「のらぼう菜」という名前を耳にしたことはあっても、その詳細な特徴、歴史、そして美味しい食べ方までご存知の方は少ないかもしれません。実はのらぼう菜は、江戸時代から大切に守られてきた「江戸東京野菜」の一種であり、優れた耐寒性を持ち、過去の食糧難の時代に人々を救った、非常に生命力に溢れる野菜です。見た目は菜の花に似ていますが、独特の苦味やえぐみが少なく、かすかな甘みとシャキシャキした食感が特徴で、様々な料理に活用できる魅力的な食材として、近年注目を集めています。
この記事では、のらぼう菜の深い歴史から、その栄養価、家庭菜園でも手軽に挑戦できる栽培方法、そして日々の食卓を豊かにする絶品レシピまで、あらゆる情報を詳しく解説します。この記事を通して、のらぼう菜の魅力を存分に感じていただき、毎日の食生活に取り入れるきっかけとなれば幸いです。
のらぼう菜とは?その魅力と歴史的背景
のらぼう菜は、主に東京都の西多摩地域(あきる野市、青梅市など)や埼玉県飯能市周辺で栽培されている、アブラナ科の野菜です。とりわけ、東京都で昔から栽培されてきた伝統野菜である「江戸東京野菜」の一つとして広く知られています。その外観は、春の訪れを知らせる菜の花によく似ていますが、菜の花特有の苦味やクセはほとんどなく、代わりに茎にはほのかな甘さと心地よい歯ごたえがある点が、最も大きな特徴です。
寒さに強く、冬を乗り越えて春先に伸びてくる花茎や葉を収穫します。この強い生命力と育てやすさから、江戸時代には食料として広く普及し、飢饉の際には多くの人々の命を救ったと言われるほど、地域の人々の生活に深く根付いていました。現在では、その独特な風味と栄養価の高さが改めて評価され、産地だけでなく、多様な料理の食材として全国的に注目されています。
「江戸東京野菜」のらぼう菜の概要
のらぼう菜は、東京都西多摩地域のあきる野市や青梅市などの山間部と、埼玉県飯能市付近が主な栽培の中心地です。アブラナ科に属し、油を採取する目的の他に、食用として葉や花茎が利用されてきました。江戸時代にはすでに西多摩地域で栽培されており、古くから人々の食生活を支えてきた歴史があります。その名前は「野良坊」と表記されることもありますが、この名前で呼ばれるようになった具体的な由来は明確にはわかっていません。しかし、「野良」という言葉が示すように、畑で力強く育つ様子や、栽培の容易さを表しているとも考えられます。
苦味・クセがなく、ほのかな甘みが特徴
のらぼう菜の大きな魅力は、その優れた味わいにあります。菜の花と同じ種類の野菜でありながら、菜の花に見られるような独特の苦味やアクがほとんど感じられません。それどころか、茎にはかすかな甘みと、シャキシャキとした心地よい歯ごたえがあり、子供から大人まで幅広い世代に好まれやすい味わいです。収穫したばかりの花茎は特に甘みが強く、雑味がなく、柔らかいのが特徴です。そのため、初めてのらぼう菜を食べる際に、美味しい茎の部分を誤って捨ててしまい、葉だけを食べてしまう人もいるほど、茎の美味しさは特筆すべき点と言えるでしょう。
のらぼう菜の起源と「闍婆菜」に関する考察
のらぼう菜がいつ頃から人々に利用され始めたのか、その正確な歴史については、まだ解明されていない部分が多く存在します。しかし、有力な説の一つとして、遠い昔、ジャワ島(現在のインドネシア)を経由した貿易船によって日本に持ち込まれた、セイヨウアブラナの一種である「闍婆菜(じゃばな)」が起源であるという説が唱えられています。この「闍婆菜」が、日本の土地で栽培される過程で、気候や風土に合わせて独自の進化を遂げ、現在ののらぼう菜になったと考えられています。記録によれば、江戸時代の初期には、すでに現在の西多摩地域で広く栽培されていたとされており、その長い歴史を裏付けています。
飢饉を救った歴史的背景と「野良坊菜之碑」について
のらぼう菜は、寒さに強く、摘んでも次々と新しい芽を出すという、非常に強い生命力を持っています。そのため、過去の飢饉の際に多くの人々の命を救ったという、重要な歴史的背景があります。江戸時代後期の明和4年(1767年)には、当時の代官であった江川太郎左衛門が、地元の小中野四郎右衛門と網代五兵衛に指示し、のらぼう菜の種を江戸周辺の12の村に分け与えたという記録が残っています。
この種が広まったおかげで、その後に発生した天明の大飢饉(1782年~1788年)や天保の大飢饉(1833年~1839年)の際に、多くの人々が飢えをしのぐことができたと伝えられています。この功績を称え、のらぼう菜が地域社会に与えた大きな貢献を未来に伝えるために、あきる野市の子生神社には、昭和52年(1977年)に「野良坊菜之碑」が建てられました。この碑は、のらぼう菜が単なる野菜としてだけでなく、人々の命を繋いだ救荒作物として重要な役割を果たしたことを今に伝えるものです。
地域に密着した伝統野菜としての流通
のらぼう菜は、収穫後の鮮度が落ちやすく、すぐにしおれてしまうという性質があるため、遠方への輸送や大量販売には向いていません。そのため、かつては生産地の周辺でのみ消費される、地域に根ざした「伝統野菜」として大切にされてきました。現在でも、主な産地である東京都の西多摩地域や埼玉県の飯能市周辺の農産物直売所などで、新鮮なものが販売されています。店頭では、250グラムから300グラム程度の束で販売されたり、袋詰めにして並べられていることが多く、地域の特産品として親しまれています。
しかし、近年では、のらぼう菜のほのかな苦みと豊かな栄養価が改めて評価され、産地のあきる野市は、東京都農林総合研究センターや西多摩農業改良普及センター、種苗会社などと協力し、品質の向上や安定的な供給を目指して品種改良に取り組んでいます。その結果、より多くの人々がのらぼう菜の美味しさを味わえるようになり、流通の可能性も広がってきています。
のらぼう菜の品種特性と旬
のらぼう菜は、独特の栽培方法と旬の時期があり、一般的なアブラナ科の野菜とは異なる特徴を持っています。ここでは、のらぼう菜の植物学的な分類から、種子の特性、そして収穫時期や品質を保つための生産者の努力について詳しく解説します。
セイヨウアブラナとしての系統と外観の特徴
のらぼう菜は、植物分類上はセイヨウアブラナ(Brassica napus)に分類されます。これは、日本の在来種であるアブラナ(B. rapa)とは異なる種であり、遺伝子構成はAAGG(2n=4x=38)を持つことが特徴です。一方、在来種のアブラナはAAという遺伝子構成を持ち、明確な差異が見られます。見た目は在来種のアブラナである菜の花や白菜系の冬菜と似ていますが、いくつかの特徴的な違いがあります。
具体的には、のらぼう菜の葉の縁がギザギザしていることや、寒い時期には茎や葉柄が赤紫色を帯びることが挙げられます。これらの特徴が、のらぼう菜を他のアブラナ科の植物と区別する際の重要なポイントとなります。また、優れた耐寒性も、セイヨウアブラナの特性であり、冬の寒さに耐え、春の訪れとともに力強く成長する様子を見せてくれます。
交雑しにくいという特異な性質
一般的に、アブラナ科の植物は自家不和合性が強く、近縁の種や品種との交雑が起こりにくい性質を持つものが多いとされています。種苗会社は、この性質を利用して様々な交配種を作り出しています。しかし、のらぼう菜はアブラナ科植物の中では珍しく、近縁の種や品種と交雑しにくいという特別な性質を持っています。
そのため、のらぼう菜を交配親として、新しい交配種を作り出すことは非常に困難です。実際に、風味の良さに注目した種苗会社が、1965年(昭和40年代)頃から交配親として交配種の作成を試みていますが、現在までに成功した例はほとんどありません。この性質が、のらぼう菜の在来種としての純粋さを保ち、昔ながらの品種が受け継がれてきた理由の一つと言えるでしょう。
旬の時期と品質を維持するための取り組み
のらぼう菜の本来の旬は、前年の8月下旬から9月上旬にかけて種をまき、苗を畑に植え替えて冬を越させた後の3月下旬から始まる、わずか1か月ほどの短い期間です。この時期に収穫されるのらぼう菜が、古くから続く系統であり、最も風味豊かであるとされています。
近年では、需要の増加に対応するため、2月初旬から出荷が可能な早生品種も市場に出回るようになりました。しかし、早生品種の普及による出荷競争は、品質の低下を招く懸念もあります。この状況を改善するため、あきる野市と生産者団体である「五日市のらぼう部会」は、東京都農林総合研究センターに依頼し、3年間にわたる早生品種の試験栽培を実施しました。その結果、食味などの点で優れている2種類の早生品種が選ばれました。
五日市のらぼう部会では、選定された早生品種の種子が、交雑を防ぐためにあきる野市の山間部で厳重に採種されています。そして、部会員のみがこれらの種子を入手できる独自の管理体制を設け、品質の維持と品種の保護に努めています。一方、伝統的な晩生品種の種子は、道の駅などの直売所でも広く販売することで、のらぼう菜全体の普及と部会員農家の競争力維持の両立を図る、地域に根差した持続可能な取り組みが行われています。
のらぼう菜の栄養価について
のらぼう菜は、その美味しさだけでなく、豊富な栄養素を含んでいる点でも注目を集めています。特に、現代人が不足しがちなビタミンやミネラルをバランス良く摂取できるため、健康的な食生活をサポートする優れた野菜と言えるでしょう。
主要な栄養成分と健康効果
のらぼう菜は、健康維持に欠かせない多種多様な栄養成分を豊富に含んでいます。特に注目すべきビタミン類としては、皮膚や粘膜の健康をサポートするビタミンA、エネルギー代謝を円滑にするビタミンB2とB6、抗酸化作用で免疫力アップに貢献するビタミンC、細胞の生成や再生を促進する葉酸などが挙げられます。
また、体内の水分バランスを整え、過剰なナトリウムの排出を助けるカリウム、骨や歯の健康を支えるカルシウム、貧血予防に効果的な鉄などのミネラルも豊富です。これらの栄養素が相互に作用し、私たちの身体機能の維持・向上に重要な役割を果たしています。
ほうれん草と比較した栄養価
のらぼう菜の具体的な栄養価として、100グラムあたりカリウムを1580ミリグラム、カルシウムを90ミリグラム含有しています。特筆すべきはカルシウム量で、一般的なほうれん草のおよそ2倍にも相当し、丈夫な骨や歯を作る上で非常に有効な野菜と言えます。その他にも豊富なビタミン類を含み、緑黄色野菜の中でも特に栄養価が高い部類に位置づけられます。日本食品標準成分表2020年版(八訂)のデータを参照することで、のらぼう菜の栄養価の高さをより深く理解することができます。
家庭菜園でも楽しめる!のらぼう菜の栽培方法
のらぼう菜はその育てやすさ、種取りの容易さから、家庭菜園に最適な野菜です。寒さに強く、特別な設備がなくても栽培可能なため、初心者でも気軽に挑戦できます。ここでは、のらぼう菜栽培の基礎知識から、具体的な手順、管理のコツ、収穫後の種子保存方法までを詳細に解説します。
栽培の基本と適した環境
のらぼう菜は通常、秋(9月上旬頃)に種をまき、畑で冬を越させ、翌年の3月頃から収穫を開始します。耐寒性に優れ、冬場でも生育が鈍ることなく、春になると一気に成長します。生命力が強く、一度花茎を摘んで食用にしても、次々と脇芽が伸びてくるため、何度も収穫でき、長期間楽しめます。高価なハウス栽培の必要はなく、露地栽培でも十分に高品質な収穫が期待できるのが魅力です。ただし、連作には弱いため、1~2年を目安に輪作を行うことが大切です。
土壌には、堆肥や鶏糞、油粕などの有機肥料を多めに施すことで、より良質なのらぼう菜を収穫できます。深く耕し、肥沃で水はけと保水性の良い土壌を作ることが、健全な生育には不可欠です。日当たりの良い場所を選び、風通しを良くすることで、病害虫の発生を抑制し、健康的に育てることができます。
種まきから植え付けまでの手順
のらぼう菜の種をまく方法には、育苗箱で苗を育ててから畑に植え替える方法と、畑に直接種をまく方法があります。より確実に栽培したい場合は、育苗箱で苗を育ててから植え付ける方法がおすすめです。
育苗箱で苗を育てる場合は、まず育苗箱に培養土を入れ、種を1~2cm間隔で筋状にまきます。発芽して本葉が出始めたら、生育の良いものを残して2本ずつに間引きします。一方、畑に直接種をまく場合は、肥料をまいて耕した畑に畝を作り、筋状に種をまきます。種が害虫に食べられるのを防ぐために、種をまいた後はトンネルをかけると良いでしょう。どちらの方法でも、苗が本葉4~5枚になったら、株間を30~40cm(直接種をまいた場合は間引き後30~50cm)を目安に、1本ずつ植え替えるか間引きを行い、株間を確保します。適切な株間を保つことは、それぞれの株が十分に日光を浴び、栄養を吸収して大きく育つために重要です。
追肥と土寄せのコツ
のらぼう菜の生育を良くし、品質を高めるには、適切な追肥と土寄せが大切です。最初の追肥は、苗が本葉7~8枚になった頃に行います。この時期に、油かすや鶏糞などの有機肥料を与え、同時に株間を軽く耕し(中耕)、土を柔らかくします。中耕には、土壌の通気性を良くし、根の成長を促進し、雑草が生えるのを抑える効果もあります。
のらぼう菜は寒さに強く、冬の間もゆっくりと成長を続けます。そして、3月頃になると気温が上がり始め、急に成長し始め、主茎に花芽がつき、薹(とう)が立ち始めます。この薹が立ち始めた頃が、2回目の追肥をするのに最適な時期です。この追肥によって、春先の旺盛な成長を助け、より多くの花茎を収穫できるようにします。追肥と合わせて、株元に土を寄せる「土寄せ」を行うことで、株が倒れるのを防ぎ、根元を保護することができます。
収穫方法と連作障害について
のらぼう菜の収穫は、花が少し咲き始めた頃が最適です。この時期の花茎は、最も柔らかく、甘みが強く感じられます。収穫する際は、花茎を25cmほどの長さに手で折り取ります。鎌などの刃物で刈り取ると、育ちすぎて硬くなった花茎まで一緒に刈り取ってしまう可能性があるため、必ず手で折るようにしましょう。こうすることで、柔らかくて美味しい部分だけを選んで収穫でき、株へのダメージも最小限に抑えられます。
すでに述べたように、のらぼう菜は連作障害を起こしやすい性質があります。同じ場所で続けて栽培すると、土壌中の特定の栄養素が不足したり、病気の原因となる菌が増えたりして、生育が悪くなることがあります。そのため、1~2年以上の間隔を空けて、他の作物と交互に栽培する「輪作」を行うことが、健全な栽培を続ける上で非常に大切です。
種子の採取と保存方法
のらぼう菜は自家採種が比較的簡単なので、家庭菜園でも次の年の種を確保することができます。種を採取する場合は、収穫時期の終わりに、元気な花茎をいくつか株に残して花を咲かせ続けます。開花後、花が枯れてさや(実)が膨らんでくるのを待ちます。さやが十分に成熟し、緑色から茶色に変わり、カラカラと音がするようになったら、6月頃を目安に茎ごと刈り取ります。
刈り取った茎は、風通しの良い日陰でさらに乾燥させます。完全に乾燥したら、さやを揉みほぐして中から種を取り出します。のらぼう菜は生命力が強いため、ほうれん草や小松菜などと比べて、5~10倍ほど多くの種を収穫できると言われています。採取した種は、乾燥剤と一緒に密閉容器に入れ、冷暗所で保存することで、次の種まき時期まで品質を保つことができます。また、この種子を絞って、のらぼう菜油を作ることもでき、食用油として利用することも可能です。
のらぼう菜のおいしい食べ方と調理のコツ
のらぼう菜は、その穏やかな風味から、さまざまな料理に使える便利な野菜です。ここでは、のらぼう菜の持ち味を最大限に活かすための調理方法、基本のゆで方、そして多彩な活用法をご紹介します。
採れたての新鮮さを味わう
のらぼう菜は、収穫直後が最も甘く、えぐみがなく、やわらかいのが魅力です。その繊細な風味を堪能するには、新鮮なうちに調理することが一番大切です。畑で摘んだばかりの花茎は、まさに春の訪れを感じさせる特別な味わいです。初めてのらぼう菜を食べる方の中には、見た目から葉だけを食べ、甘くておいしい茎の部分を捨ててしまう方もいますが、のらぼう菜の真髄は、むしろ茎に詰まった甘みと心地よい歯ごたえにあります。ぜひ、茎の部分も含めて丸ごと味わってみてください。
基本のゆで方と食感を活かす秘訣
のらぼう菜の基本的な調理法として、まず「ゆでる」ことが挙げられます。ゆでることで、のらぼう菜本来の甘さと食感を保ちながら、おいしくいただけます。上手にゆでるコツは、太い茎から先にゆでることです。
まず、のらぼう菜を軽く水洗いして汚れを落とします。次に、鍋にたっぷりの水を入れ、沸騰したら塩を少量加えます。沸騰したお湯に、まず茎の部分を入れて数分間ゆでます。茎が少しやわらかくなったら、葉の部分も加えて数十秒ほど、さっとゆで上げます。ここで大切なのは、ゆですぎないことです。ゆですぎると、のらぼう菜ならではのシャキシャキとした食感が損なわれてしまうため、手早く鮮やかにゆで上げることが、おいしさをキープする秘訣です。ゆであがったら、すぐに冷水にさらし、余分な熱を取り除いて色止めをします。こうすることで、鮮やかな緑色を保ちながら、食感も向上します。ゆでたのらぼう菜は、そのままおひたしにしたり、パスタや炒め物の材料にしたりと、いろいろな料理に活用できます。また、のらぼう菜はゆでても量が減りにくいという利点もあります。
いろいろな調理法で味わうのらぼう菜
のらぼう菜は、苦味やクセがなく、ほのかな甘みがあり、独特の歯ごたえもあるため、非常に多くの料理と相性が良いです。以前は、シンプルにおひたしや和え物、煮浸しなどで食べられることが多かったですが、現代では様々な調理法で楽しまれています。
特に油との相性が抜群なので、炒め物や天ぷらにすると、のらぼう菜の甘みが際立ち、風味豊かな味わいを楽しめます。パスタの具材として加えれば、春らしい彩りと食感を添えることができ、スープや味噌汁などの汁物に入れると、そのやさしい風味が全体に溶け込み、おいしさを引き立てます。その他にも、卵とじ、胡麻和え、中華風の炒め物、肉料理との組み合わせなど、アイデア次第で無限の可能性を秘めた野菜です。生命力が強く、摘み取った後も次々と葉や花茎が伸びてくるので、家庭菜園でも長く収穫でき、色々なレシピで春の味覚を堪能できます。
のらぼう菜を使ったとっておきレシピ
のらぼう菜は、その汎用性の高さから様々な料理に活用できます。ここでは、特におすすめしたい、のらぼう菜の魅力を最大限に引き出す2つのレシピをご紹介します。どちらも簡単に調理でき、のらぼう菜本来の美味しさを存分に味わえるものばかりです。
のらぼう菜は、ほのかな甘みとクセの少ない風味が特徴で、炒め物から和え物、パスタに至るまで、様々な料理に使える万能な食材です。旬の時期には特に柔らかく、下処理の時間も短縮できるのが嬉しいポイント。今回は、のらぼう菜の美味しさを余すところなく堪能できる、選りすぐりのレシピを2つご紹介します。どれも手軽に作れるので、ぜひ毎日の食卓に取り入れてみてください。
1. のらぼう菜と厚切りベーコンのガーリックソテー(食欲をそそる香ばしさ)
のらぼう菜の優しい甘さと、ベーコンの凝縮された旨味が絶妙に調和する、簡単ながらも食卓を華やかにする一品です。にんにくの香りが食欲を刺激し、ご飯のおかずとしてはもちろん、お酒のおつまみとしても最適です。
材料(2〜3人分)
- のらぼう菜…1束
- 厚切りベーコン…3〜4枚
- にんにく…2かけ
- オリーブオイル…大さじ1.5
- 塩・黒胡椒…適量
- 醤油…小さじ1/2(風味付け)
作り方
- のらぼう菜は軽く茹でてから水気を絞り、4cm程度の長さにカットします。
- フライパンにオリーブオイルをひき、薄切りにしたにんにくを弱火でじっくりと炒め、香りを引き出します。
- ベーコンを加え、表面に焼き色がつくまで炒めたら、のらぼう菜を加えます。
- 全体を強火で手早く炒め合わせ、塩、黒胡椒で味を調えます。仕上げに醤油を少量たらして風味付けしたら完成です。
ポイント のらぼう菜は加熱しすぎるとシャキシャキ感が失われるため、手早く炒めるのが美味しく仕上げる秘訣です。
2. のらぼう菜と鶏ひき肉のさっぱり煮(心温まる和の味わい)
シンプルな味付けながら、のらぼう菜の自然な甘さと鶏ひき肉の旨みが際立つ、どこか懐かしい味わいの一品。忙しい日でも手軽に作れるのが魅力です。
材料(2〜3人分)
- のらぼう菜…1束
- 鶏ひき肉…100g
- だし汁…250ml
- 醤油…大さじ1.5
- みりん…大さじ1.5
- 砂糖…小さじ1/2
- 生姜…ひとかけ(すりおろし)
作り方
- のらぼう菜はさっと茹でて水気を切り、3cm幅に切ります。
- 小鍋にだし汁、醤油、みりん、砂糖、生姜を入れ、中火にかけます。
- 沸騰したら鶏ひき肉を加え、アクを取りながら煮ます。
- 鶏ひき肉に火が通ったら、のらぼう菜を加え、2〜3分煮ます。
- 全体に味が染み込んだら火を止め、器に盛り付けます。
ポイント 薄味に仕上げることで、のらぼう菜本来の風味がより一層引き立ちます。お好みで、仕上げに柚子胡椒を添えても美味しくいただけます。
まとめ
のらぼう菜は、江戸時代から栽培されてきた歴史ある「江戸東京野菜」の一つです。菜の花に似た愛らしい見た目でありながら、苦味が少なく、ほのかな甘みとシャキシャキとした食感が楽しめるのが特徴です。寒さに強く、過去には飢饉から人々を救ったという逸話も残るほど生命力にあふれており、家庭菜園でも比較的簡単に育てられるのが魅力です。
ビタミンA、ビタミンC、葉酸、カリウム、カルシウム、鉄分など、様々な栄養素を豊富に含んでおり、特にカルシウムはほうれん草の約2倍も含まれていると言われています。おひたしや和え物といった定番の食べ方はもちろん、油との相性も抜群なので、炒め物や天ぷら、パスタの具材、汁物など、幅広い料理に活用できます。今回ご紹介したレシピを参考に、ぜひご家庭でのらぼう菜の多彩な美味しさを体験してみてください。春の食卓を豊かに彩るのらぼう菜は、きっとあなたの食生活に新しい発見と喜びをもたらしてくれるでしょう。
のらぼう菜の味:苦味はあるの?
のらぼう菜は、菜の花に似た外観を持つ野菜ですが、特徴的なのはその味わいです。苦味やアクはほとんど感じられず、茎の部分にはほんのりとした甘みと、心地よいシャキシャキ感があります。そのため、お子様からご年配の方まで、幅広い世代に親しみやすいのが魅力です。
菜の花との違いについて
のらぼう菜と菜の花は見た目が似ていますが、実は種類が異なります。のらぼう菜はセイヨウアブラナの仲間であり、一方、一般的な菜の花は在来種のアブラナに分類されます。最も大きな違いは味にあり、のらぼう菜は菜の花のような苦味が少なく、より甘みが際立っています。
のらぼう菜の旬の時期は?
のらぼう菜が最も美味しくなる旬は、春の季節です。通常、前年の秋に種をまき、冬を越してから、3月下旬から約1ヶ月という短い期間で収穫される晩生種が本来の旬を迎えます。最近では、2月初旬から収穫が可能な早生種も市場に出回るようになりました。
のらぼう菜に含まれる栄養素
のらぼう菜は、栄養価が高い野菜としても知られています。ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、葉酸などのビタミン類に加え、カリウム、カルシウム、鉄といったミネラルも豊富に含んでいます。特にカルシウムは豊富で、その量はほうれん草の約2倍にもなると言われています。
のらぼう菜の手軽な調理法は?
一番シンプルなのは「おひたし」でしょう。さっと茹でて、お好みの出汁や醤油をかければ、素材本来の味が楽しめます。また、油との相性が抜群なので、さっと炒めるだけでも美味しくいただけます。その他、パスタの具材や汁物に入れても良いでしょう。
自宅の庭でも栽培できますか?
はい、のらぼう菜は比較的育てやすく、種を採取することも容易なため、家庭菜園に最適です。寒さに強く、冬を越えて春先に収穫できる上、一度摘んでも次々と脇芽が出てくるので、長く収穫を楽しめるのがポイントです。
「のらぼう菜」の名前の由来は?
「のらぼう菜」という名前の由来は、はっきりとは分かっていません。「野良坊菜」と書かれることもありますが、詳しい由来は不明です。ただ、「野良」という言葉から、畑で力強く育つ様子を表しているのかもしれません。
のらぼう菜はどこで購入できますか?
のらぼう菜は鮮度が落ちやすいため、主に東京都の西多摩地域(あきる野市や青梅市など)や埼玉県の飯能市周辺といった産地の直売所や道の駅で販売されています。最近では注目度が高まり、一部のスーパーでも見かけるようになりました。













