ほうじ茶と緑茶、その本質的な違いを深掘り解説|製法・茶葉・成分・効能で紐解く両者の魅力
スイーツモニター
私たちの暮らしに深く親しまれている緑茶とほうじ茶。お店や家庭で日常的に触れる機会が多いこれらのお茶ですが、その色、香り、味わいはそれぞれ独自の個性を持っています。同じ「お茶」という括りでありながら、両者の違いについて深く考えたことはあるでしょうか。実は、ほうじ茶は緑茶をルーツとしながらも、使われる茶葉、製造工程、そして含まれる成分において、はっきりとした相違点が存在します。近年では、その香ばしさと心落ち着く効果から、ほうじ茶ラテやスイーツなど、多種多様な関連商品が生まれ、カフェでも抹茶と並ぶ人気メニューとして定着しています。今回は、これらの主要な違いに加え、ほうじ茶特有の魅力や様々な楽しみ方まで詳細に掘り下げ、緑茶とほうじ茶の本質的な隔たりと、それぞれが持つ奥深い魅力を紐解いていきます。

違い①:原料茶葉の性質と収穫のタイミング

ほうじ茶は緑茶を起源とするため、言うまでもなくチャノキの葉を原料としています。しかし、その茶葉の性質や収穫のタイミングには明確な相違点が見られます。
私たちが普段から愛飲する緑茶には、代表格である煎茶のほか、高級茶として知られる玉露、茶道で供される抹茶など、多岐にわたる種類が存在します。これらの緑茶の多くは、早いものでは5月上旬から遅くとも7月頃までに芽吹いたばかりの若い新芽を摘採し、直ちに蒸す工程を経て製造されます。この若い茶葉からは、たっぷりと凝縮された旨み成分が引き出され、清々しい香りと風味が際立っています。
一方、ほうじ茶の主要な原料となるのは、一般的に「番茶」と呼ばれるものです。番茶は、玉露や煎茶の原料となる新芽の摘採が終了した夏から秋にかけて収穫される、成長しきって硬くなった茶葉を用いて作られます。収穫時期が遅いことから、若い芽に比べて旨み成分のアミノ酸や渋み成分のカテキンの含有量が抑えられており、すっきりとした口当たりが持ち味です。

違い②:製造工程

緑茶とほうじ茶を分ける最も顕著な相違点は、製造工程における「焙煎」の有無に集約されます。
緑茶の製造では、摘み取ったばかりの生葉を直ちに蒸す工程によって、茶葉本来の鮮やかな緑色を保ちながら、清涼感のある香り、奥深い旨み、そして程よい渋みといった、本来の持ち味を最大限に引き出すことを目的としています。

「焙煎」がほうじ茶の個性を生む

対照的に、ほうじ茶は、一度緑茶(番茶)として加工された茶葉を、さらに高熱で時間をかけてじっくりと焙煎することで製造されます。ここで言う「焙煎(ほうじ)」とは、茶葉をじっくりと炒る加熱処理を意味します。緑茶がその名の通り鮮やかな緑色を保持する一方で、ほうじ茶が独特の茶褐色を帯びるのは、この焙煎工程で茶葉が香ばしく炒り上げられるためです。まさにこの焙煎工程こそが、ほうじ茶を他の緑茶から明確に区別する最も重要なプロセスと言えるでしょう。元来は緑色だった番茶の茶葉は、焙煎を経ることで魅力的な茶色へと姿を変え、ほうじ茶ならではの芳醇な香ばしさを生み出します。この特有の香りの源は、茶葉内のアミノ酸や糖類が熱分解によって化学反応を起こし生成される、ピラジンやフラン類などの揮発性成分です。

家庭で楽しめるほうじ茶の歴史と製法の原点

ほうじ茶の焙煎は、実は古くから日本の家庭で日常的に行われてきました。昭和の時代には、多くの家庭に「焙烙(ほうろく)」と呼ばれる小さな素焼きの鍋やフライパンに似た道具があり、新鮮さを失った緑茶、具体的には煎茶や番茶などを自家焙煎して楽しむ習慣があったと伝えられています。これが、私たちが今日知る香ばしいほうじ茶の起源の一つとも言われています。専門的な技術がなくても、こうした焙煎の道具、あるいは身近なフライパンなどがあれば、家庭で手軽に作れる点が、ほうじ茶が人々に親しまれてきた理由なのです。

違い③:栄養成分と味わい、健康効果

ほうじ茶の大きな特徴である焙煎工程は、その風味、含まれる成分、そして体への働きかけにまで、顕著な影響を与えます。

焙煎がもたらす味わいの変化

焙煎によって、緑茶に含まれる渋み成分であるカテキンが熱で分解されるため、ほうじ茶は渋みや苦味が大幅に抑えられ、非常にまろやかで優しい口当たりになります。この独特の風味は、一般的な煎茶の苦味が苦手な方にとっても、飲みやすい魅力的なポイントと言えるでしょう。

ほうじ茶特有の香り成分「ピラジン」とその魅力

お茶の種類によって、その香りを構成する成分は大きく異なります。例えば、緑茶の一種である煎茶からは、青々とした若葉を思わせる「青葉アルコール」の清々しい香りが立ち上り、最高級とされる玉露や抹茶の原料となる碾茶(てんちゃ)には、海苔のような独特の旨味を伴う「ジメチルサルファイド」が多く含まれています。
これに対し、ほうじ茶の代名詞とも言える香ばしさは、「ピラジン」という成分が主役です。このピラジンには、気分を落ち着かせると言われるリラックス効果や、温かさを感じる作用があるとされています。ピラジンは、コーヒーやココア、麦茶といった飲料だけでなく、熟成させた肉やエビ、焼いたジャガイモなど、様々な食品にも含まれる一般的な香り成分です。その心地よい香りは、安らぎの時間をもたらしてくれるでしょう。欧米では香料として広く用いられ、バニラエッセンスのように日常的に活用されるほどです。ほうじ茶を飲む際に私たちが感じる心地よさや安らぎは、このピラジンの働きによるものかもしれません。

カフェイン含有量の特徴と安心感

ほうじ茶は、加熱処理によってカフェインの一部が昇華するため、通常の煎茶に比べカフェイン量がやや控えめになります。お茶に含まれるカフェインは熱に弱い性質を持っており、煎茶を焙煎する過程でその大部分が蒸散します。この特性から、ほうじ茶はカフェインがごく微量しか含まれない飲み物として広く認識されています。加えて、元々カフェイン含有量が少ない番茶や茎茶を原料とすることも多いため、その低カフェインという特徴は一層強調されます。このことから、就寝前のリラックスタイムなど、夜間でも比較的安心して楽しめると感じる方も少なくないでしょう。しかし、もし非常に濃く淹れてしまった場合、一般的な煎茶と同程度のカフェインが抽出される可能性もゼロではないため、その点には留意が必要です。カフェイン量が少ないため、寝る前の穏やかなひとときや、お子様とご一緒に楽しむ飲料としても理想的な選択肢となります。妊婦さんやお子様をはじめ、カフェインの摂取を控えたいと考えている方々にとって、特におすすめできるお茶の一つと言えるでしょう。

その他の栄養成分の変化

一方、煎茶といった緑茶に豊富に含まれるビタミンCやビタミンKは、焙煎工程における熱によって分解されやすいため、ほうじ茶ではこれらのビタミン類の含有量が減少する傾向が見られます。

美味しい淹れ方のポイント

各々のお茶が持つ本来の風味を最大限に引き出すためには、その淹れ方にもいくつかの大切なポイントが存在します。

緑茶の美味しい淹れ方

緑茶は銘柄や種類によって最適な湯温は異なりますが、一般的には湯冷ましをして少し温度を下げたお湯(およそ70~80℃)で淹れると、旨味と渋味がほどよく調和し、口当たりの良いまろやかな風味を堪能できます。

ほうじ茶の美味しい淹れ方と持ち運びの利便性

香ばしいほうじ茶の風味を存分に引き出すには、沸騰したてのお湯で淹れるのが最適です。熱湯を注ぎ、約30秒間蒸らすことで、ほうじ茶ならではの豊かな香りが立ち上ります。さらに、ほうじ茶の大きな魅力の一つは、その淹れ方の自由度の高さにあります。熱いお湯で淹れても、80℃程度で淹れても、あるいは水出しにしても、安定して美味しい味わいを楽しむことができます。煎茶や玉露のように繊細な湯温管理が不要なため、誰でも気軽に、そして手軽にその風味を満喫できる点が大きな強みです。また、酸化による色合いの変化が少ないため、多めに淹れて水筒に入れ、外出先で楽しむ際にも非常に適しています。

ほうじ茶の種類と多様な楽しみ方

ほうじ茶は、使用する茶葉の部位によって多種多様な種類が存在し、飲むだけでなく様々な形でその魅力を味わうことができます。

主なほうじ茶の種類

最も広く親しまれているのは、一般的に番茶を焙煎したものです。通常「ほうじ茶」と呼称される場合、多くはこの番茶ベースのものを指します。
一方、茶葉から取り出した茎のみを焙煎して作られるのは「くきほうじ茶」と呼ばれ、しばしば高級ほうじ茶として市場に出回っています。茎部分だけを丁寧に焙じることで、通常のほうじ茶に比べて甘みが際立ち、すっきりとした口当たりが特徴です。石川県の「加賀棒茶」や、京都で親しまれている「かりがねほうじ茶」も、このくきほうじ茶の一種として広く知られています。その上品な味わいは、特に多くの方々から支持を得ています。

広がるほうじ茶の用途:飲むだけではない多様な魅力

さらに、ほうじ茶はそのままで飲むだけでなく、加工して製菓用パウダーとしても幅広く利用されています。ほうじ茶の独特な香ばしさを活かしたラテやアイスクリーム、プリン、ゼリー、パンケーキなど、多彩なカフェメニューやご家庭でのレシピに取り入れられ、その風味が新たな食の楽しみを創造しています。

まとめ

このように、[ほうじ茶と緑茶]は、ともに日本で愛される飲み物ですが、その持ち味は大きく異なります。元を辿れば同じ茶葉から生まれるものの、「焙煎」という特別な工程を経ることで、見た目の色合いから香り、風味、さらには含まれる成分までが劇的に変化するのです。鮮やかな緑色で、爽やかな香りと奥深い旨味、そして心地よい渋みが持ち味の緑茶に対し、ほうじ茶は香ばしいアロマと口当たりのまろやかさが際立つ褐色のお茶です。緑茶に豊富なカテキン、そしてほうじ茶ならではの香ばしさの元となるピラジンなど、それぞれの成分や特性を理解することで、その日の気分やシーンに最適な一杯を選ぶ喜びがさらに深まることでしょう。加えて、カフェインが控えめなため、お子様や妊娠中の方でも安心して味わえるほか、実はご家庭でも手軽に楽しめる身近なお茶でもあります。ほうじ茶の奥深い世界を知ることで、あなたのお茶のある暮らしがより一層豊かなものになるはずです。

ほうじ茶と緑茶は同じ茶葉から作られるのですか?

はい、実は[ほうじ茶と緑茶]は、どちらも「チャノキ」という同じ植物の葉を原料としています。ほうじ茶は緑茶の一種として位置づけられ、主に番茶や茎茶といった緑茶の茶葉を高温で焙煎(加熱処理)することで生まれるお茶です。

ほうじ茶はなぜ茶色なのですか?

ほうじ茶特有の茶色は、緑茶の茶葉を高温でじっくりと焙煎する工程で生まれます。この加熱処理によって茶葉の色素が変化し、もともとの鮮やかな緑色から、香ばしさを象徴するあの特徴的な褐色へと変わるためです。

ほうじ茶の独特の香ばしい香りの正体は何ですか?

ほうじ茶ならではの心地よい香ばしさは、主に「ピラジン」という芳香成分に起因しています。このピラジンは、茶葉に含まれるアミノ酸や糖分が焙煎の際に加えられる熱によって化学的な変化を起こすことで生成されます。この香りの成分には、心を落ち着かせるリラックス効果や血行促進作用があることが広く知られています。

ほうじ茶にはカフェインが含まれていますか?妊婦や子供でも飲めますか?

ほうじ茶にもカフェインは含まれていますが、製造工程である焙煎によって熱が加えられる際に、カフェインの一部が揮発するため、一般的に緑茶と比べてカフェインの含有量が非常に少ない傾向にあります。さらに、カフェイン量がもともと少ない番茶や茎茶を原料とすることも多いため、よりカフェインの摂取を抑えることができます。そのため、夜のリラックスタイムや、カフェイン摂取を控えたい妊娠中の方、小さなお子様にも比較的安心しておすすめできるお茶です。

ほうじ茶は家でも作ることができますか?

はい、ご家庭でもほうじ茶を簡単に手作りすることが可能です。昭和の時代には「焙じ炉(ほうじろ)」という専用の道具が各家庭にあったほど、身近なものでした。例えば、少し鮮度が落ちてしまった煎茶や番茶を、フライパンなどで焦がさないようにじっくりと焙煎する(カラ炒りする)ことで、ご自宅でも淹れたての香ばしいほうじ茶を味わうことができます。

「くきほうじ茶」とはどんなほうじ茶ですか?

「くきほうじ茶」とは、茶葉ではなく、お茶の茎の部分だけを選りすぐって焙煎して作られるほうじ茶のことを指します。茎を焙じることで、通常のほうじ茶よりも甘みが際立ち、すっきりとした口当たりで上品な風味を楽しむことができます。石川県を代表する「加賀棒茶」や「かりがねほうじ茶」なども、このくきほうじ茶の一種として広く親しまれています。

ほうじ茶の美味しい淹れ方はありますか?

ほうじ茶特有の芳ばしい香りを最大限に引き出すには、沸騰したての熱いお湯で淹れるのが最適です。熱湯を注ぎ、約30秒間蒸らす時間を設けることで、深い香りが立ち上り、より豊かな味わいを堪能できます。また、ほうじ茶は淹れ方による味のブレが少ないという利点があり、高温で淹れるだけでなく、水出しでも美味しくお楽しみいただけます。酸化しにくい特性も持ち合わせているため、マイボトルに入れて職場や外出先に持っていくのにも非常に便利です。


ほうじ茶緑茶

スイーツビレッジ

関連記事