十勝こがね徹底解説:特徴、来歴、美味しい食べ方から人気じゃがいも品種との比較まで

数あるジャガイモ品種の中でも、ひときわ優れた特性を持つ「十勝こがね」。その名前が示す通り、肥沃な大地が広がる北海道十勝地方で生まれた品種です。この記事では、十勝こがねがどのようにして誕生し、どのような特徴を持っているのか、そしてどのように調理すれば美味しく食べられるのかを詳しく解説します。さらに、食卓でおなじみの「男爵いも」や「メークイン」といった人気品種との違いを比較することで、それぞれの個性や最適な料理方法が見えてくるでしょう。煮崩れのしにくさ、食感、調理後の色合いなど、消費者や料理人が気になる情報を満載でお届けします。

優れた特性を持つ「十勝こがね」の概要

「十勝こがね」は、農研機構によって開発された、際立った特性を持つジャガイモです。特筆すべきは、ジャガイモシストセンチュウという厄介な病害虫に対する抵抗力を持っている点です。加えて、その美しい形状、収穫量、そして何よりも重要な食味においても高い評価を得ています。具体的には、楕円形で皮がむきやすく、茹でても煮崩れしにくいという特長があります。蒸すと程よいホクホク感があり、フライドポテトなどの揚げ物にも最適です。加熱すると鮮やかな黄金色を帯び、冷めても変色しにくいことから、料理の見栄えを重視する方にもおすすめです。豊かな風味とホクホク感は、ジャガイモ本来の美味しさを引き立て、多くの料理愛好家から支持されています。

誕生までの道のり:育成機関と交配親

「十勝こがね」の開発は、1986年に北海道農試でスタートしました。この品種は、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ系統「R392-3」を母とし、大粒で見た目の良い早生種「69095-17」を父として交配させることで生まれました。この組み合わせにより、病害への抵抗力と、優れた食味・調理特性を兼ね備えた新しい品種の開発が目指されました。数多くの実生の中から、特に優れた特性を持つものが厳選され、「十勝こがね」として選抜・育成されることになったのです。その結果、幅広い料理に活用できる汎用性の高さと、栽培のしやすさから、生産者と消費者の双方にとって価値ある品種となりました。

品種登録と別称「北海79号」の由来

「十勝こがね」は、開発後、厳しい審査を経て正式な品種として認められました。1997年に種苗法に基づく登録が出願され、1999年には「十勝こがね」という名称で出願が公表されました。そして2000年、正式に品種登録され、同時に「ばれいしょ農林41号」として国の奨励品種に認定されました。この過程で、「北海79号」という名前が使用されていた時期があります。これは、育成調査の際に各地で行われた奨励品種決定調査で使用された名称で、登録出願時の名前でもありました。この経緯は、「十勝こがね」が長年の研究と試験を経て、その品質と安定性が認められた証と言えるでしょう。

十勝こがねを親とする次世代品種

「十勝こがね」は、その優れた性質から、新しいジャガイモを生み出すための交配親としても重宝されています。この品種を交配親として、「」や「こがね丸」のような品種が開発された事実は、「十勝こがね」が持つ、病気への強さ、安定した収穫量、そして味や調理への適性といった遺伝的な強みが、将来の品種改良においても非常に価値が高いことを示しています。このように、「十勝こがね」は、ただ美味しいジャガイモであるだけでなく、日本のジャガイモ品種改良の進歩にも貢献している重要な品種と言えるでしょう。

見分けやすい見た目:均整の取れた楕円形と黄白色の皮

「十勝こがね」のジャガイモは、整った楕円形をしており、皮の色は黄白色をしています。表面の凹凸が少なく、滑らかなため、皮が非常に剥きやすいのが特徴です。また、芽の数が少なく、その深さも浅いため、調理の際に捨ててしまう部分が少なく、可食部が多いという利点もあります。この皮の剥きやすさは、特に大量に調理する場合や、料理の時間を短縮したい時に役立ちます。見た目の美しさと可食部の多さは、料理をする人々から高く評価されています。

卓越した肉質とでんぷん価:煮崩れしにくく、なめらかな口当たり

「十勝こがね」の肉質は薄い黄色で、でんぷんの量はやや控えめです。この特徴から、「メークイン」のような”ねっとり”とした食感を持ちながら、「男爵いも」以上に煮崩れしにくいという優れた性質を持っています。煮込み料理やカレー、シチューなどに使っても形が崩れにくく、見た目をきれいに保ちながら、なめらかな舌触りを楽しむことができます。煮崩れしにくいという特徴は、特に長時間煮込む料理や、食材の形を保ちたい料理に最適です。さらに、蒸した際には適度なホクホク感も楽しむことができ、食感の良さも兼ね備えています。このように、様々な調理法に対応できる汎用性の高さが、「十勝こがね」の大きな魅力となっています。

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農林水産省が認める特性:品種登録データベースの詳細

「十勝こがね」の優れた特性は、農林水産省の品種登録データベースにも詳しく記載されています。これは、その品質と信頼性が公的に認められている証です。以下に、データベースから得られる情報をもとに、さらに詳しくその特徴を解説します。

イモの形状と外観の特徴

イモの付き方は平均的で、長さはやや長めで、平たい形状は中程度です。典型的な楕円形をしており、皮の色はクリーム色に近い黄色をしています。表面の滑らかさは普通で、芽の数は少なく、深さは非常に浅いのが特徴です。これらの点が、皮がむきやすく、調理しやすい理由となっています。

果肉の色と食感の評価

果肉の色は、薄い黄色と評価されています。食感は「やや粉質」と表現され、完全にホクホクというわけではありませんが、ほどよい粉っぽさがあることを示しています。この「やや粉質」という特徴が、煮崩れしにくさと、しっとりとした食感のバランスを生み出しています。

生育および収穫に関する特性

休眠期間が非常に長く、貯蔵性に優れているのが特徴です。成熟期は早く、初期の肥大化は平均的です。イモ一個あたりの平均重量は大きく、比較的大きなイモが収穫できるため、栽培者にとって有利です。これらの特性が、安定した生産と収益性の向上に貢献します。

調理後の変色と味の評価

調理後の黒ずみはほとんどなく、チップやフライにしたときの褐変もわずかであり、加熱後の色の変化が非常に少ないのが特徴です。揚げ物にした際に美しい黄金色を保ち、見た目の品質を高く維持できます。煮崩れのしにくさ、舌触りは平均的で、味は良いと評価されています。「十勝こがね」は、形が崩れにくいだけでなく、味も優れていることを示しています。

他品種との識別性の高さ

農林水産省の品種登録データベースにおいて、「十勝こがね」は一般的な品種「男爵薯」との差異が明確に示されています。「男爵薯」と比較して、花の数が少ない、花の色が白色である、芋の形状が楕円形である、そして目の深さが浅いといった点で違いが認められており、独自の品種としての明確な特徴を持っています。

調理後の変色しにくい特徴

「十勝こがね」は、調理後の黒ずみが非常に少なく、特にフライドポテトやポテトチップスなどの揚げ物にした際に、褐変が起こりにくいという優れた性質を持っています。加熱調理することで、鮮やかな黄金色が際立ち、時間が経過してもその美しい色合いを長く保つことができます。この変色しにくい特性は、お弁当のおかずや作り置き、あるいは業務用食材として、見た目の美しさを重視する場合に特に有効です。料理の仕上がりの美しさを求める方にとって、「十勝こがね」は最適な選択肢となるでしょう。

幅広い調理方法への適応力

「十勝こがね」は、煮物にした際には煮崩れしにくく、蒸した場合にはほどよいホクホク感があり、揚げ物にも適しているなど、様々な調理法に対応できる万能なジャガイモです。この優れた特性により、多種多様な料理で活用できます。煮込み料理で形を保持したい場合も、揚げ物で美しい色と食感を追求したい場合も、「十勝こがね」は期待を裏切らないでしょう。

容易な皮むきと高い利用効率

「十勝こがね」は、表面の凹凸が少なく滑らかな楕円形をしているため、皮がむきやすく、調理時の可食部の割合が高いというメリットがあります。これは、家庭での普段の料理だけでなく、飲食店などでの大量調理においても、食材のロスを削減し、効率的な調理をサポートする重要な要素です。皮むきの負担が少ないため、調理時間の短縮にもつながります。

煮崩れしにくさを活かす料理例

「十勝こがね」の際立った特徴は、何と言っても煮崩れしにくい点です。実際に皮をむき、大きめにカットしてから、竹串がすっと通る程度に下茹でした後、軽く水分を飛ばして粉ふきいもにしてみましたが、形はほとんど崩れず、美しい状態を保っていました。この特性は、特に時間をかけて煮込む料理、例えばカレーやシチューなどでその真価を発揮します。煮込んでも形がしっかりと残るため、見た目の美しさを損なうことなく、なめらかな舌触りも両立し、料理全体のクオリティを向上させます。

ほくほく感と美味しさを引き出す揚げ物とじゃがバター

煮崩れしにくいという特徴を持ちながらも、「十勝こがね」は蒸すと程よいホクホク感も楽しめます。この絶妙なバランスが、揚げ物に適している理由です。フライドポテトにすると、外側はカリッと香ばしく、内側はホクホクとした理想的な食感になり、鮮やかな黄金色が食欲をそそります。また、皮付きのまま茹でて、熱いうちに手で皮を剥きスライスすると、茹でたにもかかわらず型崩れしにくく、きれいにスライスできます。下茹でしたものをバターやオリーブオイルでじっくりソテーするのもおすすめです。「十勝こがね」本来の風味と豊かなうま味を堪能するなら、やはりじゃがバターが一番でしょう。シンプルながらも、素材の良さが際立つ、風味豊かな一品です。

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まとめ

この記事では、北海道十勝地域で生まれたジャガイモ「十勝こがね」について、その誕生秘話から、他にはない特徴、おすすめの食べ方や調理方法まで詳しく解説しました。ジャガイモシストセンチュウへの抵抗力を持つ「十勝こがね」は、その滑らかな表面、調理のしやすさ、煮崩れしにくい点、そして加熱後の変色が少ないといった、数々の優れた品質を誇ります。ややしっとりとした食感は、煮込み料理にマッチし、蒸すとホクホクとした食感も楽しめる多様性を持っています。この記事を通して、皆様が日々の食卓で、より美味しく、より楽しくジャガイモを味わうことができることを願っています。今年のジャガイモ選びの際には、ぜひ本記事を参考にして、ぴったりの品種を見つけてみてください。

十勝こがねはどのような特徴がありますか?

十勝こがねは、ジャガイモシストセンチュウに強い抵抗性を持つジャガイモです。丸みを帯びた楕円形で、表皮は白黄色をしており、芽の数は少なく、深さも浅いのが特徴です。肉質はやや粘り気があり、でんぷんの含有量は控えめ。煮込んでも形が崩れにくく、加熱後の変色も少ないため、料理の見栄えを損ねません。蒸すとほっくりとした食感になり、上品な味わいが楽しめます。皮がむきやすく、可食部が多いのも魅力です。

十勝こがねはどんな料理に合いますか?

十勝こがねは、煮崩れしにくいという特徴から、特に煮込み料理との相性が抜群です。カレーやシチュー、肉じゃがなどに使用すると、形を保ちつつ、なめらかな舌触りを楽しむことができます。また、蒸かした時のホクホク感や、揚げた時の美しい色合いを活かして、フライドポテトやじゃがバター、粉ふきいも、ソテーなどにも適しています。幅広い料理で活躍できる万能なジャガイモです。

十勝こがねの「北海79号」とは?

「北海79号」という名称は、十勝こがねが品種登録される以前、育成段階における試験的な呼称として使用されていました。北海道農業研究センターで育成された後、各地で行われた奨励品種決定調査などに供試された際に用いられていたものです。現在では、正式名称である「十勝こがね」として広く知られています。

煮崩れしにくいじゃがいもには、他にどのような品種がありますか?

十勝こがね以外にも、煮崩れしにくい特性を持つじゃがいもは存在します。例えば、メークイン、とうや、とよしろ、ピルカ、シンシア、そしてインカのひとみなどが挙げられます。これらの品種は、一般的にでんぷん含有量が比較的少なく、きめ細やかな肉質とねっとりとした食感が特徴であり、煮込み料理や、形状を保持したい料理に最適です。

じゃがいもの品種によって、味や食感はどれほど異なりますか?

じゃがいもの品種によって、味や食感には顕著な違いが見られます。たとえば、男爵いもやキタアカリは、でんぷん質が豊富で「ホクホク」とした食感が特徴であり、強い甘みを持つものもあります。一方、メークインやとうやは、粘り気のある「しっとりなめらか」な食感で、煮崩れしにくいという特徴があります。インカのめざめのように「栗のような甘さ」と「ねっとりとした舌触り」を持つ品種や、シャドークイーンのように「ほのかな甘みと豊かなうま味」を持つ品種など、その個性は多岐にわたります。料理の目的や個人の好みに合わせて品種を選ぶことで、じゃがいもの多様な魅力を堪能することができます。

色付きのじゃがいもは、栄養価が高いのでしょうか?

はい、一般的に、色付きのじゃがいもは、通常のじゃがいもに比べて特定の栄養素を豊富に含んでいる傾向があります。例えば、紫色のシャドークイーンには、強力な抗酸化作用を持つアントシアニンが豊富に含まれています。また、ピンク色のノーザンルビーもアントシアニンを含有し、黄色のインカのめざめやアンデスレッドはカロテノイドを豊富に含んでいます。これらの成分は、健康維持に貢献すると考えられており、見た目の美しさだけでなく、栄養面においても注目されています。

じゃがいも十勝こがね