北海道の清涼な気候が育む神秘の果実「ハスカップ」は、古くからアイヌ民族によって「不老長寿の秘薬」として尊ばれてきました。その独特の鋭い酸味と深みのある甘みは、近年、国内外で健康志向の高まりとともに大きな注目を集めています。小粒ながらも鮮やかな青紫色の実には、驚くほど豊かな栄養素がぎゅっと凝縮されており、その類まれな健康効果への期待は日増しに高まっています。しかし、その繊細な性質と限られた生育環境のため、市場には滅多に出回らない「幻の果実」として知られています。
本稿では、ハスカップがどのようにして北海道に根付き、なぜ他の地域では育ちにくいのかという「北海道だけ」の理由を深掘りします。その起源や厳しい生育条件、他の果実とは一線を画す驚異的な栄養価、さらには北海道の生産者が直面する挑戦と未来に向けた取り組みに迫ります。また、しばしば混同されがちなブルーベリーとの明確な違い、ハスカップ本来の魅力を最大限に引き出す美味しい食べ方、そして「ハスカップの日」に込められた地元の人々の熱い思いまで、この魅力的なベリーのすべてを徹底的に解説します。
アイヌが愛した不老長寿の実「ハスカップ」の基礎知識
ハスカップは、遠い昔からアイヌ民族に「不老長寿の実」として語り継がれてきた、北海道を代表する特別な果実です。その呼び名はアイヌ語の「ハシカプ」に由来し、「枝にたくさん実がなるもの」という意味が込められています。かつては道内各地の原野に群生していましたが、現在では自生する場所は減少傾向にあります。この果実はスイカズラ科スイカズラ属に属する落葉低木が実らせるもので、強い酸味を持つ青紫色の小粒な実が、特徴的に二つ一組で付くのが大きな特徴です。
ハスカップが「北海道だけ」に深く根差した起源と独自の生育条件
ハスカップの故郷は遠くシベリアにあり、その種子が渡り鳥の飛来によって北海道の広大な原野へと運ばれてきたというのが、地元生産者の間で広く信じられている起源です。このような北方系の植物であるハスカップは、極めて特殊な生育条件を要求します。具体的には、冬の間に気温がマイナス20℃を下回るほどの厳しい寒さに晒され、その一方で夏は30℃を超える猛暑にならない、冷涼で適度な寒暖差のある気候が絶対条件となります。この厳しい環境こそがハスカップの生命力を育み、「なぜ北海道だけ」に深く根付かせた理由なのです。北海道の気候は、ハスカップ本来の生育地であるシベリアと酷似した低温環境であるため、その生育にこの上なく適しています。北海道以外でも、本州中部以北の高山地帯でわずかに見られますが、圧倒的な規模で自生・栽培されているのは北海道に他なりません。
このような極端な寒暖差がハスカップの生育に不可欠とされるのは、冬季の低温期に樹木が十分に休眠し、エネルギーを蓄えることで、翌年の高品質な果実の生成準備を整えるためです。また、夏の涼しさは果実の成熟を緩やかに促し、その独特の風味と類まれな栄養価を最大限に引き出す役割を担っています。地球温暖化が進む今日において、この理想的な生育条件を維持できる地域は世界的に見ても限られており、ハスカップの栽培がまさに北海道の恵まれた自然環境の賜物であることを物語っています。
「北海道だけ」の環境を支える、独特の土壌条件
ハスカップの生育が「北海道だけ」に特化している理由には、その地質も大きく影響しています。日本全国の湿地面積のおよそ8割を北海道が占めており、これらの湿地には、枯れた植物などの有機質が長年にわたり堆積して形成された「泥炭地」が広範囲に存在します。泥炭地は地盤が軟弱で、一般的な農作物の栽培には不向きとされ、北海道の開拓者たちは大規模な土地改良を余儀なくされてきました。
しかし、ハスカップは根を深く張らず、浅く広く伸ばす性質を持つため、このような泥炭地でも非常に良好に生育するというユニークな特性を持っています。実際、勇払原野をはじめ、釧路湿原や霧多布湿原といった北海道を代表する広大な湿地帯が、ハスカップの主要な自生地および栽培地となっています。この泥炭地への優れた適応能力も、ハスカップが「北海道だけ」の固有の果実として発展してきた極めて大きな要因の一つです。泥炭地が有する豊富な有機質は、ハスカップの生育に必要な微量栄養素を供給し、その独特の風味や抗酸化成分の形成にも寄与していると考えられています。
ハスカップが持つ驚くべき栄養価と健康への恩恵
「不老長寿の果実」とも称されるハスカップには、その呼び名にふさわしい非常に豊かな栄養成分が凝縮されています。特に、強力な抗酸化作用を持つポリフェノールの一種であるアントシアニンをはじめ、現代人が不足しがちな各種ミネラルやビタミン類が豊富に含有されており、その健康への貢献は多岐にわたります。本稿では、ハスカップに秘められた主要な栄養素と、それらがもたらす具体的な効果について詳細に解説します。
際立つポリフェノール「アントシアニン」の含有量
ハスカップの最も顕著な特徴の一つは、その独特の酸味と苦味の元となっているのが、優れた抗酸化力を持つポリフェノールの一種、アントシアニンである点です。このアントシアニンの含有量は、一般的に視力に良いとされるブルーベリーと比較しても群を抜いて高く、実にブルーベリーの3倍から10倍もの量が含まれていると言われています。この圧倒的な含有量こそが、ハスカップを「スーパーフルーツ」と位置づけるに足る理由の一つです。アントシアニンは、目の機能改善や眼精疲労の軽減に効果があるとされており、パソコンやスマートフォンの利用が日常的な現代人にとって、特に注目すべき栄養素と言えるでしょう。
さらに、アントシアニンはその強力な抗酸化作用によって、体内で発生する活性酸素を除去し、細胞の老化や損傷から守る効果が期待されます。これにより、生活習慣病の予防、美肌効果、免疫力の向上など、全身の健康維持に大きく寄与すると考えられています。ハスカップが持つ濃い青紫色の鮮やかな色素は、まさにこの強力な抗酸化成分の証であり、「不老長寿」と称される所以でもあります。
骨と歯の健康を支える「カルシウム」
ハスカップには、私たちの骨や歯を形成する上で欠かせないミネラルであるカルシウムが、他の果物と比較して非常に多く含まれています。例えば、日常的によく食べられるリンゴと比較すると、ハスカップのカルシウム含有量は驚くべきことに13倍にもなります。カルシウムは、骨や歯の健康維持だけでなく、神経伝達、筋肉の収縮、血液凝固など、様々な生命活動において重要な役割を担っています。
カルシウムが不足すると、骨が脆くなる骨粗鬆症や、骨が軟化する骨軟化症のリスクが高まります。特に成長期の子どもや、閉経後の女性はカルシウムの積極的な摂取が推奨されており、ハスカップは美味しく手軽にカルシウムを補給できる優れた食品と言えるでしょう。
貧血対策に有効な「鉄分」
血液中で酸素を運搬するヘモグロビンの中核をなす成分である鉄分も、ハスカップには豊富に含有されています。その含有量は、鉄分が多いとされるミカンと比較して6倍、またブルーベリーの約3倍に相当します。鉄分は、全身への酸素供給に不可欠であり、不足すると貧血を引き起こし、倦怠感、めまい、集中力の低下といった症状が現れることがあります。
特に女性は月経による鉄分の損失が大きく、貧血になりやすい傾向が見られます。日々の食生活にハスカップを取り入れることで、効率的に鉄分を補給し、健康的な身体を維持する一助となるでしょう。
優れた抗酸化力を持つ「ビタミンCとビタミンE」
ハスカップは、前述のアントシアニンに加えて、強力な抗酸化作用を持つビタミンCとビタミンEも豊富に含んでいます。細胞膜の酸化を抑制する働きで知られるビタミンEですが、その過程で自らも酸化されてしまいます。ここで不可欠な役割を果たすのがビタミンCです。ハスカップに存在するビタミンCは、働きを終え酸化したビタミンEを再生させ、再び抗酸化能力を取り戻させるという、極めて重要な役目を担っています。
このビタミンEとビタミンCが相乗的に作用することで、体内の抗酸化プロセスが格段に高まり、活性酸素による細胞へのダメージを効果的に食い止めます。体内の酸化は、生活習慣病、悪性腫瘍、動脈硬化、さらには肌の老化といった様々な健康問題の引き金となる可能性があるため、これらの抗酸化ビタミンをたっぷり含むハスカップは、健康維持と美容促進の両面から私たちの身体を強力に支える優れた果実と言えるでしょう。
このように、ハスカップは小さな一粒の中に、多岐にわたる栄養素が驚くほどバランス良く凝縮されています。その豊かな栄養価ゆえに、年齢や性別を問わず、誰もが積極的に日々の食生活に取り入れるべき理想的な果物です。
ハスカップとブルーベリー:外見、風味、流通における明確な相違点
青みがかった紫色の小さな果実と聞けば、多くの方が「ブルーベリー」を思い描くことでしょう。ブルーベリーも栄養価が高く、健康に良い果物として広く知られていますが、ハスカップとは見た目、味わい、そして市場での流通方法において全く異なる特徴を持っています。これらの違いを深く理解することで、ハスカップ独自の魅力がより一層浮き彫りになります。
外見上の違い
まず、両者の外見にははっきりとした違いが見られます。一般的にブルーベリーが小粒で丸みを帯びた球形をしているのに対し、ハスカップは細長い楕円形をしています。さらに、ハスカップの果皮はブルーベリーと比較して非常に薄く繊細なため、その儚さが見た目からも伝わってきます。果実の表面には、ブルーベリーと同様にブルームと呼ばれる白い粉がうっすらと付着しており、これは新鮮であることの証とされています。
風味の特徴
味わいについても、両者には顕著な差異があります。ブルーベリーが一般的に穏やかな甘みと控えめな酸味が調和した風味が特徴である一方、ハスカップは甘みよりも、鮮烈でパンチのある酸味が際立っています。加えて、ハスカップは果皮が非常に薄く、水分を豊富に含んでいるため、口に含んだ瞬間にその生き生きとした酸味と独特の香りが口いっぱいに広がるのが特徴です。この野性味あふれる風味は、一度体験すると忘れられない個性として、多くの人々を惹きつけてやみません。
流通の課題
ハスカップがブルーベリーほど一般的に流通しない背景には、そのユニークな特性が深く関わっています。この果実は極めて柔らかな果肉を持ち、わずかな衝撃でも容易に傷んでしまうデリケートな性質があります。そのため、収穫後の取り扱いが非常に神経質になり、長距離輸送や大量出荷には不向きとされています。これが、新鮮なハスカップが都市部の店頭に並ぶ機会が限られている主な理由です。
こうした輸送・保管上の難しさから、生食されることが多いブルーベリーとは異なり、ハスカップはその際立つ酸味と豊富な栄養価を活かし、ジャムやゼリー、ジュース、スイーツなどの加工品として市場に出回ることが主流となっています。加工することで長期保存が可能となり、より多くの人々が一年を通じてハスカップの魅力を味わえるようになっています。
産地の個性が現れる、ハスカップ栽培の現場

ハスカップは、栽培される土地の水分や土壌の質に強く影響を受け、その産地ならではの独特な個性を表す興味深い果実です。北海道の雄大な自然の中で、生産者たちはハスカップ本来の風味を最大限に引き出すため、日々の努力を惜しみません。ここでは、その栽培風景と、生産者の情熱に迫ります。
ときいろファームの取り組み
7月の半ば、日高山脈を望む帯広市岩内町に位置する「ときいろファーム」を訪れました。帯広市では大規模で機械化された農業が主流ですが、ときいろファームではラズベリーやブルーベリー、そしてハスカップといった小果樹を、一つ一つ丁寧に育てています。ときいろファームの農園は、ハスカップが持つ野性味あふれる生命力を最大限に引き出すため、自然に近い状態での栽培を追求しています。
農園を営む鴇崎伊吹さんは、長野県のご出身ですが、結婚後にヨーロッパを巡り、その後北海道へ移住して2010年に就農しました。就農して2年目からハスカップの本格的な栽培に取り組み始め、現在では約2.5ヘクタールの広さでハスカップを育てています。彼の農園では、有機JAS規格に則り、無農薬・無化学肥料での栽培を徹底しています。鴇崎さんは「化学肥料の全てを否定するわけではありませんが、自然に近い環境こそがハスカップの真の美味しさを引き出すと信じています」と語ります。このように、生産者の理念や栽培へのこだわりが、ハスカップの味わいに深く反映されるのが特徴です。
ハスカップの成長サイクルと収穫
ハスカップは、高さ1~2mほどに成長する落葉低木で、地面から直接力強く枝を伸ばしていく特徴があります。その生育サイクルは、春の息吹から夏の収穫に至るまで、北海道の季節の移ろいを色濃く映し出しています。
開花期:5月中旬から6月中旬
5月中旬から6月中旬にかけて、筒状の愛らしい白い花が二つずつ寄り添うように咲き始めます。この時期の農園は、淡い黄色の花々が咲き乱れ、優しい香りに包まれます。花は小さく控えめながらも、それが豊かな実りの始まりを告げる大切なサインとなります。
結実と成熟:7月上旬
やがて花の根元には黄緑色の小さな果実がつき、成熟が進むにつれて徐々に深い青黒色へと変化していきます。そして、7月上旬には収穫の時を迎え、枝いっぱいに鈴なりになった青黒い実が揺れる光景が見られます。私たちが農園を訪れた日はちょうど収穫が最盛期で、スタッフの方々が一つ一つ丁寧に手作業で果実を摘み取っていました。
手摘みによるデリケートな収穫作業
鴇崎さんは「ラズベリーほどではありませんが、ハスカップも非常に傷つきやすく、傷みやすい果実です。そのため機械による収穫は極めて難しく、人の手による作業が不可欠なのです」と話します。一つ一つの実が持つ繊細な性質が、大量生産を困難にし、その希少価値を高めている要因でもあります。手作業による丁寧な収穫こそが、ハスカップの品質を守り、消費者のもとへ届ける上で欠かせない工程なのです。
土壌と水が育む「土地の味」
鴇崎氏は、ハスカップの奥深い魅力についてこう語ります。「ハスカップは、その土地固有の水源や肥沃な土壌から深い影響を受ける特性があります。興味深いことに、同じ農園内であっても、わずかな立地の違いで風味が変化することも珍しくありません。これは、生産者の哲学や丹精込めた努力、そして北海道ならではの気候や地質が織りなす独自の『テロワール』(土壌や気候などの自然条件が農産物に与える特性)が、直接的に果実の味わいに反映される証拠です」。
ときいろファームでは、一般のお客様向けにハスカップの収穫体験も提供しています。農園に足を運び、自らの手で新鮮なハスカップを摘み取り、その場で味わう体験は、北海道でしか味わえない格別の時間です。生果実での入手が困難な本州や離島の方々には、鴇崎氏はハスカップを加工したジャムやソースの利用を推奨しています。その独特の風味が、ヨーグルトやアイスクリームといった乳製品と非常に好相性だと言います。このように、生産者の情熱と、北海道の大地がもたらす恵みが一体となり、他にはないハスカップ特有の風味を創造しているのです。
時代をつなぐ生産者たちの挑戦と「ハスカップの日」
古くから北海道に息づいてきたハスカップですが、その持続的な栽培と全国への安定的な流通には、依然として大きな課題が横たわっています。しかし、これらの難題に果敢に挑み、ハスカップの比類ない魅力を全国へと発信しようとする生産者たちの情熱こそが、次世代への道を切り拓いています。さらに、この稀少な果実の認知度向上と普及促進のため、「ハスカップの日」も制定され、その価値が改めて見直されています。
収穫後の全国行脚と加工品の魅力
夏の収穫期が一段落すると、ときいろファームの代表である鴇崎伊吹氏の全国を巡る旅が始まります。この行脚の主眼は、ハスカップを含む北海道産のベリー類を使用したスムージー、冷凍ベリー、そしてジャムやジュースといった多彩な加工品の販売にあります。特製のスムージーは、ハスカップを主とするベリー類、てんさい糖、水という極めてシンプルな材料で調製され、素材が持つ本来の風味を最大限に活かすことに徹底したこだわりが見られます。
鴇崎氏は「9月、10月、11月は、北海道内はもちろん、東京、奈良、横浜など、全国各地を奔走します。これはハスカップという果実をより多くの方に知っていただくための、大切な機会でもあるのです」と語ります。全国各地を飛び回るその活動は決して容易ではありません。しかし、「お客様の笑顔に接することが何よりも喜びです」と語る彼の言葉からは、ハスカップに対する深い愛情と、その唯一無二の魅力を広く届けたいという強い使命感がひしひしと伝わってきます。
生鮮ハスカップの繊細な性質から、全国規模での流通には限界があります。しかし、加工品として多様な形で提供することで、遠隔地の人々にも北海道ならではのハスカップの美味しさを届ける道が開かれているのです。加工品は、ハスカップが持つ鮮烈な酸味や豊かな栄養価を損なうことなく、長期保存を可能にし、年間を通してその風味を楽しめる点が大きな魅力です。
ハスカップ栽培が直面する課題と未来への展望
しかし、情熱的な生産者の努力が続く一方で、ハスカップ栽培全体が抱える構造的な課題も看過できません。北海道におけるハスカップの栽培面積は、1991年のピーク時を境に減少の一途をたどり、2003年にはその約半分にまで激減しました。この背景には、生産量の急増に伴う需給バランスの崩壊と、それに続くハスカップの市場単価の著しい下落がありました。結果として、採算性の悪化から多くの農家がハスカップ栽培からの撤退を余儀なくされたのです。
その影響は、現在のハスカップの安定供給体制にも及び、市場に十分な量を継続的に提供できていないのが実情です。この厳しい現状に対し、鴇崎氏は自身の見解をこう述べています。「個々の小規模農家が単独でトン単位もの供給量を維持することは極めて困難です。これからの時代は、生産者同士の連携強化が不可欠であると強く感じています」。
幸いにも、近年ではそうした協調の動きが具体化しつつある兆候が見られると言います。生産者間での情報交換の活発化、共同での販路開拓、そして革新的な加工技術の開発など、多角的な協力体制の構築が進められています。鴇崎氏は「今こそが、ハスカップ生産者にとって、その未来を決定づける重要な時期である」と、現状への危機感と同時に、明るい展望への期待を表明しています。北海道の地に深く根ざしてきたハスカップは、まさに新たな局面を迎えています。その持続可能な未来は、ときいろファームのような先進的な生産者たちの絶え間ない挑戦と、地域全体での強固な連携にかかっていると言えるでしょう。
7月7日は「ハスカップの日」として制定
ハスカップが持つ独特の魅力をより多くの人々に届け、その美味しさを広めることを願って、2021年4月30日、日本記念日協会により「ハスカップの日」が正式に登録されました。この記念日の制定は、北海道を代表する美唄市農業協同組合と、とまこまい広域農業協同組合 厚真町ハスカップ部会、そしてハスカップ協会が共同で申請し、実現したものです。
なぜ「ハスカップの日」が7月7日と定められたのかには、心温まる理由があります。ハスカップは、二つの花から一つの実を結ぶという珍しい特性から、「愛の契り」というロマンチックな花言葉を持っています。この特性が、七夕の日に遠く離れた織姫と彦星が年に一度だけ出会う物語と重なり、「離れていても結ばれる」という願いが込められました。また、北海道内で作付面積日本一を誇る厚真町と、生産量日本一を誇る美唄市が、この記念日制定に大きく貢献していることも忘れてはなりません。皆様もぜひ、7月7日の「ハスカップの日」には、ハスカップのスイーツを味わいながら、夜空の星々に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
ハスカップの最盛期、選び方、そして愉しみ方
ハスカップの奥深い魅力を存分に堪能するためには、その収穫期、新鮮な実を見分ける確かな目利き、そして最も美味しい食べ方を知ることが肝心です。ここでは、ハスカップをより深く理解し、味わい尽くすための情報をお届けします。
最適な収穫時期
ハスカップが最も美味しくなる最盛期は、例年7月上旬から8月上旬にかけて訪れます。この時期、北海道の大地で丹精込めて育てられたハスカップは、いよいよ収穫の時を迎えます。一つ一つ手作業で摘み取られることが多いため、この期間こそが、採れたての生のハスカップを口にする絶好のチャンスです。旬のハスカップは、その鮮烈な酸味、ほのかな甘み、そして特有の苦味が絶妙なバランスで調和し、その時期ならではの格別な風味を提供してくれます。
新鮮な実の見分け方
新鮮で高品質なハスカップを選ぶには、いくつかのポイントがあります。まず、実がふっくらと丸みを帯び、ハリがあるものを選びましょう。果皮の色は、深く濃い青黒色に熟しているものが理想的です。まだ赤みが残る実は未熟である可能性が高く、酸味が強く感じられることがあります。
さらに、果実の表面に白い粉状の物質(ブルーム)が付着しているものは、鮮度が非常に良い証拠です。このブルームは、ハスカップが自らを保護するために自然に生成する天然のワックスのようなもので、摘みたての実によく見られます。また、表面に傷がなく、潰れていない、形が整ったものを選ぶことも大切です。
美味しい食べ方と加工品の魅力
摘みたてのハスカップは、そのまま口にしても格別ですが、その持ち味であるシャープな酸味とほのかな苦みが、初めての方には意外に感じられるかもしれません。シンプルに冷やしていただくほか、ヨーグルトやアイスクリームに添えることで、乳製品のコクが酸味を包み込み、一層まろやかな味わいになります。収穫したばかりで食べきれない分は、冷凍庫での保存が最適です。凍らせたハスカップは、まるで天然のシャーベットのように口の中で溶け、暑い季節にぴったりの爽やかな一品となります。
ハスカップは、その傷みやすい性質と特有の強い酸味から、古くから幅広い加工品へと姿を変えてきました。ジャムやジュース、ゼリー、コンポート、シロップといった形にすることで、ハスカップならではの豊かな風味を季節を問わず満喫できます。これらの加工品は、朝食のパンやデザートのヨーグルトに添えるのはもちろん、意外にも肉料理や魚料理のソースとしても活躍し、食卓に深みと華やかな彩りをもたらします。特に北海道では、ハスカップを用いたワインやリキュールといった大人向けの製品も開発されており、その利用範囲は実に広範です。
ハスカップを使った多彩な加工品と人気のスイーツ
ハスカップは、その薄く傷みやすい果皮と特有の酸味のため、生のまま市場に出回ることは稀ですが、加工品としては驚くほど多様な製品に姿を変えています。その宝石のような深い色合いと、口当たりの良い爽やかな酸味は、数多くのスイーツや食品の味わいを一層引き立て、北海道を代表するお土産品としてもゆるぎない地位を築いています。
北海道土産としても人気のハスカップスイーツ
北海道各地の菓子工房では、ハスカップが持つ唯一無二の魅力を最大限に引き出した、個性豊かなスイーツが日々誕生しています。その中でも特に、「もりもと」はハスカップを用いた菓子づくりにおいて、全国的な知名度を誇るブランドです。ここでは、同社が手掛ける人気の代表銘菓についてご紹介しましょう。
北のちいさなケーキ ハスカップジュエリー
「もりもと」の顔とも称される、不動の人気を誇る銘菓が「北のちいさなケーキ ハスカップジュエリー」です。甘酸っぱく煮詰めたハスカップジャムを、香ばしい薄焼きクッキーととろけるようなバタークリームで丁寧に挟み込み、さらに周囲をチョコレートで優雅にコーティングした、まさに贅沢な逸品です。口に入れた瞬間に広がるハスカップの華やかな香りと、クッキー、クリーム、チョコレートが織りなす繊細な味わいの重なりが、数えきれないほどの人々を虜にしています。季節限定品を含め、多彩なフレーバーが展開されており、選ぶ喜びもまた格別です。
太陽いっぱいのハスカップゼリー
もりもとが誇る「太陽いっぱいのゼリー」コレクションの中でも、ハスカップの風味を凝縮したこのゼリーは、その爽やかな魅力で多くのファンを魅了しています。口に含むと、ハスカップ特有の甘酸っぱさがふわりと広がり、なめらかな舌触りとともにすっと消えていくような繊細さが特徴です。後味は驚くほどすっきりとしており、暑い日にはもちろん、食後のデザートとしても最適です。常温でもそのままでも美味しくいただけますが、冷やして清涼感を味わったり、冷凍してフローズンデザートとして楽しんだりするのも一興です。
雪鶴
北海道千歳市で長年にわたり愛され続けている伝統銘菓「雪鶴」は、ふんわりと軽い食感のブッセ生地で、風味豊かなクリームを挟んだ逸品です。この定番商品には、北海道の恵みであるハスカップの持ち味を活かした特別なフレーバーも登場しています。キレのある爽やかなハスカップクリームと、ほどよい塩味がアクセントのチーズ入りバタークリームの組み合わせは、その絶妙なハーモニーで多くの支持を集めています。ご自宅でのティータイムから、大切な方への心のこもった贈り物まで、幅広いシーンで喜ばれることでしょう。
北の散歩道(ハスカップ)
北海道のお土産としても大変好評な、持ち運びに便利なチョコレートクッキー「北の散歩道」にも、ハスカップの美味しさが光る一品があります。特製のハスカップコンフィチュールとチョコレートを香ばしいクッキー生地で優しく包み込みました。一口噛みしめると、ハスカップの甘酸っぱさがチョコレートのコクと見事に調和し、豊かな風味が口いっぱいに広がります。2023年春からは、従来の8枚入りに加え、手軽な3枚入りパッケージも加わり、ちょっとしたおやつや、個別に配る際のお土産としても、より選びやすくなりました。
ハスカップジャム
ハスカップが持つ本来の豊かな風味を、ストレートに堪能できるのが、もりもとの「ハスカップジャム」です。一粒ずつ丁寧に摘み取られたハスカップの実を、じっくりと時間をかけて丁寧に煮詰めることで、素材そのものが持つ凝縮された味わいを最大限に引き出しています。余分な甘さを抑え、ハスカップ本来のすっきりとした甘酸っぱさが特徴で、トーストやヨーグルトにはもちろん、様々なお菓子作りの隠し味としても重宝します。特にもりもと自慢の食パンとの相性は格別です。
くちどけメルシーショコラ
もりもと創業70周年を祝い開発された「くちどけメルシーショコラ」は、長年の洋菓子作りの知見と技術が結集された、特別な冷凍ケーキです。二層に重ねられた芳醇なチョコレートケーキの内部には、甘く煮詰めたハスカップが秘められ、その爽やかな酸味がチョコレートの奥深い甘さと見事なハーモニーを生み出しています。冷凍ならではの舌の上で溶けていくようななめらかな口当たりは、まさに「もりもとがこれまでになかった口どけ」と称されています。お好みの厚さにカットして、一人で贅沢なひとときを過ごすも、大切な方々と分かち合うも、あらゆる場面で心を満たす逸品となるでしょう。
まとめ
北海道特有の広大な大地と厳しい寒暖差の中で育まれる「ハスカップ」は、古来よりアイヌ民族に「神秘の不老長寿の実」として崇められ、現代においてもその稀有な価値が改めて注目されています。この小さな青紫色の果実は、目に鮮やかな酸味と独特の風味を併せ持ち、驚くべき量の栄養素を含んでいます。特にアントシアニンはブルーベリーを大幅に上回り、その他にもカルシウム、鉄分、ビタミンC、ビタミンEといった多彩な成分が豊富に凝縮されています。非常に繊細な性質を持つため、生のまま市場に出回ることは稀ですが、ジャム、ゼリー、ジュース、そして創造性豊かなスイーツへと姿を変え、その美味しさと健康への恩恵は日本全国に広まっています。「ハスカップの日」が制定されたことは、この類まれな果実の認知度を高め、生産者の尽力に光を当てる大きな意義を持ちます。北海道の豊かな自然と、生産者の情熱が込められたハスカップは、まさに「北のスーパーフルーツ」と称されるにふさわしい、計り知れない魅力を秘めています。この機会にぜひ、様々な形態でハスカップを味わい、その多大な恵みを体感してみてはいかがでしょうか。
ハスカップとはどんな果物ですか?
ハスカップは、主に北海道の地に根ざすスイカズラ科スイカズラ属の落葉低木から収穫される実です。古代よりアイヌ民族の間では「長寿をもたらす実」として語り継がれ、その名はアイヌ語の「ハシカプ」、すなわち「枝にたくさん実るもの」に由来すると言われています。見た目は青紫色をした小さな楕円形で、口に含むと強い酸味と共に、かすかな甘みと独特の渋みが広がります。
ハスカップにはどのような栄養が含まれていますか?
ハスカップは驚くほど栄養価の高い果実であり、中でもポリフェノールの一種であるアントシアニン含有量は、ブルーベリーと比較して3倍から10倍とも言われます。さらに、カルシウムはリンゴの13倍、鉄分はミカンの6倍、ブルーベリーの約3倍に達し、ビタミンCやビタミンEなども豊富に含有されています。これらの成分は、強力な抗酸化作用をはじめ、視覚機能の向上、健康な骨の維持、貧血の予防など、多岐にわたる健康効果をもたらすと期待されています。
ハスカップの旬の時期はいつですか?
ハスカップが最も美味しくなる旬の時期は、通常、夏の訪れとともに7月上旬から8月上旬にかけてやってきます。この短い期間に、冷涼な気候が育む北海道各地の農園では、甘酸っぱい実の収穫が最盛期を迎えます。これにより、格別の風味を持つ新鮮なハスカップを堪能することができます。また、その可憐な花は、5月中旬から6月中旬にかけての春から初夏にかけての時期に姿を見せます。

