春になると野山に芽吹き始める、生命力あふれるよもぎの若葉。その独特の芳香と美しい緑色は、昔から日本の食文化を豊かにしてきた「よもぎ餅(草餅)」に欠かせない旬の贈り物です。この伝統的な和菓子は、その優しい口当たりと心地よい香りが多くの人々を魅了し続けています。本稿では、料理研究家・小島喜和氏が伝授する、もち米を贅沢に使った本格的な生よもぎ餅の作り方を軸に、摘みたてのよもぎの適切な処理方法から、絶品に仕上げるコツまで、余すところなくご紹介します。
加えて、一年を通してよもぎ餅を堪能できる乾燥よもぎの活用法や、手軽さが魅力の米粉(上新粉、もち粉)を用いたレシピも掲載します。また、よもぎの風味を存分に味わえる「よもぎあんパン」のレシピも応用編として加え、よもぎの奥深い魅力を皆様にお届けします。この記事を通じて、ご自宅で本格的なよもぎ餅作りに挑戦できるのはもちろん、よもぎを用いた多彩なお菓子作りのアイデアを発見していただけるはずです。
春の伝統和菓子「よもぎ餅(草餅)」とは?
「よもぎ餅」は、日本の食文化に深く根付いた伝統的な和菓子であり、特に春の到来とともに多くの人々に親しまれています。その目に鮮やかな緑色と、清々しい香りは、まさに春の息吹を告げる味覚として、昔から愛されてきました。一般に「草餅」と呼ばれることもありますが、その呼び名には、古くからの歴史や使用される植物の変遷が関係しています。
草餅とは、江戸時代から「よもぎ」が主流。さらに昔は「御形(ごぎょう)」を使っていた
今日では、草餅と言えばよもぎ餅を指すのが一般的ですが、実は歴史を辿ると、かつては異なる植物が用いられていました。
草餅の起源と「上巳節」
春の季語としても親しまれる草餅の歴史は深く、そのルーツは平安時代に中国からもたらされたある行事食にあると言われています。この行事食は、中国の旧暦3月3日に催された「上巳節(じょうしのせつ)」が起源です。上巳節では、川辺で心身を清め、厄を祓う慣習があり、この時、草が持つ香りや薬効が邪気を退けると考えられ、草餅が食されていました。この考え方は、日本の「桃の節句」の由来とも深く関連しています。
母子草からよもぎへの変遷
かつて草餅に用いられていたのは、春の七草の一つ「母子草(ははこぐさ)」、別名「御形(ごぎょう)」でした。親株と子株が寄り添い合う姿から、親子関係の絆や生命の尊さを象徴する植物とされ、「母子餅」として親しまれていたのです。しかし、時代が下るにつれて、「母子をつく(搗く)」という言葉が「母子を殺す」という不吉な響きを連想させるという考えが広まりました。その結果、縁起を重んじる江戸時代には、現在のよもぎを使った草餅が主流となっていったのです。
よもぎが選ばれた理由
母子草からよもぎへと草餅の主役が交代したのは、単に縁起の問題だけではありません。よもぎが持つ優れた特性が、その普及を大きく後押ししました。日本のどこにでも自生し、驚くほどの生命力で群生するよもぎは、誰でも容易に手に入れることができました。さらに、その清々しい香りと豊富な薬効は古くから知られ、人々の暮らしに深く根付いていたのです。また、母子草に比べてアクが少なく、独特の風味と鮮やかな緑色が餅生地に加わることで、和菓子としての見た目と味わいを格段に向上させることができた点も、よもぎが選ばれ続ける理由となりました。
よもぎ餅に使う「よもぎ」とはどんな植物?
よもぎ餅の風味豊かな香りと味わいの源となる「よもぎ」は、日本全国の野山や道端、空き地などで見かけることができる、キク科の多年草です。学名はArtemisia princepsとされ、和名では「蓬(よもぎ)」の他にも、餅作りに使われることから「餅草(もちぐさ)」、お灸の材料となることから「ヤイトグサ(灸花)」とも呼ばれます。その生命力の強さと多様な効能から、「ハーブの女王」と称されることもあり、古くから食用や薬用として人々の健康を支えてきた植物です。
よもぎの生態と生育環境
よもぎは、驚異的な繁殖力を持つ植物です。一度根を張ると地下茎を広げ、広範囲にわたって群落を形成します。春になると若々しい芽を出し、夏にかけて茎を伸ばしながら成長し、秋にはその丈が60~120cmほどにもなります。冬には地上部は枯れてしまいますが、地下茎と根は土の中で休眠し、次の春に向けてエネルギーを蓄えます。特に、春先に芽吹く若葉は柔らかく、香りも穏やかで、よもぎ餅作りに最も適しているとされます。日当たりの良い場所を好み、河川敷や野原、さらには公園の片隅や道路脇など、私たちが普段生活する場所のすぐそばでもその姿を見つけることができます。
よもぎの香り成分と効能
よもぎが放つ特有の香りは、主要な芳香成分である「シネオール」によるものです。シネオールは、心を落ち着かせる効果や、細菌の増殖を抑える抗菌作用、炎症を和らげる消炎作用を持つとされています。さらに、よもぎに多く含まれるクロロフィル(葉緑素)は、その鮮やかな緑色で視覚的にも食欲を刺激するだけでなく、体内の浄化作用(デトックス効果)にも貢献すると期待されています。
古くからよもぎはその優れた薬効が認められ、漢方では「艾葉(がいよう)」として重用されてきました。食料として摂取する他、お茶として飲んだり、香りを享受したり、さらにはお灸の原料や入浴剤として活用されるなど、その用途は多岐にわたり、まさに「万能薬」としての地位を確立しています。出血を止める作用、体内の炎症を抑える作用、体の冷えを和らげる効果、肌の調子を整える美肌効果、そして腸内環境を整え便通を促す効果などが広く知られています。現代栄養学の観点からも、豊富な食物繊維、ビタミン、ミネラルを含有する非常に栄養価の高い食材であり、その価値は再認識されています。
よもぎを採取する際の注意点
自然の中でよもぎを摘む際には、いくつかの大切な留意点があります。最も重要なのは、トリカブトの若芽やハシリドコロといった、よもぎと酷似する毒草との誤認を避けることです。葉の裏側の特徴的な白い毛や、特有の芳香を確認し、確実に判別しましょう。また、農薬散布の可能性のある場所や、車の排ガスが多い幹線道路沿いは避け、清浄な環境で育ったものを選び取ることが肝要です。植物の継続的な生育を考慮し、根こそぎ採らず、必要な量を慎重に収穫する姿勢も忘れてはなりません。
よもぎ餅には春は「生」、それ以外の季節は「乾燥」を使用
よもぎ餅を作る際、旬の春には「生のよもぎ」を、それ以外の時期には「乾燥よもぎ」を用いるのが一般的です。よもぎは成長が進むにつれてアクが強まり、繊維質も増すため、よもぎ餅には3月下旬から5月上旬にかけて摘み取られる、まだやわらかい若芽や若葉が最適です。この時期に収穫されたよもぎは、その芳醇な香りと鮮やかな緑色、そして口当たりの良い柔らかな食感が特徴で、最上の風味を持つよもぎ餅を生み出します。
生よもぎの風味と利用
春先の限られた期間に手に入る生よもぎは、その瑞々しい生命力と、清々しい野草の香りが最大の魅力です。丁寧に下処理としてアク抜きを施した後、そのまま餅の生地に混ぜ込むことで、他の季節では得られない格別な味わいを堪能できます。仕上がりのよもぎ餅は、目に鮮やかな緑色が映え、見た目にも美しい逸品となるでしょう。
乾燥よもぎとよもぎパウダーの活用
旬の時期に収穫したよもぎは、乾燥させたり、さらに細かくパウダー状に加工したりすることで、一年を通してよもぎ餅の風味を堪能できるようになります。乾燥よもぎは、生のものに比べて香りがぎゅっと凝縮されており、深い味わいが特徴です。使用する際は、一度お湯で戻してから使います。一方、よもぎパウダーは非常に細かく粉砕されているため、生地への混ざりが均一で、手軽に利用できる点が大きな魅力です。色鮮やかな仕上がりも期待でき、製菓材料としても幅広く活用されています。
<富澤商店>国産 よもぎパウダー(40g) 604円(税込) ※取扱い:富澤商店
乾燥よもぎやパウダーを選ぶ際は、品質にこだわり、国産品や無農薬のものを選ぶと、より安心感を持ち、その美味しさを存分に味わえるでしょう。保存は湿気を避けてしっかりと密閉し、冷暗所または冷蔵庫に入れることで、風味の劣化を防ぎ、長期間楽しむことができます。
よもぎ餅(草餅)の食べ方は?
よもぎ餅は、それだけでも十分美味しいものですが、様々な方法でいただくことで、その魅力をさらに引き出すことが可能です。
定番の食べ方
定番は、なめらかなあんこやつぶあん、または砂糖を混ぜたきな粉を添えていただく方法です。よもぎの爽やかな香りと、あんこの優しい甘さ、きな粉の香ばしさは、互いに引き立て合います。きな粉の砂糖加減はお好みで調整し、風味豊かな味わいを楽しみましょう。また、温かいぜんざい(お汁粉)の中に入れるのもおすすめです。温かな汁の中で、よもぎ餅のもっちりとした食感と豊かな香りが広がり、心癒されるひとときを演出します。
地域ごとの食べ方とアレンジ
地域によっては、甘い味付けにとどまらず、醤油を塗って香ばしく焼いたり、海苔を巻いて磯辺焼きにしたりする食べ方もあります。少し珍しいところでは、ごま和えにしたり、甘じょっぱい味噌を塗って味わったりする地域も存在します。これらの甘みと塩味の組み合わせは、よもぎ本来の風味を一層際立たせ、新しい味わいの発見につながるでしょう。ぜひ様々な食べ方を試して、ご自身のお気に入りを見つけてみるのも、よもぎ餅を深く楽しむ方法の一つです。
【基本レシピ】生よもぎ×もち米を使った「よもぎ餅(草餅)」の作り方
この餅生地には、しなやかで伸びやかな食感を生み出すもち米を選びます。米粉を使うと柏餅のような歯切れの良い仕上がりとなり、それはそれで魅力がありますが、もち米の方がクセのない風味で、よもぎ本来の豊かな香りを存分に引き立ててくれます。
今回用いる生のよもぎは、私が幼少期を過ごした土佐の庭で摘んだものです。まだ出始めでアクが少なく柔らかい状態だったので、惜しみなく生地に練り込みました。よもぎの種類や生育状況によって香りや色合いは異なるため、お好みに合わせて量を調整してください。
<材料>(作りやすい分量)
この基本レシピでは、もち米を中心に据え、伸びが良く本格的な味わいのよもぎ餅を目指します。採れたてのよもぎの風味を最大限に活かすための材料を揃えましょう。
-
もち米:300g
-
生よもぎ(下処理後):80g
-
あんこ:約200g
-
重曹(食用):水1ℓに対して小さじ1
-
片栗粉(または餅とり粉):適量
-
水(もち米浸水用):適量
-
水(よもぎを茹でる用):1~2ℓ
-
水(蒸し米にかける用):100ml(分量外)
<富澤商店>新潟県産 こがねもち(もち精米)(1kg)1,436円(税込) ※取扱い:富澤商店 もち米は、「こがねもち」のように粘り強く香り高い品種を選ぶと、さらに一層、風味豊かな餅に仕上がります。
<下準備>
よもぎ餅作りを成功させるためには、丁寧な下準備が極めて重要です。特に、もち米、あんこ、そしてよもぎの各下処理工程は、完成品の美味しさを左右します。
もち米の下準備
もち米は丁寧に洗い、蒸し器で蒸す場合は6時間以上、炊飯器で炊く場合は1時間を目安に水に浸します。使用する15分ほど前にザルにあげ、しっかりと水気を切っておきましょう。十分な浸水は、もち米の芯まで水分を行き渡らせ、ふっくらとした蒸し上がり(または炊き上がり)を促します。また、浸水後の水切りをしっかり行うことで、餅生地の水分バランスが最適に保たれ、理想的な柔らかさと伸びが生まれます。
あんこの水分調整
手で形を整えるのが難しいほど緩いあんこの場合は、鍋に移して加熱し、余分な水分を飛ばす工程が必要です。あんこに水分が多く残りすぎていると、お餅で包む際に扱いにくくなるだけでなく、完成したお餅の食感が水っぽくなってしまう原因にもなりかねません。弱火でじっくりと練り上げることで、程よい硬さに調整し、あんこが丸めやすくなり、お餅との一体感も一層高まります。特に自家製のあんこを用いる際は、市販品と比較して水分量が多い傾向にあるため、この調整作業は特に念入りに行いましょう。
<作り方>
ここからは、絶品よもぎ餅を完成させるための具体的な手順をご紹介します。各ステップを丁寧に進めることが、最高の仕上がりへと繋がります。
1. よもぎの可食部(食べられる部分)を選り分け、よく洗う
まず最初に、摘みたてのよもぎの中から、よもぎ餅作りに最適な部分を慎重に選び出す作業から始めます。この選別は、最終的なお餅の風味や口当たりを大きく左右する、非常に重要な工程です。
よもぎの選別と見分け方
よもぎの根元から葉先に向かって手でなでるようにした際に、ごわつきのある硬い葉が見つかれば、それらは摘み取って取り除きます。これらの葉は、生育が進みすぎて繊維質が強くなっていたり、枯れかかっていたりする部分です。硬い部分を茹でても筋っぽさが残ってしまうため、事前に取り除くことで、舌触りの良い、なめらかなよもぎ餅に仕上がります。特に古くなった葉や太い茎は、繊維が硬く苦味も強いため、丁寧な処理が求められます。
次に、よもぎの茎を広げ、最も先端にある新芽(写真の赤色の部分を参考に)を根元から優しく摘み取ります。この部分は最も若く、他の葉や茎に比べて色が鮮やかで柔らかいのが特徴です。新芽は茎ごと活用することで、よもぎ餅に繊細で上品な香りを加えることができます。残りの葉も同様に、丁寧に摘み集めましょう。
丁寧な洗浄の重要性
選別を終えたら、清潔な水を張ったボウルの中でよもぎを丁寧に洗い、付着した汚れをしっかりと落とし、その後ザルに上げて水気を切っておきます。自然の恵みであるよもぎは、その性質上、収穫時に土や小さな虫、目に見えないゴミなどが付着していることが少なくありません。清潔な水を数回入れ替えながら、手でそっと揺らすように洗うことで、これらの不純物をしっかりと洗い流しましょう。特に葉の裏側や茎の根元は汚れが残りやすいポイントですので、入念な確認と洗浄を心がけてください。このひと手間が、よもぎの風味を最大限に引き出す秘訣です。
選別後の可食部の目安
画像で示されている赤色の部分が、実際に食用として利用できる「可食部」です。例えば、今回の例では、採取した生よもぎ185gから、丁寧に選別・洗浄した結果、約80gの可食部が得られました。これはあくまで一例ですが、生のよもぎを収穫した際の、実際に使える部分の割合を把握する上での目安としてご活用ください。この選別と洗浄を丁寧に行うことが、最終的に出来上がるよもぎ餅やその他のよもぎ料理の風味と口当たりを格段に向上させる重要なステップとなります。
2. よもぎをゆでる。鍋に湯を沸かし、重曹を加えてよもぎをゆで、水にとってアクを抜く
よもぎの選別と丁寧な洗浄が完了したら、次に控えるのは、よもぎ特有のえぐみを効果的に取り除き、その美しい緑色を保つための不可欠な工程、「茹でる」作業です。
重曹の役割とアク抜きの科学
大きめの鍋に1~2リットルの水を張り、強火で加熱し、沸騰させます。湯が十分に沸き立ったら、重曹(目安:水1リットルにつき小さじ1杯程度)を投入します。この重曹を加えることで、よもぎに含まれるアク成分が効率よく抜け、またその繊維が柔らかくなり、鮮やかな緑色に仕上がるという効果が期待できます。重曹が持つアルカリ性の性質は、よもぎ特有の苦味やえぐみの元となるアク成分を中和・分解する働きをします。さらに、葉緑素の色素を安定させる効果もあるため、よもぎ本来の美しい緑色を損なうことなく維持できるのです。もし重曹が手元にない場合でも、木灰の灰汁や、ごく少量の塩を加えて同様にアク抜きを行うことは可能ですが、最も効果的で手軽なのはやはり重曹の使用です。
十分に準備を終えたよもぎを、この沸騰したお湯に加えます。よもぎは茹でることで著しくかさが減りますので、最初からたっぷりの熱湯を用意しておくことが重要です。一度に大量のよもぎを鍋に入れてしまうと湯の温度が下がりやすくなるため、少量ずつ、数回に分けて茹でるのが賢明です。
ゆで加減の見極め方
茹で上がりの目安は、茎の柔らかさです。指で挟んでみて、潰れない程度の弾力が残る状態が理想的です。茹ですぎは、よもぎ特有の爽やかな香りを損ない、葉がべたついたり煮崩れたりする原因となるため注意が必要です。もしアクの強いよもぎを使用した場合、茹で汁がより濃い黒色になることがあります。これは、しっかりとアクが抜けているサインと捉えられます。
効率的なアク抜きの方法
茹で上がったよもぎはザルに上げ、冷水を入れたボウルに移します。濁った水が透明になるまで2~3回水を替え、その後1分から20分程度水にさらしてアクを抜きましょう。よもぎの種類や収穫時期によってアクの強さが異なるため、水にさらす時間は調整が必要です。例えば、今回のような若い芽はアクが少ないため短時間で十分ですが、途中で味見をして最適な状態を見極めるのが一番確実な方法です。よもぎ餅の風味を豊かに保つには、わずかな苦みが残る程度が理想的です。完全に苦味を取り除いてしまうと、せっかくのよもぎならではの独特な香りが失われてしまう可能性があるので注意してください。
3. ゆでたよもぎをフードプロセッサーまたは包丁で刻み、さらにすり鉢でペースト状にする
アク抜きを終えたよもぎは、餅生地と均一に混ざり合うように細かく刻み、ペースト状に加工します。この手順は、完成したよもぎ餅の舌触りを左右する重要な工程です。
適切な水気と繊維の処理
アク抜き後のよもぎはザルにあけて軽く水気を絞り、まずは包丁でざく切りにしておきましょう。よもぎは繊維質が豊富なため、フードプロセッサーを使用すると効率よく細かくすることができます。フードプロセッサーに投入し、滑らかなペースト状になるまでしっかり攪拌してください。この際、水分が少なすぎると空回りしてしまうため、絞りすぎずに適度な湿り気を保っておくのがコツです。フードプロセッサーがない場合は、包丁を使って根気強く細かく刻んでください。繊維をしっかりと断ち切るように、まるで薬味をみじん切りにするような感覚で作業を進めると良いでしょう。
すり鉢でペーストにする意義
細かく刻んだよもぎをすり鉢に移し、すりこ木を使って丁寧にすりつぶし、なめらかなペースト状に仕上げます。フードプロセッサーでは取り除ききれない繊維も、すり鉢で念入りに潰すことにより、よりきめ細かく均質なペーストが完成します。このひと手間が、餅生地に混ぜ込んだ際の舌触りを格段に向上させ、よもぎ本来の豊かな香りを最大限に引き出す秘訣です。
太い筋の除去と餅の硬さ調整
すりつぶしの過程で、写真に示すような太い繊維を見つけたら、必ず取り除いてください。これらの筋は口に残るだけでなく、餅全体の滑らかな食感を損ねる原因となります。この段階で丁寧に取り除くことが、美しい仕上がりへの鍵です。また、よもぎをたっぷり使うと生地の水分量が増え、餅が柔らかくなりすぎることがあります。好みに応じて、厚手のキッチンペーパーや清潔なガーゼで包み、余分な水分を軽く絞っておきましょう。よもぎが持つ水分量で餅の固さが変わるため、お好みの硬さに合わせて水切りの程度を調整してください。
●ゆでたよもぎを保存する方法
旬の時期に豊富によもぎが採れた場合でも、適切に下処理を施したゆでよもぎは保存が可能です。正しい方法で保存すれば、豊かな旬の味わいを一年を通して楽しむことができるでしょう。
冷蔵保存と冷凍保存の方法
下茹でしたよもぎは、そのままの状態で保存することができます。茹で上がった後、粗く刻んだ状態、あるいはすりつぶしてペーストにした状態のいずれかで、一回に使う分量を目安にラップでしっかりと密閉します。空気に触れるのを防ぐことで、酸化による色や香りの劣化を最小限に抑えることができます。ラップで包んだ後、さらにジップロックのような保存袋や密閉容器に入れ、冷蔵または冷凍保存してください。
保存期間の目安と解凍方法
冷蔵保存の場合、鮮度を保ちながら約3日間は美味しく召し上がれます。すぐに使い切る予定がある際に適した方法と言えるでしょう。一方、冷凍保存であれば、その風味と色合いを約1ヶ月間キープすることが可能です。長期的にストックしておきたい場合は、冷凍保存が断然おすすめです。利用する際は、ゆっくりと自然解凍させるか、電子レンジで軽く温める程度に加熱してください。適切に解凍されたよもぎは、その鮮やかな緑色と豊かな香りを損なうことなく、いつでも美味しいよもぎ餅作りに役立てられます。
4. もち米を蒸し器で蒸す。または炊飯器で炊く
もち米を適切に調理する工程は、出来上がるお餅の食感や口当たりを大きく左右する、非常に重要なステップです。ここでは、伝統的で本格的な仕上がりを目指す蒸し器を用いた方法と、もっと手軽に調理できる炊飯器を使った方法、両方をご紹介します。
蒸し器での最適な蒸し方
蒸し器(今回はステンレス製を使用します)を使ってもち米を蒸し上げましょう。まず、蒸し器の下段にはたっぷりと水を注ぎます。水量が不足すると途中で空焚きになるリスクがあるため、常に十分な水を確保してください。上段には、水で濡らして固く絞った蒸し布を敷き、その上にもち米を均等に広げます。この時、もち米の表面を平らにするのではなく、指で軽くでこぼこを作るように配置することで(写真参考)、蒸気がもち米全体に行き渡りやすくなり、蒸しムラを防ぐ効果があります。その後、蒸し布の端を中心へと寄せてもち米をしっかりと包み込み、蓋をして強火にかけることで、蒸気を逃がさず効率的に蒸し上げることができます。
蒸し時間の調整と水分補給
沸騰後、約15分間加熱したら一度火を止め、蓋を取って蒸し布を広げます。ここで、手で全体に水100ml(分量外)を振りかけます(写真参考)。この作業は、蒸し上がったもち米が乾燥しすぎるのを防ぎ、水分を均一に行き渡らせることで、より一層ふっくらとしたお餅に仕上げるために不可欠です。水をかけた後、もち米の上下を入れ替えるようにして(写真参考)、再び蒸し布で覆い、蓋をして強火で加熱します。再度沸騰してから5分間蒸し続けましょう。この二段階に分けた丁寧な蒸し方により、もち米の芯までしっかりと火が通り、ムラなく弾力のある、もちもちとした食感を実現できます。
炊飯器で炊く場合のポイント
蒸し器をお持ちでない場合や、もっと気軽に「よもぎのレシピ」に挑戦したい方には、炊飯器の活用がおすすめです。「おこわモード」や「もち米モード」が搭載されている機種であれば、手軽にもち米を炊くことができます。ただし、炊飯器のメーカーやモデルによって、必要とする水分量やモード設定が異なるため、必ずお手元の取扱説明書をご確認ください。一般的なもち米の炊飯手順と同様に、適切な浸水時間を守り、規定量の水加減で炊飯するだけで、もっちりとした餅米を簡単に準備することが可能です。
5. もち米とよもぎのペーストを合わせ、餅つき機でつく
ふっくらと蒸し上がったもち米に、丁寧に下処理を施しペースト状にしたよもぎを加えて、餅つき機でつき上げることで、風味豊かで口当たりの良い、絶品のよもぎ餅が完成します。
餅つき機の使い方と注意点
先ほど炊き上がったもち米は、熱いうちに餅つき機(もし専用のものがなければ、餅つき機能付きのホームベーカリーや、パン用のニーダーでも代用可能です)へ移し替えます。餅つきの工程では、熱が冷める前にもち米をつき始めることが、粘り強く、かつ非常に滑らかな餅に仕上げるための重要なポイントです。この「熱い状態での作業」を心がけてください。次に、準備しておいたよもぎのペーストを加え、餅つき機をスタートさせます。機種によって「つく」モードの操作は異なりますが、一般的な手順に沿って作業を進めましょう。もし餅が機械の中で回りにくいと感じたら、水で濡らしたゴムベラを使って、時々底から全体を優しく返すように補助すると、よもぎが均一に混ざりやすくなります。また、手に水をつけておくことで、餅がくっつくのを防ぎ、スムーズに取り扱えます。
餅のつき上がりの見極め
もち米とよもぎが一体となり、理想的な餅の状態になったら、餅つきの終了の合図です。餅つき機が自動で停止するか、または全体の見た目が均一な鮮やかな緑色になり、独特の粘りともっちりとした弾力が出てきたら、餅が完成したサインと判断できます。つきすぎは餅の食感を損ね、硬くなる原因にもなるため、この見極めが美味しいよもぎ餅を作る上で非常に大切になります。
成形前の準備とコツ
つき上がったばかりのお餅を、打ち粉(片栗粉や餅とり粉など)を敷いたバットに移し、軽く水で湿らせた手で丁寧に広げていきます(上写真)。お餅がバットにくっつくのを防ぐため、あらかじめ打ち粉を敷いておくことで、その後の作業が格段にスムーズになります。この際、お餅の内部に粉が入り込むと食感が硬くなる恐れがあるので、あくまで表面に薄くまぶす程度に留めるよう注意しましょう。我が家では、片栗粉の代わりに香ばしいきな粉を打ち粉として使っていました。きな粉がお好みであれば、この方法も大変おすすめです。きな粉の豊かな風味がよもぎの爽やかさと見事に調和し、一味違った美味しさに出会えます。
よもぎ餅の完成と保存
均一に広げたお餅を、半分に折り返せば(下写真)、風味豊かなよもぎ餅の出来上がりです。粗熱が取れ次第、すぐに味わうか、長期保存の準備に取り掛かりましょう。もし、すぐに食べきれない場合は、平らにのばした状態で2日ほど置けば、よもぎ入りのし餅(切り餅)としても楽しめます。のし餅にする際は、完全に冷めてからお好みの大きさに切り分け、一つずつラップで丁寧に包んで保存するのが良いでしょう。冷蔵庫で保存し、鮮度が落ちないうちに早めに食べきることをお勧めします。
【初心者向き】よもぎ餅の食べ方

初めてよもぎ餅作りに挑戦する方や、その素朴な味わいを気軽に堪能したい方へ、とっておきの、シンプルかつ絶品の食べ方をご紹介します。出来立てのよもぎ餅が持つ、もちもちとした柔らかな食感と、清々しい香りを存分に味わえる方法です。
よもぎ餅を丸めてきな粉をまぶす。好みであんこを添えても
出来立てのよもぎ餅を、お好みのサイズにちぎり、軽く丸めます(ちぎったままでも美味しくいただけます)。お餅が手にくっつきやすい場合は、少量の水をつけたり、片栗粉を軽く手粉としてまぶしたりすると、作業がぐっと楽になります。丸めたお餅は、お好みの量の砂糖を混ぜたきな粉を全体にたっぷりとまぶしてお召し上がりください。きな粉と砂糖の割合は、きな粉大さじ3に対して砂糖大さじ1程度が目安ですが、甘さはお好みで調整してください。きな粉の香ばしい風味と砂糖の優しい甘さが、よもぎの清々しい香りと見事に調和します。
さらに贅沢に味わうなら、甘さ控えめのつぶあんやなめらかなこしあんを添えるのもおすすめです。あんこの深みのある甘みと、よもぎ餅の爽やかな味わいが互いを引き立て合い、至福のハーモニーを生み出します。一口ごとにきな粉、あんこ、そしてよもぎ餅が織りなす奥深い味わいをご堪能ください。なお、熱いうちに無理に作業する必要はありませんので、もしお餅が扱いにくいと感じる場合は、1時間ほど冷ましてから形を整えると、熱さを気にせず、ゆったりと作業を進めることができます。冷めてもなお、その柔らかさが持続するのがもち米で丁寧に作られたよもぎ餅の大きな魅力です。
【ステップアップ】よもぎ餅の包み方
よもぎ餅を自家製で作ることに慣れてきたら、次は餡(あん)を内側に閉じ込める、伝統的なスタイルに挑戦してみませんか。見栄えも素晴らしく、口にした時の幸福感も格段に向上するでしょう。
よもぎ餅で餡を包み込む工程
よもぎ餅で餡を包む際には、まず餅一つあたり20~30gを目安に餡を丸めて準備します。餡をあらかじめ同じ大きさに揃えておくことで、後の作業が非常にスムーズになります。もし餡が柔らかすぎると感じる場合は、事前に水分を飛ばして扱いやすい固さに調整しておくと良いでしょう。
餅生地の分割と形作り
よもぎ餅の生地を、一個あたり45~50gの重さになるように手でちぎり分け、計量します。この際、手が餅に貼りつかないよう、打ち粉(片栗粉など)をまぶすのを忘れないでください。もし餅の熱さで作業が困難な場合は、およそ1時間ほど放置して冷ましてから作業を開始すると、慌てずに美しい形に仕上げられます。冷めても餅の柔らかさは十分に保たれているので、焦る必要はありません。
分割した餅生地は、直径およそ10cmの円形に広げます。この時、外周部分を薄めに伸ばすことで、餡を包んだ際の継ぎ目が目立たず、見た目も美しくなります。一方で、中央部分は少し厚めに保ち、餡を置いた際に底が破れてしまわないよう注意しましょう。手のひら全体を使って均一に伸ばすことを意識してください。
餡を美しく包み込む秘訣
広げた餅生地の中央に餡を置きます。餡をそっと生地で覆い、餡を軽く内側へ押し込みながら、餅の縁を中央に向けて丁寧に寄せ集め、しっかりと口を閉じます。この閉じ口の処理が最も肝心な工程です。もし閉じ口に隙間が残っていると、蒸した際などに餡が漏れ出てしまう原因となります。しっかりと閉じ終えたら、その閉じ口を下にして、手のひらで優しく転がしながら全体を丸く整えていきます。表面がなめらかになるまで丁寧に転がし、完璧な球状に仕上げましょう。この一連の作業を習得することで、よりプロフェッショナルな和菓子作りの喜びを味わえるはずです。
【実食レビュー】よもぎ餅。春の息吹を感じる、瑞々しい香りと奥深い味わい!
今回手に入れたよもぎは、その若さゆえに、長年よもぎ餅を作り続けている小島さんをも唸らせるほどの鮮やかな緑色をしています。一口食べると、まるで春の野原をそのまま閉じ込めたかのような、清々しい香りが鼻腔をくすぐり、全身で季節の移ろいを実感できます。この目にも鮮やかな色は、視覚からも「春が来た」と語りかけてくるかのようです。都会の忙しさを忘れさせてくれるような、大地の恵みが凝縮された香りは、まさに至福の体験と言えるでしょう。
これまでは上新粉など米の粉を使ったよもぎ餅を試してきましたが、今回初めてもち米での挑戦となりました。一口食べれば、小島さんが強く推奨する理由が瞬時に理解できます。もち米ならではの、ふんわりとした口当たりともっちりとした粘りのある食感は、従来の米粉ベースの餅とは一線を画すものです。摘みたてのよもぎが持つデリケートな香りを、つき立ての餅生地が優雅に包み込み、最高のハーモニーを奏でます。もち米のほのかな甘さと、よもぎの持つ清涼感あるほろ苦さが、口の中で見事な調和を生み出し、深みのある風味を織りなしています。このよもぎのレシピは、もち米を使うことで格段に美味しくなります。
「もち米で作る生地は時間が経つと固くなりがちですが、生のよもぎを加えるとなぜか固くなりにくいんですよ」という小島さんの言葉通り、その驚くべき柔らかさは長く保たれました。これは、よもぎに含まれるある成分が、餅の澱粉老化を抑制する効果を持つからだと考えられています。したがって、作った翌日でも風味や食感が損なわれず、まるで作りたてのような美味しさを味わえるのは、ご家庭でよもぎのレシピを実践する上で非常に嬉しいポイントです。この時期だけの贅沢で上品な味わいを、ぜひ一度ご堪能ください。日本の豊かな四季を五感で感じさせてくれる、至高の和スイーツです。
多様な「よもぎのレシピ」!知っておきたい3つの作り方
よもぎ餅の魅力は、使用するよもぎの種類や粉の組み合わせ方によって、驚くほど多彩な食感と風味を楽しめる点にあります。ここでは、「生よもぎと米の粉(上新粉・もち粉のブレンド)」、「乾燥よもぎと米の粉(上新粉・もち粉のブレンド)」、そして「乾燥よもぎともち米」という、主要な3種類のよもぎのレシピをご紹介します。それぞれが持つ独特の食感や香りの違いを比較しながら味わうのも一興です。ぜひ、ご自身の好みやその時に手に入る食材に合わせて、最適な作り方を見つけてみてください。
【よもぎのレシピ①】生よもぎと米の粉で作る、手軽なよもぎ餅
餅つき機がご自宅になくても、このよもぎのレシピなら、旬の生よもぎを使った本格的なお餅を気軽に楽しめます。生のよもぎが持つ繊細で爽やかな香りと、上新粉ともち粉をブレンドすることで生まれる、しっかりとしたコシと歯切れの良さが特徴の餅生地が絶妙にマッチします。もち米を使った餅とは異なる、独自の弾力と食べ応えがあり、柏餅のようなしっかりとした食感が好みの方には特に試していただきたい一品です。
<材料>(作りやすい分量)
-
上新粉:100g
-
もち粉:100g
-
生よもぎ(下処理済み、ペースト状):50g
-
砂糖:20g(甘さはお好みで調整)
-
ぬるま湯(約50℃):150ml程度(生地の様子を見ながら加える)
-
あんこ、きな粉:お好みで
<作り方>
もち米を使わずに作るこのよもぎ餅は、手作業で生地を丁寧にこねる工程が、なめらかでコシのある仕上がりを生み出す秘訣です。
-
まず、新鮮な生のよもぎを選び、丁寧に洗い、たっぷりの熱湯で茹でてしっかりとアクを抜きます。その後、フードプロセッサーやすり鉢でなめらかなペースト状にしてください。
-
大きめのボウルに上新粉、もち粉、そしてお好みで甘みを加える場合は砂糖を入れ、ダマがなくなるまでしっかりと混ぜ合わせます。このひと手間で、後から加える水分やよもぎが均等に混ざりやすくなります。
-
次に、約50℃に温めたぬるま湯を少しだけ残して加え、ゴムベラで全体をざっくりと混ぜ合わせます。ぬるま湯は粉の糊化を促し、生地がまとまりやすくなる効果があります。
-
手順1で作ったよもぎペーストを加え、ゴムベラである程度混ぜたら、ここからは手でしっかりと練り込みます。耳たぶくらいのやわらかさになるまで、残りのぬるま湯を少しずつ調整しながら加え、粉っぽさがなくなるまで丁寧にこねて一つの塊にします。この丁寧な手ごねが、美しい緑色となめらかな口当たりを生み出します。
-
完成した生地を均等に8つに分け、それぞれを小判型に整え、中央を軽くへこませます。このくぼみは、蒸し器に入れた際に生地の中心部まで均一に熱が伝わるようにするための大切な工程です。
-
湯気が十分に上がった蒸し器に、生地が重ならないように並べ、15分から20分ほどしっかりと蒸し上げます。蒸しムラを防ぐため、並べ方にも注意しましょう。
-
蒸し上がった生地は、火傷に注意しながら熱いうちにすり鉢か丈夫なボウルに移し、すりこぎで力強くつきます。熱いうちにつくことで生地がよく伸び、粘りが出て、驚くほどなめらかなお餅になります。すりこぎがない場合は、麺棒の先などでも代用可能です。
-
生地全体がなめらかにまとまったら完成です。召し上がる際は、手に軽く水をつけながら一口大にちぎったり丸めたりして、お好みに合わせて粒あん、こしあん、きな粉などを添えてお楽しみください。もち米を使わないため、独特の歯切れの良い、風味豊かなよもぎ餅が味わえます。
【よもぎ餅レシピ②】乾燥よもぎ×米の粉(上新粉、もち粉)
このよもぎ餅のレシピは、一年を通して入手しやすい乾燥よもぎと、上新粉、もち粉という米由来の粉を組み合わせることで、どなたでも気軽に挑戦できるのが魅力です。生のよもぎが手に入りにくい時期でも、乾燥よもぎならではの濃厚な香りと、上新粉が織りなす歯切れの良いコシのある食感を存分にお楽しみいただけます。思い立ったときにすぐに作れる手軽さも、このレシピの大きなポイントです。
<材料>(作りやすい分量:約8個分)
-
上新粉:100g
-
もち粉:100g
-
乾燥よもぎ:5g
-
砂糖:20g(お好みで)
-
ぬるま湯(50℃):約150ml(加減しながら)
-
水(乾燥よもぎを戻す用):35ml(分量外)
-
あんこ、きな粉:適量
<作り方>
乾燥よもぎを使う場合、その豊かな風味を最大限に引き出すためには、事前にしっかりと水分を吸わせて戻しておくことが重要です。
-
まず、小さめの容器に乾燥よもぎを入れ、分量外の水35mlを加えて優しく混ぜ、よもぎが水分をしっかり吸ってやわらかくなるまでふやかします。最低でも15分、可能であれば30分ほど浸しておくことで、生地への馴染みが格段に良くなり、香りも引き立ちます。
-
次に、別のボウルに上新粉、もち粉、そして甘さを加える場合は砂糖を入れ、粉が均一になるようにしっかりと混ぜ合わせます。
-
約50℃に温めたぬるま湯を少しずつ加えながら、ゴムベラを使って粉全体がしっとりするまでざっくりと混ぜ合わせます。
-
手順1でふやかしておいた乾燥よもぎを、もどし汁ごと生地に加え、まずはゴムベラで混ぜます。その後、手でしっかりと揉み込み、粉っぽさがなくなり、耳たぶくらいのやわらかさになるまでひとまとめにします。乾燥よもぎは生のよもぎよりも香りが濃厚なので、お好みに合わせて調整するのも良いでしょう。
-
完成した生地を均等に8つに分け、それぞれを小判型に整え、中央を軽くへこませます。その後、湯気が十分に上がった蒸し器に重ならないように並べ、15分から20分を目安に蒸し上げます。
-
蒸し上がった生地は熱いうちにすり鉢か丈夫なボウルに移し、すりこぎで根気よくついて、なめらかで粘りのあるひと塊にします。これで美味しいよもぎ餅の完成です。召し上がる際は、手に軽く水をつけてから一口大にちぎったり、丸めたりして、お好みのあんこや香ばしいきな粉を添えて、温かいうちにお召し上がりください。
【よもぎ餅レシピ③】乾燥よもぎ×もち米
生のよもぎが手に入りにくい季節でも、本格的な風味のよもぎ餅を自宅で作りたい方へ贈るレシピです。乾燥よもぎを使うことで、香り豊かなもち米ベースのよもぎ餅を一年中気軽に楽しむことができます。このレシピでできたお餅は、平らにのばして数日置けば、のし餅(切り餅)としても保存が可能です。
<材料>(作りやすい分量)
-
もち米:300g
-
乾燥よもぎ:10g
-
あんこ:約200g
-
重曹(食用):水1ℓに対して小さじ1
-
片栗粉(または餅とり粉):適量
-
水(もち米浸水用):適量
-
水(乾燥よもぎを戻す用):100ml(分量外)
-
水(餅米を茹でる用):1~2ℓ
-
水(蒸し米にかける用):100ml(分量外)
<作り方>
もち米と乾燥よもぎの組み合わせは、生よもぎとはまた異なる深みのある香りと、もち米が持つ独特の柔らかさを見事に引き出し、絶妙な食感を生み出します。
-
乾燥よもぎの下準備 小さめのボウルに乾燥よもぎを入れ、水100ml(分量外)を注いで30分から1時間ほどかけてじっくりと戻します。よもぎが十分に水分を吸って柔らかくなったら、軽く絞って余分な水気を切り、包丁で細かく刻むか、フードプロセッサーを使ってペースト状になるまで撹拌します。必要に応じて、少量の重曹を加えた熱湯で軽く茹でてアク抜きをし、再度冷水にさらして水気をしっかりと切ることで、より鮮やかな色合いとクリアな風味のペーストに仕上がります。
-
もち米の下準備 もち米を丁寧に研ぎ、蒸し器を使用する場合は、最低でも6時間以上たっぷりの水に浸しておきます。蒸す約15分前になったらザルに上げて水気をしっかりときっておきましょう。炊飯器で調理する場合は、1時間浸水させた後、調理直前にザルに上げて水気を切るようにします。
-
あんこの水分調整 市販のあんこや手作りのあんこが、手で丸めにくいほど柔らかい場合は、鍋に移して弱火でゆっくりと加熱し、ヘラで混ぜながら余分な水分を飛ばして好みの硬さに調整しておきます。
-
もち米を蒸すまたは炊く 「基本のよもぎ餅の作り方」にある「4. もち米を蒸し器で蒸す。または炊飯器で炊く」の要領で、もち米を丁寧に蒸し上げるか、炊飯器で炊飯します。蒸し器を使う際は、もち米をでこぼこになるように広げて蒸しムラを防ぎ、途中の加水も忘れずに行うことが、ふっくらとした仕上がりの秘訣です。
-
もち米とよもぎのペーストを合わせる 蒸し上がったばかりの熱いもち米を餅つき機(または餅つき機能付きのホームベーカリー、パン用ニーダー)に移し入れます。そこに、1で準備しておいた乾燥よもぎのペーストを加え、餅つき機でしっかりとついていきます。全体が均一に混ざりにくい場合は、水で湿らせたゴムベラなどで補助しながら、もち米とよもぎが完全に一体化し、なめらかな餅状になるまで丹念につきます。
-
成形と完成 餅つき機でつき上がったばかりの熱い餅を、片栗粉(または餅とり粉)を広げたバットの上に広げます。水で軽く濡らした手を使って餅をのばし、内側に粉が入らないように気をつけながら半分に折りたたみます。その後、食べやすい大きさにちぎって丸めるか、準備したあんこを包んで成形します。このまま温かいうちにいただくのはもちろん、平らにのばして冷まし、のし餅として切り分けて保存するのもおすすめです。
応用編:よもぎの香りが広がる「よもぎあんパン」の作り方
よもぎはその独特の香りで和菓子だけでなく、パン生地に練り込んでも格別の風味を醸し出します。特に春の旬のよもぎを使って、香り豊かな「よもぎあんパン」作りに挑戦してみませんか。ここでは、パン作りの基本的な工程に加えて、様々な成形方法もご紹介し、ご家庭で手軽に楽しめるよもぎパンの世界を広げます。
材料
香り豊かなよもぎあんパンを作るために必要な材料は、基本的なパン生地の素材に、風味の決め手となるよもぎを加えるだけです。使用するよもぎの種類によって、加える水分量を微調整することが成功の鍵となります。
-
強力粉:250g
-
砂糖:20g
-
塩:3g
-
ドライイースト:3g
-
よもぎ(以下のいずれかを選択) 茹でて絞り、細かく刻んでペースト状にした生よもぎ:50g 乾燥よもぎ粉:10g よもぎパウダー:8g
-
水:130g~(よもぎのタイプに応じて調整)
-
無塩バター:20g
-
あんこ:1個あたり20~25g(合計10個分)
よもぎは、生のよもぎ、乾燥よもぎ粉、よもぎパウダーのいずれでも美味しく作れますので、ご自宅にあるものや手に入りやすいものをお選びください。水の目安量は、生のよもぎまたは乾燥よもぎ粉を使う場合は130g、よもぎパウダーの場合は155~160g程度が適切です。季節の湿度やご使用の強力粉によっても吸収率が変わるため、生地の様子を見ながら水分量を加減してください。もし生地が硬すぎる場合は水を5gずつ加え、逆に柔らかすぎる場合は強力粉を10gずつ足して調整しましょう。
今回は乾燥よもぎ粉を使用し、水は135gで進めます。乾燥よもぎ粉を用いる際は、あらかじめ熱湯で戻し、目の細かいザルなどでしっかりと水気を切っておくことで、生地へのなじみが良くなり、よもぎ本来の香りが一層引き立ちます。バターは事前に室温に出しておくと、生地に混ぜ込みやすくなります。オーブンは190℃に設定し、予熱を開始しておきましょう。
作り方
よもぎあんパンの調理プロセスは、基本的なパン作りの手順を踏襲しています。特に大切なポイントは、よもぎの風味を生地全体に均一に行き渡らせることと、発酵時間を正確に管理することです。
1. 材料を混ぜる
大きめのボウルに強力粉、砂糖、塩、ドライイースト、よもぎ(戻して水気を切ったもの、またはパウダー)、水を入れます。ゴムベラまたは手で、粉っぽさがなくなるまで、全体がしっとりとした一つの塊になるように丁寧に混ぜ合わせましょう。この段階で生地が硬く感じるようであれば、少しずつ水を加え、適切な柔らかさになるよう調整してください。
2. 生地をこねる
ひとまとまりになった生地を調理台の上に取り出し、こね始めます。最初は手につくようなベタつきがありますが、こね続けるうちに粘りが出てきて、徐々にまとまりが良くなります。2分ほどこねて生地がある程度なめらかになったら、室温に戻しておいた柔らかいバターを加えて、さらにしっかりとこねていきます。バターが加わることで、生地の伸びが格段に良くなり、焼き上がりがよりしっとりとした食感になります。
生地が手から離れるようになったら、さらに数分こね続け、グルテン膜が薄く広がる状態(グルテンチェック)を目指します。生地を薄く伸ばしたときに、向こう側が透けて見えるようになれば成功です。なめらかで弾力のある生地になったら丸めてボウルに戻し、ラップをかけて一次発酵へと進みます。この丁寧なこね作業が、ふんわりとした口当たりの良いパンを完成させるための秘訣です。
3. 1次発酵
丸めて休ませた生地は、ボウルに移し、乾燥を防ぐためにラップをかけます。その後、35℃の環境で約45分間、生地が元の約2倍の大きさになるまでじっくりと一次発酵させましょう。ご家庭に発酵器がない場合は、オーブンの発酵モードを活用するか、室内の温かい場所(例:日当たりの良い場所や、お湯を張った湯煎の上など)に置いて代用できます。この一次発酵は、よもぎパン特有の豊かな風味を引き出し、最終的なふっくらとした食感を生み出すために非常に大切な工程です。生地が十分に膨らむことで、最高の仕上がりへと繋がります。
4. 分割・丸め・ベンチタイム
一次発酵が完了したら、ボウルからそっと生地を取り出し、中のガスを優しく抜き取ります。次に、生地を均等に10分割し、それぞれを丁寧に丸め直しましょう。丸めた生地は乾燥しないよう、濡れ布巾などをかけて10分間ベンチタイムをとります。このベンチタイムは、生地が休むことで弾力性が増し、その後の成形作業が格段にしやすくなる重要なステップです。この短い休憩時間の間に、あんこを一つあたり20~25gに計量し、扱いやすいように丸めて準備しておくとスムーズです。
5. 成形
ベンチタイムが終了したら、生地を一つずつめん棒で丁寧に円形に伸ばしていきます。伸ばした生地の中央にあんこを置き、生地の端をしっかりと集めて、とじ目を隙間なく閉じていきましょう。この閉じ方が不十分だと、焼き上げ時によもぎパンの中からあんこが漏れ出す原因となりますので、指でしっかりとつまんで密着させることが肝心です。ここからは、ご自身のセンスを活かして、お好みの形に成形する工程です。成形方法を変えるだけで、見た目の魅力はもちろん、食感にも変化が生まれ、より一層楽しめます。
潰して切れ込みを入れる成形
まず、丸めた生地を手のひらで軽く押し潰し、その平らになった生地の縁に、キッチンバサミを使って5~6箇所、放射状に切り込みを入れていきます。さらに見た目を美しくしたい場合は、軽く塩抜きした桜の塩漬けを中央に添えると、よもぎの緑と桜のピンクが映える、春らしい仕上がりになります。このユニークな成形方法は、「あんこをうまく包めない」「焼き上げ中にあんこが飛び出して困る」といったお悩みを持つ方に特におすすめです。切り込みが蒸気の逃げ道となり、内部の圧力を適切に放出するため、焼き上がりの形が崩れにくく、あんこが飛び出るリスクを大幅に減らすことができます。
よもぎの葉を模したクープの入れ方
丸い生地に、春の息吹を感じさせるよもぎの葉をモチーフにしたクープ(切れ込み)を施します。中央に太い葉脈を思わせる一本の線、その両脇に三本ずつ細い線を加えることで、愛らしい見た目に仕上がります。このクープは、パン生地に美しい模様を描くだけでなく、焼成時に内部の空気を適切に排出し、均一な膨らみを促す役割も担います。これにより、生地に空気が閉じ込められていても、破裂することなく安定して焼き上がります。
ふんわりちぎりパンの成形
丸く整えた生地を、まるで可愛らしい団子三兄弟のように並べて焼き上げます。竹串を添えれば、さらに遊び心あふれる仕上がりに。この成形方法は、焼き立てのパンを皆で分け合いながら食べるのにぴったりで、ホームパーティーやおもてなしの席でも大変喜ばれます。お子様との共同作業としても、記憶に残る楽しい体験となるでしょう。
独特の食感を生む平焼き成形
丸めた生地を優しく押し潰して平らにし、その上にオーブン用シートを重ね、さらに別の天板を重石のように置いて焼きます。この工夫により、生地が過度に膨らむのを抑え、薄くて均一な平たい形状に焼き上がります。これにより、通常のパンとは一線を画す食感が生まれ、表面の心地よいサクサク感と、内側のしっとりもちもちとした対比が、食べる喜びを一層深めてくれます。
6. 二次発酵と焼き上げ
形を整えた生地は、オーブンシートを敷いた天板に間隔を空けて並べます(生地の量が多い場合は、複数の天板に分けてください)。その後、35℃の環境で約30分間、生地が元の約1.5倍の大きさになるまで二次発酵させます。この二次発酵の工程は、パンの最終的なふっくらとした仕上がりを決定づける、非常に重要なステップです。
二次発酵が完了したら、必要に応じてクープを入れたり、茶こしを使って強力粉を薄く振りかけたりします。その後、190℃に予熱しておいたオーブンで13分間を目安に焼き上げれば、おいしいパンの完成です!ご使用のオーブンの機種や癖に合わせて、焼き時間は調整してください。表面が美しいきつね色になったら、焼き上がりの合図。焼きたてのよもぎあんパンから漂う香ばしい香りが部屋いっぱいに広がり、たまらない食欲を刺激することでしょう。
まとめ
本記事では、ただ「よもぎのレシピ」を紹介するだけでなく、よもぎ餅が持つ歴史的背景、古くから伝わる薬効、そして安全な採取方法といった多角的な情報を提供することで、よもぎという植物が持つ豊かな文化とその魅力の奥深さをお伝えできたことと存じます。さらに、和菓子の枠を超えた「よもぎあんパン」のレシピを応用編として提案し、よもぎが持つ可能性の広がりと、パン作りの楽しさ、新たな発見への道筋を示せたかと思います。
この春は、本稿で得た知識を活かし、ぜひご家庭で格別の香りを放つよもぎ餅作りに挑戦してみてください。ご自身の手で作り上げる温かさと、旬の恵みがもたらす五感で感じる喜びは、きっと忘れられない体験となるでしょう。また、季節を問わず乾燥よもぎやよもぎパウダーを上手に利用して、多様なよもぎスイーツ作りを楽しんでみてください。食卓に春の息吹と彩りを添え、豊かな食生活を過ごす一助となれば幸いです。
よもぎ餅を作る際のよもぎの下処理はどのように行いますか?
よもぎ餅の風味を最大限に引き出すためには、丁寧な下処理が欠かせません。まず、採取したよもぎの中から、硬い茎や変色した古い葉を取り除き、柔らかい新芽の部分を選びます。次に、ボウルに張ったきれいな水で数回水を入れ替えながら、付着した土やごみを洗い流し、しっかりと水気を切ってください。その後、大きめの鍋に湯を沸かし、重曹を少量(水1リットルにつき小さじ1杯程度)加えてよもぎを投入し、鮮やかな緑色になり、葉が柔らかくなるまで茹でます。茹で上がったらすぐに氷水にさらし、数回水を交換しながらよもぎのアクをしっかりと抜き、水気をぎゅっと絞ってから細かく刻むか、フードプロセッサーでペースト状に仕上げましょう。
生よもぎが手に入らない場合でもよもぎ餅は作れますか?
はい、もちろん可能です。生のよもぎが採れない時期や、入手が難しい地域にお住まいでも、乾燥よもぎやよもぎパウダーを活用すれば、一年を通して香り高いよもぎ餅を味わうことができます。乾燥よもぎを使用する際は、調理前に十分な量の水またはぬるま湯で戻し、水気をしっかり絞ってから生地に練り込みます。一方、よもぎパウダーは、そのまま粉類に混ぜ込むだけで使用できるため、手軽に美しい色合いと独特の風味をプラスできます。生よもぎとは一味違う、凝縮された豊かな香りがそれぞれの魅力です。
もち米と米の粉(上新粉、もち粉)で作るよもぎ餅の違いは何ですか?
よもぎ餅を作る際に、主材料として「もち米」を使うか、「上新粉やもち粉などの米の粉」を使うかで、出来上がりの食感は大きく異なります。もち米を蒸して作るよもぎ餅は、その名の通り「餅」本来の強い粘りと、とろけるような口どけ、非常に伸びの良い、やわらかくてもっちりとした食感が特徴です。よもぎそのものの爽やかな香りをストレートに感じられます。対して、上新粉やもち粉といった米の粉を使用して作るよもぎ餅は、歯切れが良く、ほどよいコシがあり、しっかりとした食べ応えのある食感に仕上がります。例えるなら、柏餅に近い、しっかりとした弾力がお好みの方にはこちらがおすすめです。どちらの製法もそれぞれの魅力がありますので、「よもぎのレシピ」を試す際は、お好みの食感や目指したい味わいに合わせて材料を選んでみてください。

