アカネ科コフィア属のコーヒーノキ、一般的には「コーヒーの木」と呼ばれています。この常緑小高木は、温度と湿度の高い熱帯地域を原産地とし、ブラジルやコロンビア、アフリカなどで栽培されています。成長すると10メートル以上の高さにもなり、白く香り高い花を咲かせます。

そしてその後、緑から赤へと色を変えた果実が出来上がります。その果実を「コーヒーチェリー」と呼び、その中に実る種子こそが私たちがよく知るコーヒー豆の原形です。コーヒーチェリーは適切な生産処理（加工）を経て、茶色や黒っぽいコーヒー豆になります。

豆の状態から抽出するという手法で、甘く香ばしい一杯のコーヒーが出来上がります。そしてそのコーヒー豆は世界中の人たちの手を経て、最終的に私たちの元へと届けられるのです。

コーヒーの豆の種類や育てられた土地がそこに生じる風味や香りを左右し、それぞれに固有の特性を持つことから、コーヒーノキの育つ環境と土地が私たちが味わうコーヒーの"味"を生み出すと言えます。コーヒーを楽しむ全ての人々にとって、その起源であるコーヒーノキはおそらく欠かせない存在となるでしょう。

「コーヒーノキ」は、日本では珍しいとされる植物で、熱帯雨林気候を元にした気候条件を必要とします。熱帯地方の高温多湿な環境、太陽の豊富な光線、そして雨期と乾期が交互に訪れる環境が望ましいのです。

また、山岳地帯での昼夜の温度差が大きいところも、この植物にとっては適しています。雨が多い場所は、特に好ましい条件と言えます。だからといってすぐに雨水が流れ去るような場所ではなく、年間降水量が1500mm以上の場所、そしてゆるやかな斜面に位置する土地が理想的なのです。

しかし、コーヒーノキは、耐寒性に乏しく、冬季の低温や霜が降りるような環境は避けなければならないとされています。したがって、日本での栽培は、温室などを用いて温度と湿度を一定に保つ必要があります。

種が発芽するためには最低16℃の温度が、その成長を促進させるためには日々24℃以上の温度が必要です。

見ての通り、コーヒーノキの成長に必要な条件は一筋縄ではいきません。だからこそ、コーヒーの風味は、それぞれの木が育つ環境の影響を強く受け、世界各地で異なる味わいを生むのです。

コーヒーノキ、その中でも特にスペシャリティコーヒーへの道を切り開いた種類といえばアラビカ種。コーヒー豆の主流を成し、市場での占有率はなんと70%にも上ります。このアラビカ種から得られる豆は、その風味の豊かさとエレガントな香りで、豪華なコーヒータイムをもたらします。

アラビカ種を育てている生産地は幅広く、涼やかなグアテマラから活気あふれるブラジル、美しい自然溢れるコスタリカ、神秘的なエチオピア、豊かなケニアと、広範囲に及びます。それぞれの地域性、そして生産過程や焙煎方法により、一つ一つの豆が持つ風味も変化します。

一方で、カフェイン量の多さや強い苦味が特徴的なロブスタ種も同じコーヒーノキの中で確固たるポジションを確立しています。彼らはアラビカ種に匹敵するほどの風味豊かさは持っていませんが、それ以上の力強さでカフェ愛好家たちを惹きつけてやみません。

特に、生産量の多さと低コストから生まれるロブスタ種のコーヒーは、手軽に楽しむことができるインスタントコーヒーや缶コーヒーなどの主成分となっています。特に、ベトナムなどの生産地では主力商品として広く流通しており、その存在感は全世界に広がっています。

コーヒーノキの中でも、まだまだ知られていない種類が存在します。それがリベリカ種です。その風味はアラビカ種にかなわないですが、世界でほぼ流通のない珍しい種として、その存在自体が特別な価値を持っています。

アラビカ種、ロブスタ種、そしてリベリカ種。コーヒーノキの種類選びから、あなたのコーヒータイムは新たな魅力に満ち満ちていきます。ぜひ、色々な種類を試して自分のお気に入りを見つけてみてください。

コーヒーノキが育つ豊かな自然環境やその栽培方法は、一杯のコーヒーが持つ複雑で豊かな香りとフレーバーを生み出します。このノキについて理解することで、コーヒーをより深く、より楽しく味わうことができるようになります。あなたのコーヒーライフに、コーヒーノキの知識が新たな彩りを添えてくれることでしょう。