古き良き日本の心を今に伝える和菓子。しかし、その世界に静かに、そして確かに「ネオ和菓子」という革命が起ころうとしています。伝統的な製法や素材を尊重しながらも、斬新なアイデアや異文化の要素を取り入れた、見た目も味わいも想像を超える新感覚の甘味たち。それは、まるでアート作品のように美しく、口にした瞬間、五感を刺激する驚きに満ちています。ネオ和菓子は、単なるトレンドではなく、和菓子の新たな可能性を切り開く、進化の証なのです。
空ノムコウ・乃し梅・チョコ玉響、うやむや/乃し梅本舗 佐藤屋
山形に店を構える老舗菓子店「乃し梅本舗 佐藤屋」は、文政4年(1821年)の創業以来、伝統銘菓「乃し梅」を作り続けています。しかし、八代目店主の革新的な発想により、伝統を守りつつも、新しい感覚の和菓子が次々と生まれています。
今の季節にふさわしい涼しげな見た目の「空ノムコウ」は、その代表格。生姜がほのかに香る錦玉を、気泡を含んだ透明感のある寒天で包み込み、青と紫のグラデーションで宇宙のような奥行きを表現しています。その美しいビジュアルはSNSでも話題を呼んでいます。
八代目店主が「乃し梅」を新たな形で表現した「乃し梅チョコ玉響」は、白餡と寒天で作られた和風の生チョコレートに乃し梅を組み合わせた逸品。口にした時の豊かな風味と香りが特徴です。
また、「うやむや」は、葛と小麦粉を菜種油で繋ぎ、メープルシロップで甘みを加えた和風のショートブレッド。従来の和菓子のイメージを覆す、新しい味わいが楽しめます。

萬代餡/新潟餡果子 萬代庵
新潟の老舗「萬代庵」が手がける革新的な餡菓子、その名も「萬代餡」。伝統的なおはぎをベースに、マスカルポーネチーズ、ナッツ、チョコレート、旬のフルーツなどを取り入れ、現代風に昇華させた逸品です。
200年以上の歴史を持つ地元の和菓子店と共同で開発された餅には、新潟県が誇る新ブランド米「新之助」を使用。その豊かな甘みは、米どころ新潟ならではの贅沢な味わいです。餡にもこだわり、地元の老舗あんこ屋が丁寧に炊き上げた、甘さ控えめの萬代庵オリジナル餡を使用しています。定番に加え、四季折々の素材を活かした限定の組み合わせも豊富なので、色々な味を試してみるのもおすすめです。
本日の日替わりおはぎ7種/タケノとおはぎ世田谷本店
世田谷区に店を構える「タケノとおはぎ」は、伝統的なおはぎに斬新なアイデアを加えた、進化系おはぎの専門店として知られています。店頭には常に7種類の独創的なおはぎが並びます。定番のつぶあんとこしあんは、北海道産の大納言小豆を使用し、オーナーの祖母から受け継いだ懐かしい味わいを再現。残りの5種類は日替わりで、白インゲン豆で作る上品な白餡と、ナッツ、ドライフルーツ、旬のフルーツなど、厳選された無添加素材を組み合わせて作られています。それぞれのおはぎが季節感と調和を生み出すように工夫されており、曲げわっぱの容器に入れることで、その美しさが一層際立ちます。人気のため行列ができることもあり、売り切れ次第終了となりますので、確実に購入したい場合は予約をおすすめします。
わらび餅のバウム オレンジ×加賀棒茶/まめや金澤萬久
石川県金沢市に拠点を置く「まめや金澤萬久」は、和菓子の伝統を重んじながらも、洋菓子の技術を取り入れた革新的な和洋菓子を提供しています。金沢という文化的な背景を持つ土地に根ざし、常に新しい味覚の創造に挑戦し続けています。
その代表作の一つが「わらび餅のバウム」です。もちもちとした食感のわらび餅と、丁寧に焼き上げられたバウムクーヘンを組み合わせた、進化形の和菓子として人気を博しています。中でも「オレンジ×加賀棒茶」は、これからの季節にぴったりの爽やかなフレーバーです。自社工場で丁寧に粉砕された加賀棒茶をバウムクーヘンの生地に練り込み、一層一層丁寧に焼き上げています。
バウムクーヘンの上には、シロップに漬け込んだネーブルオレンジのスライスを美しく並べ、その上からわらび餅で優しく包み込みました。見た目の美しさもさることながら、加賀棒茶の芳ばしい香りと、オレンジの爽やかな酸味が絶妙に調和した逸品です。冷やしていただくと、より一層美味しく、暑い夏にぴったりの味わいです。8月末頃までの期間限定販売となります。
イロドリきんつば、あんこホイップパンケーキ、あん生どら焼き、きんつば生大福/又一庵
明治4年創業の老舗「又一庵」は、きんつばの枠を超えた革新的な和菓子が楽しめる店。看板商品のあんこやきんつばを活かした、魅力的な商品が揃います。お土産には、彩り豊かな「イロドリきんつば」がおすすめ。丁寧に炊き上げた小豆の優しい甘さと、コーヒーやカボチャといった意外なフレーバーの組み合わせが楽しめます。本店併設の「マタイッコタベタイカフェ」では、ボリューム満点の「あんこホイップパンケーキ」が人気。自家製あんことホイップバター、アイスクリームが、ふわふわのパンケーキを彩ります。
さらに、又一庵自慢の粒あんと滑らかなクリームがたっぷり詰まった「あん生どら焼き」は、見た目も華やか。インスタ映えも期待できる一品です。味はバラエティ豊かな4種類。モチモチの生地に、濃厚なクリームチーズときんつばを包んだ「きんつば生大福」も見逃せません。どれを選ぶか、迷ってしまうほどのラインナップです。
Fly Me to The Moon羊羹ファンタジア/株式会社 長門屋本店
福島県会津若松市で嘉永元年(1848年)に創業した「株式会社 長門屋本店」は、伝統を守りながらも革新的な和菓子を生み出す老舗です。その独創的な和菓子は、平成29年(2017年)にグッドデザイン賞を受賞しました。
特に有名な「Fly Me to The Moon羊羹ファンタジア」は、ジャズの名曲からインスピレーションを得た羊羹で、カットするたびに異なる絵柄が現れます。三日月が満月へと姿を変え、青い鳥が羽ばたく様子が描かれた美しいデザインです。シャンパン風味の錦玉羹を小豆羊羹で挟み、鬼クルミやドライフルーツを贅沢にトッピング。パッケージは、福島県出身の日本画家、舛田玲香氏によるオリジナルデザインです。
また、「和三盆糖シュガーマドラー」は、長門屋に伝わる伝統的な木型を用いて作られた和三盆糖の干菓子にマドラーを付けたもの。コーヒーや紅茶に溶かして楽しめる、上品なデザインシュガーです。縁起の良いモチーフが使われており、ちょっとした贈り物にも最適です。

まとめ
見た目も華やかで写真映えする進化系和菓子はいかがでしたでしょうか。伝統的な製法と新しいアイデアが融合した、その味は格別です。素材や製法にこだわったこれらの和菓子は、贈り物やちょっとしたお土産、あるいは自分へのご褒美としても最適です。お出かけの際には、ぜひ参考にしてみてください。