近年人気が高まっているラクレットチーズの魅力に迫ります。半分にカットしたチーズを熱源で温め、とろけた部分をナイフで削り取り、様々な食材にかけるダイナミックな食べ方が特徴です。アルプスの少女ハイジにも登場するこのチーズは、その独特の風味ととろけるような口当たりで、寒い季節にぴったりの料理として世界中で愛されています。
この記事では、ラクレットチーズの基本的な特徴から、家庭で実践できる食べ方、適切な保存方法まで幅広く紹介します。ラクレットチーズをより深く楽しみ、その魅力を引き出すための方法を詳しくお伝えします。
ラクレットチーズのルーツと特徴
ラクレットチーズは、スイスとフランスの国境に広がるアルプス地方が発祥の半ハードタイプのチーズです。熱を加えると溶けやすく、クリーミーな舌触りが特徴で、スイスの伝統的な郷土料理であるラクレットに欠かせません。
ラクレットという名は、フランス語の動詞ラクレ(削り取る、掻き落とすの意)に由来しています。その名の通り、チーズの表面を熱して溶かし、とろけた部分をじゃがいもやパンの上へ削り落として食べるのが伝統的なスタイルです。
ラクレットチーズの香りと味わい
ラクレットチーズは、塩水に浸した布で表皮を拭きながら熟成させるウォッシュタイプチーズに分類されます。この製法により、やや個性的な香りを放ちます。チーズの香りが気になる場合は、香りが控えめに作られた国産ラクレットチーズを選ぶのも一つの方法です。
口に含むとまろやかで、かすかなナッツのような香ばしさが感じられます。温めることで、クリーミーな食感と豊かな風味がさらに際立ちます。
AOP認定と歴史的背景
ラクレットは、料理名であると同時にチーズそのものの名称でもあります。スイスでは独自のAOP(原産地呼称保護)制度を設け、2003年にラクレットとしてその名称を認証しました。
2007年には、料理名との混同を避けるため、チーズの正式名称がラクレット・デュ・ヴァレとして再登録されました。特定の地域で伝統的な製法により製造されたチーズのみが、この名称を名乗ることが許されています。地域ごとに独自の風味を持つ多様なチーズが存在するため、好みに合った生産地のものを見つけるのも楽しみの一つです。
ラクレットとチーズフォンデュの違い
どちらも温かいチーズを堪能する料理ですが、楽しみ方や調理法にははっきりとした違いがあります。
食べ方の違い
ラクレットは、専用のヒーターやオーブンでチーズを熱し、表面がとろりと溶けた部分を削り取り、茹でたジャガイモ、ピクルス、生ハムなどの具材の上に直接乗せて味わうスタイルです。一人ひとりが自分の好みに合わせて、できたてをすぐに楽しめる点が魅力です。
これに対しチーズフォンデュは、数種類のチーズを白ワインなどと共に鍋で煮溶かし、一口大にカットされたパンや野菜を専用フォークに刺して、チーズソースにくぐらせて食べます。一つの鍋を囲み、皆でシェアしながら楽しむのが特徴です。
準備方法と器具の違い
ラクレットを楽しむためには、多くの場合、専用のラクレットグリルが用いられます。上部のプレートで肉や野菜を焼きながら、下部の小さなフライパンでチーズを溶かすことができる一体型が主流です。
一方、チーズフォンデュでは、カクロンと呼ばれるフォンデュ鍋と、それを保温するためのヒーターが不可欠です。チーズを溶かし込む際に、ガーリックやコショウといったスパイスを加えて風味に深みを出す工程も重要です。
風味と食感の違い
ラクレットは一般的に単一の種類のチーズが使用されるため、チーズ本来が持つ濃厚な風味と、熱で焼き色がつき香ばしくなった表面の香りをストレートに味わえます。
対照的にチーズフォンデュは、エメンタールやグリュイエールなど複数のチーズをブレンドして作られることが多く、それにより複雑で奥行きのある味わいが生まれます。
ラクレットチーズを美味しく食べるコツ
適切な選び方から食べる前の準備まで、いくつかのステップを紹介します。
チーズ選びのヒント
良質なラクレットチーズを選ぶ際は、表面の色が一様で、不自然な変色が見られない新鮮なものを選ぶようにしましょう。熟成の度合いによって、風味と香りが変化します。様々な食材とバランス良く楽しみたい場合は、クセが少なくまろやかな若い熟成度のものが適しています。チーズ本来の力強い風味を堪能したいなら、より長い期間熟成されたものを選ぶと良いでしょう。
食べる前の準備
冷蔵庫から出して30分ほど室温に戻しておくことで、チーズ本来の香りが立ち上り、とろけるような滑らかな食感が引き出されます。
最適なカット方法
自宅でカットする際は、厚みが均一になるように心がけ、外皮を1面から2面残すようにしてください。溶かした際に外皮が焼き上がり、独特の香ばしさと旨味が加わります。1人前150gから200gを目安に準備するのが適量です。厚すぎると溶けるのに時間がかかり、薄すぎると焦げ付きやすくなるため、適切な厚さを意識しましょう。
ラクレットチーズの溶かし方
家庭で美味しく溶かすための方法をいくつか紹介します。ポイントは、チーズと具材の温度を高く保つことです。提供する直前に一気に温めるのが理想的です。
フライパンやスキレットを使用する場合
フライパンを使用する場合は、チーズを均一に並べ、弱火でゆっくり加熱してください。中央がとろりと溶け始めたら、熱々の具材にたっぷりとかけます。スキレットは保温性が高いため、溶けたチーズを温かいまま食卓で楽しむことができます。焦げ付きが気になる場合は、底に薄くオリーブオイルを塗ると加熱がスムーズになります。
電子レンジを使用する場合
深めの耐熱容器にクッキングシートを敷き、その上にチーズを並べます。完全に溶けてなめらかになるまで、様子を見ながら加熱してください。溶けたチーズを具材にかける際は、クッキングシートごと持ち上げるようにすると手軽です。
専用グリルを使用する場合
ホームパーティーなどでは、卓上型の電気グリルであるラクレットグリルが便利です。焼きたての食材と、とろとろに溶けたチーズを常に熱々の状態で味わうことができ、美味しさが格段に引き立ちます。
お酒と食材のマリアージュ
合わせる飲み物や食材によって、ラクレットの表情は豊かに変化します。
ペアリングドリンク
爽快な辛口白ワインは、ラクレットの濃厚な旨みを一層際立たせるパートナーです。特に本場スイス産などの白ワインは、現地の食文化が織りなす調和を楽しめるでしょう。 また、軽やかな口当たりの赤ワインも、チーズの脂肪分をまろやかに包み込みます。意外な組み合わせとして、純米酒もおすすめです。日本酒の旨みが、和の食材と合わせたラクレットに深みを与えます。
絶品食材の組み合わせ
- ジャガイモ:茹でたり蒸したりしたアツアツのジャガイモは定番です。
- ピクルス:爽やかな酸味を持つコルニッションなどは、チーズの濃厚さを引き締めます。
- 加工肉:ハム、ベーコン、ソーセージをグリルで香ばしく焼くと、風味が一層豊かになります。
- 彩り野菜:ブロッコリー、アスパラガス、パプリカ、きのこ類は、それぞれの甘みと食感がチーズとのコントラストを生みます。
- パン:バゲットやライ麦パンに温かいチーズをたっぷりと絡めて味わうのも贅沢な一品です。
ラクレットチーズの鮮度を保つ保存術
ラクレットチーズの芳醇な風味ととろけるような食感を長く楽しむためには、適切な保存方法が鍵となります。
冷蔵保存のポイント
未開封のラクレットチーズは、その品質を保つため、購入時のパッケージや食品用ラップフィルムでしっかりと包み、冷蔵庫の中でも特に湿度が高めの野菜室などで保管するのが最適です。乾燥を防ぐため、ラップやアルミホイルで空気に触れないよう密着させることが肝心です。専用のチーズ保存容器を活用するのも良い方法でしょう。賞味期限は購入時に確認し、鮮度が良いうちに味わうことをお勧めします。
一度開封したチーズは、付属の包装紙やクッキングシート、または新しいチーズ用ラップで切り口をぴったりと覆い、空気に触れないようにしてから冷蔵庫へ。ウォッシュチーズ特有の豊かな香りが他の食品に移るのを避けるため、密閉できる容器に入れるとより安心して保存できます。
冷凍保存(加熱調理向け)
ラクレットチーズは、加熱して召し上がる予定であれば冷凍保存も可能です。未開封の状態であればそのまま、開封済みのものであれば、まず購入時の包装紙やオーブンシートなどでチーズの表面をしっかり覆い、さらにその上からラップで二重に包んでから冷凍庫へ入れてください。この方法で、より長期間の保存が可能になります。
召し上がる際は、急激な温度変化を避けるため、冷蔵庫に移して時間をかけてゆっくりと自然解凍してください。急いで解凍すると、チーズの組織が損なわれ、本来の滑らかな食感が失われる可能性があります。また、一度解凍したチーズは再冷凍すると品質が落ちるため、必要な量だけを取り出して解凍し、解凍後は速やかに使い切ることをお勧めします。
ラクレットチーズを主役にした簡単レシピ3選
とろけるラクレットチーズは、いつもの食卓を贅沢なレストランの味わいへと変貌させます。ご自宅で手軽に楽しめる、ラクレットチーズを使った美味しくてシンプルなレシピを3つご紹介しましょう。ぜひ、日々の献立の参考にしてみてください。
1. 定番の味わい!温野菜とソーセージのラクレットプレート
ホクホクに蒸し上げたじゃがいもやブロッコリーに、溶かしたチーズをたっぷりとかける、まさに王道の一品です。
【材料:2人分】
- ラクレットチーズ:100g(スライスされたもの)
- じゃがいも:2個
- ブロッコリー:1/2株
- ソーセージ:4本
【作り方】 じゃがいもとブロッコリーは食べやすい大きさにカットし、柔らかくなるまで蒸すか、電子レンジで加熱調理しておきます。ソーセージはフライパンで焼き色が付くまで炒めましょう。熱したフライパンにラクレットチーズを並べ、弱火でじっくりと溶かし始めます。チーズがとろけたら、用意した具材の上に滑らかに流し込むようにかけて、アツアツのうちにお召し上がりください。
2. カリカリバゲットのラクレットトースト
焼き立てのパンととろけるチーズの組み合わせは、まさに至福の味わいです。香ばしいバゲットに濃厚なラクレットが絡み合い、食欲をそそります。
【材料:2人分】
- ラクレットチーズ:60g
- バゲット:4枚
- 生ハム:2枚
- 黒胡椒:少々
【作り方】 バゲットをトースターで軽く焼き色がつくまで加熱します。その上にラクレットチーズを乗せ、チーズがぷくぷくと泡立ち、とろける直前まで再度トーストしてください。仕上げに生ハムを添え、お好みで黒胡椒を振れば、ワインにもぴったりの手軽な一品が完成します。
3. 厚切りベーコンとラクレットのグリル
食べ応えのある厚切りベーコンとラクレットチーズの組み合わせは、メインディッシュにもなる満足度の高い一皿。肉のジューシーな旨みとチーズのコクが絶妙にマッチします。
【材料:2人分】
- ラクレットチーズ:80g
- 厚切りベーコン:150g
- アスパラガス:2本
【作り方】 厚切りベーコンとアスパラガスをフライパンでこんがりと焼き色がつくまで加熱します。これらを耐熱皿に並べ、上からラクレットチーズをたっぷりと重ねてください。オーブントースターに入れ、チーズの表面が美味しそうな黄金色になるまで数分間焼けば出来上がりです。
美味しく仕上げるためのヒント
ラクレットチーズを最大限に楽しむためのいくつかのポイントをご紹介します。チーズは冷めるとすぐに硬くなる性質があるため、熱々の状態で提供し、すぐに食べ始めるのが美味しさを保つ秘訣です。また、フライパンでチーズを溶かす際は、ノンスティック加工(フッ素樹脂加工)のフライパンを使用すると、チーズが焦げ付きにくく、具材へ滑らかに流し込むことができます。これにより、後片付けも楽になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、奥深いラクレットチーズの世界を多角的にご紹介しました。この記事では、ラクレットチーズの基本的な特徴から、原産地スイスのAOP認証、似て非なるチーズフォンデュとの違い、そしてより美味しく味わうためのポイント、適切な保存方法、さらにご家庭で簡単に楽しめるレシピまで、幅広く掘り下げてきました。
そのままでも十分美味しいラクレットチーズですが、やはり「熱々とろける状態を具材にかける」食べ方こそが、その真骨頂と言えるでしょう。これまでに触れた様々な溶かし方や、相性の良い食材、おすすめのドリンクなどを参考に、ぜひご家族や親しいご友人を招いて、ラクレットを囲むパーティーを開催してみてはいかがでしょうか。温かいチーズが食卓の中心にある時間は、きっと皆様にとって忘れられない、心温まる素敵な思い出となるはずです。
ラクレットチーズとはどのようなチーズですか?
ラクレットチーズは、スイスやフランスのアルプスの山々で生まれた、とろけるような口どけが魅力の半硬質チーズです。その名はフランス語の「ラクレ(削り取る)」に由来しており、溶かしたチーズを皿に盛られた具材の上に削りかける伝統的な食べ方から来ています。専用のヒーターやオーブンで温められ、熱々になったチーズがじゃがいも、パン、ハム、ピクルスなどの上にたっぷりとかけられることで、芳醇な香りとクリーミーな味わいが一層引き立ちます。
「アルプスの少女ハイジ」に登場するチーズは本当にラクレットチーズですか?
多くの方が連想される通り、アニメ「アルプスの少女ハイジ」に描かれている、暖炉の火で温められとろりと溶け出したチーズをパンにかけるシーンは、まさにラクレットチーズの伝統的な食べ方を象徴しています。この心温まる描写は、日本においてラクレットチーズの知名度を飛躍的に高め、多くの人々にその魅力を伝えました。
ラクレットチーズとチーズフォンデュの違いは何ですか?
ラクレットとチーズフォンデュは、どちらも温かいチーズを楽しむ料理ですが、その調理と提供のスタイルにおいて明確な差があります。ラクレットは、熱したチーズを直接じゃがいもや野菜、肉などの具材に「流し込む」ようにして食べるのが特徴です。一方、チーズフォンデュは、鍋で溶かした特製のチーズソースに、パンや野菜などを串で刺して「浸して」食べるスタイルです。ラクレットが比較的パーソナルな楽しみ方ができるのに対し、フォンデュは皆で鍋を囲み、共有する喜びがあります。
ラクレットチーズはどのように選べば良いですか?
美味しいラクレットチーズに出会うためには、信頼できる生産者やブランドのものを選ぶことが重要です。チーズの表皮は均一な色合いで、不自然なカビや変色がないかを確認しましょう。合わせる食材や好みに応じて熟成度合いを選ぶのがおすすめです。マイルドで食べやすい味わいを求めるなら熟成の若いものを、より深みとコクが増し、芳醇な香りが楽しめるものを好むなら熟成期間の長いタイプが良いでしょう。もし可能であれば、購入前に試食して、その風味と香りを確かめてから選ぶのが確実です。
ラクレットチーズの最適な保存方法を教えてください。
一度開封したラクレットチーズは、品質を保つため適切な保存が重要です。残ったチーズは、乾燥や風味の劣化を防ぐため、食品用ラップやワックスペーパーで隙間なくしっかりと包み、冷蔵庫で保管しましょう。ウォッシュチーズ特有の豊かな香りが他の食材へ移るのを防ぐため、密閉できる容器に入れるとより安心です。もし長期間保存したい場合や、後日加熱して使う予定がある場合は、食べる分量ごとに小分けにしてラップで包み、冷凍庫で保存することもできます。ただし、一度解凍してしまったチーズを再び凍らせるのは品質が損なわれるため避けてください。
ラクレットチーズに合うお酒はどんなものがありますか?
ラクレットチーズの奥深く濃厚な風味には、相性の良い飲み物を選ぶことで、一層その魅力を引き出すことができます。特に辛口の白ワインは定番で、スイスやアルザス地方のワインは、チーズのコクと酸味が絶妙に調和し、最高の組み合わせとなるでしょう。また、意外な選択肢として、軽めのボディの赤ワインや、米の旨みが感じられる純米酒なども、独特のマリアージュを生み出します。合わせる具材によっても風味の印象が変わるため、ぜひ色々なお酒とのペアリングを試してみてください。
ラクレットチーズは皮も食べられますか?
多くの方が疑問に思われるラクレットチーズの皮ですが、基本的に召し上がっていただいて問題ありません。ウォッシュチーズならではの個性的な香りが特徴的ですが、加熱することで香ばしさが際立ち、チーズ本来の深い旨みと一体となってより豊かな風味を味わえます。もし、香りが強すぎると感じる場合や、食感が苦手な場合は、無理に食べる必要はなく、薄く削ぎ落としてからお召し上がりください。

