焙煎」の有無によって、全く異なる個性を持つお茶であることをご理解いただけたでしょうか。番茶は、一般的な新茶の収穫時期よりも遅く摘み取られた茶葉や茎を用いて作られる緑茶であり、そのすっきりとした口当たりと穏やかな風味は、日々の食事のお供や水分補給として最適です。カフェインが少なめであることも相まって、日常生活のあらゆるシーンに自然と溶け込む懐の深さを持っています。
一方、ほうじ茶は、番茶や煎茶などの緑茶を高温で焙煎することによって作られます。この焙煎工程によって生まれる香ばしい香りと、カフェインの少なさが特徴で、心身をリラックスさせたい時や就寝前、あるいは胃腸に負担をかけたくない時に選ばれることが多いお茶です。焙煎の香ばしさは、心地よい癒やし効果も期待できます。このように、わずかな製造工程の違いが、両者の味、香り、水色(すいしょく)、そして含有成分といった、あらゆる特性を決定づける重要な要素となっているのです。
さらに、「京番茶」のように名前に番茶と付いていても、茶葉を揉まずに炒るという独特の製法が採用されており、その製法から実質的にはほうじ茶の一種と分類される興味深い例も存在します。これらの番茶やほうじ茶の多様な特性を深く理解し、その日の気分やライフスタイルに合わせて選び分けることで、日本茶が持つ奥深い世界をこれまで以上に満喫することができるでしょう。それぞれの魅力を最大限に引き出し、心豊かなティータイムをお過ごしください。
番茶とほうじ茶はどちらも緑茶なのでしょうか?
はい、番茶もほうじ茶も、起源をたどれば「緑茶」に分類されるお茶です。番茶は、収穫時期が遅い茶葉から作られる不発酵茶であり、それ自体が緑茶の一種です。一方、ほうじ茶は、番茶や煎茶といった緑茶を、さらに高温で焙煎加工して作られるため、「加工緑茶」と言い換えることができます。つまり、両者ともに緑茶を基盤としたお茶であるという共通点を持っています。
番茶とほうじ茶のカフェイン含有量に違いはありますか?
はい、カフェインの含有量には違いが見られます。番茶は、成熟した茶葉を使用するため、新芽から作られる上質な煎茶と比較して、元々カフェインの量が少なめです。ほうじ茶は、その番茶などを高温で焙煎する過程でカフェインがさらに減少するため、結果として番茶よりもカフェイン含有量が低くなります。このため、カフェインの摂取を控えたい方や、就寝前のリラックスタイムには、特にほうじ茶が推奨されます。
京番茶はなぜ「番茶」と名前に付くのにほうじ茶の仲間なのですか?
京番茶は、その名に「番茶」とありますが、製造工程を見るとほうじ茶の仲間に位置づけられます。一般的な番茶が茶葉を蒸して揉み、乾燥させるのに対し、京番茶は蒸した茶葉を揉まずに乾燥させ、その後、大きな鉄釜で強火で「炒る(焙煎する)」という独自の工程を経ます。この「焙煎」の工程があることで、香ばしさを特徴とするほうじ茶と同じ系統の風味を持つようになります。独特のスモーキーな香りが特徴的です。

