ヨーロッパキイチゴ
ヨーロッパキイチゴは、学名Rubus idaeusとして知られるバラ科の落葉低木で、ヨーロピアンラズベリーやフランス語でフランボワーズといった呼び名で世界中で親しまれています。この魅力あふれる植物は、古くからヨーロッパの山間部に自生し、その甘酸っぱい果実は食用として珍重されてきただけでなく、伝統的な民間薬としても活用されてきました。近年、その果実から抽出されるエキスに含まれる多様な生理活性物質が科学的に明らかになり、特に美容と健康を追求する化粧品業界で大きな注目を集めています。
本記事では、ヨーロッパキイチゴの基本的な特徴から、その歴史的背景、さらに果実エキスが持つ具体的な成分構成、化粧品における幅広い効能、そして安全性評価に至るまでを詳細に掘り下げていきます。この情報を通じて、ヨーロッパキイチゴの持つ奥深い魅力と、私たちの肌にもたらす有用性について、より深く理解を深めていただけるでしょう。
ヨーロッパキイチゴとは:基本情報と特徴
ヨーロッパキイチゴ(European Raspberry)は、バラ科キイチゴ属に分類される植物の一種、およびその結実した果実を指します。英語圏ではヨーロピアンラズベリー、フランス語圏ではフランボワーズという名称で広く認知されています。本来、ヨーロッパにおいてラズベリーまたはフランボワーズと呼ばれてきたのはこの種類であり、現在では数多くの栽培品種が存在します。
医薬部外品表示名においては、このバラ科植物ヨーロッパキイチゴ(学名:Rubus idaeus、英名:European (Red) Raspberry)の果実から抽出される成分(キイチゴエキス)が指定されており、そのように定義されたものを指します。
植物学的特徴と生育環境
ヨーロッパキイチゴは、ヨーロッパを原産とする低木で、一般的には1メートルから2メートルほどの高さに成長します。茎は円筒形で直立しており、表面には無数の鋭いトゲが密生しているのが特徴です。これらのトゲは、野生環境で草食動物などからの食害を防ぐための防御機構として機能します。葉は5枚から7枚の小葉からなる複葉で、短い葉柄につながっており、縁には細かい鋸歯が見られます。葉の表面は滑らかで光沢のある緑色をしていますが、裏面には灰白色の柔らかな毛(和毛)が密生しており、触感と視覚に独特の印象を与えます。
花と果実
ヨーロッパキイチゴの花は、通常6月から8月にかけて開花し、白色で5枚の短い花弁を持ち、下向きに咲くのが特徴です。この可憐な白い花は、やがて鮮やかな果実へと姿を変える前兆となります。結実する果実は、赤色または美しい琥珀色をしており、その甘酸っぱい風味が多くの人々に愛されています。
キイチゴの仲間は、果実を収穫する際に花托が花盤に残って中空になる「ラズベリー(raspberry)型」と、花托が集合果に付着して共に分離する「ブラックベリー(blackberry)型」の二つに大きく分けられますが、ヨーロッパキイチゴは明確にラズベリー型に分類される植物です。
ヨーロッパキイチゴの歴史と分布
ヨーロッパキイチゴの学名「Rubus idaeus」における種小名「idaeus」は、伝説に由来するものです。ローマの博物学者プリニウスが、紀元前1世紀にトロイのイダ山(Mount Ida)の斜面でラズベリーを発見したという伝承がその源流とされています。また、ギリシャ神話には、主神ゼウスを育てた養母が、ゼウスのためにラズベリーを摘もうとして指を負傷し、その血によって実が赤くなったという逸話が伝えられており、この植物が古くから人類の歴史や文化に深く根差していたことを物語っています。
原産地と古代からの栽培
ヨーロピアンラズベリーは、小アジアを原産地とし、その歴史は極めて古くから人々と密接に関わってきました。特に古代ローマ時代には、この果実の栽培が盛んに行われるようになり、イタリアをはじめとするヨーロッパ各地へとその普及が進みました。この時代から、その豊かな風味は食用として高く評価され、さらに様々な薬効も期待される存在として重宝されていました。
近代における栽培と利用の拡大
16世紀に入ると、イギリスでヨーロッパキイチゴの大規模な栽培が初めて開始され、その広がりは加速しました。同世紀後半には、ヨーロッパの植民地を通じて北米大陸にも栽培品種が伝播し、18世紀末からは米国への本格的な導入が進み、19世紀後半には栽培が著しく発展しました。
この果実は傷みやすい性質を持つため、生食だけでなく、その魅力的な香りと鮮やかな色を活かしたジャム、リキュール、ジュース、菓子類といった加工品として主に利用されてきました。
日本における導入と現状
日本においては、明治時代初期に栽培品種が導入されました。農林水産省北海道農業試験場(現在の北海道農業研究センター)では、日本の気候に適した品種の選定も進められましたが、同時期に導入されたリンゴ、ブドウ、モモなどの果樹と比較して経済的な採算性が低かったことや、加工品としての需要が伸び悩んだことから、経済果樹としての大規模な産地形成には至りませんでした。
現在では、北海道、宮城県、長野県、福岡県などを中心に小規模な栽培が行われており、その多くはジャムなどの加工品として活用されています。しかし、ヨーロッパキイチゴの果実にはビタミンCが豊富に含まれているだけでなく、近年ではポリフェノールの含有量が多いことも明らかになり、機能性食品としての関心が高まっています。家庭菜園向けの苗木の流通も活発であり、今後の認知度の向上や健康志向の高まりを背景に、栽培量や市場での流通量がさらに増加する可能性を秘めていると考えられます。
ヨーロッパキイチゴ果実エキスの成分構成とその効果
天然由来であるヨーロッパキイチゴの果実エキスは、生育環境や気候条件といった要因により、その成分構成にわずかな違いが生じることがあります。しかし、その基本となる主要成分は非常に多種多様です。これらの豊富な成分が相乗的に作用することで、肌に多岐にわたる生理活性効果をもたらすと考えられています。
主要な構成成分とその特性
ヨーロッパキイチゴ果実エキスには、特に以下の成分が豊富に含まれています。
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アントシアニン:優れた抗酸化力を持つポリフェノールの一種で、果実の鮮やかな赤色を司る色素成分です。
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エラグ酸:ポリフェノールの一種。幅広いスキンケア用途で注目されています。
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ケルセチン:フラボノイドの一種で、酸化ストレスに着目した素材として知られます。
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ケンフェロール:フラボノイドの一種で、植物由来の機能性成分として研究されています。
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没食子酸(ガリック酸):ポリフェノールの一種で、収れん性に着目されることがあります。
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フェルラ酸:ポリフェノールの一種であり、外的要因に着目した素材として知られます。
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カテキン:ポリフェノールの一種で、抗酸化性に関する研究が多い成分です。
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p-クマル酸:フェノール酸の一種で、抗酸化性が報告されています。
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ルチン:フラボノイドの一種で、植物由来の機能性成分として知られます。
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クロロゲン酸:ポリフェノールの一種で、抗酸化性に関する報告があります。
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カフェー酸:ポリフェノールの一種で、抗酸化性が報告されています。
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サリチル酸:角質ケアに関連して知られる成分です。
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ビタミンC:抗酸化に着目される水溶性ビタミンです。
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タンニン:ポリフェノールの一種で、収れん性に関与します。
化粧品応用における作用
これらのヨーロッパキイチゴ果実エキスに含まれる成分は、化粧品として製品に配合される際に、以下のような多様な肌への作用を発揮します。
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抗酸化作用:活性酸素を除去し、細胞のダメージから保護します。
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整肌作用:肌をすこやかに保ち、肌荒れを防ぎます。
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収れん作用:肌の引き締め効果で、毛穴の目立ちを抑えます。
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透明感付与作用:肌のキメを整えることで、透明感のある印象へ導きます。
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保湿作用:肌の水分保持力を高め、しっとりとした潤いを維持します。
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バリア機能改善作用:肌の保護機能を強化し、外部からの刺激に対する抵抗力を高めます。
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ハリ・弾力付与作用:肌にハリと弾力を与えます。
ヨーロッパキイチゴ果実エキスの化粧品における配合意図
ヨーロッパキイチゴ果実エキスは、その豊富な構成成分と多様な生理活性作用から、非常に幅広い化粧品カテゴリーで汎用されています。具体的には、スキンケア製品、メイクアップ製品、コンシーラー、化粧下地、日焼け止め、ボディケア製品、ハンドケア製品、マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、ピーリング製品、クレンジング製品、ボディソープ、シャンプー、コンディショナー、トリートメント、アウトバストリートメント、ネイル製品、入浴剤など、多岐にわたる製品に配合が見られます。主な配合目的は以下の通りです。
収れん作用
フランボワーズ(ヨーロッパキイチゴ)果実エキスは、肌を引き締め、化粧崩れを防ぐ目的で、多くの化粧品に配合されています。これは、豊富に含まれるタンニンが穏やかな収れん効果を発揮するためです。この収れん効果とは、皮膚のタンパク質に作用して、毛穴を目立たなくし、過剰な汗や皮脂の分泌を抑制する働きを指します。
この肌への収れん作用については、2000年に報告された研究(※3)においてその効果が示唆されています。特定の研究機関の検証試験でも、ヒトを対象とした評価が行われたとの報告が見られます。
評価は、引き締まり感を実感した被験者の人数に基づき、「◎:20名中16名以上」「○:20名中10-15名」「△:20名中5-9名」「☓:20名中0-4名」の四段階で判定されました。その結果、ヨーロッパキイチゴ果実エキス(水溶性溶媒抽出物)が配合された化粧水を使用した部位は、エキスが配合されていない化粧水を使用した部位と比較して、より優れた収れん効果を示すことが明らかになりました。この実証データは、ヨーロッパキイチゴ果実エキスが実際に肌の引き締め効果を持つことを強く支持するものです。
糖類のベタつき低減による感触改良
化粧品における糖類のべたつきは、快適な使用感を妨げる一因であり、これを軽減することは製品の質を高める上で重要です。ヨーロッパキイチゴ果実エキスには、このような糖類特有のべたつきを抑制し、肌への感触を改善する効果が確認されています。
この効果についても、2000年に報告された研究(※3)においてその効果が示唆されています。特定の研究機関によるヒトに対する評価でも、感触改善の効果が見られたとの報告があります。
評価は、べたつき感を実感した被験者の人数によって、「◎:20名中16名以上」「○:20名中10-15名」「△:20名中5-9名」「☓:20名中0-4名」の四段階で判定されました。その結果、ヨーロッパキイチゴ果実エキス(水溶性溶媒抽出物)が配合された化粧水が塗布された部位は、エキスが配合されていない化粧水と比較して、糖類によるべたつきを効果的に抑制する結果が示されました。これは、ヨーロッパキイチチゴ果実エキスが、化粧品のテクスチャーを向上させる成分として有効であることを示唆するものです。
プラスミン阻害による肌荒れ抑制作用
ヨーロッパキイチゴ果実エキスは、肌荒れを防ぎ、肌をすこやかに保つ観点から注目されることがあります。具体的には、タンパク質分解酵素の一種であるプラスミンの働きを阻害することにより、肌状態の維持に寄与する可能性が示唆されています。
プラスミンの機能と肌状態への関連
プラスミンは、ある種のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)であり、肌のバリア機能の低下や肌荒れに関連する酵素として知られています。その活動が肌の健やかさを保つ上で深く関連していることが示唆されています。この事実に基づくと、肌荒れといったバリア機能の低下が見られる状況でプラスミンの作用を抑制することは、肌をすこやかに保つ上で非常に有用なアプローチの一つであると言えるでしょう。
プラスミン抑制効果の評価
2000年に報告された研究では、プラスミンとヒトの肌荒れに対するヨーロッパキイチゴ果実エキスの効果が調べられました。まず、試験管内(in vitro)でのプラスミン阻害能力が検証されました。具体的には、フィブリノーゲンがフィブリンへと変化することで作られた基盤に、5U/mLのプラスミンと、固形分濃度0.3%のヨーロッパキイチゴ果実エキス(エタノールで抽出されたDMSO溶液)を29対1の比率で混合した溶液(最終的なヨーロッパキイチゴ果実エキス濃度は0.01%)を加え、37℃の環境下で18時間反応させました。既によく知られている強力なプラスミン活性阻害剤であるザクロ果実エキス(エタノール抽出DMSO溶液)を対照群として用い、何も添加しない場合のプラスミン活性を100%とした時の各試料による阻害活性を比較した結果、ヨーロッパキイチゴ果実エキス(エタノール抽出物)は、ザクロ果実エキスよりも優れたプラスミン阻害作用を示すことが明らかになりました。
ヒトの肌荒れへの有効性
続いて、実際のヒトを対象とした使用試験で、肌荒れ改善効果が検証されました。肌のレプリカ採取により肌荒れが確認された16名の女性被験者を2つのグループ(各8名)に分け、一方には2%のヨーロッパキイチゴ果実エキス(50%エタノール抽出)を配合した化粧水を、もう一方にはヨーロッパキイチゴ果実エキスを含まない化粧水を、それぞれ1日2回、4週間使用してもらいました。4週間後、再度レプリカ法を用いて肌の状態を観察し、「5:皮溝・皮丘がはっきりとし、整っている」「4:皮溝・皮丘がはっきりしている」「3:皮溝・皮丘は確認できるが平坦である」「2:皮溝・皮丘が不明瞭で、角層の剥がれが見られる」「1:皮溝・皮丘が消失し、広範囲で角層の剥がれが見られる」という5段階の評価基準に基づいて判定を行いました。その結果、ヨーロッパキイチゴ果実エキス配合化粧水を塗布した部位では、非配合化粧水と比較して顕著な肌荒れ改善効果が確認されました。これらの試験データは、ヨーロッパキイチゴ果実エキスがプラスミンを抑制することで肌荒れを防ぐ作用を持つことを裏付けています。
コルネオデスモソーム分解促進を通じた角質除去作用
健やかで美しい肌を維持するためには、適切な肌のターンオーバーが不可欠です。ヨーロッパキイチゴ果実エキスには、このターンオーバーを司る重要な要素であるコルネオデスモソームの分解を促し、古い角質の自然な剥離をサポートする働きも備わっています。
皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)の仕組み
私たちの肌の一番外側にある表皮は、基底層、有棘層、顆粒層、そして角層という複数の層で構成されています。表皮の細胞は「角化細胞」とも呼ばれ、表皮の最も深部にある基底層で新たに生まれると、次々に生まれてくる新しい細胞に押し上げられるようにして、皮膚の表面へと移動していきます。この過程で細胞は形を変え、有棘細胞、顆粒細胞へと分化し、最終的には「ケラチン」と呼ばれるタンパク質を主成分とする角質細胞となります。
角質細胞は、角質層に存在する「コルネオデスモソーム」という特殊な結合によって、互いに強く結びついています。しかし、細胞が角層の上層へ到達するにつれて、セリンプロテアーゼ(トリプシン様酵素とキモトリプシン様酵素)やアスパラギン酸プロテアーゼであるカテプシンDといった酵素が働き、コルネオデスモソームを分解していきます。これにより、最終的に角質は「角片」(体では「垢」、頭皮では「フケ」)として自然に剥がれ落ちます。この表皮の絶え間ない新陳代謝こそが、一般に「ターンオーバー」と呼ばれ、正常なサイクルを保つことで肌は常に新鮮で健康な状態を維持しています。
ターンオーバーの遅延が肌にもたらす影響
しかし、年齢を重ねることや肌のコンディションの悪化といった要因によって、ターンオーバーのサイクルが乱れ、遅延することがあります。本来ならば剥がれ落ちるべき古い角質細胞が肌表面に留まり続けてしまうと、角質層に異常な積み重ね(過剰な堆積)が生じ、ターンオーバーの正常なリズムが崩れてしまいます。角質層が過剰に積み重なると、肌の表面は不均一になり、角層が必要以上に厚くなる現象が見られます。これにより、肌の一部が硬くなったり、キメが粗くなったりする「過角化(角質肥厚)」という状態が現れます。
また、ターンオーバーが滞ると、古い角質が肌表面に留まりやすくなり、肌のくすみ印象の一因となることがあります。このような背景から、コルネオデスモソームの分解を促進することは、肌の古い角質を適切に剥がし、排出する上で重要なアプローチであると考えられています。
コルネオデスモソーム分解促進作用の検証
日本メナード化粧品が2007年に発表した研究では、コルネオデスモソームおよびヒト角層細胞の剥離に対するヨーロッパキイチゴ果実エキスの効果が検証されました。まず、試験管内(in vitro)でのコルネオデスモソーム分解促進作用が評価されました。この実験では、モルモット由来の角質細胞から得られたデスモソーム分解酵素の粗酵素溶液に、様々な溶媒で抽出された10mg/mLのヨーロッパキイチゴ果実エキスを加えて37℃で1時間培養しました。その後、合成基質を添加して培養し、合成基質が分解される程度を測定することで酵素活性を評価しました。その結果、ヨーロッパキイチゴ果実エキスはコルネオデスモソーム分解酵素の活性を促進する効果を示し、特にヨーロッパキイチゴ果実の熱水抽出エキスでその効果が顕著であることが確認されました。
ヒトにおける角質剥離促進効果
続いて、ヒトを対象とした使用試験で、角層細胞の剥離促進効果が評価されました。被験者の左右の頬それぞれに、0.6%のヨーロッパキイチゴ果実エキス(熱水抽出)を配合したクリームと、ヨーロッパキイチゴ果実エキスを含まないクリームを塗布しました。塗布から8時間後に両頬を水で洗顔し、その後、塗布部位に粘着テープを貼って剥がす「テープストリッピング」を行い、剥がれた細胞数を染色して測定しました。その結果、ヨーロッパキイチゴ果実エキス(熱水抽出)配合クリームを塗布した部位では、エキス未配合のクリームを塗布した部位と比較して、角層の剥離が明らかになりました。これらの試験結果は、ヨーロッパキイチゴ果実エキスがコルネオデスモソームの分解を促すことで、肌の古い角質の剥離をサポートする可能性を示しています。
ヨーロッパキイチゴ果実エキスの混合原料としての役割
植物由来のエキスは、単体で用いられることはもちろん、複数の種類をブレンドすることで、単独では得られない相乗作用や新しい使用感をもたらすことが知られています。こうした認識を背景に、多種多様な混合原料が生み出され、化粧品分野で広く利用されています。
ヨーロッパキイチゴ果実エキスも例外ではなく、他の成分と組み合わせることで、そのポテンシャルを引き出すブレンド原料として配合されているケースが考えられます。一般的には保湿成分、整肌成分などと組み合わせられることで、より包括的な肌へのアプローチを実現しています。
ヨーロッパキイチゴ果実エキスの安全性の検証
化粧品に用いられる原料の安全性を確保することは極めて重要です。ヨーロッパキイチゴ果実エキスに関しても、その安全性は多岐にわたる試験によって確認されてきました。これらの検証結果に基づき、化粧品への配合量や通常の利用状況において、一般的に安全性が確立された成分であると認識されています。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー誘発性)
皮膚への刺激やアレルギー反応を誘発する可能性は、化粧品成分の安全性を評価する上で最優先されるべき項目の一つです。日本メナード化粧品が行った安全性試験データによれば、ヨーロッパキイチゴ果実エキス(溶媒抽出物)は、以下の試験結果を報告しています。
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48時間閉塞パッチテスト(ヒト皮膚一次刺激性試験):被験者の皮膚にテスト物質を48時間にわたり適用し、紅斑や浮腫などの皮膚刺激反応が発現するかを観察する試験です。この結果、皮膚刺激性は認められなかったと報告されています。
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RIPT(ヒト累積刺激性・感作性試験):多数のボランティア被験者に試験物質を複数回繰り返し適用し、皮膚刺激やアレルギー性接触皮膚炎(感作性)の有無を判定する試験です。こちらの試験でも、皮膚感作性は見られなかったと報告されています。
これらの試験データから判断すると、ヨーロッパキイチゴ果実エキスには一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんど認められないと結論づけられます。
眼に対する刺激性
目に対する刺激性も、特にアイゾーンに使用される化粧品においては、安全性評価の重要なポイントとなります。しかしながら、現時点ではヨーロッパキイチゴ果実エキスに関して、眼刺激に関する明確な試験結果や安全データが確認できないため、データ不足により詳細な情報は不明です。これは、即座に危険性があることを示すものではなく、単に公開されているデータが少ない、あるいは別の試験で安全性が間接的に確認されている可能性も考えられますが、現状で決定的な評価を下すことは困難です。
まとめ
古くから食用や薬用として人類に愛されてきたヨーロッパキイチゴは、その魅力的な見た目と芳醇な味わいで知られています。その長い歴史は古代文明にまで遡り、様々な形で人々の生活に溶け込んできました。現代の研究では、このヨーロッパキイチゴの果実から得られるエキスが、化粧品成分として多機能性を持つことが示唆されています。
基本的な抗酸化、収れん、整肌といった作用に加えて、糖による肌の不快なベタつきを抑える効果、プラスミンの働きに着目した肌荒れ抑制の可能性、さらにはコルネオデスモソームの分解促進を介した穏やかな角質ケアが報告されています。
これらの複合的な働きは、肌にハリと弾力をもたらし、肌の不調を和らげ、健やかな肌の生まれ変わりをサポートすることで、健康的で輝く素肌へと導きます。ヨーロッパキイチゴ果実エキスは、自然の恵みが育んだ美の可能性を秘めた、有用な美容成分と言えるでしょう。
よくある質問
ヨーロッパキイチゴとはどのような植物ですか?
ヨーロッパキイチゴは、バラ科キイチゴ属に属する落葉性の低木で、その学名はRubus idaeus、英語では一般的にEuropean Raspberryとして知られています。通常、高さは1メートルから2メートルほどに成長し、茎には特徴的なトゲを持っています。春から夏にかけて白い可憐な花を咲かせ、その後、鮮やかな赤色や稀に琥珀色の甘酸っぱい実を結びます。この植物はヨーロッパを原産地とし、古くから食用ベリーとして親しまれてきただけでなく、その薬効も評価され、民間療法などにも用いられてきました。
ラズベリーとヨーロッパキイチゴは同じものですか?
はい、これらは本質的に同一の果実を指します。「ヨーロッパキイチゴ」は「ヨーロピアンラズベリー」とも称され、特にヨーロッパ大陸で広く愛されているラズベリーの品種です。フランス語圏では「フランボワーズ」という呼び名でも知られており、これらはすべて同じ植物から採れる果実を指す名称です。
ヨーロッパキイチゴ果実エキスは化粧品でどのような効果が期待できますか?
ヨーロッパキイチゴ果実エキスは、化粧品成分として多岐にわたる美容効果が期待されます。主に、抗酸化、収れん、整肌、保湿、バリア機能のサポート、ハリ・弾力付与などが注目されています。具体的な利点としては、肌のキメを整え引き締め感を高めること、糖によるべたつき感を抑えること、肌荒れを防ぎ肌をすこやかに保つこと、穏やかな角質ケアを通じたターンオーバーのサポートなどが挙げられます。
乾燥による肌の不調が気になる方や敏感肌でもヨーロッパキイチゴ果実エキス配合の化粧品は使用できますか?
ヨーロッパキイチゴ果実エキスは、そのプラスミン阻害能力により、肌荒れを防ぎ、肌をすこやかに保つ効果が期待されています。さらに、実施された皮膚刺激性試験や皮膚感作性試験においても、特に問題は認められていないとされています。これらの結果から、デリケートな肌質の方や乾燥による肌の不調が気になる方でも、比較的安心してご使用いただけると考えられます。しかしながら、肌の反応は一人ひとり異なるため、万が一の懸念がある場合には、念のため事前に腕の内側などでパッチテストを実施することをお勧めします。
ヨーロッパキイチゴ果実エキスの安全性について教えてください。
日本メナード化粧品の評価として、ヒトを対象とした48時間閉塞パッチテスト(一次刺激性)およびRIPT(累積刺激性・感作性)で、刺激性・感作性ともに問題がないと報告されています。一般的な配合濃度・通常使用においては概ね安全性が確立されていると評価できます。一方で、眼刺激に関しては公開情報が不足しており、詳細評価は不明です。
ヨーロッパキイチゴ果実エキスは肌の透明感やキメにも良い影響が期待できますか?
はい、肌のキメを整え、透明感を与える効果が期待できます。ヨーロッパキイチゴ果実エキスには、肌のコンディションを整える作用が期待されるエラグ酸をはじめとする多様なポリフェノールが豊富に含まれています。また、肌の代謝リズムであるターンオーバーが滞ると、古い角質が肌表面に蓄積し、肌のくすみの一因となることがあります。これに対し、ヨーロッパキイチゴ果実エキスは、古い角質層を構成するコルネオデスモソームの分解を促し、角質細胞の自然な剥離を活性化させます。この作用により、肌の生まれ変わりをサポートし、キメの整った明るい印象の肌へと導くと考えられます。

