【期間限定】チーズの王様「モン・ドール」を徹底解剖!特徴、歴史、プロ直伝の食べ方、ワインとの相性
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フランスとスイスの国境に位置するジュラ山地が生んだ至宝、ヴァシュラン・モン・ドール。通称「モン・ドール」として知られるこのチーズは、限られた期間のみ製造される特別なウォッシュチーズです。その希少価値と独特な風味から、世界中のチーズ愛好家が毎年心待ちにしています。この記事では、モン・ドールの歴史、詳細な特徴、フランス産とスイス産の違いに加え、プロが伝授する最高の食べ方、ワインとの絶妙な組み合わせ、保存方法まで、モン・ドールに関するあらゆる情報を網羅的に解説します。モン・ドールの奥深い魅力に触れ、「旬」の味わいを心ゆくまでお楽しみください。

モン・ドールとは?その魅力に迫る

ヴァシュラン・モン・ドール(Vacherin Mont d'Or)またはモン・ドール(Mont d'Or)は、フランスとスイスに伝わる伝統的なウォッシュチーズであり、期間限定で製造・販売される特別なチーズです。具体的には、8月15日から翌年の3月15日までの期間に製造され、9月1日から翌年5月10日まで販売されます。この限られた時期にしか味わえないことから、「旬の味覚」として多くのチーズファンに愛されています。モン・ドールは、フランスとスイスの国境をなすジュラ山脈、特にモン・ドール(Mont d'Or =「金の山」)周辺で、職人の手によって丁寧に作られており、その山の名がチーズの名前の由来となっています。
モン・ドールの製造期間が限定されている背景には、酪農のサイクルとチーズの性質が深く関わっています。夏の間は、同じジュラ地方で、大型ハードチーズであるコンテの製造が活発に行われます。コンテは1個あたり40kgにもなるため、大量のミルクを必要とし、複数の酪農家が協力して製造にあたります。夏が終わり、コンテ製造のために搾乳されていた牛たちが各酪農家に戻ると、ミルクの生産量が減少します。モン・ドールは、この冬場の限られたミルクを利用して、酪農家が自家用に製造していたチーズが起源とされています。また、モン・ドールは非常に繊細で、暑さに弱く品質が劣化しやすいため、気温の高い夏場の製造・流通には適していません。モン・ドールの製造が行われない夏場には、同じ地域の牛乳が、保存性の高いハードチーズであるコンテの原料として活用されます。このような背景から、モン・ドールは冬の訪れを告げる特別なチーズとして、人々に愛されています。

原材料と製法が生み出す、独特の風味

モン・ドールは、ジュラ山地の豊かな自然の中で育った乳牛のミルクから作られる、とろけるような口当たりが特徴のチーズです。1kgのモン・ドールを製造するには、約7リットルの牛乳が必要となります。モン・ドールの最も特徴的な点は、チーズの外側をエピセア(トウヒの一種)の樹皮で囲んでいることです。このエピセアの樹皮が、モン・ドールに独特の芳醇な香りと複雑な風味を与え、その個性を際立たせています。
モン・ドールはウォッシュチーズの一種であり、熟成の過程で定期的に塩水で表面を拭きながら丁寧に手入れされます。この作業によって、チーズの表面にクリーム色からオレンジ色の表皮が形成され、熟成中に敷かれた布の模様が美しく浮かび上がることもあります。熟成具合や包装のタイミングによっては、表面に白いカビが発生することがありますが、これは人体に無害です。これらの白いカビは、出荷前に丁寧に払い落とされる場合と、そのまま出荷される場合があります。

形状、サイズ、流通を支える工夫

モン・ドールは、直径12~30cm、厚さ4~5cm程度の円盤型のチーズで、比較的小ぶりなサイズです。非常に柔らかい性質のため、熟成が進むにつれて自立することが難しくなります。そのため、外側を囲むエピセアの樹皮と、ぴったりと収まる専用の木箱が、チーズの形状を保つために重要な役割を果たしています。
モン・ドールは、木箱に入った状態で販売されます。消費者が熟成具合を確認できるよう、店頭では木箱の蓋を取り外し、通気性の良いラップをかけて陳列されることが一般的です。非常に柔らかいため、カットして提供されることは少なく、木箱に入ったまま上部の表皮を剥がし、中身をスプーンですくって食べるのが一般的です。チーズ専門店などでどうしても切り分けて販売する必要がある場合は、中身が流れ出ないように、切断面に厚手のプラスチックなどで重しをするなどの工夫が凝らされています。

モン・ドールの歴史とルーツ

モン・ドールの起源を特定できる詳細な記録は多くありませんが、その原形となるチーズは18世紀中頃には既に存在していたと考えられています。18世紀末には、フランシュ=コンテ地方のチーズに関する記録にその名が登場し、この頃に「金の山(Mont d'Or)」という名前が付けられたと推測されています。この名前は、標高1463メートルのモン・ドール山に由来し、その頂はフランスのドゥー県に位置しています。
モン・ドールは、フランスとスイスに広がるジュラ山脈地域で長い間、伝統的な製法が受け継がれてきました。両国は、この特別なチーズの品質と原産地を守るため、原産地名称保護制度(AOC/AOP)を取得しています。

フランスとスイスにおけるAOC/AOP認定と名称の違い

フランスでは1981年にAOC(原産地統制名称)を取得し、現在はAOP(原産地名称保護)として認定されています。フランス産のモン・ドールは「モン・ドール(Mont d'Or)」という名称で販売され、無殺菌の生乳を使用して作られるのが特徴です。
一方、スイスでは2003年にAOPを取得し、「ヴァシュラン・モン・ドール(Vacherin Mont d'Or)」という名前で販売されています。スイス産のモン・ドールは、殺菌乳を使用している点がフランス産との大きな違いです。厳密には、フランスで「ヴァシュラン・モン・ドール」という名称のチーズは存在しませんが、フランスのモン・ドールが「ヴァシュラン・デュ・オー=ドゥー(Vacherin du Haut-Doubs)」という名前で流通することがあり、一般的なチーズ専門店などでは単に「ヴァシュラン」と呼ばれることもあります。

世界的な広がりと日本での流通

モン・ドールは世界中で高く評価されているチーズですが、過去には市場への流通において困難な時期がありました。1988年、フランス産のモン・ドールからリステリア菌が検出されたため、フランスからのモン・ドールの輸出が一時的に禁止されました。しかし、徹底的な品質管理と安全対策の結果、この輸出禁止は1995年に解除されました。その後、モン・ドールは日本市場にも広く流通するようになり、多くの日本のチーズ愛好家がこの希少な季節の味覚を楽しむことができるようになりました。

「ヴァシュラン」という名前が示す多様なチーズ

「ヴァシュラン」という名称は、モン・ドールだけでなく、様々なチーズに使用されています。この言葉は、フランス語で「牛の放牧地」を意味する「Vacherie(ヴァシュリー)」に由来するとされ、一般的に牛乳から作られるチーズ全般を指すことがあります。ここでは、モン・ドールと混同されやすい、あるいは関連性の高い他のヴァシュランチーズをいくつかご紹介します。

ヴァシュラン・フリブルジョワ

スイス、特にフリブール州はチーズフォンデュで知られていますが、そこで作られるのがヴァシュラン・フリブルジョワです。特徴的なのは、その繊細な酸味とナッツのような芳醇な香り。熟成の度合いによって、その硬さは変化します。若いものは比較的ソフトですが、熟成が進むにつれてしっかりとした食感に変わります。このチーズは、グリュイエールチーズと並び、チーズフォンデュに欠かせない存在として、スイスの食文化に深く根付いています。

ヴァシュラン・ダボンダンス

フランス北部のサヴォワ地方、アボンダンス村が原産のヴァシュラン・ダボンダンス。その製法や最終的な仕上がりは、モン・ドールと非常に良く似ています。特に、外側をエピセアの樹皮で囲む点はモン・ドールと共通しており、その結果、柔らかく、豊かな風味が生まれます。アボンダンス村には、「アボンダンスチーズ」という名高いハードチーズも存在しますが、ヴァシュラン・ダボンダンスは全く異なる種類のチーズなので、混同しないようにしましょう。

プロが伝授!モン・ドールの美味を最大限に引き出す方法

チーズ専門店フェルミエ愛宕店の又平幸代店長によると、モン・ドールの品質は、ワインのように毎年変化します。その年の気候、例えば記録的な猛暑や豪雨などは、牛の健康状態や牧草の質に影響を及ぼし、結果としてミルクの質、そしてチーズの風味にまで影響を及ぼします。例えば、入荷直後の若いモン・ドールは、生地に弾力があり、フレッシュな酸味とミルクの風味が際立っています。熟成が進むにつれて、生地は柔らかくなり、香りや風味がより複雑で豊かになります。モン・ドールを深く堪能するためには、年ごとの違い、そして熟成度合いによる変化を楽しむことが重要です。

食べ頃を見極め、最高の状態を作り出す

モン・ドールが最も美味しくなるのは、一般的に賞味期限の1週間ほど前と言われています。この時期には、チーズの柔らかさと香りが際立って良くなります。又平店長は、その年の最初のモン・ドールが納品される9月末に、熟成が若いものをあえて購入し、その年の最初の味わいを堪能するそうです。また、モン・ドールは華やかなイメージがあるため、年末に自宅用として購入し、パーティーなどで楽しむのもおすすめです。
モン・ドールを味わう際には、冷蔵庫から取り出して常温に戻すことが非常に重要です。冷えた状態では、モン・ドール特有の繊細な風味や豊かな香りを十分に感じることができません。常温に戻すことで、香りがより一層広がり、味わいも深みを増します。室温にもよりますが、例えば昼食に食べる場合は、朝から冷蔵庫から出しておくなど、時間に余裕をもって準備するのがおすすめです。

基本的な食べ方:スプーンですくって

モン・ドールの特徴はそのとろけるような柔らかさ。そのため、一般的なチーズのようにカットするのではなく、木箱から直接スプーンですくって味わうのが、最もポピュラーで美味しい方法です。まずは、ナイフで木箱の上側の表面に一周切り込みを入れ、天面を剥がします。すると、中からとろりとしたチーズが現れますので、それをスプーンですくい、パンやクラッカー、茹でたジャガイモなどに乗せてお召し上がりください。大人数でシェアする場合にも最適な食べ方で、皆でワイワイ楽しめます。

【絶品レシピ】温めてとろける「フォンドール」

モン・ドールの美味しさを最大限に引き出し、さらに特別な体験をもたらすのが「フォンドール」です。モン・ドールを丸ごと温めて、フォンデュのようにして楽しむ、まさに絶品と呼ぶにふさわしいレシピ。パーティーの主役になること間違いありません。
作り方はとてもシンプル。モン・ドールが入った木箱全体をアルミホイルで包み、焦げ付きを防ぎます。それをオーブンやトースターに入れ、チーズがとろとろになるまでじっくりと加熱してください。加熱することで、チーズは極上のクリーミーさをまとい、その独特の香りがより一層際立ちます。温まったフォンドールをスプーンですくい、茹でたジャガイモ、バゲット、新鮮な野菜スティックなど、お好みのものにつけてお召し上がりください。

モン・ドールの皮も美味しく味わう

モン・ドールの表面には、白カビや青カビが見られることがありますが、この外皮もまた、美味しくいただくことができるのです。チーズ専門店スタッフもおすすめする、皮の美味しい食べ方をご紹介しましょう。
もし気になるカビがある場合は、ナイフの背などで優しく取り除いてください。その後、皮の内側を上にしてパンに乗せ、トースターで焼くだけで、皮はカリカリとした香ばしい食感に変わり、皮の裏側に残ったモン・ドールがとろりと溶け出して、たまらない美味しさになります。また、フォンドールを作る際に、細かく刻んだ皮を加熱前のチーズの上に散らすと、焼けた皮の香ばしさがプラスされ、より一層風味豊かで奥深い味わいになります。チーズを食べ終わった後に追加しても、風味の変化を楽しめます。

モン・ドールに最適なワインペアリング

チーズとワインの組み合わせは、探求しがいのあるテーマですが、モン・ドールとの相性を考える際には、「熟成の度合いを合わせる」、「産地を考慮する」という点が特に重要です。モン・ドールの持つ豊かな風味と滑らかな舌触りを引き立てるワインを選ぶことで、至福のマリアージュを体験できるでしょう。

ボジョレー・ヌーヴォーとの相性

モン・ドールとボジョレー・ヌーヴォーは、解禁時期が近いため、イベントとして、また季節の味覚を楽しむ組み合わせとして最適です。ただし、熟成が進みすぎたモン・ドールは香りが強く、ボジョレー・ヌーヴォーのフレッシュな風味を邪魔してしまう可能性があります。ボジョレー・ヌーヴォーと合わせる際は、若いモン・ドールを選び、生地の弾力と酸味を楽しむのがおすすめです。

ジュラ地方の白ワインとの絶妙なハーモニー

意外かもしれませんが、モン・ドールと同じジュラ地方の白ワインは、相性が良いとされています。特に、温めてとろとろにした「フォンドール」との組み合わせは格別で、専門店のイベントでも定番です。ジュラ地方独特の、ナッツのような香ばしさやミネラル感が特徴の白ワインが、モン・ドールの濃厚な旨味とクリーミーな食感を引き立て、奥深い味わいのマリアージュを生み出します。

モン・ドールの年ごとの味わいの違いと楽しみ方

モン・ドールは、ワインのように、年によって風味や状態が異なります。これは、気候の変化が大きく影響するためです。猛暑や豪雨などの気候条件は、乳牛にストレスを与えたり、牧草の質や量に影響を与えます。モン・ドールの風味は、ミルクの質に大きく左右され、ミルクの質は牛の健康状態や牧草に直接関係するため、年ごとの違いが生じるのです。
入荷したばかりの若いモン・ドールは、生地に弾力と酸味があり、ミルク本来の風味が豊かに感じられます。熟成が進むにつれて生地は柔らかくなり、香りと風味も強くなります。このように、モン・ドールは時間と共に変化するため、その年のモン・ドールをじっくり味わうことが大切です。もし期待と違う状態でも、その年の個性として楽しむことが、より豊かな体験に繋がります。今年のモン・ドールは特に美味しく、12月から1月にかけて最高の状態でお楽しみいただけるでしょう。

食べきれないモン・ドールの保存方法

モン・ドールは繊細なチーズなので、開封後は適切な保存が重要です。一度に食べきれない場合は、正しい保存方法を知っておくことが大切です。

酸素との接触を避ける工夫

モン・ドールを美味しく保存する秘訣は、チーズをできる限り空気に触れさせないことです。もしスプーンなどで一部をすくい取った結果、チーズに穴が開いてしまった場合は、その穴を埋めるようにラップを丁寧に詰めてください。単にラップを被せるだけでなく、チーズの断面や表面にしっかりと密着させるのがポイントです。こうすることで、乾燥を防ぎ、風味の劣化を最小限に食い止めることができます。
また、もし食べる際に上部の皮を全て取り除いた場合は、その皮を蓋の代わりとしてチーズの上にそっと戻しておくのも効果的な方法です。いずれにしても、チーズの表面が外気にさらされて乾燥したり、不要な菌が繁殖したりするのを防ぐことが、保存において最も重要なポイントとなります。

保存場所と期間

酸素との接触を遮断する対策を施したモン・ドールは、紙袋などに入れて冷蔵庫で保管しましょう。冷蔵庫内の低温環境は、チーズの熟成速度を緩やかにするため、保存に適しています。ただし、モン・ドールは生ものですので、長期保存には向きません。開封後はなるべく早く、数日以内を目安に食べきることをおすすめします。適切な保存方法を実践することで、残ったモン・ドールも最後まで美味しく味わうことができるでしょう。

まとめ

モン・ドールは、フランスとスイスのジュラ山脈が生み出す、期間限定の特別なウォッシュチーズです。その特徴的なエピセアの香り、とろけるように滑らかな舌触り、そして毎年少しずつ異なる風味は、世界中のチーズ愛好家を魅了し続けています。本記事では、モン・ドールの定義から始まり、独特な製法、歴史的背景、フランスとスイスにおけるAOC/AOP認定の違い、さらには「ヴァシュラン」という名称が意味する様々なチーズについて深く掘り下げてきました。モン・ドールは、その年の気候条件によって味わいが変化する、まさに自然からの贈り物と言えるでしょう。ワインのように、年ごとの個性を堪能することが、モン・ドールをより一層楽しめる秘訣です。今年のモン・ドールは特に素晴らしい出来栄えとのことですので、ぜひこの記事で得た知識を参考に、常温に戻してスプーンでそのまま味わったり、フォンドールにアレンジして楽しんだり、相性の良いワインと共に、この旬の味覚を心ゆくまでお楽しみください。正しい保存方法を守り、最後のひと口までその魅力を堪能しましょう。

質問:モン・ドールが期間限定で販売されるのはなぜですか?

回答:モン・ドールは、乳牛の乳量が少なくなる冬の時期に、酪農家が自家用として製造していたチーズがルーツとされています。夏場は、大型のハードチーズであるコンテの製造に大量のミルクが使用されるため、モン・ドールは冬の限られた期間にのみ生産されます。さらに、モン・ドールは非常に繊細で、暑さに弱く品質が劣化しやすいため、気温の高い夏場は生産・流通に適していません。そのため、生産期間は毎年8月15日から翌年3月15日まで、販売期間は9月1日から翌年5月10日までと明確に定められています。

質問:モンドールチーズの表面に付いている白いカビは食べられますか?

回答:モンドールチーズの表面に見られる白いカビは、チーズが熟成される過程で自然に発生するもので、通常は食べても問題ありません。製造過程で取り除かれることもありますが、そのまま販売されることもあります。もし気になるようでしたら、ナイフなどで軽く取り除いてからお召し上がりください。皮ごと焼いて食べる場合も、カビを取り除くことで、より美味しく味わうことができます。

質問:モンドールチーズに合う、おすすめのワインはありますか?

回答:モンドールチーズには様々なワインが合いますが、特におすすめなのは、解禁時期が近いボジョレー・ヌーヴォーや、モンドールと同じ産地であるジュラ地方の白ワインです。若いモンドールには、フレッシュなボジョレー・ヌーヴォーが良く合います。また、焼いたモンドール、別名フォンドールには、ジュラ地方独特の風味を持つ白ワインが最高の組み合わせとなります。チーズとワインの熟成度合いや産地を考慮して選ぶと、より素晴らしいマリアージュを体験できます。
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