クーベルチュールチョコレートは、その豊かな風味と滑らかな口溶けで、数多のチョコレート愛好家を魅了してやみません。プロのパティシエが手がけるスイーツにおいて、その品質は欠かせない要素の一つです。高いカカオバターの含有率により、シルクのような舌触りを実現するクーベルチュールは、究極のチョコレートと称されるにふさわしい存在です。その魅惑的な味わいを堪能しつつ、職人技の光るその制作過程を探ってみましょう。
「クーベルチュール」とは何か?
「クーベルチュール(couverture)」は、チョコレートの中でも特に流動性が高く、チョコレート菓子やケーキの表面を覆うのに適しています。このチョコレートは、カカオバターの量が多いことが特徴です。
国際的なチョコレートの基準では、「クーベルチュール」は以下のように定義されています。
・カカオ分が35%以上であること・その中でカカオバターは31%以上を占め、無脂カカオ固形分が2.5%以上含まれていること・カカオバター以外の脂肪の代用品が5%未満であること
という条件を満たしています。
「クーベルチュール(couverture)」とは、フランス語で「カバー」や「覆うもの」といった意味を持つ言葉で、語源の「クーベル(couvert)」は「覆われた」という意味です。そして「クーベルチュール」は、チョコレートで菓子を覆うのに適した性質を持っています。特にカカオバターを多く含むことによる高い流動性が「クーベルチュール」の特徴です。
カカオバターは常温で固形ですが、体温程度で溶けるので、溶かすと滑らかに流れ、口どけも優れています。
その一方、日本では国際規格とは異なるチョコレートの基準があります。
日本国内におけるチョコレートの基準とは何か?
日本ではチョコレートは、「純チョコレート」「チョコレート」「準チョコレート」の3種類に分類されています。国内の基準による「チョコレート」は、
・カカオ分が全体の35%以上で、その中に18%以上のカカオバターが含まれ、水分は3%以下
という条件を満たしたものを指し、「クーベルチュール」と呼ばれるチョコレートに含まれるカカオバター31%の高さが際立ちます。
▼市販の板チョコの例
「純チョコレート」は、さらに厳しい基準をクリアした製品のことで、具体的には「カカオバター以外の代用油脂は使用不可」「糖類はショ糖のみ、全重量の55%以下」「乳化剤はレシチンのみ、全重量の0.5%以下」「食品添加物はバニラ系香料のみ」に従う必要があります。「準チョコレート」は、「カカオ分15%以上、その中に3%以上のカカオバター、総脂肪分が18%以上、水分は3%以下」といった緩やかな条件で製造可能です。
▼溶かした板チョコの例
こうした基準によって、ただおいしいだけでなく、日本国内で常温で保存しやすく、かつ手頃な価格で提供できるように各種チョコレートが作られています。日本で販売される市販の板チョコには、これらの情報がパッケージ裏面の表示欄に「名称」として記載されているため、購入時に確認することができます。
市販の板チョコの違いとは?
市販の板チョコは、そのままで楽しめるように設計されています。食べやすさに加えて、手頃な価格で提供するため、砂糖やカカオバターだけでなく、様々な種類の油脂が含まれています。パッケージの原材料リストを見ると、その内容を詳しく確認できますね。なお、メーカーやチョコレートの種類(スイート、ミルク、ホワイト)によって、使用される原材料の比率は異なります。
流動性の相違点を探る
クーベルチュールチョコレートと一般的な板チョコを比較したところ、流動性に違いが出ました。どちらも約32℃で試しましたが、クーベルチュールチョコレートは輝きがあり滑らかに流れるのに対し、板チョコはやや粘り気があり、ゆっくり流れ落ちる印象です。
風味の差異
口にした瞬間、カカオの芳醇な香りを感じられるのがクーベルチュールチョコレートです。カカオの割合が高いと甘さよりも苦味や香ばしさが引き立ちます。
対して、すぐに甘さが広がり、親しみやすさが特徴的なのが板チョコです。このため、料理にクーベルチュールチョコレートを用いた場合、甘みの増加やカカオの風味の変化が生じることがあります。
板チョコはお菓子作りに向いていないのか?
お菓子作りにはクーベルチュールチョコレートが最適ですが、板チョコでも代用可能です。
もし板チョコを使用する場合は、マフィンやパウンドケーキ、ブラウニーなどの焼き菓子に加えるのがおすすめです。その際、過度に甘くならないよう、砂糖の量に注意を払いましょう。
クーベルチュールチョコレートの魅力を体験しよう
高価で手に入れにくい、また細かく刻むのが手間という印象があるクーベルチュールチョコレート。
しかし現在では、手頃な価格で購入できるものや、溶かしやすいタブレットタイプの製品も登場しています。そのため、より手軽に挑戦できる選択肢が増えています。
さまざまなメーカーから異なる風味のクーベルチュールチョコレートが販売されていますので、自分のお気に入りを見つけたり、お菓子によって使い分けて楽しむことができるでしょう。