ジンとはどんなお酒?
ジンとは、主に大麦、小麦、ライ麦、トウモロコシといった穀物を糖化・発酵させ、それを蒸溜して得られる高純度のスピリッツに、ジュニパーベリーを筆頭とする様々なボタニカル(植物性香料)で香り付けし、再度蒸溜して造られる無色透明の蒸溜酒です。その際立つ芳香と種類の豊富さは、数ある蒸溜酒の中でも際立っています。
ジンのアルコール度数は最低37度以上のものが多く、保存性が高いため基本的に賞味期限はありません。一般的に、蒸溜酒であるジンは糖質がほとんど含まれていません(100g中0.1g)。アルコール度数40%のスピリッツ類の場合、100gあたり約224kcalとされています(※1)。この特性から、「ジンは太る原因になりにくいお酒」として認識されることもあります。しかし、砂糖を多く含むソフトドリンクで割ると、その分糖質やカロリーは増加します。そのため、カロリー摂取が気になる場合は、ロックや炭酸水で割るシンプルな飲み方がおすすめです。
※1 引用元:文部科学省 日本食品標準成分表2020年版(八訂) 第2章 日本食品標準成分表 PDF(多量成分表)P.159「15096 スピリッツ類 アルコール度数40%」
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世界4大スピリッツのひとつに数えられる蒸溜酒
ジンは、ウォッカ、テキーラ、ラムと共に「世界4大スピリッツ」に数えられる蒸溜酒の一種です。「スピリッツ」とは、蒸溜という工程を経て不純物を取り除き、純度を高めて造られる酒類の総称で、広義ではジン、ウォッカ、テキーラ、ラムのほかにも、ウイスキー、ブランデー、焼酎なども含まれます。これらの蒸溜酒は、米や麦、果実などを発酵させて造る醸造酒(日本酒、ワイン、ビールなど)をさらに蒸溜することで、アルコール度数がより高くなるのが特徴です。
日本の酒税法では、「蒸留酒類」の中に「ウイスキー」「ブランデー」「連続式蒸留焼酎(甲類)」「単式蒸留焼酎(乙類)」「原料用アルコール」といった区分があり、それらを除いたエキス分2度未満の酒類を「スピリッツ」と定義しています。ジンは、ウォッカ、テキーラ、ラムと同様に、この「スピリッツ」の範疇に入ります。ちなみに、特にEUなどの諸外国では、ジンの主要な風味はジュニパーベリーであること、ベースアルコールの原料、アルコール度数、添加物などについて厳格な公式基準が設けられていますが、日本の酒税法ではジンそのものの詳細な定義は特に定められていません。
原料にジュニパーベリーなどのボタニカルを使用
ジンが、世界4大スピリッツの他の3種(ウォッカ、テキーラ、ラム)と一線を画す最大の特長は、穀物を糖化・発酵・蒸溜して造られたベーススピリッツに、ジュニパーベリーをはじめとする多種多様なボタニカル(植物性香料)で多彩な風味や味わいを加える点にあります。このボタニカルこそが、ジンならではの個性豊かな風味を決定づける主要な原料と言えるでしょう。
ジンの風味付けには、主に二つの手法があります。一つは「スティーピング」と呼ばれ、ベーススピリッツに香味原料となるボタニカルを浸漬し、その成分を移してから再度蒸溜する方法です。もう一つは「ヴェイパー・インフュージョン」という方法で、再蒸溜を行う際に蒸溜機内にボタニカルを詰めたバスケットを設置し、立ち昇るスピリッツの蒸気で香味成分を抽出・付加します。ジンの風味の核となるジュニパーベリー一つを取っても、粒のまま使用したり、砕いたり、あるいは粉末にしたりと、造り手によって様々な工夫が凝らされています。
ジュニパーベリーに加えて使用される主なジン・ボタニカルには、コリアンダー、アンジェリカルート、アンジェリカシード、オリス、カッシア、シナモン、カルダモン、アーモンド、レモンやオレンジといった柑橘類の果皮、ジンジャー、リコリス、ナツメグなどが挙げられます。これらのボタニカル原料の選定、配合バランス、使用方法、スティーピングの時間やヴェイパー・インフュージョンの技術といった一つ一つの選択に、造り手の深いこだわりが込められており、それがブランドごとに独自の豊かなジンの味わいを生み出しています。
ジンは薬用酒として生まれたお酒
ジュニパーベリーをはじめとする植物由来の香味をアルコールに付与した蒸溜酒、ジン。このお酒は元々、楽しむためのものではなく、薬用目的で誕生したと言われています。古くからジュニパーベリーには滋養強壮などの薬効があると信じられており、すでに11世紀から12世紀頃のイタリアでは、ジュニパーベリーとブドウ酒を合わせて蒸溜する製法があったと伝えられています。また、13世紀から14世紀頃のネーデルラントでは、ジュニパーベリー入りのブドウ酒や蒸溜酒が「イェネーフェル」と呼ばれ、利尿、健胃、解熱、強壮などに効果を発揮する薬酒として、医師や薬局に常備されていたそうです。さらに時代が進み、17世紀半ばには、オランダのライデン大学教授フランシスカス・シルヴィウス博士が、植民地における熱病対策として、ジュニパーベリーをアルコールに浸漬・蒸溜した薬用酒を開発しました。「ジュニエーブル」や「ジュネヴァ」の名で普及しましたが、その優れた利尿・解熱効果に加え、味や香りの良さから薬効だけでなく嗜好品としても高い評価を得ていきます。そして1689年、イギリスの名誉革命によりウィリアム三世がオランダから英国国王として迎えられると、ジュネヴァはロンドンで爆発的に流行。その名称もやがてジュネヴァを短縮した「ジン」へと変化していきました。
19世紀に入り、高性能な連続式蒸溜機が登場すると、それまで砂糖を加えて甘くした重厚なグレーンスピリッツが主体のジンに代わり、雑味がなくすっきりとした辛口のジンが造られるようになります。この新しいタイプのジンは、主要な生産地の名を取って「ロンドンドライジン」と称され、国外への輸出も始まりました。アメリカ大陸に渡った英国風のドライジンは、19世紀末頃からカクテルのベースとして広く愛用され、今日の世界的なスピリッツへと発展を遂げました。ジンが「オランダで生まれ、イギリスで洗練され、アメリカが栄光を与えた」と評されるのは、このような歴史的背景があるからです。
ジンのアルコール度数は高め
ジンのアルコール度数は、低いものでは37度程度、高いものになると55度ほどに及びます。日本国内で手に入りやすい銘柄は、おおむね40度から47度の範囲が最も一般的です。参考までに、他の酒類のアルコール度数を以下に示します。ビール:約5度前後、ワイン:9度~15度程度、日本酒:13度~15度程度(原酒は16度~20度程度)、焼酎:20度~25度程度、ウイスキー:40度~43度程度、ブランデー:40度~50度程度、ウォッカ:40度~60度(90度を超える銘柄も存在)、テキーラ:35度~55度、ラム:40度~50度(75度を超える銘柄も存在)。ビールやワイン、日本酒といった「醸造酒」と比較すると、焼酎やウイスキー、ブランデーなどの「蒸溜酒」、そしてジンをはじめとするウォッカ、テキーラ、ラムといった「スピリッツ」は、全般的にアルコール度数が高くなっています。そのため、摂取量には十分注意し、節度ある飲酒を心がけましょう。
ジンの原料
ジンは主に「アルコール(ベーススピリッツ)」と「ボタニカル」という二つの要素から造られます。これらの原料の選択とその配合のバランスが、各ジンの個性的な風味を決定づける重要な鍵となります。
ベーススピリッツ(アルコール)
ジンの土台となるアルコールは「ベーススピリッツ」と呼ばれます。このベーススピリッツの原料は、小麦、大麦、とうもろこし、米などの穀物由来のものが主流ですが、ブドウやリンゴといった果物、さらにはハチミツを用いた、一風変わった個性を持つベーススピリッツも存在します。
一般的に使用されるのは、「ニュートラルスピリッツ」と呼ばれる、アルコール度数を96度まで高めた、極めてクリアで風味の癖がないアルコールです。一方で、アルコール度数をそこまで高くせず、原料が持つ本来の香りや特徴をあえて残したベーススピリッツが使われることもあります。このベーススピリッツの種類と純度こそが、ジンの最終的な風味と品質に深く影響を与える要因となるのです。
ボタニカル
ジン特有の風味を生み出す植物性の原料をボタニカルと呼びます。中でも、ジンのアイデンティティともいえるのがジュニパーベリーです。これは針葉樹であるセイヨウネズの球果で、清涼感あふれる独特の香りを持ち、肉料理のスパイスやハーブティー、アロマオイルなどにも利用されています。
ジュニパーベリー以外では、コリアンダー、カルダモン、リコリスなどが一般的に使われます。日本産のジンでは、山椒や柚子、抹茶、桜、橙(だいだい)、シソ、玉露といった、和の情緒を表現する多様なボタニカルが採用されることもあります。このように、ジンのレシピは非常に自由度が高く、その組み合わせは無限大です。数十種類のボタニカルが織りなす香りの奥行きや、その多様性は他の蒸留酒では類を見ません。
まとめ
数百年の歴史を誇るジンは、かつて薬用酒としてその名を馳せました。その長い歴史の中で進化を遂げ、多種多様なボタニカルが紡ぎ出す複雑なアロマ、そしてドライジンからクラフトジンまで幅広いスタイルが、世界中の人々を魅了し続けています。
ジンは蒸留酒であるため糖質は含まれず、糖質制限を意識している方にも選ばれやすいお酒です。ただし、アルコール自体にカロリーがあるため、太るかどうかは摂取量や飲み方次第。ストレートやソーダ割りなど、シンプルな楽しみ方であれば、比較的カロリーを抑えつつジンの奥深い風味を堪能できます。
ソーダやジュースで割るだけで、個性豊かなボタニカルの香りが際立つ手軽なカクテルが完成します。家飲みからアウトドアまで、様々なシーンでその魅力を体験してみてください。奥深いジンの世界は、知れば知るほど新しい発見に満ちています。

